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松田 和也
1987 年 29 巻 7 号 p.
1367-1379
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃粘膜腸上皮化生の粘膜防禦機構に関して内視鏡学的組織学的検討を行った. びらんの生検組織像102例について,腸上皮化生の有無につき検討し,びらんの周辺に腸上皮化生を伴っている比率は18.6%と低率で,腸上皮化生粘膜からはびらんが生じにくいことが明らかとなった.また,腸上皮化生の粘膜potential difference (PD)および,吸入式水素ガスクリアランス法を用いた粘膜血流の測定では,PD,血流とも低下傾向にあった.一方,腸上皮化生の血管構築像の観察では,血管密度が疎で不規則な血管走行を示しており,これが血流低下の一因と考えられた.タウロコール酸負荷によるPD,血流の変化についての検討では,腸上皮化生粘膜で,血流が負荷前45.1±7.8ml/min/100g,負荷後52.3±5.6ml/min/100gと上昇傾向を示し,PDは,腸上皮化生のない粘膜での負荷前-22.0±5.4mV,負荷後-10.0±4.0mVの変化に比べて負荷前-21.2±7.8mV,負荷後-17.8±3.7mVと低下が抑制される傾向が認められた.さらに,腸上皮化生粘膜のSOD量は,154.4±17.5μg/g tissueと,幽門腺粘膜の130.5±16.2μg/g tissueと比較して有意に高値を示した(P<0.05). 以上のことより,胃粘膜腸上皮化生は,粘膜障害を引きおこす成因に対して,抵抗する可能性があることが示唆された.
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小林 謙太郎
1987 年 29 巻 7 号 p.
1381-1395
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍との関連について臨床的,実験的に検討を行った.臨床的には,急性胃潰瘍の長期経過観察による慢性胃潰瘍への移行の有無を観察するとともに,急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍の臨床像を対比した.実験的には,Wistar系雄性ラットを用い,岡部らの方法に準じた慢性胃潰瘍を作成し,その後,高木らの方法に準じた水浸拘束負荷による急性胃粘膜病変を付加し,両者の関連について内視鏡的,組織学的に検討した. その結果,急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍は臨床像において大きく異なり,両者は経過観察から別個に推移し,また急性胃潰瘍は慢性胃潰瘍の先駆病変ではなく,かつ素地とならないと考えられた.急性胃潰瘍の再発は平均経過2年7カ月で4.6%であり,再発部位に一定の傾向を認めなかった.実験的慢性胃潰瘍と水浸拘束による急性胃粘膜病変との間には,内視鏡的にも組織学的にも臨床の場合と同様相互関係を認めなかった.
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柳井 秀雄
1987 年 29 巻 7 号 p.
1396-1407
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
strip biopsyは,多田らにより開発された安全,容易な内視鏡的jumbo biopsyであり,ポリペクトミーと異なり,隆起性病変のみならず表面陥凹型の病変までも広く切除することができる. strip biopsy標本の検索により,鉗子生検の生検組織分類がGroup IIIであった病変の30.2%(63病変中19病変),Group IVの60.0%(10病変中6病変)が癌と診断され,strip biopsyは,胃癌と異型上皮巣の鑑別に有用であった。また,strip biopsy標本からは,組織学的に根拠を持つ癌深達度診断も得られた.strip biopsyにより早期胃癌76病変の75.0%は局所完全切除され,異型上皮巣49病変では77.6%の局所完全切除が得られたことから,strip biopsyは,内視鏡的治療法として有用であった. 本検討の結果から,strip biopsyは,胃生検の精査として,また,外科手術不能,拒否例では治療として,原則的にはGroup III以上に分類されたすべての病変をその適応とするものと考えられた.
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天野 祐二, 福本 四郎
1987 年 29 巻 7 号 p.
1408-1415
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
イヌを用いた薬剤性胃粘膜障害の慢性投与モデルにおける内視鏡的胃粘膜変化,胃粘膜細胞動態および胃粘膜血流の経時的推移を検討し,三者の関連性を追求した.アスピリン投与モデルは,全経過2~3カ月にわたる病変の発現,増悪および消退の経時的観察および検討が可能であり,慢性投与モデルとして優れていた.胃粘膜病変の内視鏡的推移は背景胃粘膜血流よりむしろ胃粘膜の細胞動態とよく相関した.すなわち,胃粘膜細胞動態は薬剤投与直後の胃粘膜障害発現時期において低下し,病変の増悪後には正常に復し,病変を軽快傾向に導いた.一方,抗癌剤(ACNU)投与群では,胃粘膜血流には変化を認めなかったが,胃粘膜細胞動態が変動を示した例にのみ病変の出現を認め,変動のなかった例では病変は出現しえなかった.以上より,薬剤性胃粘膜障害の出現およびそれに対するadaptationには,胃粘膜細胞動態の変化が先行するものと考えられた.
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羽鳥 知樹, 佐川 寛, 水入 紘造
1987 年 29 巻 7 号 p.
1416-1422_1
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
最近4年間に経験した出血性胃潰瘍62例のうち,純エタノール局所注入療法を施行した34例(局注群)を対象とし,非局注群28例を対照として,とくに再出血について検討した.また,注入薬液の局在を把握する目的でindocyanine green(ICG)による色素混入法を試み,その意義について検討した.両群の再出血率を比較すると,局注群では34例中5例(14.7%),非局注群では28例中6例(21.4%)と局注群で低率であったが,すくなからず再出血が認められた.局注群の再出血例の内訳は,1例は噴出性出血例であった.2例は潰瘍底に大小2個の露出血管を有し,点状に存在した1個を見逃がしたために再出血したものであった.残り2例は新生血管からの再出血であった.色素混入法は注入量,注入部位の適否の判断の目安および潰瘍拡大の防止として有用であった.
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多羅尾 和郎, 松本 滋彦, 岡田 賢三, 及川 裕望, 玉井 拙夫, 飯森 和人, 宮本 重男, 風戸 計民, 宇南山 史郎, 桜井 彰, ...
1987 年 29 巻 7 号 p.
1423-1433
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
腹腔鏡下肝生検を施行し生検組織にてアルコール性肝線維症と診断された35症例中,腹腔鏡像が鮮明な30例を,文部省「アルコールと肝」研究班の組織基準に従い,I度8例,II度15例,III度7例に分けてその腹腔鏡像を検討した.I度では,繊細な点状または樹枝状白斑を示す例が各4例ずつ認められたが,微細な小区域化または微細なprenodular elevationの存在する例は無かった.II度では径0.5~1.5mm大の小区域化(繊細な網目状構造)を示す例が7例(46.7%),さらにほぼ同大の微細なprenodular elevationの存在するものが6例(40.0%)に認められた.III度では小区域化(繊細な網目状構造)が認められるもの6例(85.7%),さらに微細なprenodular elevationは全例に認められた.アルコール性肝線維症の進行過程における腹腔鏡上の変化は,ウイルス性慢性肝炎に似て区域化→prenodular elevation→結節の順であるが,変化が肝小葉単位の微細なものであった.
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―Bi-Plane TVモニタリングシステム―
岡野 均, 児玉 正, 佐藤 達之, 古谷 慎一, 辻 秀治, 高升 正彦, 光藤 章二, 西田 博, 丸山 恭平, 内藤 英二, 布施 好 ...
1987 年 29 巻 7 号 p.
1434-1441
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
東芝・町田TV-Endoscopeを用い,テレビ・モニター画面を親子画面方式(Bi-Plane TVモニタリングシステム)とし,検査時に前回観察時の録画を同時に再生する方法を開発した.この方法により前回検査時と同様の静止画面で種々の所見を正確に比較検討することが可能で,消化性潰瘍の治癒状態の適確な把握や詳細な性状の観察が行える.また種々の内視鏡的治療の正確な効果判定が可能で内視鏡的食道静脈瘤硬化療法においても静脈瘤の新たな出現か残存かの判断やレーザー治療における照射範囲の決定,効果をより正確に行うことができ,診断面のみでなく治療上もより実際的で有用な方法として考えられた.さらに下部消化管検査時用として,この方式にレ線透視像を組み入れた.種々の検査に伴う補助操作が容易になったのみならず,病変の存在部位をレ線透視像として内視鏡像と同時に記録できるため,ポリペクトミーや炎症性腸疾患などの経過観察時に有用であった.
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原 和人, 宮岸 清司, 山本 和利, 清光 義則
1987 年 29 巻 7 号 p.
1442-1447
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)による薬剤起因性潰瘍23例(NSAID群)の特徴を,通常の消化性潰瘍152例(通常群)との対比で検討した.なお,NSAID群は,消化性潰瘍の既往のあるもの,慢性関節リウマチ及び膠原病に伴ったものは除外した. (1)NSAID群は,通常群に比して有意に高齢であり,有意に女性が多かった.(2)NSAIDは,ジクロフェナックが20例と最も多かった.(3)NSAID群の自覚症状としては,消化器不定愁訴が多かったが,有意に無症状の者が多かった.(4)NSAID群の胃潰瘍の存在部位は,有意に胃前庭部に多かった.(5)NSAID群は,5mm以下の小さい潰瘍が有意に多く,多発する傾向にあった. したがって,高齢者にNSAIDを投与する場合には,潰瘍発生に対する注意が特に重要である.
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中原 晋一, 下鑪 研悟, 徳重 順治, 榊範 裕, 唐仁 原寛, 丸田 修士, 青崎 真一郎, 西俣 寛人, 政 信太郎, 橋本 修治
1987 年 29 巻 7 号 p.
1448-1454_1
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
高位の胃潰瘍,いわゆる分水嶺近傍の潰瘍159症例,181病変を対象に高位の潰瘍の好発部位,好発年齢を検討した.また健常者45名を対象に,胃潰瘍発生の一つの因子としての胃粘膜血液量とヘモグロビン酸素飽和度を臓器反射スペクトル解析装置を用いて測定した. 分水嶺近傍の胃潰瘍は,分水嶺上に72.4%,噴門部に12.7%,分水嶺対側前壁に9.4%,穹窿部5.5%で,分水嶺上が潰瘍の好発部位であった.分水嶺近傍潰瘍の平均年齢は56.7歳であった. 高位潰瘍の好発部位である分水嶺上と,潰瘍の最も少ない穹窿部とを血行動態面で比較すると,胃粘膜血液量では,分水嶺上が穹窿部に比較して有意に多く,胃粘膜血液ヘモグロビン酸素飽和度では,穹窿部が分水嶺に比較して有意に高かった.分水嶺上が高位潰瘍の好発部位である原因として,好気代謝のさかんな部位で,高齢者のためにわずかな血流障害によって胃粘膜に必要な代謝が障害され,胃粘膜の防御機能の低下をきたすことが,潰瘍発生の一因となるものと考えられた.
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鍵山 惣一, 岡崎 和一, 坂本 芳也, 田村 智, 中田 博文, 森田 雅範, 中澤 慶彦, 山本 泰朗, 山本 泰猛
1987 年 29 巻 7 号 p.
1455-1462_1
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
choledochoceleの病態生理解明の一助として,過去6年間に経験した4例中3例に対し,cele内圧,開口部圧を経内視鏡的に測定した.その結果,全例においてcele開口部に乳頭部運動に類似したphasic activityが認められた.2例において,cele開口部の運動は正常人の乳頭部運動とほぼ同様であったが,1例においては通常の乳頭部運動に比し頻回であった.この1例においては,cele内圧は高値(27mmHg)であったが,他の2例は正常圧であった.celeの形成機序に関して,cele内圧正常例では先天的要因が主である一方,cele内圧高値例では,後天的要因として,内圧上昇がcele径の増大に関与している可能性も考えられた.
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―膵胆道疾患およびESTに与える影響について―
秋山 哲司, 富士 匡, 足立 佳世子, 佐々木 敏行, 田中 慎也, 播磨 健三, 中田 和孝, 大村 良介, 野口 隆義, 天野 秀雄, ...
1987 年 29 巻 7 号 p.
1465-1471_1
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
昭和53年から昭和60年まで山口大学第1内科において施行された,ERCP症例1,225例と内視鏡的乳頭括約筋切開術(以下EST)症例254例のうち,傍乳頭憩室を合併したものについて臨床的検討を加えた. その結果,ERCP1,225例中176例(14.4%)に傍乳頭憩室を認め,とくに胆管結石および良性乳頭部狭窄に高率で,その多くは乳頭上部に,まれに乳頭下部に存在していた. 傍乳頭憩室合併例におけるESTでは,43例中7例に切開の大きさや方向に制約をうけ,全EST症例中の再発結石5例全例が傍乳頭憩室の合併例であった.傍乳頭憩室合併例ではESTに際し手技的な制約をうけるが,切開方向に細心の注意をはらいながら,できるだけ大きい切開とその後の追加切開が必要であることが示唆された.
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宮本 正喜, 三戸岡 英樹, 誉田 芳孝, 永田 浩一, 広畑 成也, 末広 逸夫, 広瀬 良和, 佐伯 進, 玉田 文彦, 斉藤 寛, 武 ...
1987 年 29 巻 7 号 p.
1472-1479
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
総胆管結石に対し,内視鏡的結石除去をより有効に,かつ安全に行うためにトルクメーター装置を備えた砕石バスケットカテーテルを考案した.手元操作部に装着したトルクメーターの表示は,先端のバスケット牽引力と有意な相関が認められたので,In vitroに,総胆管結石および胆嚢内結石の砕石を行い,砕石バスケットの使用限界をトルクメーター値で求めた.バスケット断線時のトルク値から安全率をかけることにより得られた安全限界は6.8kgf・cmであった.この安全限界内で,炭酸カルシウムやリン酸カルシウムを主成分とする結石の一部は砕石できなかった.In vivoにおいても,総胆管結石砕石患者19例に対し,砕石施行時のトルクメーター値と回収した結石成分との関係は,In vivoで得られた結果とよく一致していた.このことから,トルク値から逆に結石の性状をも推測できた.高い硬度の総胆管結石に際して,トルクメーター表示の安全限界内で砕石バスケットを操作することは,バスケット断線や,それによる総胆管損傷を回避でき,臨床上有用性が高いと考えられた.
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中野 浩, 高野 映子, 渡辺 真, 斉藤 治人, 山本 尚人, 宮地 育郎, 山内 雅博, 堀口 祐爾, 中島 澄夫, 伊藤 圓, 宮川 ...
1987 年 29 巻 7 号 p.
1480-1484_1
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は62歳,男性.主訴は心窩部不快感.はじめ下部食道の小粘膜下腫瘍の形で発見された.生検で癌の所見えられず,経過観察する.1年4カ月後,隆起の表面に現れたびらんよりの生検で癌と診断され,手術施行,病変は3.2×2.2cmの大きさの範囲にみられる小粘膜下腫瘤の集合よりなり,その一部の表面にびらんが認められた.病理組織診断は基底細胞癌で非常に稀な食道癌であった.癌細胞の浸潤は粘膜下層までにとどまっていたが,リンパ節転移は食道周辺,および腹腔内まで認められ,約1年後,癌性腹膜炎で,不幸な転帰をとった. この症例の,内視鏡所見は,この癌の発生部位を考えると,この癌の初期像を反映しているものと考えられ,今後,食道小粘膜下腫瘍の鑑別診断の中にこの形の癌を入れる必要がある.
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西村 和彦, 松井 亮好, 清田 啓介, 向井 秀一, 趙 栄済, 小林 正夫, 安田 健治朗, 吉田 俊一, 今岡 渉, 藤本 荘太郎, ...
1987 年 29 巻 7 号 p.
1485-1490_1
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は52歳の男性で,人間ドックにおける上部消化管X線検査にて食道の巨大な隆起性病変を指摘された.病変はX線的には食道入口部直下より有茎性に発育し,長さ18cmに及ぶとともに3葉に分岐した巨大な腫瘤であった.内視鏡検査でも同様の所見であったが,腫瘤の表面はほぼ正常な食道粘膜に被われており,粘膜下腫瘍の形態であった.外科手術の適応とも考えられたが,患者の強い希望および完全生検の意味も含めて,とりあえず肛門側の1葉を内視鏡的に高周波スネアーを用いて切除した.切除腫瘤は病理組織学的に粘膜下腫瘍に属する良性のFibrovascular polypとの診断を得たため他の二葉も内視鏡的に切除したが,何らの合併症もなく安全に施行しえた.Fibrovascular polypは自験例も含め本邦において17例の報告があるが,本例が最大の腫瘤であり,他の上部,下部消化管を含めても内視鏡下に切除,回収し得た腫瘍性病変としては内外の文献上最大のものと思われる.
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島 仁, 渡部 博之, 那須 宏, 荒川 弘道, 正宗 研
1987 年 29 巻 7 号 p.
1491-1496_1
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は66歳の男性.胃集団検診を受けた際に,胃の変形を指摘され近医受診,内視鏡検査で食道に隆起性病変を指摘され当科へ入院した.食道X線検査では,気管分岐部の上縁から下縁にかけ食道右側壁に辺縁平滑で内腔に突出する隆起が2個認められた.内視鏡検査では,上門歯列より27cmに,正常粘膜に覆われた表面平滑な腫瘍が2つ連続してあり,bridging foldはなくルゴール染色でも腫瘍の表面は染色されなかった.エタノール局注後の生検,有棘針穿刺生検細胞診では壊死物質のみで確定診断はつかなかったが,胸部CT,電子リニア式超音波内視鏡などより平滑筋腫と診断,手術を施行した.手術所見では壁内に22×25×23mm,12×7×7mm大の表面平滑,半球状,充実性,弾性硬な腫瘍があった.病理学的には,長紡錘形細胞が索状をなして交錯しており,核分裂や核の異型はなくいずれも良性の平滑筋腫であった.多発性食道平滑筋腫の報告は比較的稀であり,文献的考察を含め報告した.
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渡辺 雅男, 升田 和比古, 浅沼 建樹, 洪 敏幸, 岸野 吉博, 安達 哲夫, 島袋 隆, 宮崎 有広, 渋谷 譲, 仲 紘嗣, 河内 ...
1987 年 29 巻 7 号 p.
1499-1505_1
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例1は73歳の男性で,急性心筋梗塞(以下AMI)で当院入院中にIIc型早期胃癌を発見され,心筋梗塞発作138日目に再度胃内視鏡検査施行3時間後に胸痛,呼吸困難を訴えた.心電図,血清酵素の推移より前壁中隔再梗塞と診断したが,5日後に心停止をきたして死亡した. 症例2は74歳の男性で,健診にて発見されたIIa型早期胃癌の内視鏡的切除施行中に頻拍,血圧上昇出現し患者も胸苦を訴えたため内視鏡を抜去した.心電図,血清酵素の推移よりAMIと診断した.その後特別な合併症もなく3カ月後に軽快,退院した. 内視鏡検査による偶発症としてのAMIは致命率も高く,特に心循環系予備力の低下した高齢者に対しては,前処置薬をはじめ十分な注意が必要である.
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張 正和, 土岐 文武, 石黒 久貴, 戸松 成, 大井 至, 神津 忠彦, 竹内 正, 小幡 裕, 鈴木 衛, 大橋 正樹, 吉川 達也, ...
1987 年 29 巻 7 号 p.
1506-1512_1
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡的膵・胆管造影時,ファータ乳頭開口部の異常開大と粘液の貯留が認められた膵疾患3例と胆道疾患1例を経験した.4例の診断は膵癌2例,膵嚢胞腺腫1例と胆道の腺腫内腺癌1例であった.いわゆる粘液産生膵腫瘍では,透亮像を呈する均一に拡張した膵管像とファータ乳頭口の開大に粘液の貯留が特徴的な所見と言われている.今回われわれは胆道腫瘍の1例にも同様の乳頭内視鏡像を経験した.また膵癌の1例において乳頭口は常に開大しているとは限らないことを示唆する所見も経験した. 膵癌の2例は手術に至らなかったが経腹腔動脈の抗癌剤の投与で自覚症状の軽快と腫瘍の縮小が得られた.手術不能の粘液産生膵癌に対しては副作用に留意し,積極的な抗癌剤の投与は臨床的意義があると思われる.
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大川 清孝, 北野 厚生, 小畠 昭重, 押谷 伸英, 吉安 克仁郎, 日置 正人, 橋村 秀親, 松本 誉之, 菅 保夫, 宮城 邦栄, ...
1987 年 29 巻 7 号 p.
1515-1521_1
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
Rutterは,孤立性直腸潰瘍には,多発潰瘍や非潰瘍型がしばしばみられることより,孤立性直腸潰瘍症候群と呼ぶことを提唱した.本症は比較的稀な疾患であり,しかも多彩な肉眼像を示すことより,本邦において充分に検索されているとは言い難い. 著者らは,隆起型(症例1),潰瘍と隆起をもつもの(症例2),潰瘍型(症例3)の異なる肉眼像を示す3例を経験したので,内視鏡像を中心に報告した.特に症例2に関しては,約2年の経過観察を行い,瘢痕化までの内視鏡像を追求し得た.3症例とも組織学的には本症の特徴を備えており,組織学的な診断は容易であった.3症例とも他院にて直腸癌を疑われており,本症が充分に認識されていない場合,過大な手術が行われる可能性がある. 本症の概念,臨床像,内視鏡像などが広く認識される必要があると考え,本症3例を報告した.
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日本消化器内視鏡学会
1987 年 29 巻 7 号 p.
1522-1626
発行日: 1987/07/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー