日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
26 巻, 10 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
  • (基礎的検討)
    高橋 寛
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1637-1645
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃内に観察される発赤を,拡大内視鏡により観察した.胃粘膜の微細構造は,点状パターン,棒状パターン,迷路状パターン,網状パターン及び,それぞれの混在に分類した. 胃底腺領域では,点状パターンが100%観察された.腺境界部では,点状と棒状パターンの混在部が52%,棒状パターンは61%観察された.幽門腺領域では,棒状と迷路状パターンの混在部が82%,迷路や網状,および両者の混在部が100%観察された.発赤部を拡大観察すると,6種類のパターンに分類できた.a)周囲発赤型(peripheral redness type),b)タイル型(the type),c)棚状型(fence type),d)不整型(irregular type),e)破壊型(destructive type)f)血管型(vascular type)に分類された.これらは,潰瘍,癌,びらんと密接な関係がみられた.特に,胃癌では不整型と破壊型が重要であった.組織型と拡大所見との関連においては,高分化型腺癌と低分化型腺癌とのあいだに,有意な差はみられなかった.
  • (臨床的検討一特に胃びらんと微小胃癌の鑑別)
    高橋 寛
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1646-1653
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     微小胃癌の発見のため,拡大内視鏡をもちいて胃内にみられる小発赤を中心に観察した.対象は早期胃癌41例,びらん31例,潰瘍瘢痕16例,redpatch16例,計104病変であった.微小胃癌(IIc型)との鑑別で最も重要な病変は良性びらんである.微小胃癌6例と良性びらん31例について,辺縁粘膜および,びらん面を比較した.良性びらんの辺縁では,柵状・タイル状像は31例中13例みられ,不整・破壊像や境界線のリヤス式彎入はそれぞれ31例中2例であった.一方,微小胃癌では不整・破壊像は6例中5例,境界線のリヤス式彎入は6例中3例に観察された.柵状・タイル状像は6例中2例であった.びらん面では,良性びらんでは白苔は31例中14例,不整・破壊像は31例中2例,不規則な凹凸は31例中1例みられた.微小胃癌では,白苔は6例中2例,不整・破壊像は6例中4例,不規則な凹凸は6例中3例に観察された.以上より微小胃癌において重要な所見は,辺縁粘膜の不整・破壊像,および境界線のリヤス式彎入,びらん面の不整・破壊,不規則な凹凸であった.
  • 池田 由弘, 平尾 雅紀, 長谷 良志男, 杉原 保, 高橋 康幸, 奥山 敬, 松浦 侯夫, 仲 紘嗣
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1655-1661
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     近年,早期胃癌に対し種々の内視鏡的治療が行われている.しかし,その多くは外科的切除不能例や拒否例に限って行われているのが現状である.今回われわれは,早期胃癌の内視鏡的治療の最も望ましい適応を知るために,本症の外科的切除例の臨床病理学的検索をした.対象は当院で経験した早期胃癌切除例278例のうち多発早期胃癌,同時性重複癌を除く単発例で,かつ病巣の構築およびリンパ節検索をなしえた179例とした.今回は,この179例について肉眼型,深達度,組織型,病巣の大きさ,主病巣内消化性潰瘍(以下Ulと略す)の有無,Ulの大きさ,Ulの深さとリンパ節転移の関係について検索した.その結果,1.m癌Ul(-)群では45例中全例がリンパ節転移を認めなかった.2.高分化型のm癌では58例中全例がリンパ節転移を認めなかった.3.m癌においては肉眼型,病巣の大きさ,Ulの深さおよび大きさとリンパ節転移率との間には相関はみられなかった.以上の結果により,高分化型でUl(-)のm癌が内視鏡的治療の最も望ましい適応と考えられた.ただし,この条件のもとで内視鏡的治療を積極的に行う場合には,病理学的検索の可能な内視鏡的切除が望ましい.sm癌,断端(+)例,Ul(+)例と判明したものについては,リンパ節郭清を伴う手術を追加すべきである.
  • 飯石 浩康, 竜田 正晴, 佐野 元哉, 奥田 茂, 谷口 健三, 石黒 信吾
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1662-1670_2
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道小細胞型未分化癌は稀な疾患であり,これまでに数10例が報告されているに過ぎない.著者らの施設では,10例を経験しているが,これは全食道癌606例のうちの1.7%に相当する.食道小細胞型未分化癌は60歳台の男性に多く,多くは中部食道に見られた.肉眼的には,2cm以下では粘膜下腫瘤状を呈するが,大きくなると潰瘍形成を伴い,扁平上皮癌との鑑別は困難で,確定診断には生検が必要である.しかし,特に,粘膜下腫瘤型で狙撃生検が難しいため,診断成績は71%にとどまり,吸引細胞診を併用することによって,診断成績の向上が得られた. 食道小細胞型未分化癌の治療に関しては,肺におけると同様,化学療法の有用性が唱えられている.著者らはvincristineとcyclophosphamideとによって食道腫瘍の著明な改善を認めた症例を報告した.副作用もなく,他の治療法との併用などによって,更に良好な治療成績が得られるものと思われる.
  • 伊東 正一郎, 豊原 時秋, 池田 卓, 藤田 直孝, 李 茂基, 望月 福治, 浅木 茂
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1673-1678_1
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1981年6月より1982年12月までに仙台市医療センターで経験した胃・十二指腸出血例のうちの40出血源につき,純エタノール局注止血処置後の露出血管の変化を経日的に経過観察した.出血源である露出血管を性状からA~Dの4型(A型:丸味を帯びた中心赤色隆起血管,B型:丸味を帯びた中心黒色隆起血管,C型:わずかに隆起した黒点状血管,D型:白い血管痕跡)に分けると,多くの例では局注1~2日後には露出血管は安定化し,C型やD型になったが,変化しない例も少数みられ,不十分な局注処置のためと考えられ,この場合,追加局注にて容易に安定化した.追加局注による潰瘍の拡大はほとんどみられず,潰瘍が深くなることもなかった.露出血管が安定化するまでは内視鏡的な経過観察が重要であり,機に応じてちゅうちょすることなく追加局注を行うことが大切であることを述べた.
  • 恩地 森一, 山下 善正, 灘野 成人, 道堯 浩二郎, 太田 康幸
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1679-1685_1
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腹腔鏡下に観察される肝表面色調の評価は,施行者の主観に委ねられており,客観性に乏しい現状にある.そこで,肝表面色調の数値的表現による客観的評価を意図して,日本電色工業社製デンタルカラーメーターOFC―1001DPを改良し,ラットによる基礎実験ののち,肝疾患症例で胆嚢および肝表面色調を測定した.本装置で測定しうる肝の深さは,正常ラット肝の実験で,肝表面から2~3mmの深さであり,小葉数として6~10個が本装置の測定範囲であった.肝疾患患者18例を対象に腹腔鏡下で,胆嚢および肝表面の色調を測定した.胆嚢は,肝表面に比べ明度指数Lが高く色度a,bより青白色であることが表現され,白濁所見は,正常色胆嚢に比べLが高くなっていた(P<0.01).肝表面色調は,症例により多彩であったが,肉眼観察の色調に相当する測定値が得られた.白色紋理の測定値は,他の肝表面に比べて明度Lが高くなっていた.一方,斑紋は,他の肝表面に比べて彩度が低下し,赤味が強くなっていた. 以上より,今後検討すべき点は残されているが,腹腔鏡下に観察される肝表面色調の数値的表現が可能であり,色調の客観的評価の可能性が示唆された.
  • 山下 善正, 恩地 森一, 松田 吉貴, 田中 昭, 太田 康幸
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1686-1691_1
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腹腔鏡下に観察される肝表面色調をカラーメーターを用いて数値で表現することにより,胆汁うっ滞の客観的評価を試みた.対象は正常肝と胆汁うっ滞肝および脂肪肝である.カラーメーターにより正常肝表面色調は,明度のやや低い,色相が赤,彩度の鈍い色調,いわゆる黒茶色と表現され,肝汁うっ滞を認める肝表面色調は,明度は低く,色相が黄赤,彩度が鮮やかと表現され,脂肪肝は明度が高く,色相が黄赤,彩度が鮮やかと表現された.これら三者の間には測定成績から明らかに色差が認められ,なおかつ腹腔鏡で観察される色調に近い測定成績を示した.以上より,カラーメーターによる胆汁うっ滞の客観的評価は可能であった.
  • 長谷川 かをり, 三神 俊史, 野口 友義, 五十嵐 達紀, 屋代 庫人, 長廻 紘
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1692-1699
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸の扁平腫瘍(腺腫・早期癌のうち径が高さの2倍以上あり,頂部が全体として平坦なもの)について内視鏡的に検討した. 扁平腫瘍はポリペクトミー症例,手術症例(腺腫・早期癌)の約8%を占め部位では下部大腸に多い. 扁平腫瘍の良悪性別では良性腺腫35病変,m癌9病変,sm癌4病変であり,純粋扁平隆起,中心くびれ型,ポリープ集簇型,中心陥凹型の4つの亜型に分けると,早期癌は中心陥凹型(13病変中m癌4病変,sm癌3病変)に多いことがわかった.ポリープ集簇型には早期癌は1例もなかった. 扁平腫瘍の表面色調を発赤の有無で2群に分けると表面発赤の強いもの9病変は全例早期癌(m癌6病変,sm癌3病変)であった.一方表面発赤のみられないもの39病変の大部分(35病変)は良性腺腫であったが,4病変の早期癌があった. 扁平腫瘍の内視鏡診断で表面の発赤の有無,中心陥凹は重要な所見である.
  • 小西 知己, 福本 陽平, 村田 誠, 荻野 昌昭, 門 祐二, 新開 泰司, 名和田 浩, 安永 満, 江崎 隆朗, 小田 正隆, 半田 ...
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1700-1704_1
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     照診範囲の拡大を目的として,町田製作所によって新しく開発された細径腹腔鏡LA-1C-Aを臨床応用し,その有用性について報告した.本機は,径2.0mm,2.1mmと極めて細く,視野角も60°,90°と広角であり,光学系には1万本のglass fiberが使われている。 本機を使用することにより,以下の結論をえた。(1)小児,とくに乳幼児の腹腔鏡検査を安全かつ迅速に施行できた.(2)二方向よりの観察や肋間よりの観察等により,照診範囲が明らかに拡大された.(3)超音波腹腔鏡検査時における探触子の接触位置の同定が,正確かつ安全に施行でき,誘導スコープとしての利用価値が大であることを確認した。 以上より,細径腹腔LA-1C-Aは,腹腔鏡検査における1つの補助的診断機器として,極めて有用であると考えられた.
  • 神保 勝一, 黒坂 判造, 大原 毅
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1705-1709
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     すでにわれわれは,胃内視鏡診断において,補色フィルターを使用すると,診断医の色覚疲労防止に有用であり,かつ色素撤布法とほぼ同様のコントラストが得られ,診断上有利であることを報告した. 今回は,大腸内視鏡診断にも同一の補色フィルターを使用したところ,その有用性が確認できたので報告する.
  • 大岩 俊夫, 杉町 圭蔵, 桑野 博行, 黒岩 重和
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1710-1716_2
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例1:57歳女,吐血を主訴として来院.X線検査にて胃体部高位の前壁に直径3cmの隆起病変があり,その中心部に不整形の陥凹を認めた.検査の翌口,多量の吐血でショック状態となり緊急手術を施行,切除標本の病理組織学的検索で胃カルチノイドと診断された. 症例2:69歳男,空腹時上腹部痛を主訴として来院.X線および内視鏡検査にて十二指腸起始部の前壁に約1×1cmの隆起病変を認めた.生検により,カルチノイドと診断され胃切除術が行われた.
  • 村岡 英夫, 鈴木 茂毅, 奥秋 興寿, 吾妻 耕治, 木村 和衛
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1719-1724_1
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     山崎らのいういわゆる胃Vanishing tumorの1例を経験し,その経過を詳細に観察しかつ原因を推定し得たので報告した.患者は49歳の女性で主訴は上腹部痛.初回胃X線検査および内視鏡検査にて,胃角上部に巨大潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様所見を示す腫瘤を認めた.生検では好酸球浸潤の高度な肉芽組織であり,病歴と考え合わせて寄生虫疾患を疑った.手術を念頭において経過観察したところ,2週間後に腫瘤は消失し,4週間後には同部位はほぼ正常粘膜となった.本例の腫瘤は寄生虫の胃壁穿入による限局性アレルギー性浮腫後の好酸球性肉芽腫で,中心部の壊死,脱落,ついでその後の組織修復により急速に縮小したものと考えられた.
  • 森瀬 公友, 加藤 肇, 林 靖, 桑原 敏真, 楠神 和男, 大塚 光二郎, 豊田 澄男, 吉富 久吉
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1725-1730_1
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     2年1カ月間の経過を観察しえた微小胃カルチノイドの1例を経験したので報告する.患者は47歳の男性で,約2年前に内視鏡検査で体下部小彎の小ポリープを指摘され,生検で胃カルチノイド疑と診断されていた.2年1カ月後の内視鏡検査で体中部小彎および体下部小彎の2ガ所に小隆起性病変を認め,生検にて胃カルチノイドと診断された.切除標本にて体中部病変は4.2×4.0mm,体下部病変は4.8×4.0mmであった.組織学的には,2病変ともに粘膜下層浸潤にとどまっていたが,体下部病変は主病巣に接して0.1mm以下の周辺微小カルチノイド病巣がみられた.1963年から1983年までの本邦における胃カルチノイド報告例は147例認められたが,5mm以下の微小胃カルチノイドは自験例を含めて9例であった.内視鏡検査,生検により9例中4例が術前診断されていた.微小胃カルチノイドにおいても多発例,広範なリンパ管浸襲例,周辺微小病巣を有する例がみられることから,術前における十分な内視鏡検査と胃癌に準じた根治的胃切除が必要であると考えられた.
  • 藤巻 英二, 狩野 敦, 武藤 純一, 小豆島 正和, 松谷 富美夫, 折居 正之, 鈴木 誠治, 菅井 俊, 加藤 浩平
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1731-1737_1
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     十二指腸の脂肪腫は稀である.本例の2例を経験した.症例1は78歳,男性で,上腹部痛を主訴とし,X線にて十二指腸第3部に円型の陰影欠損を認め,内視鏡にて粘膜下腫瘍と診断するも,慢性腎不全による腎機能障害が悪化し死亡した.剖検にて十二指腸第3部に2.0×1.4×1.4cmの表面平滑な有茎性腫瘍を認め,割面は黄色を呈し,組織学的には脂肪腫であった.症例2は36歳,男性で,上腹部不快感を主訴とし,近医にてX線上,十二指腸に異常陰影を指摘され,当科に紹介された.X線および内視鏡にて十二指腸第3部に粘膜下性の棍棒状腫瘤を確認し,開腹にて腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は1.2×1.2×2.8cmの大きさで,棍棒状を呈し亜有茎性であった.組織学的には脂肪腫であった.本邦の十二指腸脂肪腫は,今回の著者らの2例を含め27例の報告があり,それらについて,若干の文献的考察を加えた.本腫瘍は内視鏡的に黄色調を呈することから,内視鏡診断がある程度可能であった.
  • 岡野 重幸, 矢崎 康幸, 佐藤 仁志, 鳥本 悦宏, 原 久人, 高橋 篤, 関谷 千尋, 並木 正義
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1738-1745
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     盲腸より横行結腸にわたる腸管のう腫様気腫(Pneumatosis cystoides intestinalis)に対し,間欠的高濃度酸素吸入療法を施行した.方法は,酸素テントを用い吸入酸素濃度を75%に調整し,回盲部付近のガス像をX線テレビにて観察しながら連続6時間1日1回酸素吸入を行った.同様にして合計6回の治療を行った結果,治療終了後の腹部単純写真でgascystは消失し,大腸X線検査および大腸内視鏡検査でも病変の完全消失が確認された.従来から行われてきた持続的酸素吸入療法に比し,高濃度酸素による肺障害の危険性も少なく有効な方法と思われたので,治療経過に伴うX線・内視鏡所見などを示し報告した.
  • 斉藤 裕輔, 長谷部 千登美, 佐藤 仁志, 原田 一道, 高橋 篤, 矢崎 康幸, 関谷 千尋, 並木 正義, 浅川 全一, 水戸 廸郎, ...
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1746-1751_1
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     小児門脈圧亢進症の発見頻度が少しずつ高まりつつあるが,その詳細な病態の把握はなかなか容易ではない.今回われわれは種々検索したが,術前に診断し得なかった肝前性門脈狭窄症の女児例を経験したので考察を加えた.症例は,11歳女児で吐血を主訴に入院した.著明な貧血と巨大な脾腫,汎血球減少,便潜血を認めたが,肝機能検査や他の血清学的検査で異常はみられなかった.胃食道内視鏡検査ではR-Csign,随伴性食道炎を伴う食道静脈瘤が認められた.腹腔鏡検査,肝生検では肝はほぼ正常であったが,CT,ERCP,血管造影,逆行性門脈造影にても門脈の閉塞所見はみとめられず,初期のIPHを疑って手術を行った.ところが術中の門脈造影にて門脈の肝門部での平滑な狭窄と左門脈枝の閉塞がみられ,肝前性門脈狭窄症であることがわかった.
  • 大平 基之, 矢崎 康幸, 関谷 千尋, 高橋 篤, 長谷部 千登美, 佐藤 仁志, 奥野 一嘉, 富永 吉春, 鈴木 貴久, 並木 正義
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1752-1760_2
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     無症候例を含む肝型Wilson病の姉妹例を報告した. 症例1:14歳,女性.続発性無月経と肝不全で発症.Kayser-Fleischer輪,血清銅低値,低セルロプラスミン血症,尿中銅排泄量著増を認めた.臨床病期はDeissらのstageIIB,DobynsらのstageIIBI.肝性昏睡で死亡し,剖検肝は特異な肝硬変であった.AndersonとPopperの組織学的病期はactive stageで,肝組織内銅含有量は623μg/g dry weightを示した. 症例2:12歳,女性.症例1の妹.症例1の家族調査で発見されたもので,無症状であった.Kayser-Fleischer輪はなく,血清銅低値,低セルロプラスミン血症,尿中銅排泄量増加を認めた.臨床病期はDeissらのstageI, Dobynsらのstage I~IIA.腹腔鏡で観察すると,肝にはi)表面平滑,ii)脂肪肝を反映する黄赤褐色調,iii)軽度の線維化を示唆する直径1mm大の区取り,の所見がみられた.AndersonとPopperの組織学的病期はprecirrhotic stageで,肝組織内銅含有量は1235μg/g dry weightを示した.本例はD-penicillamine療法で肝機能検査成績の改善を認めた.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1763-1776
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1776-1782
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1782-1813
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 並木 正義
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1814
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1815-1850
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1984 年 26 巻 10 号 p. 1851-1874
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
feedback
Top