胃集団検診(胃集検)の場における,内視鏡検査の役割について検討を加えた.内視鏡検査導入前の胃癌発見率は0.07%(精密検査受診率補正),導入後0.13%(補正率)であった.現地出張内視鏡検診実施区の胃癌発見率は1期(GT-PII 使用時)0.08%,II 期(GT-PA,GTF-S2,S3)0.13%,III 期(全例GTF-S
3)で0.16%と高率(I 群とII群P<0.05,1群とIII群P<0.01で有意差あり)となるが,非実施区ではI 期0.08%,II 期0.06%,III 期0.08%と停滞傾向であり,現地出張検診の有用性が示唆された. 機種による撮影状況を部位毎にみると,GTF-S3で無疾患群300例についてみると,幽門近傍19.3%,穹窿部,体上部大彎に16.7%の撮影もれがみられ,有疾患群100例では幽門近傍,体上部大彎に28%みられた.一つの病変にとらわれる可能性があり,全部位をもれなく撮影する必要がある.撮影カバー率,再検率,偶発症発生率からも,胃ファイバースコープが胃カメラに比して有用であった. 胃癌確定の1年以上前に撮影された内視鏡フィルムの蒐集,再読影によって,遡及的な癌診断が可能なものは40例中60%であった.経過観察の分析から胃癌の進展はそれほど早いものでなく,胃内視鏡検査が徹底して行なわれたとすれば年1回の検診で十分であり,おそらくは2年ないし3年に1回の検診でも大多数はまにあうものと考えられた.
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