日本消化器内視鏡学会雑誌
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27 巻, 12 号
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  • 斉藤 満
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2699-2706
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡直視下に胃粘膜血流,胃粘膜potential differenceを測定し,急性胃粘膜病変の病態について検討し以下の結論を得た. 1) 急性胃粘膜病変での粘膜血流は,病変部だけでなく内視鏡的非病変部でも低下し,その変化は前庭部よりも胃体部において著明であった.血流低下は病変の改善にともなって経時的に改善を認めた. 2) 急性胃粘膜病変でのPDは,病変部のみでなく,内視鏡的非病変部においても胃内全域で低下を認めた.この変化を経時的にみると,病変部のPDが徐々に改善するのに対し,非病変部では急速に改善を認めた. 3) 慢性胃潰瘍では,粘膜血流,PDの変化は病変部のみに認められ,周囲粘膜では認めなかった.これに対し,急性胃粘膜病変では病変部のみでなく胃内全域に変化を認めており,両者の発生時の病態の違いが示唆された. 4) 急性胃粘膜病変の背景胃粘膜を,内視鏡的コンゴーレッド法により検討すると,コントロール群,および他の胃疾患の背景胃粘膜に比べ有意に閉鎖型が多く,94%と大半を占め,このうち90%はC1,C2型であった.
  • 斉藤 満
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2707-2715
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的手技を用いて,胃粘膜発赤を形態学的,組織学的,機能的な面より検討した. 1) 胃粘膜発赤を,斑状発赤,櫛状発赤,毛細血管拡張の3型に,さらに斑状発赤は胃底腺領域のF-type,幽門腺領域のP-typeおよびいわゆるredspotの3型に分類した.拡大観察では,櫛状発赤,斑状発赤F-typeは榊の拡大内視鏡分類のA型を示し,P-typeはBC型であった. 2) 胃粘膜発赤の背景胃粘膜を内視鏡的コンゴーレッド法によって検討すると,櫛状発赤の97.7%,斑状発赤の81%が閉鎖型を示した. 3) 胃粘膜発赤の病態を知るために,近接非発赤部粘膜と比較を行った.組織学的検討では,細胞浸潤の程度に差は認められなかったが,発赤部で浮腫,血管充盈像が強く認められた.機能的検討では,胃粘膜potential difference,胃粘膜pHに差は認めないが,水素ガスクリアランス法を用いた粘膜血流測定では,発赤部は非発赤部に比べ血流は低値を示した.すなわち,粘膜発赤は粘膜障害までにはいたっていないが,すでに血液のうっ滞状態にあり,非発赤部粘膜に比べ粘膜障害を来しやすいと考えられ,びらんあるいは急性胃粘膜病変の先行病変となりうると推測した.
  • 池園 洋
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2717-2726
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     早期胃癌の粘膜内への水平浸潤及び粘膜下への垂直浸潤と癌周辺粘膜性状との関連性を調べる目的で,癌が粘膜内を水平に拡がる随伴IIbを伴った早期癌と,長径2cm以内ですでに粘膜下浸潤を有する深部浸潤型早期癌を抽出し,病理組織学的に検討した.表在拡大型傾向を示した随伴IIb症例の周辺粘膜には粘膜の萎縮と腸上皮化生の傾向が顕著であり,粘膜内浸潤は粘膜に萎縮がない部分ではその進展が阻止され,粘膜の萎縮,腸上皮化生の強い部位に拡がる傾向が認められた.一方,深部浸潤型癌の周辺粘膜には萎縮はほとんど認められず,腺管密度は密である傾向がみられた.以上のことから,胃癌の浸潤様式と癌周辺粘膜性状との間には密接な関連性が示唆された.
  • 春日井 達造, 吉井 由利, 四方 淳一, 中村 孝司, 原 義雄, 田島 強, 大井 至, 並木 正義, 山崎 裕之, 西岡 久寿彌, 津 ...
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2727-2733
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     日本消化器内視鏡学会消毒委員会は1977年10月から1979年4月の間に全国5施設において消化器内視鏡検査にもとずくB型肝炎ウイルス(HBV)感染の有無に関するprospective studyを実施した. 6カ月間にわたりfollow-upが可能であった273例中,内視鏡検査前HBs抗原及び抗体共に陰性であったものは189例であった.これら189例中検査後6カ月間のfollow-up中にHBs抗原陽転は1例,HBs抗体陽転は15例で,HBV感染があったと見なされたものは189例中16例で、HBV感染率は8.5%であった. HBs抗原陽転例は,内視鏡検査4カ月後の採血において一過性陽性で,HBs抗体は常に陰性,肝機能正常で以後追跡された3年間肝炎の発症をみていない.
  • 春日井 達造, 吉井 由利, 西岡 久寿彌, 津田 文男
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2734-2738
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     日本消化器内視鏡学会消毒委員会は内視鏡検査とHBV感染の関連につき,1977年10月から約2年間にわたり5施設においてprospective studyを行った結果,8.5%のHBV感染率を認めた.これは従来の高危険群における感染率よりやや高値であったため,愛知県がんセンターにおいてcontrolのprospective studyを行った. 1982年5月から1983年4月の約1年間に外来受診者317例についてHBs抗原及びHBs抗体の検査を行った.これらのうち193例は採血後内視鏡検査を受けた群で,124例は未施行群であった. 6カ月間のfollow-upにおいて両群とも新たにHBV感染者は認めなかった. グルタルアルデヒド使用のルーチン消毒で内視鏡検査にもとずくHBV感染は防止できた.
  • 中村 孝司, 鎌上 孝子, 宮 仁志, 平川 雅代, 田中 美智子, 横手 美輝洋, 糸数 憲二, 黄 沾, 鳥居 正男, 三宅 和彦, 山 ...
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2739-2746
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     先端に電極を装着した二重管腔チューブを内視鏡鉗子孔より挿入し,内視鏡直視下に測定部粘膜にチューブ先端を接触させ,チューブに試験液をe流しながらpotential difference (PD)を連続的に記録させた.灌流液中のNaCIを変換することによって生ずるPDの変化(△PD)のhalf time(t1/2)を計測し,Diamondの式から胃および十二指腸球部における機能的不攪拌水層の厚さを算出した.胃粘膜についてこの厚さを測定するのは初めての試みである. 95例の178カ所を対象として測定を行い,次のような結果をえた.正常粘膜部においては,この厚さは胃で205.8±71.9μm(±SD),球部では224.5±73.1μmであった.病変部では正常部に比低値の傾向を示した.正常胃粘膜部の厚さは胃潰瘍患者に比し十二指腸潰瘍患者でやや高値を示し,また胃酸分泌能との間に正の相関がみられた.この厚さの臨床的意義はなお明らかでないが,胃粘膜防御機構の一つの指標となりうることが示唆された.
  • 藤野 雅之, 山本 安幸, 池田 昌弘, 小林 一久, 宮崎 吉規, 柳沢 研一, 木之瀬 正, 立川 博邦, 相野田 隆雄, 赤羽 賢浩, ...
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2747-2750_1
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡検査時,送水によってレンズ面を洗滌しているが,洗滌水を対物レンズ面より充分に除去できず,いわゆる水切れの悪さに悩ませられてきたため,われわれは水切れ改善を目的として送水方式に検討を加えた.送気送水ピストンを改造,送水操作時に先端ノズルより水と空気の混合気体が噴射されるようにした噴霧式送水法(44回)および在来式送水法(39回)をGTF-B3ないしGTF-S4による検査例について比較したところ水切れ不良による写真のBlurringの頻度は在来群の平均55%に対し噴霧群で平均36%と有意な減少(p<0.01)を示し,噴霧式送水は内視鏡的観察および内視鏡写真の質の向上に有用と考えられた.
  • 安藤 秀樹, 渡辺 文時, 宮崎 寛, 大越 裕文, 尾泉 博, 韓 南奎, 嵐山 恭志, 西山 正輝, 藤田 由美子, 高橋 弘, 清水 ...
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2753-2758_1
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腹腔鏡下肝生検後の止血法として,フィブリン糊を生検部位に充填し止血するフィブリン糊注入止血法を開発し,止血効果の検討を行なった.フィブリン糊は,ヒトフィブリノーゲン溶液と,ヒトトロンビン,塩化カルシウム,アプロチニンを含む溶液を等量混合し調製した.Tru-Cut針を用いて肝生検後,留置してある外套針よりフィブリン糊を注入しつつ外套針を抜去し,止血操作を終了した.本法を試みた32例の検討では,本法の使用により,止血操作時間は約1分と従来の留置止血法に比し大巾に短縮し,術後出血例もなく,止血効果も確実であることが示された.また,本法の施行により重篤な副作用は認められず,今後,腫瘍性疾患など,生検後の止血が危惧される症例への応用が可能であることが明らかとなった.
  • 内海 真, 上田 則行, 池 薫, 相馬 光宏, 幸田 弘信, 原田 一道, 山崎 裕之, 矢崎 康幸, 岡村 毅与志, 並木 正義, 鈴木 ...
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2759-2767
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     最近の8年間に当科および関連施設で経験した膵管胆管合流異常の23例中,急性膵炎2例(9%),慢性膵炎3例(13%)の合併をみたので,膵管胆管合流異常と膵炎との関連性について,臨床的に種々検討した.対象は,男3例女20例計23例の膵管胆管合流異常例で,合流様式は,木村の分類でI型(膵管合流型)が11例,II型(胆管合流型)が12例である.膵炎を合伴した5例は,すべて先天性胆道拡張症の症例である.急性膵炎の2例は5歳と14歳の女で,共にI型の合流様式をもち,慢性膵炎例は,46歳女,49歳女,50歳男の3例で,すべてII型の合流様式を示し,それぞれ胆石を伴うX線陽性膵石症,腫瘤形成性膵炎,アルコールの関与が大と考えられた慢性膵炎例である.これら5例の検討の結果,急性膵炎合併例は若年者に多く,比較的軽症に経過し,慢性膵炎合併例はII型合流様式に多く,その発生と合流異常の因果関係が示唆された.
  • 藤野 雅之, 池田 昌弘, 鈴木 宏, 丹羽 寛文, 三木 一正, 平山 洋二, 半井 英夫, 板井 愁二, 鶴丸 昌彦, 秋山 洋
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2768-2772_1
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は65歳男.38歳頃より出現した口腔粘膜および皮膚の暗青色の腫瘤を伴うほか,自覚症状なく,定期検診で,1年3カ月の間に急速に増大した中部食道左側後壁の,粘膜下腫瘍の像を呈する腫瘤を発見され,超音波内視鏡検査で嚢腫を疑われ,開胸により,胸管嚢腫であることが確認された. 胸管嚢腫の手術例としては世界で15例目,超音波内視鏡検査で観察された最初の例と思われ,超音波内視鏡検査が診断に有用と考えられた. 本例の皮膚等に多発する暗青色の腫瘤は静脈の拡張によるものであったが,患者の長男にも皮膚に多発する同様の変化が30歳頃より出現している. 多発性静脈拡張と胸管嚢腫の関連は不明であるが,結合組織のなんらかの遺伝性代謝異常を想定している.今後の検討を要する.
  • 堀 高志, 藤岡 利生, 村上 和成, 首藤 龍介, 末綱 純一, 寺尾 英夫, 松永 研一, 糸賀 敬, 村上 信一, 柴田 興彦, 内田 ...
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2775-2781_1
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃憩室は消化管憩室の中では比較的稀なものであり,胃憩室の発生頻度は一般に0.01%から0.20%との報告が多い.胃憩室の多くは,噴門部小彎後壁寄りに発生し,体部大彎に発生するものは極めて稀である.また,大きさについては,広田らによれぼ2.1cmから3.0cmのものが最も多く,5.1cmを超えるものは6.9%にすぎない.更にその壁構造については,一般に真性憩室が多いとされている. 症例は48歳女性,胸やけ,心窩部痛,体重減少を主訴として入院した.上部消化管X線検査にて胃体部大彎側に巨大な憩室を認め,内視鏡検査にても同様の所見であった.保存的療法にても自覚症状改善しないために手術が施行された.憩室は11.5cm×8.0cmの大きさで,組織学的には仮性憩室であった.
  • 佐藤 達之, 大石 享, 丸山 恭平, 岡野 均, 西田 博, 依岡 省三, 児玉 正, 沖 啓一, 島田 信男, 瀧野 辰郎
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2782-2785_1
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃悪性リンパ腫は比較的稀な疾患であり,早期例の報告はいまだ少ない.今回われわれは内視鏡的に診断し得た早期悪性リンパ腫の1例を経験したので報告した. 症例は60歳,女性.自覚症状はなく,胃集団検診にて異常を指摘され,当科を受診した.上部消化管造影検査では幽門部に多数の小潰瘍ないしビラン,及び不規則化した胃小区像が混在して認められたが病変の境界は明らかでなかった.胃内視鏡検査では同部に溝状ビランに囲まれた粗大顆粒の集簇を認めたが病変の境界は不明瞭であった.以上より胃悪性リンパ腫と診断し,また生検材料の組織学的所見により確診した.手術材料による検討では,腫瘍は粘膜下層までにとどまり,リンパ節転移は認めなかった. 本例はいわゆる早期胃悪性リンパ腫と考えられ,術後2年の現在,再発の徴候なく外来受診中である.
  • 林田 研司, 西畑 伸二, 市丸 治秋, 井手 秀水, 谷岡 一, 田中 義人, 中村 憲章, 牧山 和也, 原 耕平, 藤井 政昭, 角田 ...
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2786-2791_1
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     59歳の女性.昭和55年2月頃より右季肋部痛が出現し,昭和56年12月痛みが増強しなため,当科を受診して入院となった.入院時,黄疸はなく,軽度の貧血と肝腫大を認めた.生化学検査では,LDH高値以外にはとくに所見を認めず,肝シンチおよび腹部CTで肝右葉にかなり大きな腫瘤像を認め,原発性肝癌を疑った.しかし,血管造影では肝の血管腫を思わせる所見も得られた.腹腔鏡検査では,右葉に黄白色腫瘤を取り囲む形で青紫色斑を認めたため,肝細胞癌あるいは肝血管腫を疑って開腹術を施行した.すでに腹腔内には広範囲に転移が認められ,切除不能と判断され,試験開腹に留まった.試験切除による標本では,組織学的に肝血管肉腫と診断された.発症後1年8カ月,確定診断後6カ月にて死亡した.
  • 伊部 晃裕, 西川 邦寿, 剛崎 寛徳, 五十嵐 良典, 鈴木 金剛, 藤沼 澄夫, 伊東 明美, 竹中 希久夫, 土方 淳, 沢井 寛人, ...
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2792-2796_1
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     消化管分布上比較的稀な十二指腸にのみ日本住血吸虫卵を認めた1症例を経験したので報告した.症例は69歳男性,心窩部痛を主訴に来院.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に小隆起性病変を認め生検,組織学的検索にて本症と診断した.現在,日本住血吸虫症の報告は減少してきているが,無症状に経過している感染者はまだ相当数存在すると考えられており,合併症の問題も十分解明されていない.今後,濃厚感染地域での生活歴のある症例や,罹患を疑わせる症例への積極的な生検を含めた内視鏡による検診体勢が必要と考える.
  • 千葉 満郎, 長沼 敏雄, 後藤 充男, 太田 弘昌, 吉田 司, 荒川 弘道, 正宗 研, 大窪天 三幸
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2797-2805
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     潰瘍性大腸炎に抗生物質投与後偽膜性大腸炎を合併した稀な1例を報告するとともに,既往歴にみられたBasedow病との関係について考察を加えた. 症例は66歳女性,既往歴:46歳時にBasedow病のため甲状線亜全摘術を受けた.現病歴:入院4カ月前から下痢,血便,下腹部痛があったが放置していた.入院3週間前全膣脱の手術時抗生物質の投与を受け,その後下痢が持続したため入院.入院時,偽膜性大腸炎の所見が顕著であったため,metronidazole,vancomycinによる治療を行い,偽膜の消失をみた.しかし,下痢が持続したため,基礎にある潰瘍性大腸炎に対してSalazopyrin,predonizoloneで治療し,内視鏡的にも組織学的にも緩解が得られた.この症例では4カ月前某医で撮られた大腸X線写真で潰瘍性大腸炎の所見があり,潰瘍性大腸炎に合併した偽膜性大腸炎と考えられた.
  • 吉田 司, 千葉 満郎, 五十嵐 潔, 太田 弘昌, 伊藤 良, 長崎 明男, 荒川 弘道, 正宗 研, 古谷 雅幸
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2806-2810_1
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     急性腸炎様症状で突然発症し,短期間でその臨床像が急速に増悪した全結腸炎型大腸Crohn病の1例を報告した. 症例は22歳男性.生来健康で薬物服用などはなかったが,突然水様性下痢,発熱,下腹部痛が起こり,急性腸炎として加療したが著明な低蛋白血症と体重減少が出現,大腸X線および内視鏡検査で異常を指摘され,当科に紹介された.糞便に虫卵や病原性細菌は認めず,大腸X線および内視鏡検査で直腸は正常,S状結腸から口側全結腸に定型的な縦走潰瘍とcobblestone appearanceがみられた.大腸生検で非乾酪性肉芽腫を認め,胃および小腸に異常はみられず,臨床経過,検査所見を総合して急性発症型の全結腸炎型大腸Crohn病と診断した. Crohn病は慢性疾患として特徴づけられ,発症も一般に緩徐である.本症例のように急激に発症し,直腸を除く全結腸炎型を示した大腸Crohn病は極めて稀で,著者らが検索した限りわが国における報告例は見当らない.
  • 伊藤 克昭, 堀田 茂樹, 吉井 由利, 小林 世美, 春日井 達造
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2811-2816
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道アカラシア10例に対し, Maloney mercury-filled esophageal bougie 60 Frenchを使用した拡張療法を試み,9例に満足できる治療効果が得られた.治療後の経過観察期間は6カ月から2.6年(平均1年6カ月)で,この時点での治療成績は,自覚症状のない著効例が4例,軽度のつかえ感を時々自覚するが日常生活に支障のない有効例が5例,無効例は1例であった.著効例のうちの1例は,飲食飲水が全く不能で,著しいるいそう状態で来院したが,ブジー治療当日から経口摂取が可能となり,短期間で18kgの体重増加をみ,5年前の発症前の体重に回復した.治療後6カ月を経た現在も無症状に経過している. 食道アカラシアに対する非外科的治療の主流はPneumatic dilatorを用いた強制噴門拡張療法であるが,60Frenchブジーによる治療は安全,簡便であるので,外来で施行でき,治療効果の持続期間も長いため,まず試みるべき治療法と考え報告した.
  • 並木 正義, 関谷 千尋
    1985 年 27 巻 12 号 p. 2817-2824
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回の全国的なアンケート調査により腹腔鏡検査が近年,年次的に普及しつつあることがわかったが,それに伴い,偶発症もまた増加していることが明らかになった.偶発症としては気胸が40.7%,出血が25.9%,消化管損傷7.7%,ショック7.7%がおもなものである.これら偶発症の46.2%が気腹時に,34.6%が肝生検時に起きており,トラカール挿入時のものを加えると腹腔鏡検査の基本操作によるものが全体の88.8%を占めている.偶発症の発生を術者の面より検討すると,経験年数より経験例数の方がより重要な因子となっており,経験:例数が200例未満の術者によるものが偶発症の63.4%を占めている.一方,経験例数の多い術者では肝生検やトラカール操作において重篤な偶発症を起こしている.それは経験者はとかく腹部手術の既往のあるものや肝硬変,肝癌などむずかしい症例を対象とすることが多いためと思われる.偶発症予防のためには適切な教育システムやカリキュラムを整備し,また偶発症を起こした症例につき十分検討し合う場を持つことも必要であろう.
  • 1985 年 27 巻 12 号 p. 2825-2862
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 1985 年 27 巻 12 号 p. 2863-2921
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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