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奥平 勝
1987 年 29 巻 9 号 p.
1941-1955
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
イヌ実験胃癌およびヒト早期胃癌の胃粘膜血流を経内視鏡的水素ガスクリアランス法を用い測定し,粘膜血行動態面より胃癌の病態について検討した. イヌ実験胃癌では,ENNG投与開始後発癌する15カ月目までは胃粘膜血流量は,徐々に低下したが,発癌後は癌病巣部血流は32カ月目まで有意に増加し,また,内視鏡的にみられた発赤,ビラン,潰瘍,隆起の病変別に血流をみたところ,隆起型で最も高かった.ことに発癌初期の形態と考えられる発赤についてみると早期にみられた発赤は,晩期に生じたものに比べ増加していた. 一方,ヒト早期胃癌では健常粘膜部に比べ癌病巣部で血流は増加しており,病型,組織型別にみると,IIb型では高く,中分化型で低い傾向がみられた.また,大きさを1cm
2以下,1cm
2以上に分けて検討したところ,1cm
2以下の方が血流は増加していた. 以上のことよりイヌ実験胃癌,ヒト胃癌ではより早期のもの程血流は増加していた.
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高橋 真
1987 年 29 巻 9 号 p.
1956-1971
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃集団検診における内視鏡的画像診断成績の向上を図るとともに,胃癌の発育経過・速度を究明する目的で,結果的に経過観察された胃癌47例につき,内視鏡的立場から遡及的検討を行った.その結果,全体に淡い発赤斑,やや不整な白苔の一部に発赤を伴うもの,小出血に注意して観察,読影することが胃癌の早期発見につながると思われた.その際,癌組織型の違いによる所見の差を考慮する必要を認めた.所見の推移と観察期間との関係から,陥凹型胃癌では,1)発育の初期に深部浸潤を開始するもの,2)長期間粘膜内にとどまっているものとがあり,胃癌の深部浸潤において粘膜筋板がbarrierの役割をしていることが推定された.腫瘍径の経時的観察から,1年間に拡大する面積は平均103mm
2で,経過とともに緩徐ではあるが増大する傾向が認められ,中村の発育曲線との対比では,早期胃癌ではS=0.1t
2とほぼ一致し,進行胃癌ではS=0.3t
2に近似した.
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徳冨 正, 春間 賢, 隅井 浩治, 吉原 正治, 忌部 明, 大越 裕章, 豊島 仁, 村上 信三, 福原 一作, 木村 学, 徳毛 健治 ...
1987 年 29 巻 9 号 p.
1973-1979_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
早期癌16例,n(+)表在癌3例,計19例の食道表在癌(mm癌4例,sm癌15例)を対象に,食道癌の早期診断における現状と問題点について検討を行った.sm癌では15例中12例(80%)に軽度の食道症状を認め,X線による病変の描出も15例中13例(87%)まで可能であり,症状やX線による病変の拾い上げが期待出来た.しかし,mm癌は4例とも無症状であり,X線による病変の描出も4例中2例(50%)にすぎず,症状やX線による拾い上げは困難であった.より早期のmm癌やep癌の診断のためには,現在のところルゴール散布を併用した食道の注意深い内視鏡的親察が最も有効な発見手段であると考えられた.
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―内視鏡的メチレンブルー染色法の再評価―
多田 正弘, 苅田 幹夫, 広田 和子, 川野 博章, 重枝 正樹, 河内山 高史, 柳井 秀雄, 岡崎 幸紀, 竹本 忠良
1987 年 29 巻 9 号 p.
1980-1988_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡的メチレンブルー染色法によって認識される腸上皮化生が,胃粘膜に存在するすべての腸上皮化生と考えてよいのか.また,メチレンブルー染色法によって診断できない腸上皮化生は,どういう性状で,どのように分布しているかを中心に検討した.そのために,内視鏡的メチレンブルー染色後に,同部をstrip biopsyによって切除し,新鮮標本ならびにA・H法による実体顕微鏡観察,さらに組織学的検討により明らかにした.その結果,メチレンブルー染色法によって認識される腸上皮化生はbrush borderが腺頂部に存在するもので,brush borderが腺頂部にないものは,メチレンブルーによってその存在を明らかにすることはできない.また,メチレンブルー染色によって染色される領域は,alucian blueに染色される領域とほぼ一致するが,goblet cell metaplasiaにおいては,メチレンブルーでは染色されないが,alucian blueでは染色される.このメチレンブルーに染色されない腸上皮化生は,体部,中間帯においてはほとんどみられないが,幽門洞においては,約20%認められた.内視鏡的メチレンブルー染色法によって認識される腸上皮化生が,胃粘膜に存在するすべての腸上皮化生と考えてよいのか.また,メチレンブルー染色法によって診断できない腸上皮化生は,どういう性状で,どのように分布しているかを中心に検討した.そのために,内視鏡的メチレンブルー染色後に,同部をstrip biopsyによって切除し,新鮮標本ならびにA・H法による実体顕微鏡観察,さらに組織学的検討により明らかにした.その結果,メチレンブルー染色法によって認識される腸上皮化生はbrush borderが腺頂部に存在するもので,brush borderが腺頂部にないものは,メチレンブルーによってその存在を明らかにすることはできない.また,メチレンブルー染色によって染色される領域は,alucian blueに染色される領域とほぼ一致するが,goblet cell metaplasiaにおいては,メチレンブルーでは染色されないが,alucian blueでは染色される.このメチレンブルーに染色されない腸上皮化生は,体部,中間帯においてはほとんどみられないが,幽門洞においては,約20%認められた.
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―胃潰瘍の新しい時相分類の確立のために―
中澤 三郎, 中村 常哉, 芳野 純治, 山中 敏弘, 長谷 智, 小島 洋二, 内藤 靖夫, 塚本 純久
1987 年 29 巻 9 号 p.
1991-1998
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃潰瘍症例44例46病変を対象とし,超音波内視鏡(EUS)による内部構造からみた胃潰瘍の治癒判定,再発の予知の可能性について検討した.始めに,潰瘍のEUS像について潰瘍部の表層の高エコーが厚く明瞭な高エコー層として描出される場合は白苔エコーと,また潰瘍底部あるいは潰瘍瘢痕部の低エコーの領域を潰瘍エコーと定義した.U1-II,U1-III,U1-IVいずれの潰瘍においても内視鏡的時相がS1期,S2期では白苔エコーを認めなかった.U1-II,U1-III,U1-IVいずれの潰瘍においても内視鏡的時相がA1期~H2期のものは全例潰瘍エコーを認めた.しかし,S1期ではU1-I,U1-IIIでは全例潰瘍エコーを認めたが,U1-IVでは潰瘍エコーを認めるものと認めないものが存在した。一方,U1-IVのみであるがS2期では全例潰瘍エコーが認められなかった.U1-IVの潰瘍瘢痕において,S1期では潰瘍エコーを認める時期があり,この時期は再発する可能性を有しているが,S1期で潰瘍エコーの消失した時期では再発を認めなかった.すなわち,潰瘍エコーの消失した時期がU1-IVの潰瘍の治癒と判定された.U1-IVの潰瘍のEUS像は,潰瘍エコーを有し潰瘍底表層に白苔エコーを認めるE
1 type,潰瘍エコーを有し白苔エコーを認めないE
2 type,及び潰瘍エコー,白苔エコーを有しないE
0 typeの3型に分類された.このEUS時相分類に従えば,E
2 typeの瘢痕は再発する可能性があり,E
0 typeとなって初めて治癒と判定される.
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榊 信広, 斉藤 満, 野村 幸治, 大下 芳人, 岡崎 幸紀, 竹本 忠良
1987 年 29 巻 9 号 p.
1999-2004_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
局在性病変を示さない慢性胃炎例の胃粘膜に認められた微小びらんを近接拡大観察し,また慢性胃炎の自覚症状との関連を検討した.拡大内視鏡的に,微小びらんは胃粘膜微細模様が欠損した部分として,その再生像は顆粒状の再生粘膜模様を示す部分として認められた. 微小びらんは,拡大内視鏡だけでなく通常内視鏡でも,慢性胃炎例の約70%に観察された.さらに微小びらんは,内視鏡的に出血期,陥凹期,赤色再生粘膜期,白色再生粘膜期に時相分類することが適当であることを知った.そして,心窩部痛は主に出血期に,不快感は主に陥凹期に認められたが,薬物療法により内視鏡所見の改善とともに症状も軽快した.
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高升 正彦, 児玉 正, 大石 享, 古谷 慎一, 光藤 章二, 辻 秀治, 西田 博, 丸山 恭平, 岡野 均, 佐藤 達之, 布施 好信 ...
1987 年 29 巻 9 号 p.
2005-2009_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
上部消化管内視鏡検査を施行した胃切除例682例中,逆流性食道炎は62例にみられ,その発生頻度は9.1%であった.そのうち幽門側部分胃切除後Billroth-I法再建例では283例中21例(7.4%),Billroth-II法再建例は353例中27例(7.6%)であり,発生頻度に差はみられなかった.胃全摘例は33例でそのうち10例(30.3%)に逆流性食道炎がみられた.同時期の非手術例の逆流性食道炎248例と比較すると,年齢,性別では差がなかったが,内視鏡所見の程度では術後例に軽度群が,非手術例に高度群が有意に多く認められた.また経過についても術後例に軽快例が少なく,不変例が多いという違いがみられた.これらの事実は術後例と非手術例の逆流性食道炎の成因の違いがそれぞれの臨床像に反映されているものと考えられた.
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岡野 均, 児玉 正, 辻 秀治, 高升 正彦, 光藤 章二, 古谷 慎一, 西田 博, 佐藤 達之, 丸山 恭平, 依岡 省三, 福田 新 ...
1987 年 29 巻 9 号 p.
2010-2015
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃静脈瘤出血14例に内視鏡的硬化療法を施行し,全例に緊急時止血が得られた.うち1例は,本人の希望で待期的に手術を施行した.7例は追加硬化療法にて静脈瘤はほぼ消失し,再出血なく生存中である.残り6例は肝不全などにより比較的早期に死亡したが,うち5例は経過中に再出血は認めなかった.本法は食道静脈瘤硬化療法同様に安全に施行でき,満足すべき止血率が得られるのみでなく,追加硬化療法により胃静脈瘤を消失させることも可能であった.
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大森 浩明, 旭 博史, 阿部 正, 渡辺 正敏, 近藤 宗廉, 斉藤 和好
1987 年 29 巻 9 号 p.
2016-2021
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
健常人5例を対象として,Famotidineの胃粘膜血流(GMBF),胃粘膜PD(GMPD),胃粘膜pH(GMpH)におよぼす影響について内視鏡下に測定し検討した.また,Famotidineの消化管ホルモンに及ぼす影響についても検討した. Famotidine投与前の胃粘膜血流は幽門前庭部53.9±8.5ml/min/100g(以下単位略),胃角部57.7±10.9,胃体部64.2±12.1であり,Famotidine投与後,前庭部,胃角部,胃体部とも有意の増加を認めた.Famotidine投与前の胃粘膜PDは前庭部-1.7±4.4mV(以下単位略),胃角部-4.0±2.9,胃体部-1.2±3.9でありFamotidine投与後,3部位で増加を示し,とくに,胃体部で有意の増加を認めた.血清ガストリン,セクレチンはFamotidineの投与により低値を示す傾向にあったが,有意の差を認めなかった. 以上より,Famotidineには強力な酸分泌抑制作用があるにもかかわらず,粘膜防御因子を増強する作用も存在すると推測された.
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―総胆管結石症に対する新しい内視鏡的治療の試み―
中澤 慶彦, 岡崎 和一, 山本 泰猛
1987 年 29 巻 9 号 p.
2022-2030
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡的マイクロ波凝固は,最近日本において,消化管の隆起性病変,癌および出血の治療に使われている.われわれは胆管結石による胆道閉塞に対して,同凝固法を用い新しい治療を試みた.まず,マイクロ波凝固による最も効果的かつ安全な発振条件を犬で検討し,消化管粘膜では20ワット10ないし20秒とした.つぎに日本猿を用い,十二指腸から胆管への内瘻化に成功し,急性膵炎や急性胆管炎などの副作用がない事を確認した.臨床例として,総胆管結石症の患者6例(平均年齢72.5歳)にEDCFを施行し,4例の結石排出をみた.合併症として1例に急性胆管炎を認めた.総胆管径は結石排出の有無に関わらず治療後1週で14.6mmから11.1mmと縮小した(P<0.05,n=6).EDCF治療施行1週後のALPおよびγ-GTPは治療前と比較して有意の減少を認めた(p<0.01,p<0.05,n=10).本法EDCFは総胆管結石の治療法として安全かつ有用な方法であると考えられた.
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相良 勝郎, 藤山 重俊, 橋口 治, 酒井 正俊, 宮瀬 秀一, 杉 和洋, 津出 和博, 柴田 淳治, 森下 愛文, 吉田 健
1987 年 29 巻 9 号 p.
2031-2036
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
過去8年間に治療した潰瘍性大腸炎25例における腸管外合併症につき検討した.これら合併症は5例(20%)にみられ,いずれも全大腸炎型で,臨床経過からは再燃寛解型に3例と多いが,罹病期間とは関係なかった.26歳女性例では発病後5年,全結腸切除後に大腿骨頭無腐性壊死を来たした.43歳男性例は,発病4年半後より右下肢動脈閉塞を来たし,人工血管によるバイパス術をうけた.この他,DICにて死亡した33歳女,糖尿病に脳血栓を来たした直後に本症をみた65歳女,および非B型肝硬変の36歳男に無症候性の本症をみた例などがあった.本症において大腿骨頭壊死や動脈閉塞などの合併症は稀であり,注意すべきものと考え報告した.
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神谷 泰隆, 尾関 規重, 田中 明隆, 高田 善介, 山田 英明, 矢崎 裕, 小林 武彦, 竹島 彰彦, 早川 富博, 星野 信, 塚田 ...
1987 年 29 巻 9 号 p.
2037-2043_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例1は57歳の男性で,主訴は咽頭痛と発熱.日本酒2~3合/日を35年間飲酒しており,肝障害を認めた.上部消化管X線検査にて上部から中部食道にかけて辺縁平滑な細長い隆起と横縞模様を認めた.内視鏡所見は3条の粘膜裂傷があり,食道内輪筋と思われる横走ひだを認めた.約2カ月にわたる絶食,高カロリー輸液,経管栄養等にて軽快し退院した.症例2は53歳の男性で,主訴は腹痛.日本酒2~3合を30年間飲酒しており,肝障害を認めた.X線像は症例1とほぼ同様であったが,内視鏡所見では食道粘膜は全周にわたり剥離しており,食道内輪筋と思われる横行ひだを認めた.絶食,高カロリー輸液,抗潰瘍剤では発熱,タール便等の所見が改善せず,蛋白同化ホルモン,プロスタグラジンを追加したところ軽快し退院した.
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米島 学, 平井 信行, 老子 善康, 卜部 健, 田中 延善, 小林 健一, 服部 信
1987 年 29 巻 9 号 p.
2044-2051
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
患者は38歳男性.胃検診にて胃体部小彎の隆起性病変を指摘され当科受診.胃X線検査,胃内視鏡検査にて胃体上部小彎に5×4cmの隆起性病変を認めた.隆起性病変は正常粘膜におおわれ,中央に陥凹を有し,bridging foldを伴っており,胃粘膜下腫瘍と診断した.超音波内視鏡検査では胃壁内第3層に存在する充実性の腫瘤像を呈し,導管を思わせる管状,輪状の管腔構造を認め,迷入膵に特徴的な所見と思われた.内視鏡下で腫瘤中央の陥凹部より採取した液は重炭酸濃度,Amylase値が高値であることより膵液と考えられた,2回目の胃生検で膵組織が得られ胃迷入膵と診断した.陥凹部よりの造影では導管像と腫瘤に一致した多発性の斑状の腺房像が得られた.本例では胃生検のみならず超音波内視鏡,膵液採取および膵管造影にて胃迷入膵の診断を行い得たので報告した.
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大城 宏之, 横山 泰久, 横山 功, 近藤 建, 菊池 学
1987 年 29 巻 9 号 p.
2052-2055_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は37歳男性.食欲不振,心窩部痛,嘔吐を主訴として来院.胃内視鏡検査にて胃角から前庭部にかけて白苔に覆われた不整形のびらんが多発しており,胃生検の組織学的検索では粘膜に強いリンパ球の浸潤を認めた.胃X線検査にて胃角の〓開および前庭部の狭窄像あり,圧迫像で粗大顆粒状変化があった.血清梅毒反応強陽性と,X線・内視鏡像,胃生検の結果より胃梅毒を疑い,診断的治療の目的でエリスロマイシン投与を行い4週間後内視鏡で再検したところ,びらん潰瘍性病変は著明に改善し,軽度のびらんを残すのみとなった. 胃梅毒を駆梅療法にて完治せしめた1例を経験したので報告する.
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川野 正樹, 伊藤 泰昭, 大類 方巳, 大江 毅, 前原 操, 菅谷 仁, 原田 尚
1987 年 29 巻 9 号 p.
2056-2060_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は65歳の女性.口渇,全身倦怠感を主訴に当科を受診し,腹部超音波検査にて胆石および胆嚢癌が疑われ精査目的に入院した.腹腔鏡検査において,胆嚢には病変を認めず,胆嚢床部の肝横隔面に白色の表面不整の小隆起性病変を認め,同部の鉗子生検にても悪性腫瘍を否定できず開腹術を施行した.術中胆道造影では白色調の隆起に一致して肝内胆管の拡張を認め,楔状生検による組織学的検査でも大小様々の胆管が単独で周囲の線維化を伴って増生している所見のみで悪性所見は認められず,先天性肝内胆管拡張症が疑われた.本隆起性病変は,白色調不整形で癌臍を認めず,またpeliosisも伴わず,通常の腫瘍性隆起とは異なっていた.本邦では先天性肝内胆管拡張症の腹腔鏡所見を記載している報告は少なく,きわめて興味のある症例と思われる.
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―ICG静注併用下腹腔鏡所見―
今西 建夫, 山田 由美子, 大曲 勝久, 栗原 紳太郎, 森川 俊一, 西畑 伸二, 林田 研司, 三島 致衍, 村田 育夫, 牧山 和也 ...
1987 年 29 巻 9 号 p.
2061-2066_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
Wilson病の2例に対し,ICG2.5mg/kg静注下に腹腔鏡検査を施行した.症例1は19歳の男性で,臨床病期DeissのIIB期に相当した.肝表面像は平滑で,左葉に一部凹凸不平で軽度ながら斑紋様の所見をみとめ,右葉辺縁にリンパ小水泡もみられた.ICG2.5mg/kg静注後に,斑紋部は濃緑色に着色し,明瞭になった.肝組織像は慢性活動性肝炎であった.症例2は21歳の女性で臨床病期IV期.肝表面像は粗大結節状で,結節の色調は淡青色を帯び,特有の所見を呈していた.ICG2.5mg/kg静注後は,結節と間質部のコントラストが強くなり,血管紋理や赤色紋理等がはっきり観察されるようになった.肝組織像は壊死後性肝硬変の像を呈していた. ICG大量静注後の所見としては,慢性肝炎や肝硬変の時に得られる所見と同様で,Wilson病に特有の変化はみられなかった.
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林 義峰, 高山 敦, 伊藤 望
1987 年 29 巻 9 号 p.
2069-2074_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
十二指腸下行脚に原発した反応性リンパ細網細胞増生(RLH)の1例を経験した. 症例は64歳男性.心窩部から右季肋部にかけての不快感を主訴として当科受診し,内視鏡検査で十二指腸球部潰瘍と診断され入院となる.十二指腸球部潰瘍は経過良好であり,腹部症状も改善したが,入院3カ月後再び右季肋部の鈍痛が出現した.内視鏡検査ではVater乳頭対側にやや白色調を呈する表面凹凸不整な軟らかい隆起性病変を認めた.生検の結果,RLHが強く疑われたが,悪性リンパ腫との鑑別が困難であった.その1カ月後の内視鏡検査では病巣の拡大と多彩な色調変化がみられ,生検の結果,悪性リンパ腫と診断され,膵頭十二指腸切除術を行った.切除標本の病理組織診断はRLHであった. 十二指腸のRLHはきわめて稀な疾患であり,下行脚に存在するRLHは文献上の報告がなく本例が初めての報告と考えられる.
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児玉 光, 五十嵐 潔, 千葉 満郎, 荒川 弘道, 正宗 研, 上坂 佳敬, 山須田 健
1987 年 29 巻 9 号 p.
2075-2080_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
55歳,女性,肝硬変で某病院に通院中突然血便を認め,内視鏡検査でS状結腸に腫瘤を指摘され当科に入院.注腸検査で,S状結腸に長径22mm,表面に不均一に造影剤が付着した,比較的境界明瞭な隆起性病変を認めた.内視鏡検査で,S状結腸に暗赤紫色,易出血性,亜有茎性,凝血塊様の柔らかい腫瘤を認め,血管性病変を疑った.下腸間膜動脈造影で,静脈相後期において,注腸検査で描出された隆起性病変と一致する部位に,海綿状血管腫を示唆する造影剤の残存を認めた.入院中,突然大量の血便出現,一時前ショック状態に陥ったため,緊急手術でS状結腸部分切除を行った.肉眼的に,S状結腸に径18×13mm,赤黒色調,亜有茎性の柔らかい腫瘤あり,その漿膜側は白色調,瘢痕様であった.病理組織学的には血栓形成を伴う拡張した血管腔や出血凝固塊がみられ,海綿状血管腫であった.
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堀田 茂樹, 伊藤 克昭, 松浦 昭, 吉井 由利, 小林 世美
1987 年 29 巻 9 号 p.
2081-2084_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
今回私どもは,外科手術後の抗生物質投与が原因と考えられる下痢患者に対して発症後早期にcolonoscopyを施行し,速やかに偽膜性大腸炎と診断し得た3例を経験したので若干の考察を加えて報告した.偽膜性大腸炎の診断には,colonoscopyによる典型的な偽膜性病変の存在,便中のclostridium difficileの培養同定及びclos-tridium difficile toxinの検出が揃えば診断し得るが,培養には日数を要するため速やかな診断には適しない.またcolonoscopyの所見も典型的偽膜形成所見から非特異的な炎症所見まで様々であり,colonoscopyの所見のみでは,診断し得ない症例もある.このような疑診例には,colonoscopy時に,速やかに結果の得られるclostridium difficile toxinの検出を積極的に行うべきである.
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岡村 正造, 浅井 俊夫, 山口 初宏, 三竹 正弘, 越知 敬善, 大橋 信治
1987 年 29 巻 9 号 p.
2087-2093
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
患者は55歳,男性,人間ドックにて便潜血反応(+)のため大腸X線検査を受け,上行結腸ポリープと診断され当科を受診.理学的所見に異常なく,一般検査上は便潜血反応(+)以外は異常なし.大腸X線検査で上行結腸中部に長径約1cmの透亮像を認め,表面に粒状の凹凸不整を認めた.内視鏡的には台状隆起で,頂部は褪色し凹凸不整とびらんを認めたが,起始部粘膜は正常だった.内視鏡的切除にて病変の大きさは10×9×8mm,病理学的には腺腫を伴わない深達度smの高分化型腺癌で,癌は粘膜内ではびらん化した隆起の頂部周辺にわずかに認め,粘膜下層でmassiveに増殖していた.後日,根治的右半結腸切除術を行うも癌の残存や転移はなかった. 本例は大腸癌の発生と発育経過を探求する上で示唆に富む1例と考え報告した.大腸のIIa+IIc型早期癌も病変の成り立ちにより細分類して対処する必要があると思われた.
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杉山 宏, 辻 孝, 加藤 昌彦, 熊原 正, 森下 博史, 若原 達男, 山田 重樹, 松村 幸次郎, 田中 千凱, 下地 昭昌, 加地 ...
1987 年 29 巻 9 号 p.
2094-2099_1
発行日: 1987/09/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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慢性関節リウマチ,敗血症の治療中に大量下血をきたしたため緊急手術を施行し,術中コロノスコピーにて発見された大腸微小粘膜欠損の1例を経験したので,文献的考察を加え報告した. 症例は63歳,男性で,昭和61年8月13日より暗赤色の下血が出現するようになったため輸液・輸血を行いながら経過観察していたが,下血量が3,200mlに及んだため,翌14日に緊急手術を施行した.開腹すると,結腸の肝彎曲部,脾彎曲部に大量の血液が貯留していたが,腫瘤や虚血性病変は認めなかった.術中コロノスコピーを施行したところ横行結腸右3の自由ヒモに相当する粘膜より血管が突出し,先端より拍動性に出血していたため,2×2cm大の大腸部分切除術を行った.病理組織学的には,Ul-Iの孤立性粘膜欠損があり,その部位より直径1mm,長さ3mmの血管が突出していた.粘膜下層を蛇行する太い異常血管は認められなかったが,Dieulafoy潰瘍に類似する疾患であると考えられた.
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