日本消化器内視鏡学会雑誌
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28 巻, 11 号
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  • ―内視鏡的胃液検査法の応用―
    山口 初宏, 中澤 三郎, 瀬川 昂生, 塚本 純久
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2517-2528
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胃潰瘍19例,十二指腸潰瘍14例,胃十二指腸併存潰瘍8例,正常対照者8例の合計49例に対し,直視型細径内視鏡を用いた内視鏡的胃液検査法を施行した.攻撃因子として酸・ペプシンを測定すると同時に,防御因子として胃液中および胃粘膜内高分子糖蛋白質を測定し,これら相互の関係について検討した.(1)基礎分泌胃液中の高分子糖蛋白質濃度は,十二指腸潰瘍群で低値を示した.(2)基礎酸濃度と基礎分泌胃液中の高分子糖蛋白質濃度との間に・負の相関関係を認めた(P<0.01).(3)胃粘膜内高分子糖蛋白質は胃潰瘍群7.8±0.6μ9/mg,十二指腸潰瘍群10.9±0.8μ9/mgで,両群間に有意差(P<0.01)を認めた.(4)基礎および刺激後ペプシン分泌量は,胃粘膜内高分子糖蛋白質とそれぞれ有意の正の相関関係を認めた(P<0.01).本法の施行により,胃液検査と同時に胃内観察および生検組織採取が可能であり,胃液および胃粘膜の両面から消化性潰瘍の成因・病態生理を究明するのに有用な知見が得られた.
  • 中島 弥生
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2529-2539
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     瘢痕肝について,自験例30例の臨床像と形態を検討し,瘢痕および再生結節の局在性からその形成機序に若干の考察を加えた. 年齢は平均51歳で男性22,女性8例であった.成因別発生頻度は自己免疫性に最も高率であり,B型肝炎ウイルスには認められなかった.急性肝壊死から進展したと考えられる瘢痕肝は7例であったが,発症時期を推定できたのは2例だった.一方慢性肝障害から進展したと思われる瘢痕肝は23例でこれらは対照群と比較して急性増悪の存在がある程度推測された.腹腔鏡による瘢痕および結節の部位には局在性があり,溝状瘢痕はCantlie線上または各区域境界域にみられた. 瘢痕肝の成立には病因および急性肝壊死または急性増悪の存在が重要と思われるが,二次性因子としての血管病変や生理的血流の多寡が重要と考えられた.
  • 屋代 庫人, 飯塚 文瑛, 長谷川 かをり, 長廻 紘
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2541-2550
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    1971年から1985年まで東京女子医大消化器病センターにおいて内視鏡的ポリペクトミーが施行された47個(43症例)の大腸若年性ポリープの臨床病理学的な検討を行った.特に消化管合併病変の有無を詳細に検討した. その結果,若年性ポリープの年齢分布は10歳以下と,30歳代にピークがみられ,2峰性を示した.10歳以下を小児型,11歳以上を非小児型とし,その消化管合併病変を調べたところ,大腸炎症性ポリープおよび潰瘍性大腸炎を含む大腸炎が非小児型35例中7例にみられた.小児型8例においては合併大腸病変は全くみられなかった. このことより,小児型,非小児型の若年性ポリープではその発生要因が異なり,非小児型においては大腸の炎症がその発生と深くかかわっていることが示唆された.
  • ―著明な肝細胞障害例を中心に―
    長嶺 竹明, 山田 昇司, 高木 均, 新井 孝之, 桜井 誠司, 市川 邦男, 竹沢 二郎, 長坂 一三, 下條 宏, 須賀 勝久, 小林 ...
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2551-2560_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    20例の薬剤アレルギー性肝障害の腹腔鏡像,肝組織像および臨床所見について検討した.肝の色調により便宜上緑色肝と白色肝に大別した. 緑色肝の肝表面は平滑で,肝生検標本は急性薬物肝障害の混合型を示し,白色肝に比べA1-Pが有意に高値であった. 白色肝の肝表面を平滑(4例),溝状陥凹(1例),溝状陥凹+平波状変形(1例),粗大再生結節(1例),馬鈴薯肝(1例)の5型に分類した.肝表面平滑例と溝状陥凹例の肝生検標本は急性薬物肝障害の肝細胞障害型を示し,他の3型は慢性薬物肝障害の肝細胞障害型を示した.帯状壊死の周辺に多核巨細胞の出現をみたものが2例あった.また著明な肝細胞壊死を生じた2症例では自己抗体が検出されたことから,薬剤アレルギー性肝障害の進展には何らかの自己免疫的機序が関与する可能性が示唆された.
  • 関俊 夫, 清水 聰, 魚住 玄通, 山口 勝通, 白木 東洋彦, 竹林 政史, 白川 和夫, 島本 和彦, 中島 正継
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2561-2566_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     6,529例15,487件の上部消化管内視鏡検査にて,32例36病巣が組織学的に胃異型上皮巣と診断された.3カ月以上3年未満の内視鏡的経過観察期間を有する11例13病巣と,3年以上の観察期間を有する12例13病巣とで内視鏡所見の変化を比較したところ,3年以上の観察群の中に表面性状や肉眼形態の変化を来したものが若干みられたが,3年未満群の中には顕著な変化を来したものはみられなかった.しかし,3年未満群の中に自然脱落が1例認められた. 生検材料にて組織学的変化が経過観察できたものは,3年未満群10例12病巣,3年以上群7例8病巣であったが,両群共に顕著な変化はみられず悪性転化を示したものもみられなかった.
  • 小林 敏成, 小林 和司, 釈舎 龍三, 朝倉 康景, 加藤 啓一郎, 大村 晃一, 佐藤 博道
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2567-2572_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     ヒト正常肝被膜直下の血管系を,被膜剥離後化学的組織消化をおこない,走査電子顕微鏡で観察した.Glisson鞘に包まれて被膜下に出現する門脈末梢枝と,それに伴走する肝動脈末梢枝が小葉間の結合組織とともに観察され,実質は薄い結合組織線維膜に覆われていた.小葉の中心部では複数の類洞が肝実質から被膜下へ露出したのち直下の中心静脈に集合して注いでいた. 本研究によって明らかにされた,このような肝被膜直下の微細形態は拡大腹腔鏡で観察される肝小葉紋理の理解に役立つ.脂肪肝の肝紋理を対照として,その考察を行った.
  • 斎藤 雅雄, 木村 宗士, 目黒 高志, 林下 尚之, 佐賀 啓良, 狩野 吉康, 武田 宏司, 前 吉俊, 大原 行雄, 吉田 純一, 浅 ...
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2575-2579_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸ファイバースコープによる検査時の被検者の苦痛を軽減する目的で,軟性部外径9.5mmの細径大腸ファイバースコープCOL-MS(Fujinon)を開発試作しその有用性につき検討した.COL-MSにより盲腸まで挿入し得たのは97%であり,その平均到達時間は10.4分であった.患者に対するアンケート調査では,ほとんど苦痛を感じなかったと答えた例は91%もあり,苦痛がひどいため検査を中止した例はなかった.本器種による全大腸内視鏡検査ではi挿入性および被検者の苦痛の軽減に関して十分満足すべき結果が得られた.COL-MSは大腸ファイバースコープとして有用な器種であり,広く臨床に応用できると考えられた.
  • 八木 一芳, 加藤 俊幸, 斉藤 征史, 丹羽 正之, 小越 和栄
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2580-2584_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     近年,食道dysplasiaは癌化の問題,食道上皮内癌との鑑別の点で注目されている.われわれは術前に食道癌と診断し,組織的に食道dysplasiaであった1例を経験した.症例は74歳の男性.1985年2月より腰痛が出現し,近医で投薬を受けた後,下痢が出現し当院受診した.上部消化管内視鏡検査で切歯列より30cmの食道後壁中心部に陥凹を認める不整形やや白色を呈した境界明瞭な平坦な病変が認められた.ルゴール染色で境界鮮明な不染帯として認められた.生検組織診所見で組織異型性がみられ,扁平上皮癌が疑われた.食道癌の術前診断で手術施行した.手術所見ではルゴールに不染性な病変があり食道癌と診断した.病理組織所見ではルゴール不染性の部分に異型細胞が存在したが,健常部への移行部が不鮮明で,角質層への漸次的分化が認められ食道dysplasiaと診断された.さらに連続切片で検討すると微小部分に癌とも判定されるような高度異型性を認めた.
  • 土亀 直俊, 西村 龍一, 七川 静渡, 土井 英生, 上野 助義, 高橋 睦正
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2585-2589
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,50歳の男性である.心窩部不快感と軽い鈍痛を訴え来院した,上部消化管検査で胃角部に半球状の辺縁が整で,立ち上がり緩やかな隆起性病変を認めた.内視鏡検査で,胃角上部に同様の正常粘膜で被われ,二峰性の像を呈しており,X線検査とは趣を異にしていた.生検では幾分柔らかい感はあったが,正常胃粘膜であり,胃粘膜下腫瘍と診断し,経過観察を行っていた.1年8カ月後再び来院し,同時に行ったX線,内視鏡検査でこの腫瘍は消失しており,いわゆるvanishing tumor of the stomachと思われた.
  • 児玉 隆浩, 沼 義則, 澤 明彦, 柳原 照生, 西村 秀男, 亀井 敏明
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2590-2597_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     比較的稀な腹部腫瘍2症例の腹腔鏡所見について報告した.症例1は微熱,左悸肋部痛の主訴で入院した76歳男性である.入院時血液検査所見は著明な炎症状態を示し,腹部エコー,肝シンチ,腹部CT,ERCP,血管造影等の画像診断で後腹膜腫瘍と診断した.腹腔鏡検査では壁側,臓側腹膜に黄白色調の結節を認め,また肥厚した臓側腹膜に部分的に被われているが,被膜のない灰色の巨大腫瘍を認めた.腫瘍生検組織像は光顕および電顕的に悪性線維性組織球腫に該当する像であった.症例2は71歳女性で,高熱を主訴に入院した.入院時血液検査は著明な炎症状態を示し,諸種画像診断にて肝癌と疑診した.腹腔鏡検査では黄白色,扁平な不整形腫瘍が肝表面および壁側,臓側腹膜にみられ,腹膜悪性中皮腫および肝転移と診断され,組織学的にも証明された. 本2症例の診断上,諸種検査の中で腹腔鏡検査が最も有用であった.
  • ―本邦報告209例の文献的考察―
    大高 道郎, 小松 眞史, 島 仁, 戸堀 文雄, 八木 澤仁, 石田 秀明, 荒川 弘道, 正宗 研, 上坂 佳敬
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2598-2603_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     55歳の男性,肝疾患の精査のため某院で施行した腹腔鏡検査で,胃壁外性腫瘍を発見,当科に入院,当科で再度施行した腹腔鏡検査で胃体下部前壁漿膜側に亜有茎性,大豆大の腫瘍を認めた.腹腔鏡下にRobber鉗子で生検した組織に,円形および紡錘形細胞の増殖を認めた.筋原性,神経原性の鑑別はつかなかったが,一部に大型の核や核小体が認められmalignant potentialを有するものと考えられた.胃内視鏡で胃体下部前壁にbridging foldをもつ小隆起がみられたが,生検,穿刺細胞診で異常所見はなかった.手術所見で,胃体下部前壁の漿膜側に1.6×0.8×0.8cmの壁外性腫瘍を認めた.手術時の迅速病理組織で平滑筋芽細胞腫と診断され胃亜全摘術を施行した.肝転移,リンパ節転移はなかった.本症例は壁外発育型では阿倉らの報告例と並び最小であると思われたので,文献的考察を加えて報告した.
  • 船越 徳宗, 三浦 賢祐, 加納 正, 内野 治人, 三宅 健夫
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2604-2609
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     原発性胆汁性肝硬変(Primary biliary cirrhosis,以下PBC)は進行性の自己免疫性肝疾患であり,欧米に比較して本邦ではその発生頻度は低いとされている. 症例は51歳女性であり,初診時に黄疸,肝脾腫,甲状線腫を認めた.血清検査の結果,慢性甲状腺炎を伴うPBCと診断された.短期間のステロイド治療により黄疸が消失したため経過観察していたが,1年後著明な食道静脈瘤の発生を認めた.そこで食道離断術と脾摘が行われた.肝組織標本の所見は診断と一致した.術後,食道静脈瘤は全く消失し,全身状態は2年以上にわたって良好である。本例では脾摘がPBCの予後に好影響を与えたものと考えられる.
  • 村田 育夫, 林田 研司, 小森 宗治, 井手 孝, 田中 義人, 牧山 和也, 原 耕平, 原口 増穂, 中村 憲章, 石井 俊世, 三浦 ...
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2610-2615_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腸重積による大量出血にて発症した空腸脂肪腫の1手術例を経験したので報告した.小腸良性腫瘍はまれな疾患で,イレウスや出血などで外科的に緊急手術を受けることが多く,また現在の段階では小腸内視鏡検査が一般的には普及していないため,内視鏡的に見出される例も極めて少ない.本例は,術前に小腸造影,小腸内視鏡検査,血管造影などを行ったものの,確診は困難であった.症例は66歳女性で,本院に入院するまで強度の貧血を来す大量下血,腹痛,嘔吐のエピソードが2回みられた.小腸造影ならびに小腸内視鏡では,Treitz靱帯より約25cmの空腸に,表面平滑で可動性のある類円形の粘膜下腫瘍が認められ,表面に出血びらんを伴っていた.血管造影では腫瘍の周縁部に軽度の血管増生がみられた.手術時には小腸重積の状態で,術前の症状も反復性腸重積症によるものと考えられた.小腸脂肪腫の内視鏡および血管造影の施行例は極めてまれであり,これらの所見について若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 中村 正樹, 菊地 直人, 星野 清志, 大野 義一朗, 並木 真生
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2616-2620_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は67歳男性.6年前に胃癌,1年前にS状結腸癌の手術を受けている.S状結腸癌術後の経過観察の目的で,下部消化管内視鏡検査を実施したところ,回盲弁より10cmほど口側の回腸に,亜有茎性隆起性病変があった.ポリープの表面は周辺正常粘膜と同じ色調で発赤,びらん,bridging fold等はともなわなかった.内視鏡的ポリペクトミーを実施したところ大きさは10×6×6mmで,病理学的検索にて,海綿状リンパ管腫と診断された.リンパ管腫は非上皮性良性腫瘍で,小腸に発生するのは稀である.本疾患が空・回腸に発生した場合,その解剖学的位置から術前診断は困難であり,これまでの報告例はほとんど腸閉塞,腹痛,消化管出血等の症状出現後に検査をうけ,単に空・回腸腫瘍と診断されたか,剖検時に発見されたものであり,われわれが調べえた範囲では,内視鏡的ポリペクトミーを実施された空・回腸リンパ管腫は本例が初めての報告と考えられる.
  • 星加 和徳, 萱嶋 英三, 小塚 一史, 長崎 貞臣, 藤村 宜憲, 宮島 宣夫, 島居 忠良, 加納 俊彦, 内田 純一, 木原 彊
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2621-2627
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     回盲部放線菌症の1例を経験し,最近10年間における本症の報告をまとめた.症例は54歳男性で,4年前より腹痛が出現し,精査目的で当科へ紹介された.受診時下腹部圧痛あり直腸指診にて直腸右側壁より圧痛ある弾性硬なる腫瘤を触知した。血液検査では,血沈亢進以外異常は認めなかった。小腸造影にて回腸,盲腸の圧迫像を認めたが虫垂は造影されなかった.内視鏡検査では虫垂根部に発赤した腫瘤を認め鉗子生検の折,周辺粘膜も引き上げられ約5cm大の粘膜下腫瘍が存在していると考えられ超音波検査でも確認された.開腹すると盲腸に連続した腫瘤を認めたが虫垂は保たれていた.虫垂,腫瘤を含め盲腸切除術が施行され,組織所見では炎症性腫瘤で所々に膿瘍形成があり,その中に放線菌の菌塊を認め放線菌症と診断された.術後,放線菌症が再発したのでペニシリンG200万単位一日量投与したところ腫瘤の縮小を認め現在外来にて投薬を続行し経過観察中である.
  • 吉安 克仁郎, 北野 厚生, 小畠 昭重, 押谷 伸英, 松本 誉之, 日置 正人, 橋村 秀親, 大川 清孝, 小林 絢三
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2628-2632_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     虚血性大腸炎(Ischemic Colitis;IC)は,心血管系の基礎疾患をもつ高齢者に多くみられるとされるが,今回,われわれは長期血液透析を行っている若年者に発症したICを経験したので報告する.症例は29歳男性で,約9年間にわたり血液透析が行われ,その間著変なく経過していたが,昭和59年透析終了後に突然の腹痛,下血をみた.注腸検査で横行結腸肝彎曲部付近に区域性の狭窄像を,大腸内視鏡検査では同部に狭窄,浮腫,出血,Cobblestone様膨隆,縦走潰瘍を認めた.臨床経過,注腸像,内視鏡像,生検組織像などから一過性型ICと診断した.その成因は不明な点が多いが,腎不全による腎血流量減少,血清電解質異常,自律神経障害から高血圧,心不全,動脈硬化の促進,腸管内圧の上昇が生ずると考えられる.本症例においては,腎不全に随伴した要因のほかに透析時のhypovolemiaによる腸壁内の微小循環障害が加わり大腸に虚血性病変が生じたものと考察した.
  • 井上 文彦, 北村 清明, 小寺 徹, 水本 孝, 古川 裕夫, 高田 久之, 三宅 健夫, 内野 治人
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2633-2639_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     尿管S状結腸吻合術は,各種膀胱疾患に対する尿路変更の手段として施行されている.最近,本手術の合併症として,尿管S状結腸吻合部に結腸癌が発生することが報告されるようになった. 膀胱腫瘍のため膀胱全摘後,尿管S状結腸吻合術を施行し,約1年後に出血性の大腸ポリープが発生した60歳の男性の症例を示した.大腸内視鏡検査では,このポリープが,左尿管S状結腸吻合部に発生したことが判明した.この際,同時に点滴静注尿路造影と,PSP試薬を用いた色素排泄試験を行い,左尿管S状結腸吻合部であることを確認した.内視鏡的ポリペクトミーにより摘除したポリープば,大きさが2.0×1.0cmで,組織学的には,腺管腺腫であり,悪性変化はみられなかった. 大腸腺腫が,高率に悪性のポテンシアルを有することが報告されており,その癌化率は,1.7%~55.0%に及ぶ.したがって,尿管S状結腸吻合術を受けた患者は,術後,厳重な経過観察が必要である.われわれは,ポリペクトミーを含めて,大腸内視鏡検査を,術後1年から始めて,定期的に行い,組織学的検査も併用すべきであると考える.
  • 小林 正夫, 中島 正継, 藤本 荘太郎, 今岡 渉, 吉田 俊一, 安田 健治朗, 趙 栄済, 西村 和彦, 向井 秀一, 清田 啓介, ...
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2640-2648_1
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     狭窄症状の強い手術不能の食道癌6例と噴門部胃癌5例の計11例に内視鏡的食道内挿管術を施行した.用いた内瘻用留置チューブは,わが国のニプロ社と住友べ一クライト社で試作されたもの(それぞれ外径11mm,12mm),及び英国Medoc社より市販されているパルジョンチューブ(外径14mm)で,チューブの挿入方法は,細径ファイバースコープ(Olympus GIF-XP,外径7.8mm)に押し込み用チューブ(外径14mm,長さ60cm)をかぶせ,その先に留置用チューブを装着し,スコープが狭窄部を通過した後にそのスコープをガイドとして,X線透視下に押し込み法にて挿管を行った.なお,狭窄の程度が著明な場合には,予めバルーンカテーテルによる拡張術を施行した後に挿管術を行った.挿管術を施行した11例全例において狭窄症状の改善が認められ,術後合併症は11例中1例に胸水貯留を認めたのみであった.術後のチューブ留置期間は,術後40日目生存中の1例を除き最短8日間から最長119日間であり,いずれも原病死するまでの間は良好な経口摂取を維持できた.本法は手術不能の悪性疾患の狭窄症状の改善を目的としたものであり,それ自体では生存期間の延長を望めないものの,他の拡張術や挿管術に比べて勝れており,患者の"Quality of life"を考える上でも有意義な方法として評価しえる.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2651-2668
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2668-2685
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2686-2703
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2703-2727
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2728-2742
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2742-2756
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2757-2771
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2772-2780
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2781-2799
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 11 号 p. 2799-2816
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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