日本消化器内視鏡学会雑誌
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29 巻, 5 号
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  • 竹内 憲
    1987 年 29 巻 5 号 p. 845-854
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡直視下に胃粘膜の血流とpotential difference(以下PD)を部位,腺領域,胃底腺―幽門腺腺境界(以下腺境界)および萎縮性胃炎の存在に注目して測定した.腺領域,腺境界および萎縮性胃炎は内視鏡的Congo-red法により判定した. 部位による検討では,胃体部小彎は前庭部小彎よりも粘膜血流,PDともに高値であった. 腺領域別に,胃底腺領域と幽門腺領域の粘膜血流とPDを比較すると,胃底腺領域において幽門腺領域よりも粘膜血流とPDは高値であった. 萎縮性胃炎による粘膜血流とPDの変化を検討する目的で,萎縮性胃炎が認められず胃体下部が胃底腺領域であった症例と,萎縮性胃炎によって"幽門腺"領域となった症例とで粘膜血流とPDを比較検討した.胃底腺領域症例の粘膜血流は76.1±4.9ml/min./100g(mean±S.E.),PDは-25.8±1.6mV(mean±S.E.)に対して,幽門腺領域の症例ではそれぞれ50.8±4.3ml/min./100g,-12.4±1.3mVと,両者ともに有意に(P<0.01)低下していた. 以上より,粘膜血流およびPDの検討にあたっては,腺領域あるいは萎縮性胃炎の有無について考慮する必要があると考える. さらに,同一症例において,胃底腺領域,幽門腺領域および腺境界の3点の粘膜血流とPDを測定した.粘膜血流は胃底腺領域>幽門腺領域>腺境界の順で,腺境界で最低を示した.一方,PDは胃底腺領域>幽門腺領域≒腺境界であった.腺境界では粘膜血流が低下しており,腺境界に胃潰瘍が好発することからみても興味ある所見であり,腺境界に関する検討は今後とも試みられなければならない重要課題と考える.
  • ―治癒過程の経過観察に関する研究―
    大岩 俊夫, 桑野 博行, 森 正樹, 杉町 圭蔵
    1987 年 29 巻 5 号 p. 855-864_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     急性胃炎の発症後比較的早い時期での内視鏡所見及び生検組織所見については,すでに第1報で報告した.本稿では,急性胃炎のうち,出血性びらん型と潰瘍形成型の2つの型について,その治癒過程を内視鏡と生検による組織学的検索によって経過観察を行ってみた.その結果,両型共に再生上皮の発現は意外に早く,症状発現後6時間ですでに幼若再生上皮のみられるものもあった. また,出血性びらん型では発症時の壊死の程度が軽く,腺窩上皮の一部ないしは胃腺がかなり残存しているため,速やかな再生が行われる.潰瘍形成型では,壊死の程度の強い所では,速やかな再生が行われないで潰瘍となり,軽い部分では,出血性びらん型と同様に速やかな再生が行われる.すなわち,出血性びらん型も潰瘍形成型も本質的な差はなく,壊死の程度の差により,その経過が異なるものと考えられる.
  • 坂上 博, 水上 祐治, 平林 靖士, 柴田 洋, 山下 省吾, 太田 康幸
    1987 年 29 巻 5 号 p. 867-872_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃潰瘍の治癒過程を,3H-thymidine autoradiographyによる潰瘍辺縁粘膜の細胞動態面から観察し,さらに,ヒスタミンH2受容体拮抗剤使用の有無による細胞動態の変化について検討した.標識細胞数/胃粘膜上皮細胞数比より求めた標識率は,内視鏡stageでは,S2期に比較してA2~H2期で有意に高値であり,S1期で高値傾向であった.組織分類別では,H3tufty(-)に比較してH2,H3 tufty(+)の時期で有意に高値であった.また,難治性潰瘍においても標識率は高値を示した.H2受容体拮抗剤使用の有無による標識率の差違については,内視鏡的にH1・H2 stage, S1 stage例のいずれにおいても,使用,非使用例で標識率の差はみられなかった.以上の成績より,潰瘍治癒は,内視鏡stageでS2,組織的にはH3 tufty(-)の時期と考えるのが妥当であり,H2受容体拮抗剤の使用によって潰瘍再生粘膜の細胞動態には変化をきたさないものと考えられた.
  • 斉田 宏, 村上 元庸, 巽 憲一, 宋 泰成, 水野 雅博, 保津 真一郎, 芦田 豊, 兪 正根, 井上 良一, 稲田 雅美, 三宅 健 ...
    1987 年 29 巻 5 号 p. 873-881_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     レーザー・ドップラー法にて前庭部,胃体下部,上部の各小彎側と大彎側の計6点での粘膜血流量の測定をおこない,胃角部の慢性胃潰瘍患者36例の治癒過程における背景胃粘膜の血行動態を検討した.胃病変を認めえない健常者26例を正常対照群とした.(1)正常胃の粘膜血流分布は,小彎側よりも大彎側の方が,また,前庭部よりは胃体下部,上部の方が血流量は多かった.(2)潰瘍全体をまとめて検討した場合,各ステージ別の潰瘍群と正常群の間には,前庭部小彎側S-1瘢痕期以外特に差はなかった.(3)しかし,潰瘍群を初発群と再発群に分けて検討すると,初発群では治癒期・S-1瘢痕期の全治癒過程にて背景粘膜血流量は,潰瘍周辺の前庭部と胃体下部を中心に正常群と再発群よりも有意に増加しており,また,S-1瘢痕期になっても治癒期よりさらに増加していた.一方,再発群では,治癒過程においてこのような血流増加はなく,一部では正常群より低下していた. 以上,潰瘍治癒過程における背景粘膜血流量の無増加が,潰瘍の再発に関与する要因の一つであることが示唆された.
  • ―熱勾配式測定法の内視鏡応用―
    島倉 秀也, 福富 久之, 宮本 二郎, 中原 朗, 大菅 俊明, 崎田 隆夫
    1987 年 29 巻 5 号 p. 882-892_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     熱勾配式組織血流測定法(以下熱勾配法)を応用し内視鏡下に測定可能なイヌ胃粘膜血流の連続測定法(以下本法)を考案し,以下の成績を得た.1)一定圧の吸引により胃粘膜とprobeとの密着固定が可能な“カテーテル型probe”を作製し,熱勾配法を用い内視鏡下における胃粘膜血流の測定を行ったところ連続的に安定した測定値が得られた.2)AOC tetrapeptide,Vasopressin投与及び心停止によるイヌ胃粘膜血流の予想される変化を本法は検出し得た.3)電解式血流測定法と本法とは,相関係数0.93(P<0.01)の有意な相関があった.以上より本法は有用な連続的胃粘膜血流測定法と考えられた.
  • 杉本 元信, 毛 克弘, 島田 長樹, 吉田 直哉, 水上 啓, 相川 勝則, 定本 貴明, 山室 渡, 羽鳥 知樹, 佐川 寛, 伊東 高 ...
    1987 年 29 巻 5 号 p. 895-902_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Gilbert症候群(GS)6例,Dubin-Johnson症候群(DJS)とRotor症候群(RS)各3例,計12例の体質性黄疸の腹腔鏡肝表面像と組織像を検討した.肝表面は4例が不平滑で,うちGSの1例が組織学的に慢性肝炎の像を呈した.ほとんどの例が辺縁鈍化や被膜混濁など正常とはいえない何らかの所見を示したが,組織学的には非特異性変化にとどまった.肝表面色調はGS3例,RS2例が褐色調で,DJSは程度に差はあっても全例黒色肝を呈した.肝細胞内色素顆粒はDJSはもとより,GSとRSでも互いに性質は異なるものの全例に認めた.肝表面の変化および色調と濃淡は必ずしも組織レベルでの変化および色素顆粒の量と一致しなかった.色素顆粒以外のこれらの変化はそれぞれの疾患本態によるものでなく,むしろ偶然共存したものと思われ,今回検討した体質性黄疸の肝表面像は慢性肝炎を合併した1例を除き腹腔鏡観察の際に許容し得る正常範囲内の変化と考えられた.
  • 杉村 文昭, 山口 善久, 脇山 耕治, 八木 直人, 田上 誠二, 元木 康文, 稲垣 勉, 原本 富雄, 松井 秀夫, 伊藤 和郎, 工 ...
    1987 年 29 巻 5 号 p. 903-911
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     昭和55年1月から59年12月までの5年間の日本大学板橋病院消化器科入院患者1,201例,および同病院内視鏡室における食道の観察を主目的とした上部消化管内視鏡検査例859例について,肝疾患と消化管疾患の関連性を検討し,次の如き結果を得た. 入院患者における肝疾患患者の消化管疾患合併率は39.8%,消化管疾患患者の肝疾患合併率は21.2%である.食道の観察を主目的とした上部消化管内視鏡検査例では,肝疾患の進行につれて胃疾患および十二指腸疾患の合併率が高まる.また食道静脈瘤の進行につれて,胃疾患および十二指腸疾患の合併率が高まる.さらに個々の疾患についてみると,食道静脈瘤の進行につれて,胃静脈瘤の合併率が高まる.肝疾患のある食道正常例,食道静脈瘤例では,胃にびらんがみられる頻度が高い.食道正常例と食道静脈瘤例を比較すると,食道静脈瘤に合併する胃潰瘍では,十二指腸潰瘍に比べてopenの比率が高い傾向がある.食道静脈瘤に合併した胃びらん,胃ポリープでは,食道正常例にみられる胃びらん,胃ポリープに比べて胃体部のものが若干多い傾向がみられる.また食道静脈瘤の進行につれて,食道静脈瘤からの出血の頻度,R-Csignの出現率,R-Csign(+)例からの出血の頻度が高まる.R-CsignOの食道静脈瘤例にみられた出血では,食道静脈瘤からの出血と確認された例は10%に過ぎない.
  • 林 繁和, 江崎 正則, 山田 昌弘, 土田 健史, 佐竹 立成, 吉井 才司
    1987 年 29 巻 5 号 p. 912-919
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     最近5年間に糞便培養でCampylobacter jejuni/coliを検出した患者は140名(小児科を除く)でこのうち大腸内視鏡検査を施行した27例について内視鏡像を中心に検討した.男16例女11例で,年齢は14歳~74歳,平均33.4歳,症状は下痢25例,血便18例,腹痛21例,発熱5例,嘔吐4例であった.27例中26例に発赤,出血,ビランなどの所見がみられ,びまん性病変は7例(25.9%),縦走性4例(14.8%),アフタ様病変5例(18.5%)であった.潰瘍性病変は7例(25.9%)でいずれもバウヒン弁上に存在し,回盲部まで観察した9例中7例77.7%と高率に見られた.直腸S状結腸は27例中26例に病変がみられ,全大腸を観察した9例中7例は大腸全域に病変がみられた.生検組織所見では,陰窩膿瘍は45.8%に見られ,50%は高度の炎症所見を認めた.本症の内視鏡像は多彩で潰瘍性大腸炎,他の感染性腸炎,時に薬剤性腸炎や虚血性腸炎と鑑別困難なことがあるが,バウヒン弁上の潰瘍はCampylobacter腸炎に特徴的な所見と考えられた.
  • 森田 豊, 松井 亮好, 安藤 貴志, 奥田 順一, 井田 和徳
    1987 年 29 巻 5 号 p. 920-925_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    N2 dye laserを励起光源とし,ヘマトポルフィリン誘導体(HpD)を用いたPhotodynamic therapy(PDT)を早期癌患者10例(手術を前提とした術前照射2例,手術不能例8例)に施行した. 術前照射は最大径4cm,深達度mのIIc型早期癌と,最大径1.5cmの比較的小さな深達度smのIIa型癌に対して施行されたが,摘出標本上いずれも癌の残存を認め,大きいもの,癌層の厚いものに対する限界が示唆された. 手術不能例8例(食道癌1例,胃癌7例,このうち3例はNd-YAGlaser治療の不成功例)にPDTが施行され,7例に癌の消失をみたが,その後1例に再発を認めた.PDT不成功例は最大径3cmを越えるもので,腫瘍の単位面積当たりの照射エネルギーは平均30J/cm2以下と成功例69.3J/cm2に比し著しく低かった. 以上より,早期癌でも大きいもの,および深いものに対しては限界があり,種々の内視鏡下の癌の治療法の発達した現在では,日光過敏という避けがたい副作用を有するHpDPDTは,比較的小さな陥凹型早期癌で浸潤範囲の不明瞭なもの,および,Nd-YAGlaser治療後の癌の遺残,再発例で癌の残存はわずかであるが,浸潤境界の不明瞭なものに限られると考えられた.
  • 竿代 丈夫, 植松 幹雄, 関 晋吾, 井上 十四郎, 亀田 治男
    1987 年 29 巻 5 号 p. 926-932
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    上部消化管の病変は,慢性腎不全患者にしばしば合併するが,腎不全例の上部消化管粘膜の特徴を明らかにするため,内視鏡検査および5点生検を行い対照群と比較した.腎不全群の内視鏡所見で,発赤,出血性びらんのいずれかがみられる頻度は47.8%であったが,対照群は18.8%であった.また生検組織所見の対比では,胃角部に最も顕著な差がみられ,腎不全群では62.6%が体部腺組織であるのに対し,対照群は14.4%であり,腎不全例では腺境界が対照群に比し幽門側に存在していると考えられた.この腎不全群にみられた腺組織の変化は,血液透析の期間,血中ガストリン濃度とは相関しなかったが,年齢による差は明らかで,高齢者ほど腺境界が口側に存在すると思われた.また両群の胃前庭部生検組織を比較すると,腸上皮化生,炎症性細胞浸潤,リンパ濾胞の形成などいずれも対照群で高率にみられ,内視鏡所見の成績とは異なるものであった.
  • 岡本 平次, 佐竹 儀治, 藤田 力也, 坪水 義夫
    1987 年 29 巻 5 号 p. 933-936_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    最近4年間で17例の大腸カルチノイドを経験した.5mm以下の微小カルチノイドは6例であり,内視鏡所見,診断,治療等について,検討した.年齢は40歳から67歳におよび,男5名,女1名であった.病変は全例肛門輪より6cm以内の直腸に存在し,いずれも単発例であった.大きさは1mm大2例,2mm大2例,3mm大1例,4mm大1例であった.内視鏡的にわずかな隆起または半球状の粘膜下腫瘍としてとらえられ,色調は周囲粘膜と同色か黄白色を呈し,2例は頂部に発赤を伴った.再検時6例中5例にカルチノイドの残存が組織学的に認められたが,5例にhotbiopsy,1例にレーザー照射を追加し根治が得られた.また3症例は良性ポリープ(腺管腺腫)を合併していた.上述したように微小カルチノイドは全例直腸に存在し,内視鏡を導入することによってわずか1~2mm大の病変も発見することができ,質的診断のみならず治療までも可能となった.
  • 石井 望人, 坂本 博和, 羽白 清, 辻村 大次郎, 松井 洋勝, 山本 俊夫, 手塚 正
    1987 年 29 巻 5 号 p. 937-942_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    尋常性天疱瘡Pemphigus vulgaris(PV)の病変は皮膚のみならず,口腔などの粘膜に好発することは知られているが,食道粘膜病変の報告例は極めて少ない.著者らはPV2症例において内視鏡的に食道潰瘍を認め,いずれもPVによる食道病変と診断したので報告する.症例1は54歳の男性で難治性の口内炎を反復し,舌生検によりPVと診断したが,内視鏡的に食道にも縦長や地図状の潰瘍を認め,ステロイド投与により口腔・食道病変は回復した.症例2は53歳のイラン人男性で壊死性口内炎の診断により入院したが,特有の水疱の生検によりPVと診断され,内視鏡検査により食道にも線状や地図状の潰瘍を認め,ステロイド投与後食道病変の縮小をみた.本例では食道生検組織にて蛍光抗体直接法により粘膜上皮細胞間に1gGの沈着を証明した.食道病変を伴うPVの報告は自験例を含めて19例に過ぎないが,難治性の口腔および食道潰瘍に接した場合に本疾患を念頭におく必要がある.
  • 岡野 均, 児玉 正, 辻 秀治, 高升 正彦, 光藤 章二, 古谷 慎一, 堀口 雄一, 西田 博, 佐藤 達之, 瀧野 辰郎
    1987 年 29 巻 5 号 p. 945-948_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤硬化療法後に出現した食道のMucosal bridgeの2例を報告した.Mucosal bridgeは時々潰瘍性大腸炎やクローン病に認められる.しかし,硬化療法後の食道Mucosal bridgeの報告は本邦にはない. 症例1は,55歳女性で主訴は吐血.内視鏡検査にて出血性食道静脈瘤を認めた.食道静脈瘤硬化療法が計6回施行された.最後の硬化療法後より,胸骨後部痛と心窩部不快感を訴えた.内視鏡検査にて局注部位に一致し深い潰瘍を認めた.3カ月後の内視鏡検査にて食道のMucosal bridgeと潰瘍瘢痕を下部食道に認めた. 症例2は,38歳の男性で主訴は易疲労感と腹部膨満感であった.内視鏡検査にて,著明な食道静脈瘤を認めた.予防的硬化療法を計12回にわたって行なった.硬化療法後1カ月後,静脈瘤は消失し, Mucosal bridge,多発潰瘍瘢痕とPseudo-polypsを認めた.
  • 野口 良樹, 後藤 和夫, 白木 茂博, 岡山 安孝, 松葉 周三, 大原 弘隆, 林 弘太郎, 横山 善文, 伊藤 誠, 武内 俊彦
    1987 年 29 巻 5 号 p. 951-956_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胃生検組織中にTyeponema pallidumを確認しえた胃梅毒の1例を経験したので報告する.症例は48歳男性で,主訴は心窩部痛である.胃X線検査により,胃体下部後壁に粘膜集中を伴う不整形潰瘍を認めた.胃内視鏡検査では,潰瘍辺縁の発赤と周辺粘膜の浮腫を伴う浅い地図状潰瘍で,その周囲にさらに3個の小潰瘍を認めた.胃生検組織の鍍銀染色(岐阜大学変法)で,Tyeponema pallidumが証明され,駆梅療法により血清梅毒反応の低下を認めたことより,第2期の胃梅毒と診断した.本症例では駆梅療法開始前に潰瘍の治癒および胃病変部のTreponama pallidumの減少が認められ,第2期梅毒診と同様に,第2期梅毒の胃病変も自然消退することを示す症例と考えられた.
  • 上野 秀雄, 野口 健一, 木村 佳苗, 中村 正樹
    1987 年 29 巻 5 号 p. 957-961_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    44歳の男性.黄疸,腹水を呈して入院した肝硬変患者.高度の食道静脈瘤に対して5%ethanolamine oleateを静脈瘤内に注入する内視鏡的硬化療法を施行した.硬化療法施行1時間後,嘔気,背部の激痛にひきつづいてショック状態に陥った.腹部超音波検査,CT,血管撮影により,脾門部の静脈瘤より,腹腔内へ大量出血を起こしたことが診断された.幸い,厳重な内科的治療を行い救命することができた. 硬化療法の重篤な合併症として本症例のような腹腔内静脈瘤破裂の報告はなく,また肝硬変患者の腹腔内静脈瘤破裂症例の報告も数少ない. 本症例における脾門部静脈瘤の破裂は,硬化療法により食道への門脈側副血行が遮断された結果,脾静脈圧が急激に上昇したため生じたものと推察された.
  • 三宅 周, 川口 憲二, 安原 高士, 岩野 瑛二, 杉山 明, 佐々木 俊輔, 尾上 公昭, 河野 宏
    1987 年 29 巻 5 号 p. 962-966_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスは,原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,胃に病変を有することはまれである.著者らはこのたび,腹腔鏡検査が診断に有用であった胃サルコイドーシスの1例を経験したので報告する. 症例は49歳の女性で,59年7月に生汗と心窩部痛があり,胃透視および内視鏡検査にて粘膜下腫瘍様の隆起性病変をみとめた.60年4月の内視鏡下生検では,結核かサルコイドーシスと診断され,5月よりINHO.3g/日の内服を開始するも,病変は残存した.今度,胃病変を確診する上で腹腔鏡検査が有用ではないかと考え,精査のために再入院.腹腔鏡検査では,肝左葉に0.5~1.0cm大の白色結節をみとめゆ着はなく,生検上肉芽腫をみとめ乾酪壊死はなく,サルコイドーシスと診断した.従って,胃病変も本疾患と考えられた. 現在,約50例の胃サルコイドーシスの報告をみるが,著者らの症例では,肉眼形態および診断過程が特に興味深いと考えられた.
  • 古田 清, 宜保 行雄, 袖山 健, 今井 明彦, 中村 信, 依田 英俊, 大池 淑元, 清沢 研道, 古田 精市, 長谷部 修, 市川 ...
    1987 年 29 巻 5 号 p. 969-974_1
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は75歳女性,発熱,食欲不振を主訴に来院.好酸球増多,肝機能異常を認めたため精査入院となった.腹部CTで肝左葉表面に小低吸収域を認め,腹腔鏡検査を施行した.肉眼的に肝右葉は被膜の肥厚を認め,肝左葉表面に孤立性または癒合した黄白色の小結節を数個認めた.同部より施行した生検組織像では肉芽組織に囲まれた好酸球性膿瘍,Charcot-Leyden結晶を認めた.Ouchterlony法による免疫学的診断法とあわせて肝蛭症と診断した.Praziquante1(1,800mg/日)1日間の治療を施行したところ自覚症状及び,好酸球増多,肝機能異常は速やかに改善した.肝蛭症の診断には虫卵の検出,免疫学的診断のみならず,腹部画像診断,腹腔鏡検査も有用であると考えられた.肝蛭症の治療薬として,今回用いたPraziquante1は副作用が少なく,投与期間も短く有用な治療薬であると考えられた.
  • 小黒 八七郎
    1987 年 29 巻 5 号 p. 975
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 早期胃癌肉眼分類をめぐって
    崎田 隆夫
    1987 年 29 巻 5 号 p. 976-982
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 小黒 八七郎
    1987 年 29 巻 5 号 p. 983-990
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Gastroenterological endoscopy is the best and essential method to study on gastrointestinal cancer, because of its direct approach to the lesion. The method is composed of observation, sampling and modification. Definition, classification and diagnostics of early gastric cancer were proposed by Prof. S. Tasaka at the 4th Congress of this Society and have prevailed through the world, now. According to the development of gastric biopsy, a gastritis-like type of early gastric cancer has been detected, increasingly. Retro spective study of preceding endoscopic films of detected gastric cancer had clarified the initial feature, growth pattern and velocity. Prospective study with biopsy had proved malignant change from a chronic gastric ulcer, but with a few incidence Electronic endoscope, applying CCD, was inventd, 1983, which has contributed to analysis of endoscopi image of early gastric cancer. Echosonographi endoscopy has made possible image diagnosis of the condition of canerous tissue in the gastric wall and adjacent areas. Analysis of CEA in biopsy specimen and gastric juice has been studied and it has clarified the malignant potential of gastric cancer. Some types of gastric cancer have become possible f to be treated with endoscopy, radically or symptomatically. With endoscopic polypectomy, a y pedunculated, elevated type of early gastric cancer a has been treated, radically. With laser endoscopy, 824 cases of early gastric cancer has been treated, throughout Japan. Out of them, 16 cases have been c alive without recurrence of the carcinoma, and 120 c cases from 3 to 5 years, 316 cases from 1 to 3 years. e Recanalizatiotn of stenosis due to advanced cancer of esophgus, cardia, pylorus etc. were performed with good results in 334 cases with the lesions.
  • 三宅 健夫
    1987 年 29 巻 5 号 p. 991-992
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
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    A concept of the mucosal defensive mechanism is not so previous. Balance theory which were presented by Shay and Sun in 1953, has been widely accepted, and a breach of the balance between an aggressive factor and a defensive factor of mucosa has been considered as an etiology of the peptic ulceration. Acid, pepsin and gastrin as aggressive factors could be measured easily, while defensive factors were difficult to estimate in detail owing to their undevel-oped methodological techniques. Recent advances in functional endoscopy (functional examination by endoscope) contributed new information in the field of patho-physiology of the peptic ulcer. In this report, the results of functional endoscopy will be presented especially concerning with mucosal defensive mechanism. 1) Endoscopic measurement of transmucosal elec-trical potential defference (PD) : Tsuneoka and Matsukawa (1980) and Suyama (1981) developed the technique for measurement of mucosal PD, using endoscope. A decrease of PD shows the drop of mucosal resistance and the mucosal damage, which were pointed out by Donne (1824) and Rhem (1944) as the injury potential. Administration of mucosal barrier braker or decrease of mucous and bicarbonate secretion are closely related with a decrease of PD, which suggest the existence of mucosal cell damages. 2) Mucosal resistance : Function of epithelial cell and synthesis of connective tissue in proper mucosa represent a derect mucosal resistance. Cell kinetics, its regulating factor and the role of basementmembrane, on which proliferation, mobilization, differentiation and restitution of epithelial cell are supported, are included into the mucosal resistance. These factors are observed on the endoscopic biopsy materials by 3H-thymidine autoradiography, electron microscopy and histochemical technique. 3) Endoscopic measurement of mucosal blood flow : Recently, various methods for endoscopic measurement of mucosal blood flow of the stomach and duodenum have been developed (Miyamoto 1981, Murakami 1982, Sato 1977, Miyamoto 1983, Saita 1984, Shimakura 1986). Improvement and maintenance of mucosal microcirculation regarding to "Cytopretoction" prevent a decrease of oxygenic metabolism of all cell and tissue, and serve to remove hydrogen ion and free radicals. Further investigations of the etiology of peptic ulcer are expected in the near future with more advances of the functional endoscopy.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1987 年 29 巻 5 号 p. 993-1086
    発行日: 1987/05/20
    公開日: 2011/05/09
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