日本消化器内視鏡学会雑誌
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28 巻, 4 号
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  • 安田 健治朗, 清田 啓介, 向井 秀一, 西村 和彦, 趙 栄済, 小林 正夫, 吉田 俊一, 今岡 渉, 藤本 荘太郎, 中島 正継
    1986 年 28 巻 4 号 p. 685-691
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     上部消化管の粘膜下腫瘍,および粘膜下腫瘍との鑑別を必要とした他臓器の圧排の計76例に内視鏡的超音波断層法(Endoscopic Ultrasonography, EUS)を施行し,その診断能を検討した.対象は45例の粘膜下腫瘍と31例の他臓器の圧排変化で,この両者は本法を用いることにより容易に鑑別可能であった.また粘膜下腫瘍例では最小腫瘍径数mmのものでも明瞭に識別され,全例で腫瘍の超音波断層像が観察可能であった.さらにEUSの消化管壁層構造描出能に基づき,粘膜下腫瘍の局在診断を行った.この結果,粘膜筋板層(mm層)由来の平滑筋腫,粘膜下層(sm層)に局在する迷入膵,壁内のう胞,脂肪腫,線維腫が描出され,そのエコー像の検討から,質的診断への可能性も示された.固有筋層(pm層)発生の平滑筋腫並びに平滑筋肉腫についても,pm層と病変との連続性を指摘することにより容易に診断でき,さらに腫瘍径の客観的描出も可能であった. 以上,粘膜下腫瘍に対する超音波内視鏡の診断能は極めて高く,X線検査,内視鏡検査を補う検査法として高く評価できるものであった.
  • 花房 英二, 原田 英雄, 越智 浩二, 松本 秀次, 三宅 啓文, 岡 浩郎, 木村 郁郎
    1986 年 28 巻 4 号 p. 692-699
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     消化性潰瘍の病態生理に関する胃膵臓器相関を研究する目的で,十二指腸潰瘍,胃潰瘍,健常対照者について胃液分泌能と膵外分泌能を比較検討した.膵外分泌は,内視鏡的純粋膵液採取法を用いて,十二指腸内塩酸注入による内因性刺激に対する膵重炭酸塩分泌を検討し,併せて血中セクレチンの変動を検討した.胃酸分泌は,基礎分泌,テトラガストリン刺激後分泌ともに十二指腸潰瘍群において胃潰瘍群,健常対照者群より有意の高値を示した.膵重炭酸塩分泌は,空腹時膵管内貯溜膵液の重炭酸塩濃度,塩酸注入後の重炭酸塩分泌量ともに十二指腸潰瘍群において他の2群より有意の高値を示した.血中セクレチンは,刺激前濃度,刺激後最高濃度および2者の相対比ともに3群間に有意の差を認めなかった.十二指腸潰瘍においては胃酸分泌亢進に対応して内因性膵刺激に対しても膵重炭酸分泌は亢進しており,血中セクレチン反応に他の2群と差異が認められないことより,十二指腸潰瘍においてはセクレチンに対し膵外分泌細胞の感受性亢進があり,過酸に対し中和すべく充分な重炭酸分泌能があると考えられる.
  • ―自験例を中心として―
    末綱 純一, 松永 研一, 村上 和成, 首藤 龍介, 寺尾 英夫, 藤岡 利生, 糸賀 敬, 本田 昇司, 中村 憲章, 原 耕平
    1986 年 28 巻 4 号 p. 700-709
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     著者らが過去10年間に本学第2内科及び長崎大学第2内科で経験したERCP検査にて,良好な膵管像の得られたのは1,951例であった.うち疑診群9例を含む15例にPancreas divisumの症例を経験した.15例中副乳頭造影は7例に施行し背側膵造影率は3例,42%であり3例のPartial divisumを加え6例に背側膵管像が得られ,これを確診群とした.このうち5例83%に病変を認め,これは他家の報告に比し高頻度であった.腹側膵管は15例中14例に造影され病変は認められなかった. 年齢は35歳から73歳の平均51.2歳で男・女比は13:2と男性に多かった.飲酒歴の有・無が明確な10例につき確診率67%のアルコール群(以下,ア群)と確診率25%の非アルコール群(以下,非ア群)とに分けて臨床像・膵管像を検討した.主訴は膵炎様症状が主で両群間に差はないものの,膵機能面ではア群において機能異常発現率,膵酵素逸脱率,背側膵病変率が高い傾向にあると推測された. また,背側膵管に病変の認められた5例のうち4例はアルコール歴のある症例で全例膵管像に確診所見を有していた.うち3例は慢性背側膵炎例で,他1例は背側膵癌の症例であった.
  • ―特に内視鏡所見と大腸粘膜の粘液組成の変化について―
    島本 史夫, 岩越 一彦, 林 勝吉, 阿部 和夫, 平田 一郎, 大柴 三郎, 正木 秀博, 西尾 雅行
    1986 年 28 巻 4 号 p. 710-716_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     抗生物質投与後に血性下痢を主訴として発症する薬剤性腸炎に関する報告例は年々増加してきている.著者らは,薬剤性腸炎患者73例について,臨床的,内視鏡的な特徴と共に,その大腸粘膜の粘液組成の変化について検討した.その結果,比較的若い年齢層に多発し,性別では女性に多かった.投与された抗生物質は合成ペニシリン系(特にABPC,AMPC)が最も多かった.内視鏡所見は,主に横行結腸,下行結腸に病変がみられ,その所見は著明な発赤,びらん,浮腫などであった.抗生物質服用開始後平均6。5日目に症状が出現し,全例に血性下痢が認められた.対症療法のみで発症後平均4日目に症状は改善した.病変部の大腸粘膜の粘液組成は正常粘膜と異なりsialomucin優位であった.しかし,所見の改善と共に,正常粘膜とほぼ同じsulphomucin優位のpattemとなった.sialomucinの増加は,炎症の治癒経過に何等かの関連が示唆されるが,その役割はまだ不明であり,炎症による二次的反応と推察された.
  • 松下 文雄, 渋江 正, 鮫島 由規則, 松元 淳, 高崎 能久, 橋本 修治
    1986 年 28 巻 4 号 p. 717-722_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     著者らは1982年より1985年2月までの3年間に延べ6,854例の胃内視鏡検査を施行し,その後3~10日の間に発症した急性胃粘膜病変(AGML)あるいは急性胃病変(AGL)を52例を経験した.検査は通常の方法で行っており,前処置として抗コリン剤注,咽頭麻酔,それに粘液除去剤として蛋白融解酵素剤を粉末にして服用させている.使用した器械はオリンパスGF-B3,GIF-P3である.検査時間は患者1人に平均5~6分間の観察で終了している.検査後のAG(M)Lの発症の原因として考えられたのは,アルコールが25例(48%),精神的あるいは肉体的ストレスが11例(21%)あったが,残りの14例については明らかな誘因は認められなかった.しかし,この14例のうち10例は初回時内視鏡検査でびらんや,表層性胃炎の所見を認めており,これらの病変を悪化させる内視鏡検査の何らかの影響も否定は出来なかった.
  • ― Kaplan-Meier法およびNelsonの累積ハザードプロット法による解析―
    辻 晋吾, 川野 淳, 佐藤 信紘, 房本 英之, 鎌田 武信, 野口 正彦, 平松 紘一
    1986 年 28 巻 4 号 p. 723-728
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道静脈瘤の内視鏡的硬化療法後の出血率と経過時間との関係を,Kaplan & Meierの累積出血率およびNelsonの累積ハザード値を用いて検討した.その結果,累積出血率は術後約10日を境として2相性を示し,出血率の高いearly phaseとゆるやかな直線的な増加を示すlate phaseにわかれた.累積ハザード値はearly phaseでは高値をしめしたが,late phaseでは指数時間分布に一致する傾向を示した.この成績より,early phaseにおける出血に対して,食道静脈瘤内視鏡的硬化療法の方法自体の改善が必要であり,またlate phaseの出血率低下には内視鏡的硬化療法の反復などが必要であることが示唆された.食道静脈瘤の内視鏡的硬化療法後の出血に対する累積出血率と累積ハザード値の解析は治療効果の客観的評価法として有効な手段であると考えられた.
  • 木村 健, 酒井 秀朗, 吉田 行雄, 井戸 健一, 田中 昌宏, 堀口 正彦, 川本 智章, 笠野 哲夫, 広瀬 完夫, 木平 健
    1986 年 28 巻 4 号 p. 729-737
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     スコープの先端にテレビカメラとして固体撮像素子を組込んだTV-Endoscope(町田―東芝)が,今回わが国において初めて開発された.スコープ先端の対物レンズにより結ばれた像(光信号)はCCDにより電気信号に変換され,video processorを通じてテレビモニターに映像を送るシステムである.映像の記録は,VTRとスチール写真の二つの方法で行なわれる. 今回,この新しい試作品TV-Gastroscopeを上部消化管50症例に,そしてTV-Colonoscopeを下部消化管10症例に臨床使用を試みた.スコープの性能(挿入性,操作性,観察能,さらに生検狙撃能等)は従来のファイバースコープと変わるところはない.テレビ画像及びスチール写真は極めて良好で,優れた解像力であり,従来にない画質である.これら試作品は内視鏡のルーチンあるいは精密検査の使用に充分に耐えうるものと評価される.さらにTV内視鏡はエレクトロニクスの集積であり,今後画像処理,画像filing systemの開発が大いに有望であり,内視鏡の新しい分野の発展が期待できる.
  • ―とくに難治食道潰瘍を中心として―
    岩下 エリーザ裕子, 三浦 総一郎, 朝倉 均, 浜田 慶城, 吉田 リカルド, 吉田 武史, 米井 嘉一, 小尾 和洋, 森下 鉄夫, 土 ...
    1986 年 28 巻 4 号 p. 738-747_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去14年間に内視鏡的に検討しえた良性食道潰瘍52例を対象とした.男性にやや多く,年齢は60歳代をピークとしていた.症状では胸やけが多くみられ,吐下血をきたした症例もあった.52例中6カ月以上潰瘍の持続した難治例18例の内視鏡所見では,潰瘍の発生部位はほぼ全例食道・胃粘膜接合部にかかっており,全例に食道裂孔ヘルニアを合併していた.組織学的にはdysplasiaを認めたものはあったが,最終的に癌化した症例はなかった.難治例18例中ほぼ全例(17例)に何らかの合併疾患を伴っており,進行性全身性硬化症・肝疾患・冠動脈疾患,糖尿病などが多く,そのほか気管支拡張症や気管支喘息なども注目された.このような症例の胃液検査では必ずしも過酸を示さず,胃液分泌抑制効果をもつ薬剤を投与しているに拘らず潰瘍の治癒率が良くないことから,合併症などに基づく微小循環障害や運動障害など食道粘膜防御機構低下も大きい役割をはたしているものと想像された.
  • 杉村 文昭, 八木 直人, 田上 誠二, 稲垣 勉, 加藤 公敏, 川村 洋, 原本 富雄, 三木 治, 酒井 良典, 高中 芳弘, 松井 ...
    1986 年 28 巻 4 号 p. 748-758_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     最近5年間に,当科の内視鏡検査で胃癌と診断され,胃切除術が行われて深達度が確定した300病変の胃癌について,早期癌か進行癌かの内視鏡検査による深達度診断の精度を検討した. それによると,切除術が行われた胃癌病変の83.7%が正診,16.3%が誤診であった.m癌の26.0%,sm癌の48.9%が進行癌と診断され,pm癌の21.4%が早期癌と診断されている.早期癌類似進行癌と診断されたものの40.7%が早期癌である.早期癌を進行癌として誤診する傾向が強い. 年齢別の正診率では,20~29歳66.7%,30~39歳71.4%と,39歳以下では正診率が低くなっている.占居部位別の正診率では,CMA分類のMの癌が76.3%と低く,前壁の癌が75.6%と低い.病変部の大きさ別にみると,2cm以下の小さな進行癌と,6cmを越える大きな早期癌の正診率が低い.術後の病理組織別にみると,signetring cell carcinomaでは74.1%と正診率が低く,well differentiated tubular adenocarcinomaも80.0%と,正診率がやや低い傾向がある. 以上のように,通常の内視鏡検査で観察し,認識し得る胃癌の深達度診断には,限界がみられた.
  • 沖田 極, 江崎 隆朗, 名和田 浩, 安永 満, 新開 泰司, 門 祐二, 荻野 景規, 安藤 啓次郎, 福本 陽平, 竹本 忠良
    1986 年 28 巻 4 号 p. 761-764_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     著者らは町田製作所とと東芝メディカルとの共同開発による"TV-Endoscope"を腹腔鏡として試験的に使用した."TV-Endoscope"は内視鏡の先端に高感度小型テレビカメラ(CCDセンサー)を内蔵しているため,観察はテレビモニター画面でおこなう点が従来のファイバー光学系の内視鏡とは異質である.脂肪肝の症例で本機を使用したが,いわゆる脂肪肝に特有な黄色紋理は肝表面より軽度突出していることが明らかにされた.これは従来の腹腔鏡観察ではえられなかった情報である.われわれは本機の使用経験から,"TV-Laparoscope"の開発は,(1)記録性の向上,(2)教育効果の増大,(3)腹腔鏡の操作性の向上,(4)電子CCDセンサーによる画像であるので,最近問題になっている色調の解析も直接コンピューター解析が可能である,といった観点から早急におこなうべきであろうと結論した.
  • 井戸 健一, 川本 智章, 人見 規文, 木平 健, 松橋 信行, 寺田 友彦, 酒井 秀朗, 木村 健
    1986 年 28 巻 4 号 p. 765-768_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     TV-Endoscope(Machida & Toshiba)によりラット肝を観察して良質の画像が得られた.そこでTV-Endoscopeを,スコープの外被を補強し専用のtrocarを作製することにより,臨床使用可能なTV-Peritoneoscope(プロトタイプ)として応用した.TV-Peritoneoscopeによる腹腔鏡検査はテレビモニターを観ながら施行し,ビデオテープに録画して,必要な時に像をフリーズしたうえで写真撮影を行った.テレビモニター像はもちろん記録写真も,従来の腹腔鏡(LA-SL-CX,Machida)にビデオカメラを装着した場合よりも格段に優れたものであった.従ってTV-Peritoneoscopeは今後有望な腹腔鏡になりうると確信した.
  • 水入 紘造, 吉岡 敏江, 羽鳥 知樹, 佐川 寛, 難波 経彦, 定本 貴明, 毛 克弘, 杉本 元信, 安部井 徹
    1986 年 28 巻 4 号 p. 769-777
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     原発性胆汁性肝硬変症(PBC)3症例にindocyanine green(ICG)静注投与下で合計4回,腹腔鏡検査を施行した.症例1(Scheuer分類I期)35歳,女性.肝は両葉共に腫大.赤色紋理,リンパ小水泡が観察され,組織学的にpiecemeal necrosisも認められた.症例2(Scheuer分類II,I期)56歳,女性.2年前に第1回腹腔鏡検査を施行.肝は両葉共に腫大.ICG投与後,斑紋様のICG取り込みが明らかとなり,左葉に局在性の肝表在血管の増生,起伏性変化が観られた.第2回目でこれらは右葉にも出現し,さらに明瞭となった.ICG取り込みの部位による明らかな差異が観られた.症例3(Scheuer分類IV期)49歳,女性.肝は両葉共に腫大.褐色調で暗緑色や黄色斑を認め,丘状結節があり,リンパ小水泡,肝表在血管の増生が顕著であった. ICG投与後,その取り込みの差異が肝表面で観察されたことは,PBCの病変の特徴を理解するうえに示唆に富む所見である.
  • 溝部 ゆり子, 吉岡 敏江, 羽鳥 知樹, 佐川 寛, 難波 経彦, 水入 紘造
    1986 年 28 巻 4 号 p. 778-781_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     第2期梅毒において胃梅毒を認めた症例を経験したので報告した. 症例:33歳,男性.心窩部痛で某院を訪れ,胃X線検査を施行し悪性腫瘍が疑われて当院へ紹介された.胃X線検査では,前庭部の狭窄像と圧迫像で粗大顆粒状変化があり,内視鏡検査では,前庭部全域と胃角直上まで至る浅い不整形,易出血性の潰瘍と前庭部小彎と胃角部にやや深い潰瘍性病変がみられた.以上の所見より,IIc様進行癌ないしは悪性リンパ腫を疑った.繰り返し施行した生検で悪性像は陰性,かつTPHA反応強陽性,梅毒性乾癬を思わせる所見より胃梅毒を疑い,ペニシリン投与により,抗潰瘍剤で改善を認めなかった潰瘍性病変は著明に改善した.胃梅毒はまれな疾患である.しかし,近年,第2期梅毒に胃梅毒を伴った症例報告が散見される.したがって,特に胃前庭部に多彩な所見を伴う潰瘍で悪性像が陰性例では,皮診の有無の探索と同時に梅毒血清反応を施行すべきである.
  • 佐藤 博文, 針金 三弥, 源 利成, 福武 和子, 龍村 俊樹, 山本 恵一, 小島 道久, 大原 裕康, 柴崎 洋一
    1986 年 28 巻 4 号 p. 782-786_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃潰瘍の治癒過程で稀に隆起性病変を形成することがあり,今回われわれは悪性病変との鑑別が困難であった症例を経験したので報告した. 症例は77歳女性,主訴は心窩部痛,胃X線検査では胃角部大彎側に粘膜集中を伴った隆起性病変を2個認めた.その7日後に施行した内視鏡検査では,同部位にcashew nuts様の隆起性病変を1個認めた.隆起の大きさは1.5×2.0cm,立ち上りは急峻で表面平滑であるが,斑状の発赤がみられた.生検ではgroupIIであったが,悪性病変を疑って手術を施行した. 組織学的に隆起は主に粘膜下層の浮腫と線維化によるもので,隆起を前後壁から取り囲むようにしてUl-IVの線状潰瘍瘢痕が形成されていた. 本症例は潰瘍瘢痕の収縮により発生した隆起性病変で,いわゆる隆起型胃潰瘍瘢痕とは異なった疾患と考えられ,過去にも報告のない稀な症例と考えられる.
  • 広田 和子, 内田 善仁, 波多野 裕, 安武 隆二郎, 岡崎 幸紀, 竹本 忠良, 藤井 康宏, 岩田 隆子
    1986 年 28 巻 4 号 p. 789-794_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     いわゆる胃vanishing tumorの経過をたどった胃アニサキス症の1症例を報告した.症例は59歳の男性.〓の刺身を食べた6時間後に,心窩部痛を認めた.初回内視鏡検査では,胃穹窿部にかなり大きく,一見サザエのような形をした軟らかい隆起性病変を認めた.7日後に再び内視鏡検査を行ったところ,隆起は消失し,同部にはアニサキス幼虫が一匹穿刺していた. 胃vanishing tumorと胃アニサキス症の関連について文献的考察を行ったところ,本症例はアニサキスという原因が明らかにされた胃vanishing tumorとしてはまれな症例であった.
  • 三宅 周, 渡辺 博史, 佐々木 俊輔, 岩野 英二, 萩原 秀紀, 杉山 明, 川口 憲二, 安原 高士, 尾上 公昭, 河野 宏, 榎本 ...
    1986 年 28 巻 4 号 p. 795-801_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     最近の6年間に発症し,特異な画像診断所見を呈したMenetrier病の1例を経験したので報告する.患者は66歳女性で,腹満感,四肢の浮腫のために入院.昭和53年の胃透視では異常を認めず,10年頸部リンパ腺炎,54年好酸球増加症をみた.入院時検査所見では,血清総蛋白3.6g/dlと低下しており,131I-RIBA試験,125I-PVP試験より消化管からの蛋白漏出が証明された.胃液検査は低酸で,血中ガストリンの高値をみた.胃透視および内視鏡検査で,穹窿部から胃角部まで巨大皺襞をみとめた.胃生検組織では,腺窩上皮および粘膜固有層の肥厚をみた.電子顕微鏡写真では,粘膜上皮の剥離とそこより体液の漏出をみるが,tight junctionは正常であった.胃の超音波検査およびCTスキャンでは,胃の内腔に突出する巨大皺襞像を認めた.この患者に対して,シメチジンを800mg/日内服としたところ,血清総蛋白が5.7g/dlまで改善したので,同治療を続行中である.
  • 松永 研一, 村上 和成, 首藤 龍介, 末綱 純一, 寺尾 英夫, 藤岡 利生, 糸賀 敬
    1986 年 28 巻 4 号 p. 802-804_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は57歳女性.くり返す上腹部痛を主訴として受診.生化学検査にて血中アミラーゼ,リパーゼ,エラスターゼ1の高値を認め,ERPを施行した.ERPにて膵尾部に限局性の不整な狭窄像を認め,その尾部側に軽い拡張を認めた.膵癌を否定出来ないために膵体尾部切除術が施行され,主膵管内に3匹の膵蛭を認めた.患者の家庭に飼育している牛の糞便中より虫体の子宮内に見られたものと同様の虫卵を認めた.
  • 竹林 治朗, 橋本 訓招
    1986 年 28 巻 4 号 p. 807-811_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃迷入膵の膵炎と関連した消化管出血の1症例を報告した.患者は35歳の男性で,多量の飲酒歴があった.嘔吐,心窩部痛およびタール便を訴え入院した.直ちに上部消化管内視鏡検査を行い胃前庭部大彎に4cm大の半球状の粘膜下腫瘍があり,表面粘膜に潰瘍と出血が認められた.尿アミラーゼ値は中等度に上昇していたが,血清アミラーゼ値は正常範囲であった.上部消化管X線所見でも,胃前庭部大彎に固着性の4×3cm大の粘膜下腫瘍を確認した.約1カ月後に再度上部消化管内視鏡検査を施行したところ,粘膜下腫瘤は著明に縮小し,乳頭状となり,潰瘍と出血は治癒していた.飲酒による再発が予想され,胃部分切除術を施行した.病理所見では,中心部の臍窩を取囲み粘膜がポリープ状に突出し,固有筋層を主座とするHeinrich I型の迷入膵組織が認められた.
  • 平川 弘泰, 渡辺 誠, 池田 敏, 西村 公一, 吉田 裕, 山下 秀治, 應儀 一良, 松浦 達也, 岡田 正史, 植木 和則, 福本 ...
    1986 年 28 巻 4 号 p. 812-817_1
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     ウィルス肝炎のうちB型慢性肝炎の活動型に認められる門脈周囲赤色紋理は星芒状ないし網目状構造を示し,組織学的に肝細胞のpiecemealまたはbridging necrosisと,とくに亜小葉性肝壊死と一致することが明らかにされている.ところが今回上記の門脈周囲赤色紋理とは腹腔鏡所見上それぞれ異なる形態をもった赤色紋理が非A非B型急性肝炎の1例および自己免疫性肝炎の2例に認められたので報告する.非A非B型急性肝炎の1例では小葉中心性赤色小円形紋理の規則正しい配列を認め,組織像でこの赤色斑は中心静脈周囲に存在する幅広い壊死巣を表現するものと考えられた.自己免疫性肝炎の2例は,いずれも基盤に初期結節の出現を認めている症例であるが,肝表面に径約2~3cmの局在性陥凹が出現し,この陥凹部に鮮紅色の小葉大円形紋理の集合を認めた.組織学的にこの赤色紋理の集合は,その部位に発生したmassivenecrosisによるものと考えられた.
  • ―虫卵結節の腹腔鏡像を中心に―
    吉岡 直樹, 守田 善行, 松浦 達也, 山下 秀治, 西村 公一, 池田 敏, 渡辺 誠, 平川 弘泰, 福本 四郎, 島田 宜浩
    1986 年 28 巻 4 号 p. 818-825
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     慢性日本住血吸虫症に罹患した59歳男の腹腔鏡所見上,黄色色調が目立つ,不整形の小結節(直径100~200μ)を多数発見した.この黄色小結節の由来について,過去における腹腔鏡所見,家兎感染実験および剖検所見の記載から検討したところ,(1)日本住血吸虫症の肝被膜面には多数の虫卵結節が存在すること,(2)虫卵結節は門脈枝末梢部に多いが,肝小葉内部にも存在し得ること,(3)肝被膜面の白苔,瘢痕,陥凹または被膜の肥厚部位に,多数の虫卵結節が集合して発見されること,(4)組織検査における虫卵結節と大きさが等しいこと,(5)虫卵結節はその大きさから,拡大腹腔鏡観察に適し,通常の腹腔鏡検査では見落す可能性があること,(6)最近報告された2例の慢性日本住血吸虫症の腹腔鏡所見で類似の黄色物質(1例は虫卵結節を疑うと記載)が発見されていることなど,この黄色小結節が日本住血吸虫症の虫卵結節であることを支持する所見が得られ,本結節を虫卵結節として,不都合な事項は発見されなかった.以上のことから,上記黄色小結節を日本住血吸虫症の虫卵結節と判定できるものと考えた.
  • 大坂 直文, 岩越 一彦, 平田 一郎, 浅田 修二, 白木 正裕, 三好 博文, 阿部 和夫, 芦田 潔, 折野 真哉, 島本 史夫, 林 ...
    1986 年 28 巻 4 号 p. 826-831
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回汎用型パーソナルコンピューター(NEC-PC9801E)を使用し独自のプログラムをBASIC言語により開発し,上部消化管内視鏡検査のデータ処理を試みた. 当システムの最大の特徴は,廉価で簡便であることと,他機種への移植が容易であることである.入力方法はCRTとの対話形式をとっており,10項目を設定した.診断の入力については,IRDコードを参考に5桁のアルファベットを使用した.8インチ両面倍密度のフロッピーディスク1枚に約4,800症例が記録可能であり,その検索能力は3,000症例を約3分で処理でき,重複検索は無限に可能である. このシステムを導入してからは,症例検索が著しく容易となり,所要時間も短縮された.
  • 福地 創太郎, 星原 芳雄, 早川 和雄, 山田 直行, 吉田 行哉, 橋本 光代
    1986 年 28 巻 4 号 p. 832-837
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1983年Welch Allyn製Video Endoscopeが報告されて以来,先端に固体撮像素子を組み込んだelectronic endoscopeが注目されている.今回われわれはToshiba-Machidaにより開発されたelectronic endoscope(TV-endoscope)を使用する機会を得たので,その使用経験を報告する.TV-endoscopeは先端に固体撮像素子としてCCDが組み込まれ,約10万画素の内視鏡画像が得られるため,解像力は抜群で今までのファイバー一スコープでは観察困難であったより細かい表面構造の観察が可能である.まだ操作性や記録の保存方法について改良の余地があるが,このスコープの解像力を生かした画像解析やvideo discによる新しい記録法の開発など,ファイバースコープによっては困難であった新しい方法論や分野が開拓される可能性が大きく,今やファイバースコープに代わる新しいelectronic endoscopeの時代に突入したといって過言でない.今後予想されるTV-endoscopeの種々の機構の改良にあたっては,従来のファイバースコープ的発想のみに止まるべきでないと考える.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 4 号 p. 839-856
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 4 号 p. 856-865
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 4 号 p. 865-876
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 4 号 p. 876-882
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 4 号 p. 882-910
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 4 号 p. 911-918
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 4 号 p. 918-923
    発行日: 1986/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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