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苅田 幹夫
1987 年 29 巻 8 号 p.
1655-1668_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃内逆流胆汁と胃の腸上皮化生の関係を明らかにするため,胆汁の逆流の高度な例でみとめられた前幽門洞の発赤部や残胃吻合部の発赤部において,メチレンブルー直接法を用いて,色素吸収能の有無を確かめるとともに,その領域の生検による粘液組織学的検討を行った。と同時に,メチレンブルー直接法に基づいた幽門洞の腸上皮化生の拡がりと逆流胆汁との関係について検討した. 逆流胆汁については,早朝胃内貯留液を用いて,胆汁酸の分離・定量を,高速液体クロマトグラフィーにより行った. その結果,胆汁の逆流の高度な例でみとめられた前幽門洞の発赤部や残胃吻合部の発赤部には,メチレンブルー色素の吸収はみとめられず,その組織は,goblet cell metaplasia近似のものであった.そして,メチレンブルー法に基づいた幽門洞の腸上皮化生域が拡大するにしたがい,コール酸やデオキシコール酸といった1次胆汁酸のタウリンおよびグリシン抱合型が,胃液中に高濃度に認められることが判明した. 一方,各種の胃疾患別の検討では,1次胆汁酸濃度が,胃びらんで低く,胃潰瘍で高い傾向があり,両者の間で有意差を認めることから,びらんよりも胃潰瘍において,胃液中胆汁酸との関係が深いことが示唆された.
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苅田 幹夫
1987 年 29 巻 8 号 p.
1671-1682_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡的メチレンブルー法に基づいた幽門洞の腸上皮化生域の拡大にともない,腸上皮化生粘膜の増殖帯および表面構造が,どのように変化していくのかを検討するとともに,胃液中の胆汁酸がその過程に及ぼす影響について検討を行った.なお,増殖帯の検討には,オートラジオグラフィーを用い,表面構造については,走査電顕を用いて,microvilliの形態を中心に,その検討を行った.さらに,胃液中の胆汁酸は,高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した. その結果,幽門洞における腸上皮化生域の拡大にしたがい,増殖帯は,腺底部へと短縮してゆき,腺頂部のmicrovilliは,成熟していく傾向がみられた. また,ほぼ同一の腸上皮化生の拡がりを示す群のなかで,胃液中の1次タウリン抱合型胆汁酸の濃度が高いほど,増殖帯の腺底部への短縮がみられ,microvilliが成熟してくる傾向があり,1次タウリン抱合型胆汁酸は,腸上皮化生の増殖帯を刺激し,その位置を腺底部への短縮させ,腺上部のmicrovilliを成熟させる作用をもつことが示唆された.
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鄭 鳳鉉
1987 年 29 巻 8 号 p.
1683-1693
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
進行胃癌の初期病変を解明する目的で,陥凹型胃癌1,221病変(早期癌576病変,進行癌645病変)について,臨床病理学的に検討した.その結果:1)UI(-)早期癌は15mm以上で病変数の急激な減少がみられ,粘膜下層への浸潤も高率であった.2)Borrmann2,3型進行癌は20mm以上で急激な病変数の増加がみられた.3)粘膜固有層内で圧排性増殖様式を示す癌は深部浸潤傾向が強かった.この増殖様式を示す早期癌はUI(-)癌が多く,肉眼的には癌巣辺縁粘膜に顆粒状隆起のみられることが多かった.4)一方,粘膜下層での増殖様式は,UI+(+)早期癌が非結節性であったのに対し,UI(-)早期癌では結節性が多く,脈管侵襲も高度であった.以上の結果より,Borrmann2,3型進行胃癌は少さいUI(-)早期癌より急速に形成される進行癌であり,その初期病変の肉眼的特徴は癌巣辺縁の顆粒状隆起所見であると考えられた.
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近森 文夫, 小林 幸雄, 高瀬 靖広
1987 年 29 巻 8 号 p.
1695-1701
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡的栓塞療法施行時に得られたendoscopic varicerography(EV)を経皮経肝門脈造影による知見をもとにして判定し,食道静脈瘤を介する門脈側副血行路について検討した。対象は,1981年10月~1985年9月までに本治療法を施行した症例264例中,明瞭なEV像の得られた126例である. EVにより,食道静脈瘤を介する門脈側副血行路は,左胃静脈,噴門静脈叢,短胃静脈などの食道静脈瘤血液流入路と,食道静脈瘤以外の血液排出路である食道外シャントに大別された.各側副血行路の造影頻度は,左胃静脈52.4%,噴門静脈叢47.6%,短胃静脈8.7%,食道外シャント14.3%であった。以上から,内視鏡的栓塞療法を施行するにあたっては,EVによりこれらの血行路を判定しつつ薬剤注入量をコントロールすることによって,副作用を減らし,治療成績を向上させることができると考えられた.
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小西 二三男, 伊藤 透, 竹内 功
1987 年 29 巻 8 号 p.
1702-1706_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
10歳代の若年胃炎36例について,鳥肌胃炎16例,疣贅性胃炎13例,表層性胃炎7例を内視鏡学的に診断し,胃生検材料について組織学的,免疫組織化学的検討を加えた.鳥肌胃炎は幽門腺域に無数の2~3mm大の小顆粒が出現し,その組織学的主体はリンパろ胞形成であった.隆起頂部にMB染色にて微小腸上皮化生を6例に認め,組織学的に4例に腸上皮化生腺管を認めた。他の胃炎ではより広い領域性の化生腺管であった.粘膜間質のリンパ球,形質細胞の胞体内免疫蛋白はほとんどの胃炎でIgA優位であり,化生上皮胞体内にsecretory componentを認めた.しかし鳥肌胃炎のろ胞内にはIgG,M,Aのリンパ球が混合し,1例には間質リンパ球にIgG優位の所見を認めた。また,化生上皮胞体内のIgAは鳥肌胃炎例に限り証明できず,腸管免疫機構として未発達であった.
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―犬胃壁における局所温度分布と組織変化―
青木 純, 鈴木 荘太郎, 三輪 剛
1987 年 29 巻 8 号 p.
1709-1714_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
近年,癌の集学的治療法の一つとして,温熱療法が注目されており,副作用の少ない治療法として評価されているが,消化器内視鏡領域における研究は十分ではない.筆者らはceramic製contact probeの一つであるfrosted probeを用いた,低出力Nd-YAG laserによる内視鏡下局所温熱療法の基礎的研究を行ない,局所温度分布及び組織学的検討を行った.その結果,frosted probeによる3Wの低出力Nd-YAG laser照射によって,同心球状の範囲に温熱効果を惹起させうること演確認された.温熱効果による組織変化は,従来の非接触照射及び接触照射の効果であるcoagulationあるいはvaporizationなどと比較して,より浅く幅広い範囲に及んでいた.
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板倉 勝, 松崎 松平, 門坂 利雄, 谷 札夫, 幕内 博康, 熊谷 義也
1987 年 29 巻 8 号 p.
1715-1721
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
食道静脈瘤を有する肝硬変症患者においてグルカゴン負荷前後の食道内視鏡所見の変化につき検討を加えた.グルカゴン静注直後から認められた変化は静脈瘤緊満度の増加,赤色調の増加,粘膜の細血管網の顕著化,red color signの出現と増加であったが,グルカゴン負荷による血流増加にともないhematocystic spotからの出血をきたした症例も認められた.内視鏡的硬化療法を施行した症例においては,硬化療法により血管内腔の血流が途絶した場合には,グルカゴン負荷後も形態及び色調に変化は認められなかった.一方,平坦化した静脈瘤がグルカゴン負荷後,高さを増す症例が認められ,内腔の血流残存が示唆された. グルカゴン負荷食道内視鏡は肝硬変患者における静脈瘤への門脈圧の関与の程度を明らかにするうえで有用であり,硬化療法の効果判定にも役立つと考えられる.
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唐仁原 寛, 青崎 真一郎, 丸田 修士, 榊 範裕, 下鑪 研吾, 徳重 順治, 中原 晋一, 有村 謙七, 肥後 公彦, 日高 覚, 吉 ...
1987 年 29 巻 8 号 p.
1722-1727_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡観察時に見られる分水嶺を指標としてそれより上方に観察される部分を穹窿部と定義し,この部に存在する良性潰瘍15例16病変,胃癌15例15病変について大きさ,肉眼形態,およびその占居部位について検討した.良性潰瘍,胃癌ともに後壁に多く良性潰瘍は,特に分水嶺近傍と穹窿部の天井付近に多かった.分水嶺近傍の潰瘍は,大きさ15mm以上で円形,類円形のものが多く,天井近傍の潰瘍は10mm以下の浅いものが多かった.胃癌15例中,5例(33.3%)の早期癌がみられ,ほとんどが陥凹型の癌であった.また5例中4例が小胃癌で,ヒダ集中を伴ったものはなかった.
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―再発を含めて―
芦田 潔, 安藤 三男, 名木田 章, 折野 真哉, 田中 実, 林 勝吉, 白木 正裕, 浅田 修二, 平田 一郎, 大柴 三郎
1987 年 29 巻 8 号 p.
1728-1737
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
著者らは15歳以下の小児226例に対して,のべ340回の上部消化管内視鏡検査を行った.このうち,胃・十二指腸潰瘍は32例にみられ,胃びらんに次いで多い疾患であった.その内訳は,胃潰瘍3例,十二指腸潰瘍29例で,圧倒的に十二指腸潰瘍が多かった.男女比を年齢別にみると7~11歳の年齢層では男女差はみられなかったが,性別差が顕著になる12~15歳では3:1で男児が多く,全体としては男児は女児の約2倍であった.小児潰瘍では,手術や重篤な基礎疾患などが原因となって発症する潰瘍をsecondary ulcer,直接の原因が不明なものをprimary ulcerとして,病型分類されることが多い.この病型分類によると自験例では,primary ulcerは十二指腸潰瘍24例と胃潰瘍3例であり,secondary ulcerは十二指腸潰瘍5例であった.成人や老人をも含めた十二指腸潰瘍全症例に占める小児の割合は約3%に過ぎなかったが,発見頻度は小児で著しく高かった.これは,積極的に内視鏡検査が行われている今日でもなお,限定された症例に小児内視鏡検査が行われていることを示唆するものと思われる. 十二指腸のprimary ulcer 18例の累積再発率は12カ月22%,24カ月55%であり,小児でも再発が高率であった.したがって,小児においても維持療法を含めて,慎重な経過観察が必要である.
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尾関 規重, 宮治 眞, 星野 信, 早川 富博, 吉岡 宣夫, 蜂矢 仁, 竹島 彰彦, 川村 益生, 大西 勇人, 塚田 勝比古, 片桐 ...
1987 年 29 巻 8 号 p.
1738-1745
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
28例の背側・腹側膵管非癒合例のうち胆道疾患などの併存疾患を除いた11例を対象として臨床症状,血清アミラーゼ,膵内・外分泌機能検査,膵管像について検討した.男女比は1:0.8年齢は33歳~80歳,平均年齢54.7歳であった.11例のうち2例に比較的強い膵炎様の症状を認めたが,残り9例は軽度の腹痛または腹部不快感であった.血清アミラーゼは11例中5例(45%)に軽度上昇を認めた.これらの異常は飲酒歴を有している例に多くみられた.50gO-GTTは11例中4例に施行され,うち境界型2例,糖尿病型1例の計3例に耐糖能異常がみられた.P-Sテストは11例中5例に施行され,4例に異常を認め,うち2例はM.B.C.を含む2因子の低下であった. 膵管像は腹側膵管像の異常が11例中2例(18%),背側膵管像は6例中3例(50%)に異常を認めた.以上のごとく,本疾患の症状は軽度であるが,膵機能的には異常を示すものが多く,その原因として,従来から言われている副乳頭における膵液の相対的うっ滞とそれに加えて,飲酒などの負荷が考えられた.しかし,個々の症例についてみると,P-Sテストと膵管像の障害の程度との間に解離がみられることや,背側膵管領域のみでなく,腹側膵管領域にも異常がみられることから,前述の原因に加えて,膵実質の先天的な脆弱性も考慮する必要があると思われた.
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森瀬 公友, 稲垣 貴史, 飯塚 昭男, 桑原 由孝, 杉江 元彦, 松永 勇人, 嶋田 満, 中田 耕一, 前田 吉昭, 木村 昌之, 伊 ...
1987 年 29 巻 8 号 p.
1746-1754_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
5年以上経過観察を行った20例のクローン病症例を対象として,クローン病の長期経過における腸管合併症について検討した.クローン病20例の腸管合併症は,瘻孔形成8例,小腸穿孔1例,腸閉塞2例,腫瘤形成による狭窄7例,下血3例であった.瘻孔形成8例11回中,内科的治療は5例6回に奏功した.5例中2例は腸管―腸管瘻孔が残存したままで,それぞれ6年および11年経過観察しているが,クローン病は寛解した状態にある.クローン病の腸管合併症のため20例中9例に手術が施行された.瘻孔形成4例,腸閉塞2例,腹膜刺激徴候3例(1例は穿孔)であったが,9例中8例が3年以内に再発した.クローン病の術後再発率は高く,穿孔等の重篤な合併症のない限り,クローン病の腸管合併症例,とくに瘻孔形成症例は内科的治療を原則として行うことが必要であると考えられた.
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益満 博, 吉田 貞利, 坪水 義夫, 岡本 平次, 佐竹 儀治, 藤田 力也
1987 年 29 巻 8 号 p.
1755-1762_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
大腸早期癌の深達度診断は,内視鏡的ポリペクトミー後,病理組織学的に決定されているのが現状である.今回,われわれは昭和大学藤が丘病院にて過去約10年間に経験した大腸早期癌37病変について,内視鏡所見から深達度診断が可能であるか否かを検討した.また,良性腺腫との比較を行うために5mm以上の無茎性腺腫35病変を対照として用いた.無茎性のsm癌は(1)非対称形(asymmetry),(2)陥凹と平坦化(depression or flat surface),(3)砂粒状凹凸(sandy or rugged surface),(4)病変の堅さ(solid impression)の所見を重複して示すものが多く良性腺腫やm癌と鑑別することが可能であった.無茎性のsm癌が以上のように特徴的所見を示すのは,病変の中で癌組織の占める割合が多く,表面に露出した癌の部分を内視鏡的に観察しやすいためと考えられた.有茎性のsm癌では無茎性のものに比べて腺腫成分が多いため良性腺腫との鑑別が困難で,深達度診断は不可能であった.
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堀江 泰夫, 島 仁, 長崎 明男, 太田 弘昌, 荒川 弘道, 正宗 研
1987 年 29 巻 8 号 p.
1765-1773
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
吻合部潰瘍に合併した胃空腸横行結腸瘻の報告は稀で,本邦で50数例を数えるのみである.症例は27歳男性,22歳時十二指腸潰瘍穿孔にて胃亜全摘術(Billroth II法,後結腸吻合),25歳時,Billroth II法により構築された輸入脚過長による輸入脚絞扼のため急性腹症をおこし輸入脚部分切除,十二指腸空腸吻合,胆嚢瘻の緊急手術をうけた.手術6カ月後より心窩部痛出現.内視鏡検査で吻合部口側に潰瘍を指摘されH2受容体拮抗剤を服用した.手術後約2年して比較的突然に水様性下痢,糞臭曖気,腹痛などが出現.検査で軽度の貧血,低蛋白血症,低cholestero1血症,低Ca血症,各種吸収試験で糞便脂肪量の増加,Schilling試験D-xylose試験の中等度異常を認めた.X線検査で,胃空腸横行結腸瘻を認め,内視鏡にて胃空腸吻合部よりやや肛門側に横行結腸に開口する瘻孔を確認し胃空腸横行結腸瘻と診断した.
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高安 博之, 椎名 泰文, 小長谷 稔, 武藤 信美, 原沢 茂, 三輪 剛
1987 年 29 巻 8 号 p.
1774-1778_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は54歳の男性で20年前に十二指腸潰瘍のため幽門側胃部分切除,BillrothII吻合術の既往がある.下血を主訴に入院した.入院時の緊急内視鏡検査で胃粘膜隆起を認め,その隆起の後壁側粘膜に出血中の露出血管がみられたため,純エタノール局注を行い止血しえた.同部位は11カ月前の内視鏡検査で発赤,びらんとして認められており,今回の出血は内視鏡的にDieulafoy様の形態を示した潰瘍からのものと考えた.止血後,吻合部にみられた粘膜隆起の一部を内視鏡的に高周波切除し,組織学的に腺窩上皮の過形成,粘膜および粘膜下層に腺管の増生と嚢胞状拡張を認め,Gastritiscysticapolyposaと診断した.
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竹原 佳彦, 春間 賢, 隅井 浩治, 徳毛 健治, 吉原 正治, 村上 信三, 木村 学, 福原 一作, 梶山 梧朗, 田原 栄一
1987 年 29 巻 8 号 p.
1779-1784_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
いわゆる早期胃悪性リンパ腫において,その経時的な形態変化が,胃癌の悪性サイクルに類似した症例を報告する.胃悪性リンパ腫は,その病像の多彩性を1つの特徴とし,経過観察中に,形態的な変化を呈するものも多い.本症例は,内視鏡および生検材料にて経時的に観察し得たものであるが,初診時認められた大きな潰瘍性病変は,潰瘍縁に存在したびらん性扁平隆起とともに縮小傾向を示し,摘出胃では,二カ所の扁平隆起を示す悪性リンパ腫病巣を残し,これを囲む部位には広範な潰瘍および瘢痕のみが認められた.このことより,潰瘍で腫瘍病巣が崩壊脱落し,その再生過程で病巣の縮小分断の像を呈した可能性が示唆された.
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小林 壮光, 山下 昇史, 森 正光, 遠藤 高夫, 楢崎 義一, 矢花 剛, 赤保内 良和, 谷内 昭
1987 年 29 巻 8 号 p.
1787-1792_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
出血性素因を有し,内視鏡的ポリペクトミーの適応とならない消化管隆起性病変に対して,Nd-YAGレーザーを用いて内視鏡レーザー治療を試みた.症例1は71歳男性で慢性リンパ性白血病に胃ポリープ(Group III)を,症例2は77歳男性で血小板減少を伴う肝硬変症にS字状結腸ポリープ(Group 4)を,症例3は75歳男性で再生不良性貧血に早期胃癌(I型)を合併した例である.3症例とも術中,術後に出血などの偶発症をみることなく,病変をほぼ完全に焼灼し得た.今回の症例数は未だ3例と少ないが,本法は出血性素因症例に対しても適応となるばかりでなく,患者の予後の上でも有用と思われる.
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三宅 周, 川口 憲二, 尾上 公昭, 杉山 明, 藤原 雅親, 安原 高士, 河野 宏
1987 年 29 巻 8 号 p.
1793-1797_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
肝紫斑症を合併した馬鈴薯肝の1例を経験したので報告する. 症例は61歳の女性で,1986年1月に右季肋部痛が出現したため,2月末に某院で精査をうけ,肝に凹凸があり,腫瘤かもしれないといわれ,4月に当院をおとずれた.外来にて超音波検査,CTスキャンなどの精査をおこない,肝腫瘤がうたがわれたので精査を目的に6月に入院した. 入院後の腹腔鏡検査では,両葉に塊状隆起および深い陥凹があり,両葉表面に青紫色の小斑点がびまん性にみられた.生検肝組織では,小葉構造の変形は軽度にとどまり,小葉内に数コの間腔をみとめ,グリッソン鞘内の門脈およびこれに接する静脈洞も拡大していた.これらの所見より,馬鈴薯肝および肝紫斑病と診断した. 肝紫斑症を合併した馬鈴薯肝の症例の報告は,著者らの調査した範囲内では見当たらないので,文献的考察を加えて報告する.
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藤崎 順子, 峯 徹哉, 秋元 公彦, 吉田 繁夫, 長谷川 吉康
1987 年 29 巻 8 号 p.
1798-1805
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
消化管浸潤を伴う,マクログロブリン血症は極めて稀である.われわれは,胃,小腸に非連続性に浸潤を示したマクログロブリン血症の1例を経験した.症例は,49歳女性.昭和56年当科入院しマクログロブリン血症と診断された.この時点では消化器症状はなく,上部消化管内視鏡検査では,異常を認めなかった.昭和60年,悪心,嘔吐,体重減少が出現し,胃体上部から胃角部にびまん性に発赤,顆粒状変化,びらんを認め,小腸トライツ靱帯付近に狭窄,粗造な顆粒状の粘膜面,ヒダの集中像を認めた.それぞれの部位の生検では異型性の強い小リンパ球様細胞の腫瘍性増殖が認められ,Diffuse, medium sizedcellタイプの悪性リンパ腫と診断された.PAP法でこの細胞は抗IgM,抗x抗体で染色された.本疾患の消化管病変に対する,X線,内視鏡検査の報告は極めて少なく,若干の文献的考察を加えて報告した.
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山田 拓司, 太田 亘, 岩村 健一郎
1987 年 29 巻 8 号 p.
1806-1811_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は61歳の男で,著明な肝腫大を認め入院した.11年前に右眼球悪性黒色腫で右眼球摘出術を受けた既往がある.肝表面に結節を触知したが,肝硬変を示唆する所見はなかった.血液生化学検査成績では,悪性腫瘍の存在が疑われ,既往歴,理学所見,血液生化学検査成績から悪性黒色腫の肝転移を推定した.肝シンチ,超音波検査,CTから肝内に多発する腫瘤の存在が認められ,その大きさ,性状は多様であったが,腹腔鏡検査により転移性肝悪性黒色腫を確認した.肝の悪性黒色腫は25%にamelanotic melanomaが存在することをも考慮しなければならないが,本症例において,腹腔鏡下に形,大きさの異なる多発する黒褐色調の腫瘤を観察することができた.一部の腫瘤には,中央に癌臍を認め転移性悪性腸瘍の特徴を有していた.腹腔鏡直視下生検の切片は黒褐色であり,組織学的にも悪性黒色腫を確認することができた.本症診断における腹腔鏡検査の意義を強調したい.
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若松 秀樹, 小松 寛治, 菅原 善昭, 三浦 雅人, 新藤 雅章, 古謝 進, 高野 一彦, 増田 弘毅
1987 年 29 巻 8 号 p.
1812-1818_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は74歳,女性.4年前に膵体尾癌及び肝転移の診断のもとに化学療法を施行し,その後,通院治療を行っていた。昭和60年8月頃より顔面紅潮が出現したため,再精査を行った.腹部超音波,CTで膵体尾部に約5.7×2.8cmの石灰化を伴う腫瘤を,肝両葉に多数の腫瘤を認め,ERPで主膵管の体尾部での狭窄・断裂を,腹部血管造影で膵体尾部,肝の腫瘍は共にhypervascularであった.腹腔鏡下膵生検で卵円形細胞の充実性結節状,蜂巣状の腫瘍性増殖を認めたが,異形性は少なく,Grimelius染色で細胞質に好銀性顆粒が,電顕でも顆粒が証明され,A型膵カルチノイドと診断した.その後の胸壁リンパ節転移生検のPAP染色でセロトニン強陽性,ガストリン弱陽性,電顕でEC細胞,G細胞類似の顆粒を認めた.顔面紅潮はカルチノイド症候群の1症状と考えられた.
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山川 正規, 村田 育夫, 船津 史郎, 千住 雅博, 田中 俊郎, 長部 雅之, 橘川 桂三, 今西 建夫, 牧山 和也, 原 耕平, 原 ...
1987 年 29 巻 8 号 p.
1821-1825_1
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
下血およびイレウス症状を呈し,諸検査にて小腸アミロイドーシスに伴った限局性虚血性回腸炎と考えられた1例を報告する. 症例は71歳,男性で,10年来慢性気管支炎として経過観察されていた.今回,気管支肺炎にて入院し,腹痛,下痢,下血が出現し,次第にイレウス症状を呈してきた.イレウス管よりの小腸造影では,回腸末端部より口側へ約40cmにわたりthumb-printing様の回腸径の狭小化と壁不整がみられた.大腸ファイバースコープによる回腸末端部の観察では,回腸粘膜のびらん,出血,潰瘍形成を認めた.これらの症状や病変は中心静脈栄養とイレウス管による腸管安静にて消失した.回腸末端部,直腸,腎生検によりアミロイドの沈着が認められ,全身性アミロイドーシスと考えられた.その病像や経過より限局性虚血性回腸炎の像を呈していたと考えられたので,若干の考察を加えて報告する.
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日本消化器内視鏡学会雑誌
1987 年 29 巻 8 号 p.
1826-1841
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
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日本消化器内視鏡学会雑誌
1987 年 29 巻 8 号 p.
1841-1852
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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日本消化器内視鏡学会雑誌
1987 年 29 巻 8 号 p.
1852-1860
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
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日本消化器内視鏡学会雑誌
1987 年 29 巻 8 号 p.
1861-1869
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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日本消化器内視鏡学会雑誌
1987 年 29 巻 8 号 p.
1869-1879
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会雑誌
1987 年 29 巻 8 号 p.
1879-1895
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会雑誌
1987 年 29 巻 8 号 p.
1895-1901
発行日: 1987/08/20
公開日: 2011/05/09
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1987 年 29 巻 8 号 p.
1936
発行日: 1987年
公開日: 2011/05/09
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