日本消化器内視鏡学会雑誌
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25 巻, 6 号
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  • 大下 芳人
    1983 年 25 巻 6 号 p. 823-832
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    上部消化管出血に対する内視鏡的レーザー止血法について,基礎的ならびに臨床的な研究を行った. レーザー照射の適応と安全性に関する基礎的研究として,出血胃潰瘍における組織学的な検討を行い・露出血管外径は94.9%が2mm以下であり,潰瘍底の厚さは86.0%が4mm以上であることが判明した・動物実験におけるレーザー照射条件の検討では,Nd-YAGレーザーでは出力70Wで照射時間1秒間の,argonレーザーでは出力8~10Wで照射時間1秒間の間欠照射が安全かつ有効な条件と考えた. 臨床的な研究としては,上部消化管出血患者99名を,Nd-YAGレーザー治療群45例,argonレーザー治療群13例,対照群41例の3群に分けて,各群の治療成績を検討した.72時間以上の止血有効率はNd-YAG群93%,argon群77%,対照群63%で,3群間に有意差(P<0.01)を認めた.治療後の平均輸血量は・中等症例ではNd YAG群560ml ,argon群930ml,対照群2,290mlと,Nd-YAG群と対照群の間に有意差(P<0.01)が認められた.手術率は,中等症例で,Nd-YAG群7%,argon群11%,対照群38%と,これにも有意差(P<0.02)が認められた.なお,この間,レーザー照射による合併症は認めていない. このように,内視鏡的レーザー止血法は,消化管出血の治療法として非常に有効であり,今後一層の普及が望まれる.
  • 川本 充
    1983 年 25 巻 6 号 p. 833-851
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     アルコール性肝障害の腹腔鏡像とその病理組織所見を,B型肝炎と比較検討した.肝表面の凹凸像を6型に分けたが,そのうちクレープ状,顆粒状の肝表面像はアルコール性肝障害に特徴的な所見と考えられた.また,これらの小葉単位の凹凸像とは別に,肝全体に大小の不規則な波状の凹凸を呈する例が認められ,これもアルコール性肝障害の一つの特徴と考えられた.これらの腹腔鏡所見は組織学的にはアルコール性に特徴的な肝細胞周囲性の線維化や壊死の繰り返しを反映しているものと考えられた.肝色調では黄色調、褐色調のものが認められ,さらに赤色紋理,広汎陥凹,リンパ小嚢胞の多発などもアルコール性肝障害の腹腔鏡診断に重要な参考所見と考えられた. B型肝炎においては,アルコール性とは異なり,凹凸が比較的均質で,肝硬変では乙型と判定されるような表面像が一般的な特徴と考えられた.
  • 遠藤 尚和
    1983 年 25 巻 6 号 p. 853-867_1
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃集団検診(胃集検)の場における,内視鏡検査の役割について検討を加えた.内視鏡検査導入前の胃癌発見率は0.07%(精密検査受診率補正),導入後0.13%(補正率)であった.現地出張内視鏡検診実施区の胃癌発見率は1期(GT-PII 使用時)0.08%,II 期(GT-PA,GTF-S2,S3)0.13%,III 期(全例GTF-S3)で0.16%と高率(I 群とII群P<0.05,1群とIII群P<0.01で有意差あり)となるが,非実施区ではI 期0.08%,II 期0.06%,III 期0.08%と停滞傾向であり,現地出張検診の有用性が示唆された. 機種による撮影状況を部位毎にみると,GTF-S3で無疾患群300例についてみると,幽門近傍19.3%,穹窿部,体上部大彎に16.7%の撮影もれがみられ,有疾患群100例では幽門近傍,体上部大彎に28%みられた.一つの病変にとらわれる可能性があり,全部位をもれなく撮影する必要がある.撮影カバー率,再検率,偶発症発生率からも,胃ファイバースコープが胃カメラに比して有用であった. 胃癌確定の1年以上前に撮影された内視鏡フィルムの蒐集,再読影によって,遡及的な癌診断が可能なものは40例中60%であった.経過観察の分析から胃癌の進展はそれほど早いものでなく,胃内視鏡検査が徹底して行なわれたとすれば年1回の検診で十分であり,おそらくは2年ないし3年に1回の検診でも大多数はまにあうものと考えられた.
  • 山口 昌之, 飯田 洋三, 大谷 達夫, 水町 宗治, 吉田 智治, 竹内 憲, 宮崎 誠, 斉藤 満, 五嶋 武, 大下 芳人, 平田 牧 ...
    1983 年 25 巻 6 号 p. 868-875_1
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     低出力のアルゴンイオンレーザー光源および透過型ファイバー回折格子を応用した病変計測用内視鏡の開発についての基礎的な検討をおこなった.レーザー光をファイバー回折格子に入射すると,従来のスリット型回折格子に比較して,高次まで明かるい鮮明な回折パターンが得られた.これを病変上に投影することによって,消化管粘膜病変の大きさの計測が可能と考えられる.また,このパターンをマイクロコンピューターを用いて画像処理すると,内視鏡的に正面視が困難な部位でも,その直径や面積という二次元の情報に加えて,高まりや陥凹の三次元の情報を得ることが可能と考えられる.この回折光投影装置は,通常の規格の内視鏡に組みこむことが可能であり,本装置が完成すれば,情報量の点でも,操作性の点でも,従来の内視鏡的病変計測法に比して画期的な装置になると考えられる.
  • 川野 淳, 福田 益樹, 佐藤 信紘, 李 和泉, 鎌田 武信, 阿部 裕
    1983 年 25 巻 6 号 p. 876-882_1
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     プロスタグランディンE1のいわゆるcytoprotective effectのメカニズムの解明を目的として17S-20-dimethyl-6-oxo-PGE1 methyl esterを用い,胃粘膜血行動態及び胃液分泌に対する作用を健常成人5名にて検討した.粘膜血液量は臓器反射スペクトル解析法を用い,PGE15μg及び10μg投与前後で胃内20点で内視鏡下に測定した.PGE15μg及び10μg投与により,胃内全体の粘膜血液量は増加したが,特に幽門部では有意の増加が認められた.一方PGE15μg投与により胃液分泌,酸分泌は抑制される傾向にあった.これらの成績はPGE1のcytoprotective effectの一部を説明するものと考えられた.
  • 北野 寛, 野垣 茂吉
    1983 年 25 巻 6 号 p. 883-889
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1979年~1982年の2年10カ月間に335症例に対し386回512個の大腸内視鏡的polypectomyを経験した.多発の頻度は32.8%で,ポリープの39.3%が下行結腸より深部に分布した.回収は多発~ 微小な病変程困難で全体の回収率は94.3%であった.組織像では腺腫及び癌が全体の82.4%を占め,早期癌41個が含まれていた.sm癌は5個で,うち2個が最大径7mmの比較的小さい病変であった.合併症は大出血の2例を経験した.多発例のpolypectomyでは回収が最も厄介な問題点となり,現在の技術では一度にすべての病変を安全に摘除かつ回収することは容易でない.そこで,多発ポリープ患者の治療においては不必要な回収にこだわらず切除術自体の安全性及びsm癌の診断に誤りがないよう特に注意を払うべきと思われた.
  • 堀口 正彦, 井戸 健一, 酒井 秀朗, 川本 智章, 上野 規男, 木村 健, 若山 宏, 斉藤 建
    1983 年 25 巻 6 号 p. 890-901
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸癌の通常光による内視鏡観察時に,特に腫瘍親和性光感受性物質を用いることなく,アルゴンレーザー光(波長488nm ,514.5nm)を内視鏡のライトガイドより誘導・照射し, filter (Kodak wratten gelatin filter No. 12,21,25)を通してアルゴンレーザー光励起による大腸癌の内視鏡的蛍光観察を行なった. 進行癌では,大きさを問わず,その周堤に明瞭な橙赤色蛍光を比較的密に認めた(17/22例).また潰瘍底にも明瞭な橙赤色蛍光を密に認めた(7/22例). 早期癌では,腫瘍全体が暗い橙色調に観察され,点状から小斑状の橙赤色蛍光を散在性で,比較的疎に認めた(5/5例). 大腸早期癌の通常光による内視鏡診断は困難なため,アルゴンレーザー光励起による内視鏡的蛍光観察は,内視鏡的補助診断法として極めて有用であり,大腸早期癌の内視鏡診断が可能になるものと思われた.
  • 大井田 正人, 真玉 寿美生, 小泉 和三郎, 横山 靖, 五十嵐 正広, 菅野 誠, 福井 光治郎, 三橋 利温, 勝又 伴栄, 西元寺 ...
    1983 年 25 巻 6 号 p. 902-910_2
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     陥凹型胃癌の内視鏡診断は,主として色調,ビラン,出血,微細模様の変化をもとにして行なわれている.しかし,癌組織が粘膜表面に露出していないものでは粘膜面の変化が少なく,その診断は難しいと言わざるをえない.今回,Prostaglandin E1(PGE1), Prostaglandin F2α(PGF2α), Epinephrine(EP)などの血管作動物質を経内視鏡的に直接胃内に撒布し,粘膜色調の変化からみた胃癌の浸潤範囲について検討を行ってみた.その結果,粘膜色調の変化が少ない癌浸潤範囲がEp+PGE1撒布法にて明瞭な発赤域として観察されるようになる事を知った.血管作動物質の内視鏡観察への応用は,新しい診断分野開発の可能性とヒト胃粘膜血流におよぼすこれら血管作動物質の作用についての内視鏡的研究の可能性も示唆するものである.
  • 山中 桓夫, 吉田 行雄, 関 秀一, 酒井 秀朗, 木村 健
    1983 年 25 巻 6 号 p. 915-919
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     高周波(5MHz)振動子を装着したリニア電子走:査型超音波上部消化管内視鏡(試作3,4号機)の性能および臨床的有用性について検討した, 試作3,4号機は,胃壁が5層に明瞭に分かれて描出されるなど高い解像能を示した.さらに,試作4号機は,アングル機構の改良によって十二指腸下行脚まで挿入することが可能であった. 試作4号機は,超音波上部消化管内視鏡として臨床的にほほ満足できる性能を有し,一応の完成型と考えられた.今後,早期胃癌の深達度など消化管の微小病変や膵頭部領域の微小病変の診断に威力を発揮すると考えられる.
  • 木村 光政, 真田 修, 田中 武, 東海 浩, 島地 泰敏, 野北 毅, 秋山 俊夫
    1983 年 25 巻 6 号 p. 920-924_1
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     前縦隔腫瘍の診断にて経過観察中の72歳女性が上大静脈閉塞をきたし食道にdownhill varicesを認めた1例を経験した.その静脈造影所見から病変の範囲と静脈瘤の出現部位につき検討を加えた.Downhill varicesは全食道に出現する場合と上部から中部食道の一部にのみ出現する場合があるとされ,この相違は上大静脈閉塞部位が奇静脈合流部の頭側にあるか尾側にあるかによると説明されている.本例では上大静脈閉塞範囲は奇静脈合流部を含む広範囲なものであった.この説からすると全食道に静脈瘤は出現する.しかし本例では上部食道にのみ静脈瘤を認めた.静脈瘤はおもに左下甲状腺静脈からの側副血行路からなり,その後は半奇静脈へと流出していった.このことから半奇静脈あるいは奇静脈が開口している場合は上部から中部食道の一部にのみ静脈瘤は出現し,一方全食道に出現する場合は半奇静脈や奇静脈は閉塞しているものと推定した.
  • 仲 紘嗣, 奥山 敬, 山口 修史, 小林 多加志, 升田 和比古, 犬童 伸行, 松浦 侯夫, 河内 秀希, 平尾 雅紀
    1983 年 25 巻 6 号 p. 925-930_1
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Exulceratio simplex (Dieulafoy)と思われた2症例に対して,内視鏡下の高張Na-エピネフリン(以下HS-Eと略す)液局注療法を試み止血・救命することができた.症例1は20年前に胃潰瘍にて胃切除術をうけた72歳の男性で,著明な貧血のため入院した.入院後も吐下血が持続し,3週間目にして残胃体部大攣から新鮮血が噴出するところを観察しHS-E液局注をおこなった.症例2は59歳の男性で吐下血を主訴として入院した.入院中2回の再出血を来たし,6病日目に實薩部前壁に観察された露出血管が出血源と考えられ,HS-E液を局注し止血した.2例とも露出血管の周囲に消化性潰瘍を認めなかったのでexulceratio simplex(Dieulafoy)と診断した. Exulceratio simplex(Dieulafoy)は内視鏡時代でも出血源の確認が困難で,従来から早期の外科治療が止血・救命しうる唯一の手段と考えられている.われわれは本症に対して内視鏡下のHS-E液局注療法を試み止血・救命できたので,本症における内視鏡的治療について考按した.
  • 鈴木 洋介, 中沢 三郎, 芳野 純治, 林 繁和, 中村 常哉
    1983 年 25 巻 6 号 p. 933-939_1
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡検査で胃および大腸に多数のtelangiectasiaを認め,かつ血管造影検査により胃,小腸,大腸に動静脈奇形を証明しえたOsler病の1例を経験した.症例は46歳の男性で,タール便を主訴として入院した.家族歴として長兄に鼻出血,クモ膜下出血を認めた.入院時,眼険結膜は貧血状で,口唇,舌に小血管拡張斑を認めた.赤血球数250万,Hb7.1g/dl,血清鉄39μg/dlと鉄欠乏性貧血の所見を呈したが,出血凝固系検査では異常を認めなかった.胃X線検査にて体中部後壁に潰瘍を,内視鏡検査では潰瘍の他に体中~上部に径2~5mm程度の赤色斑を多数認めた.発赤部の生検では固有層の毛細血管の拡張が認められた.大腸はX線検査では異常なく,内視鏡検査で肝彎曲部と下行結腸中部にtelangiectasiaを認めた.以上よりOsler病と診断し合併病変を検索するため腹部血管造影検査を施行したところ,胃,小腸,大腸に多数の動静脈奇形が証明された.
  • 仲間 秀典, 嶋倉 勝秀, 上野 一也, 白井 忠, 野沢 敬一, 山口 孝太郎, 赤松 泰次, 古田 精市
    1983 年 25 巻 6 号 p. 940-946_1
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     十二指腸球部にみられた脂肪腫を経内視鏡的に切除した症例を経験したので報告する. 患者は53歳の女性.心窩部不快感を主訴に来院.上部消化管X線検査にて十二指腸球部に類円形の腫瘤陰影がみられ,内視鏡検査で同部にbridging foldを伴った山田III 型の隆起性病変が認められた.内視鏡的ポリペクトミーを施行し,16×13×12mm,淡黄色のポリープを摘出し,病理組織学的検索により脂肪腫と診断した. 加えて,十二指腸の内視鏡的ポリペクトミー症例の本邦報告例を集計し,その意義や問題点についても述べた.
  • 宮川 秀一, 三浦 馥, 川瀬 恭平, 近藤 成彦, 岩瀬 克己, 伊佐治 秀孝, 高村 公範, 稲垣 喜治, 吉田 洋, 鄭 統圭, 桂 ...
    1983 年 25 巻 6 号 p. 947-953
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     73歳,男性.全身倦怠感を主訴として来院.理学的所見で異常認めなかったが,血液生化学検査にて,ALP,LAP,γ-GTP,GOTの異常を認めた.超音波検査では,胆管の拡張と総胆管結石を認めた.ERCにて,総胆管下部に鋸歯状狭窄,総胆管内に浮遊結石を認めた.PTCD施行後,1カ月目に,経皮経肝的胆道鏡検査を施行した.結石を胆道鏡下に除去したのち,病変部を観察すると,表面乳頭状を呈する3個のポリープが認められた.生検標本では,fibroadenomatous hyperplasiaと診断された.胆道鏡下にpiecemeal resectionを施行した.退院後8カ月の現在,経過良好である. 胆嚢を除く肝外胆管上皮性良性腫瘍本邦報告例は19例であった.正確な術前診断をつけられたものは自験例以外にはなく,胆道病変の診断にあたっては,経皮経肝的胆道鏡を併用することが重要である.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1983 年 25 巻 6 号 p. 957-982
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1983 年 25 巻 6 号 p. 983-986
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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