日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
28 巻, 8 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
  • 天野 秀雄
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1763-1775
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     慢性膵炎の新しい治療法をめざして,ビマン型慢性膵炎15例に膵液ドレナージの改善を目的とした内視鏡的膵管ドレナージ法を施行した.内視鏡的ドレナージ法は膵管口切開術ならびに付加手技として膵石のバスケット排石と膵管endoprosthesisからなるが,12例に満足のいく人工膵管口を得ることができ,2例に膵石のバスケット排石,3例にendoprosthesisの留置に成功した.その結果,内視鏡的膵管ドレナージ法により10例(83.3%)に臨床症状の改善を認め,膵外分泌機能にも改善傾向を認めた.本法による重篤な合併症はまだ1例も経験していないが,さらに新鮮剖検標本を用いて膵管口切開術の安全性を確認した.以上の検討から,本法は慢性膵炎の新しい非観血的治療法として高く評価できた.
  • ―治癒判定および再発の予知について―
    木下 善二
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1776-1787
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    筆者は,色素内視鏡法を用いて,十二指腸潰瘍の機能的治癒判定を試みた.すなわち,通常内視鏡検査のあと,0.3%メチレンブルー液(以下M.B.)を球部内瘢痕部に撒布し,その吸収態度をA,B,Cの3段階に分類した.ついで,0.3%コンゴーレッド液(以下CR.)を胃内に撒布し,その変色帯の広がりをI~IV型の4段階に分類した. その結果,M.B.吸収の良好なものは変色帯が狭く,逆にM.B.吸収の不良なものは変色帯が広いという関係がみられた.次に,再発回数が多いものほど,また瘢痕治癒期間が短かいものほどM.B.吸収能は不良で,かつ変色帯は広かった.Prospective studyによると,経過観察例110例のうち22例が再発した.再発例のM.B.吸収能は,吸収不良群および中間群で,吸収の良好なものは1例もなかった.また,C.R変色帯は,変色帯の広いI,II型で,変色帯の狭いIII,IV型は1例もなかった.両者の方法を組み合わせると,B-II以上の組み合わせが,再発へのhigh risk groupと考えられ,特にA-1の再発率は57.9%であり,他のどの組み合わせより有意に高かった(P<0.001).以上,本法を用いることにより,形態学的治癒判定がより正確にできるとともに,瘢痕治癒後の再発の予知もある程度可能であった.
  • 安田 健治朗, 清田 啓介, 向井 秀一, 西村 和彦, 趙 栄済, 小林 正夫, 吉田 俊一, 今岡 渉, 藤本 荘太郎, 中島 正継
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1788-1795
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的超音波断層法(EUS)を用いて内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS)の治療効果判定を試み,EUSの臨床的有用性を検討した.対象は17例の食道・胃静脈瘤症例で,EISを施行した前後でEUS観察を行ない,その経過観察によって静脈瘤の変化を解析,.検討した. この結果,EUSによって食道・胃静脈瘤は低エコー管腔像として描出され,それらの粘膜層,粘膜下層及び壁外の各部位の局在診断も容易に可能であった.EIS施行後の静脈瘤の変化をEUSで追求すると,術後約2週間は食道壁の肥厚と静脈瘤管腔内に高エコーを示す塞栓(血栓)像が観察され,経過とともにこの血栓は器質化を示す均一な低エコー像を示した.EIS施行後3カ月を越えるものでは均一な低エコー塞栓像の一部に,さらに低エコーの管腔像が観察される例が認められたが,EISを追加することによりこの所見が再開通像であることが確認された.なお,EIS施行後6カ月以上経過したものでは,全症例でこの再開通変化が認められた. 以上,EUSはEISの臨床的治療効果判定法として高く評価できる検査法であるばかりか,EISの効果持続期間や,EISによる食道壁の変化を評価するうえでも有用な検査法と考えられた.
  • 宮川 秀一, 中村 従之, 川瀬 恭平, 鄭 統圭, 高柳 和男, 山川 真, 三浦 馥, 堀口 祐爾, 中野 浩, 伊藤 圓
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1796-1801
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胆嚢粘膜パターンや粘膜病変の表面構造を解明する目的で,胆石症82個,胆嚢癌6個,胆嚢腺腫2個,石灰化胆嚢1個,他疾患11個の摘出胆嚢を対象に,染色実体顕微鏡検査法によってその粘膜表面を観察した.染色を施すことによって粘膜の微細構造をよく識別することができた.胆嚢における粘膜パターンは,網状型50%,肥厚型15%,萎縮型20%,混在型15%に分類しえた.癌部表面では大小不整な顆粒状,結節状,絨毛状の構造を認めることができた.腺腫表面では大小不整な顆粒状,結節状の構造を呈しており,肉眼的には癌との鑑別は困難であった.本検査法は,胆嚢粘膜観察法として有効であり,胆嚢病変の肉眼診断や内視鏡診断の基礎的所見を提供するものとして有用と思われる.
  • 矢崎 康幸, 関谷 千尋, 高橋 篤, 長谷部 千登美, 奥野 一嘉, 石川 裕司, 富永 吉春, 鈴木 貴久, 並木 正義
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1802-1812_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Antimitochondrial antibody (AMA)が,高titerで陽性であること,胆道系酵素の上昇,IgM高値などからprimary biliary cirrhosis (PBC)との鑑別が問題となった非A非B型肝炎の3例につき報告した.特にこれら3例のERCP所見,腹腔鏡所見をPBCとの比較を中心に検討したが,3例とも早期PBCを示唆する造影剤の胆管周囲漏出所見(periductal oozing)や,肝表面の1~3cm径の粗大な区域化(rough bigger block, RBB)は認められなかった.AMAは3例とも胆道系酵素が改善した後も高titerで持続的に陽性であり,AMA亜分画は1例がanti-M2のみ陽性で,他の2例はanti-M2とanti-M4が同時に陽性であった.これら3例の非A非B型肝炎はAMAが持続的に高titerで陽性であるものの,それ以外はPBCを示唆する所見は何もないことがわかったが,今後とも慎重に経過を観察してゆく必要があると思われた.
  • 澁谷 誠一郎, 今井 寛途, 真鍋 良二, 浜津 和雄, 重見 公平, 寺坂 隆, 石井 正則
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1813-1821
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道静脈瘤に対して内視鏡的に薬剤を注入し,静脈瘤の改善をはかる治療法は緊急吐血例,待期例を問わず,その有効性が評価されつつある.近年の内視鏡的食道静脈瘤治療の普及に伴い,施設間にて手段,予後及び合併症に対する検討がすすめられてきている.われわれは内視鏡検査にて,第12回,門脈圧亢進症研究会における食道静脈瘤内視鏡所見記載基準に従い,F2以上,RCサインのみられた症例30例について,延べ53回の内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(以下,硬化療法と略す)を旋行した.症例別にみた施行回数は,3回硬化療法施行例6例,2回施行例10例,1回のみ施行した症例は15例であった.30例のうち10例は出血あるいは漏出性出血がみられたため緊急硬化療法を施行した例であり,20例は待期的に硬化療法を行った.硬化療法を施行した30例のうち硬化療法が直接死亡に関係していると考えられるのは2例で,そのうち1例は再出血後,肝不全で死亡,他の1例はルポイド肝炎による肝硬変症で加療中の53歳女性,ステロイド投与中であったが,硬化療法後,30日後に食道胸膜瘻を形成し肝不全で死亡した.その他の合併症としては,2例に肺梗塞がみられ,また30例中22例に穿刺部位の潰瘍形成をみとめた.
  • 安井 昭, 西田 佳昭, 熊谷 一秀, 新井田 修, 城所 仂, 唐沢 洋一, 平福 一郎
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1823-1830_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     消化管の潰瘍における組織学的村上分類は,深いびらんをU1-I,浅いびらんをU1-Oとしているが,今回はU1-Oを中心に検討した.U1-Oは更にU1-O1,U1-O2,U1-O3,それにU1-O4とその治癒傾向によって細分し,U1-O1~2を急性期(活動期),U1-O3~4を治癒期(瘢痕期)と呼んでいる.このびらんは良性びらんのみではなく,早期胃癌IIc型やIIa+IIc(IIc+IIa)型などにも悪性びらんとして認められる.このような胃粘膜びらんは,癌性びらんを含めてU1-OやU1-Iがただ単に他の変化のない胃粘膜に発生するのではなく,もっともしばしば慢性胃炎性の変化のある胃粘膜に発見されることは重要な現象である.しかし内視鏡的にU1-OとUHとを肉眼的に鑑別することの困難さもさることながら,より小さい良性・悪性びらんの的確な肉眼的鑑別はより困難で,今のところ顕微鏡単位での方法より外にないが,顕微鏡診断に至るまでの内視鏡による診断の手がかりの確立が望まれる.
  • 長谷川 かをり, 屋代 庫人, 飯塚 文瑛, 長廻 紘
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1831-1841
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     全結腸型潰瘍性大腸炎55例86回の緩解像につき検討した.内科的緩解例では萎縮型が多く(71%)ポリポージス型は28%と少なかった.手術例の50%がポリポージス型であるのと対照的であった.従来少ないと考えられていた炎症性憩室が7例(13%)にみられた.部位別にみると,直腸ではポリポージスは稀でほとんど萎縮型であった.ポリポージス,炎症性憩室は左側結腸から口側では部位による差はみられずどの部位にもみられた.初回発作とそれ以後の発作の緩解像が異なる症例は少なかった.ポリポージスが2~3年で消失する例があった.活動期に深い潰瘍のあった例はすべてポリポージス型またはポリポージス+炎症性憩室となったが両者の違いは把握できなかった.炎症性憩室は緩解後すぐできるものと1年以上たって明瞭になるものがあった.時間がたつにつれ深くなり数が増した症例が1例あった.緩解が長く続けば浅くなり消失するが,深いものは残存した.その他の特殊な治癒像として狭窄2例,mesh様治癒像1例があった.
  • 苅田 幹夫, 多田 正弘, 安武 隆二郎, 柳井 秀雄, 松田 和也, 川野 博章, Shoiti SUZUKI, 宮国 宜也, 岡崎 幸紀 ...
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1842-1851_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     電子スコープによるstrip biopsy specimen及びoperativ especimenの非染色標本およびヘマトキシリンアルーシャンブルー染色した標本について,体外での水浸下観察を行ったところ,実体顕微鏡レベルにせまるきわめて良好な画像を得た. この結果をもとにし電子スコープを用いて雑種成犬の胃および大腸の粘膜形態の観察をとくに,10%ホルマリン固定後のヘマトキシレン染色した胃,アルーシャンブルー染色した大腸で,水浸下に行い,さらに人での応用を試み,今後の電子スコープ開発に関する一考察を得た.
  • 中田 和孝, 相部 剛, 野口 隆義, 大谷 達夫, 伊藤 忠彦, 藤村 寛, 大村 良介, 秋山 哲司, 衣川 皇博, 天野 秀雄, 富士 ...
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1853-1858_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは,超音波内視鏡によって描出される十二指腸壁の層構造を,組織学的に解明した.すなわち,超音波内視鏡で描出される十二指腸壁の基本層構造は5層構造で,その組織学的構築は,すでにわれわれが報告した胃壁の5層構造とほぼ同一である.ただし,十二指腸には,Brunner腺が,粘膜下層および粘膜固有層に存在し,これが第3層の高エコーを形成していた.すなわち,第3層は,組織学的には粘膜下層に粘膜の一部を加えたものであった.実際臨床例においても,十二指腸壁は5層構造として描出されたが,まれに,第2層および第4層内に,それぞれ1条の高エコーが描出され,全体として9層構造を示すことがあった.第2層内の1条の高エコーは,粘膜固有層のBrunner腺と考えられ,その下方で第3層の高エコーとの間に描出される狭い低エコーは,粘膜筋板と考えた.第4層内の1条の高エコーは,胃壁と同様に,筋層間の結合織および組織間の境界エコーと考えた.なお,十二指腸潰瘍臨床例において,基本5層構造の変化を読影することにより,潰瘍の深さの診断が可能であった.
  • ―一人操作法によるtotal colonoscopy―
    岡本 平次, 佐竹 儀治, 藤田 力也
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1859-1863
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     牧石らの考案したスライディングチューブはS状結腸たわみ防止に有効なことはよく知られている.著者はそのスライディングチューブを再評価し,一人操作法の大腸内視鏡検査に使用可能なミニスライディングチューブ(岡本式)(以下ミニチューブと略)を試作した.有効長は21cm及び26cm,内径15mm,外径18.5mmであり,市販のST-C3(オリンパス社製)に比し有効長がかなり短かく,細径であるのが特徴である.最近1年6カ月間で1,818回使用し,1,810回,99.6%にS状結腸たわみ防止効果があった.またミニチューブ導入後は盲腸挿入率97.6%,平均到達時間5分40秒(±2分11秒)でtotal colonoscopyの成績向上が得られた.ミニチューブは単に短かく,細径にしたにすぎないが,S状結腸たわみ防止の役割を充分に果しただけでなくabdominal manipulation無効例や憩室症例でも有用でその適応が拡大した.重大な合併症もなかった.中間長スコープを用いての一人操作法にミニチューブを装着してもスコープ手元操作部は煩わされず,さらに汎用されることが,望まれる.
  • 濱田 薫, 東口 隆一, 宮高 和彦, 田村 猛夏, 吉川 雅子, 大貫 雅弘, 錦織 ルミ子
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1864-1868
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は71歳女性.幼少時からとくに固形物の嚥下障害があるも放置,心窩部圧迫感が加わり某医受診し,内視鏡目的で当科紹介受診.内視鏡にて食道入口部直下に食道webを認め,透視にても胃角部の潰瘍と同時に食道webを認めた.貧血を認めず,理学的にも検査上も異常を認めないため病歴より先天性食道webと診断した.バルンカテーテルで内視鏡下に拡張術を施行するも一時的な効果しか得られず,日を経過すると再び狭窄を認めたため内視鏡下に高周波電気メスで小切開を行い,さらにバルンカテーテルによる拡張を併用したところ,自覚的にも固形物の嚥下が容易となり,他覚的には内視鏡,X線所見とも改善し,治療に成功した.一般に貧血なく機械的狭窄をともなう食道webはブジーによる拡張術が行なわれるが,可動性に富み,苦痛の少ないバルンカテーテルは有用と考え,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 重光 修, 内田 雄三, 柴田 興彦, 平岡 善憲, 近間 英樹, 久保 宣博, 藤島 公典, 安永 昭, 岡 敬二, 藤島 宣彦, 友成 ...
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1869-1875
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     門狭窄を来たした原発性と考えられたカンジダ感染胃潰瘍のある72歳の女性について報告した.幽門狭窄に対し幽門側胃切除術を施行した.カンジダは最初の生検により確認され,潰瘍の深層にまで浸潤していた.潰瘍は抗潰瘍剤のみでは治癒せずむしろ悪化し,抗真菌剤を追加することによって治癒傾向が得られたことより原発性と考えられた.われわれの症例の内視鏡的特徴は,1)厚く汚い黄色の白苔,2)胃体下部より幽門におよぶ全周性の巨大な潰瘍,3)低い周堤と明瞭な境界,4)潰瘍の中の更に深い陥凹が生じたことの点であった.
  • ―上部消化管内視鏡検査施行本邦成人例の検討―
    井辻 智美, 宗像 良雄, 石井 真弓, 船津 和夫, 水野 嘉夫, 浜田 慶城, 日比 紀文, 朝倉 均土, 土屋 雅春
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1876-1882_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Shönlein-Henoch purpuraは小児に多くみられ成人発症は比較的稀で,特に消化管病変については不明の点が多い.今回われわれは紫斑で発症し全身の関節痛・血尿を認め2週間後に著明な吐下血・嘔吐・腹痛をきたし,上部消化管内視鏡で胃に点状出血・びらんを,十二指腸に潰瘍を認めた52歳男性例を経験し,本邦上部消化管内視鏡施行成人例の統計学的検討ならびに本症の消化器病変の成因について考察を行なった.自験例に対しH2受容体拮抗剤と副腎皮質ステロイド剤を投与後,自覚症状および内視鏡所見に著明な改善がみられた.胃生検組織の酵素抗体法で血管壁にIgA陽性物質の沈着が,電顕で肥満細胞の脱顆粒現象がみられた.IgAと抗原とのimmune complexが形成され,肥満細胞の脱顆粒現象が血管透過性亢進を促し,本症の消化管病変を生じさせたと考えられた.H2受容体拮抗剤ならびにステロイドの血管透過性亢進抑制作用はそれらの機構に対し抑制的に働き,奏効したと考えられた.
  • 渋谷 裕史, 福田 定男, 吉益 均, 岩崎 至利, 児島 辰也, 川口 実, 吉田 友彦, 斉藤 利彦, 芦澤 真六
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1883-1887_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胆道内視鏡下で高周波電気ナイフを用いて行う経皮経肝的内胆汁瘻孔形成術(PTCP)の試みが奏効した1剖検例を,その器具・手技と共に報告する.症例は84歳の女性.黄疸の精査加療のため入院し,経皮経肝的胆道ドレナージ(PTCD)が施行された.各種画像診断法,更に経皮経肝的胆道内視鏡検査および生検の所見より膨大部領域癌と診断したが,poorriskのため切除は不能と判断された.完全閉塞の状態の総胆管末端部に胆道内視鏡下にmitomycinCを数回局注したが奏効せず,PTCPを試みた.PTCP施行直後にAl-P値と血清アミラーゼ値の上昇を認めたが,胆管炎や膵炎の合併を示す臨床症状は見られず,上昇した検査値も短期間に改善した.本症例はPTCP施行8カ月後に悪液質のため死亡したが,この間ビリルビン値の上昇は認められず,胆汁の十二指腸への排泄は終始良好であったと考えられた.更に剖検所見上,形成した瘻孔は充分に開存していた.PTCPは,切除不能の閉塞性黄疸例に対する有用な治療法になり得ると考える.
  • 木村 清志, 今岡 友紀, 倉塚 均, 長廻 錬, 福本 四郎
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1888-1893_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は48歳,女性.黒色便,貧血を主訴に来院した.低緊張性十二指腸造影にて,第2部はやや拡張し,第3部は著しく拡張し,第3部にピンポン玉大の腫瘤を認めた.腫瘤はbridging foldを有していた.十二指腸内視鏡にて,腫瘤の表面は地図状びらん面を形成し,また中央には深い切れこみを有していた.その切れこみより胆汁の流出を認めた.十二指腸乳頭部の粘膜下腫瘍の診断で手術を施行した.腫瘤摘出術,括約筋形成術,胆嚢摘出術がなされた.病理組織学的所見より,Gangliocytic paragangliomaと診断された.
  • ―付,本邦報告20症例の文献的考察―
    鍵山 惣一, 岡崎 和一, 山本 泰朗, 森田 雅範, 坂本 芳也, 田村 智, 中田 博文, 宮尾 昌宏, 中澤 慶彦, 宮崎 正子, 山 ...
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1895-1901_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     極めて稀なcholedochoceleの4例を報告するとともに,自験例を含む本邦報告20症例につき文献的考察を加えた.自験4例中1例はSholz分類のA型であったが,他の3例はSholz分類に属さないものであり,うち2例は伊沢らの報告例と類似するが嚢腫の中心部に瘻孔の開口部が存在しない点が異なっていた.残りの一例は従来報告のなかった総胆管,膵管の別個開口型であった.これらを考慮して,新しくcholedochoceleをA~Eの5型に分類し報告した.
  • 佐藤 達之, 岡野 均, 西田 博, 堀口 雄一, 今村 政之, 内田 秀一, 児玉 正, 瀧野 辰郎, 園山 輝久, 弘中 武, 福田 新 ...
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1902-1909_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     早期ファーター乳頭部癌の2例について報告した.症例1は72歳,男性.心窩部痛を主訴に来院.来院時,胆道系酵素の軽度上昇を認めた.低緊張性十二指腸造影検査,十二指腸内視鏡検査でファーター乳頭部に一致してポリープ様隆起性病変を認めた.生検材料の組織学的診断は腺腫であったが,悪性を否定できず,乳頭部切除術が施行された.切除標本の組織学的診断は腺腫内癌であった.術後の経過は良好である.症例2は53歳,男性.上腹部痛,背部痛を主訴に来院.血清アミラーゼの中等度上昇,及び軽度の肝機能異常を認めた.急性膵炎と診断,保存的治療により症状は軽快した.低緊張性十二指腸造影検査,十二指腸内視鏡検査でファーター乳頭部に一致してポリープ様隆起性病変を認め,生検材料の組織学的診断は腺癌であった.膵頭十二指腸切除術を施行.切除標本の組織学的診断は腺腫内癌であった.術後の経過は良好である. これら2例はいずれも腺腫の一部に癌を併存した症例であり,ファーター乳頭部の腺腫の癌化を示唆するものと考えられ,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 三宅 周, 岩野 瑛二, 佐々木 俊輔, 丸谷 盛雄, 渡辺 博史, 安原 高士, 河野 宏, 宮田 伊知郎, 荒木 文雄
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1911-1915_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     クモ膜下出血の術後に消化管出血をきたした,Dieulafoy潰瘍と思われる症例を経験した.この症例の病変は十二指腸にみとめられ,純エタノールの局注が奏効した. 症例は70歳の女性で,痙攣発作,意識障害,右不全麻痺を主訴に入院した.クモ膜下出血の診断の下に左中大脳動脈の動脈瘤頸部にクリッピング術を施行したが,術後9日目にタール便が出現した.翌日の緊急内視鏡検査では,上十二指腸角のやや前壁よりに径約3mm大の赤色の凝血塊と,その後壁よりに1mm大程の小隆起をみとめ,他には特に病巣と思われる部位はみられなかった.小凝血塊部を出血源と判断して純エタノールを計1.0ml局注したところ,止血に成功した.しかし患者は,術後の脳浮腫が悪化したため死亡した.剖検では,病巣部にUl2の潰瘍と,粘膜下層に太い動脈を連続性にみとめた.本疾患が十二指腸に発生したという報告は今だにみないため,特にその発生部位について若干検討を加えた.
  • 山崎 弘子, 河合 公三, 梶原 弘志, 人見 泰, 木村 秀幸, 土井 謙司
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1916-1919_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     67歳女性.下血を主訴として入院.患者は22歳の頃von Recklinghausen病と診断されており,ここ3年間毎年1回の下血の既往があるが,いずれの時も出血源不明のまま軽快した.今回,3カ月前より黒色便に気付き上部・下部消化管を検索したが,出血源は不明であった.そこで小腸病変を疑い,小腸X線及び内視鏡検査並びに血管造影を行い,小腸腫瘍と診断し手術を行った.肉眼所見では,Treitz靱帯より10cm肛門側に2×2.5×1.5cmの隆起性病変を認め,組織学的には粘膜下層から固有筋層に限局した平滑筋腫であった.
  • 亀谷 さえ子, 玉田 元子, 野田 愛司, 加藤 仁, 佐藤 隆三, 山口 満, 平松 恵里, 渡辺 務
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1920-1925
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は70歳女性.左側腹部痛を訴え,初回,大腸内視鏡検査で横行結腸に表面平滑な広基性ポリープを認めた.以後定期的に経過観察を行っていたが,3年後の大腸内視鏡検査時に隆起性病変は亜有茎性となったので内視鏡的ポリペクトミーを行った.摘出標本は,大きさは1.0×0.7×0.5cmで,病理組織学的には粘膜下に脂肪細胞のびまん性増殖像を認め,脂肪腫と診断された.大腸脂肪腫は近年報告例が増加したが,内視鏡的ポリペクトミー摘出例は本例を含め14例に過ぎない.われわれは,経過観察中に,腫瘤の形態学的変化をみ,内視鏡的ポリペクトミーを施行した1例を経験したので報告する.
  • 鶴田 修, 池園 洋, 大久保 和典, 鴨井 三朗, 下津浦 康裕, 大曲 和博, 古賀 聖祥, 井上 林太郎, 江口 敏, 日高 令一郎, ...
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1926-1931_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     比較的若年者の虚血性大腸炎を経験し早期より観察出来たので報告する.症例は35歳男性,腹痛,下血で来院し,発症後8時間目に緊急大腸内視鏡検査が施行され,粘膜浮腫とびまん性出血が下行結腸にみられた.同時に行った大腸X線検査にては,同部に狭窄とthumb-printing像を認めた.内視鏡検査時の生検像にては腺管の脱落いわゆるghost-like appearance像がみられた.下血は4日目に消失,8病日に行った選択的下腸間膜動脈造影では異常所見を認めなかった.第15日の大腸内視鏡検査にては,下行結腸の伸展性は改善していたが縦走潰瘍瘢痕が認められた.若年発症であるため,眼底検査,糖負荷試験,膠原病などの検索を行ったが異常所見を認めなかった.
  • 飯泉 成司, 山川 達郎, 三芳 端, 伊藤 誠二, 金子 等, 宮原 成子, 福間 英祐, 川端 啓介, 斎藤 美津雄, 宇井 義典, 杉 ...
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1933-1938_1
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Olympus胆道ファiバースコープB3Rおよび4Bのそれぞれの改良型であるCHF type 10およびP-10を,1983年6月より1985年7月までの約2年間に使用し,改良の意義を認めたのでその使用経験について述べた.CHF type 10を総胆菅結石,肝内結石の5例計8回に,CHFP-10を総胆管結石31例,肝内結石19例,胆管癌あるいは良性胆菅狭窄9例その他の計66例に,廷べ209回使用した結果,(1)ファイバーの細径化による使用本数の増加により解像力が同ヒしたこと,(2)視野角の増大と観察像の拡大により観察能に改善がみられたこと,(3)彎曲角度が増加したことによリ挿入が容易となり,また盲点が少なくなったこと,(4)完全防水機構により滅菌法の簡便化か得られたこと,などの改良による利点が認められ,操作性,安全性の点においても十分臨床応用に耐え得る新機種と思われた.
  • 吉田 隆亮
    1986 年 28 巻 8 号 p. 1939-1941
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
feedback
Top