日本消化器内視鏡学会雑誌
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30 巻, 6 号
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  • 戸田 信正, 伊藤 克昭, 小林 世美
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1169-1172_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    上部消化管内視鏡検査時の下咽頭・喉頭部病変発見の実態をretrospectiveに検討した.過去5年間に直視型パンエンドスコープを用いた17,388件の検査で41件(0.24%)の下咽頭,喉頭部病変が発見された.良性病変は28件(0.16%),悪性病変は13件(0.07%)であった.悪性病変の内訳は,下咽頭癌が7例と最も多かった.更に,喉頭,下咽頭癌8例中5例(63%)に異時性あるいは同時性の重複癌が認められた.悪性病変例の10例はすべて有症状者であったが,上部消化管X線検査で異常が指摘されたのは5例にすぎなかった.以上のことから,上部消化管内視鏡検査時の下咽頭・喉頭部の観察の重要性を強調した.
  • 山瀬 博史, 二村 雄次, 早川 直和, 長谷川 洋, 神谷 順一, 土江 健嗣, 岡本 勝司, 岸本 秀雄, 近藤 哲, 塩野谷 恵彦
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1175-1182_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    1977年から1985年までの経皮経肝胆道鏡検査(PTCS)を施行した227例の内,下部胆管狭窄例50例のPTCS所見を検討した.内視鏡所見を発赤,胆管内隆起性変化,腫瘍血管,ひきつれ,壁外性圧排と5分類した.胆管癌7例,乳頭部癌5例では狭窄部を直視でき,発赤,胆管内隆起性変化,腫瘍血管を全例に認めたが,ひきつれはそれぞれ29%,0%,壁外性圧排はともに0%と低い出現率であった.PTCS直視下生検は全例に癌が陽性であった.膵癌28例では発赤93%,胆管内隆起性変化71%,腫瘍血管68%と高率に認め,またひきつれ,壁外性圧排もそれぞれ68%,96%と高率に認められた.PTCS直視下生検では61%に癌が陽性であった.慢性膵炎5例では,発赤,ひきつれ,壁外性圧排は全例に認めたが胆管内隆起性変化,腫瘍血管は認めなかった.良性胆管狭窄5例では,発赤,胆管内隆起性変化をそれぞれ40%,20%と少数に認めたが,腫瘍血管,ひきつれ,壁外性圧排は認めなかった. 以上より,腫瘍血管は癌の所見と考えられ,ひきつれ,壁外性圧排は膵病変が胆管へ影響を及ぼした所見と考えられた.したがってPTCSにより胆管癌,乳頭部癌と胆管良性狭窄は腫瘍血管所見の有無で,また胆管癌,乳頭部癌と膵癌や慢性膵炎など膵病変による胆管狭窄とはひきつれ,壁外性圧排所見の有無で,さらに腫瘍血管の有無で胆管狭窄を来す膵病変を胆管壁内に浸潤する膵癌と慢性膵炎とに鑑別診断が可能であった.しかしPTCSを用いても,ひきつれ,壁外性圧排が強く狭窄部が観察できない膵癌例や癌が胆管壁内に浸潤していない膵癌例では慢性膵炎と鑑別診断ができなかった.
  • 高田 洋孝, 加藤 俊幸, 斉藤 征史, 丹羽 正之, 小越 和栄
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1183-1188
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎において膵の病的変化が主膵管,分枝,微細膵管に生じ,形態的変化がおこれば内視鏡的逆行性膵管胆道造影(以下ERCP)によりその部位,程度が推測できる。.1983年日本消化器病学会のERCPによる慢性膵炎の診断基準で確診所見,異常所見,参考所見を呈した234例について,その成因別に比較検討した.膵石形成,嚢胞形成はアルコールによるものが多かった.主膵管の不整拡張は胆石合併例に多かった.主膵管の単純拡張はアルコール性に比べて胆石合併例の方がより拡張が高度であった.以上より,アルコールによる膵障害は膵石形成や膵実質障害が主で,胆石合併例は主膵管の変化が主体であると考えた.
  • 笠貫 順二, 渡辺 東也, 岸 幹夫, 吉川 信夫, 吉田 尚, 手島 一, 今泉 照恵, 鈴木 康夫, 深沢 毅, 小関 秀旭, 板谷 喬 ...
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1189-1197
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    GF-10(オリンパス)をパンエンドスコープとして使用可能か否か検討した.1)上部消化管に著明な変形,病変のない症例で,従来の側視鏡が弱いとされた部位の観察能をGIF-P2,P3(オリンパス)と比較すると食道,EC junctionでは幾分劣っていたが十二指腸球部ではほぼ同等で,下行部,Vater乳頭部ではGF-10が遙かに勝れていた.2)胃集検の精密検査でFGI-SD(マチダ)と拾い出し診断能を比較した.潰瘍性病変は両器種間に大差はなかったが,潰瘍瘢痕では胃体上部後壁,胃体中部小彎・後壁,胃角部小彎,十二指腸球部小彎でGF-10が優り,ポリープの診断能も胃内全体でGF-10が優る傾向が見られた.3)GF-10による合併症は皆無であった.以上の結果よりGF-10はパンエンドスコープとして充分使用可能と思われた.
  • 佐藤 博之, 堤 幹宏, 安原 稔, 円山 恵子, 根井 仁一, 高瀬 修二郎, 高田 昭
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1198-1204_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    5%ethanolamine oleateの血管内注入による内視鏡的食道静脈瘤硬化療法を延べ27例の肝硬変患者に行ったが,そのうち7例では,静脈瘤それ自体とその周辺が壊死に陥り,脱落した.静脈瘤の壊死・脱落例では比較的大量の硬化剤が確実に血管内に注入されており,硬化療法後数日で,注入部の静脈瘤の走行に一致して黄色調の帯状隆起が認められ,約2週後には壊死に陥った静脈瘤は脱落し,それより口側の静脈瘤は消失した.2例では,黄色帯状の隆起部分を鉗子で剥離,採取しえたが,その組織像では,静脈瘤および周囲の小血管は血栓により完全に閉塞し,周囲組織も変性壊死に陥っていた.硬化療法後の経過をみると,壊死・脱落例では血栓形成例に比して静脈瘤の荒廃効果がより長期間持続しており,再出血例は認められなかった. 以上のごとく,その成因は明らかではないが,静脈瘤それ自体の壊死・脱落は静脈瘤の荒廃・消失の一つの重要な機序であると考えられた.
  • ―胃癌粘膜の色調について―
    中澤 慶彦, 秋澤 玲子, 西岡 隆見, 西森 功, 門脇 徹, 鍵山 惣一, 田村 智, 坂本 芳也, 中田 博文, 森田 雅範, 岡崎 ...
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1205-1212_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡像診断において粘膜色調の客観的評価は重要である.われわれは電子内視鏡下にL*a*b*表色系による色調の定量化を画像処理装置(PIAS,LA-500)を用いて検討した.まず電子内視鏡レンズ先端と5mm円盤の距離(x)および画像上のピクセル数(y)との関係を知るために画像上における5mm円盤のピクセル数(y)より(logy)を縦軸とすると,回帰直線(logy=4.39771-0.0414942x)を求めた.つぎに各条件下で胃内に静置し,かつモニターの中央部にあるJIS標準色票N9.0近似の白色円盤の極座標は(32.18±0.41mm,22.66±0.19degree)で距離が異なってもほとんど同じ位置であった.さらに白盤の明度,色度や彩度,および色差ともに個々に変動を認めたが,彩度差は距離とは有意差を認めなかった.よって,偏色判定図上での白盤と胃粘膜との色調の差の定量化は可能であると考えられた.臨床例での検討では分化型胃癌は白盤に対して平均3.2だけ赤色調で,0.07だけにぶい色を示し,また低分化型腺癌,印環細胞癌は,平均2.8赤色調,1.47にぶい色を呈した.以上より分化型胃癌は低分化型腺癌,印環細胞癌に比べ,0.4だけ赤色調でかつ1.4だけ色が鮮やかであると判定できた.
  • 田上 哲也, 橋本 不動志, 高橋 好朗, 渥美 清, 村上 隼夫, 伊藤 忠弘
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1213-1217_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    1970年から1987年4月末までに当院で経験した早期胃癌186例のうち,Warren & Gatesらによるcriteriaを満たす他臓器癌重複例は12例(6.45%)であった.平均年齢は69.9歳で,早期胃癌例61.6歳に比べ有意に高齢であった.胃癌病変自体の特徴に両者で明らかな差はなかった.男女比は5:1で,同時性発生が8例,1年以上の異時性発生が4例であった.重複癌種は食道癌が4例と最も多く,消化器癌が53.3%を占めた.予後は重複癌に左右され,5生率は16.7%で,平均生存期間は22.7カ月であった.早期胃癌の重複癌例は多いものではないが,重複すれば予後は非常に悪いものとなる.従って,早期胃癌発見時ないしそれ以後は,他臓器特に消化管の検索が必要であり,高齢者においては更に強調されると考える.
  • 米島 学, 卜部 健, 老子 善康, 村田 高志, 元雄 良治, 鵜浦 雅志, 小林 健一, 服部 信, 若林 時夫, 杉岡 五郎
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1218-1227
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    2例の胃迷入膵および1例の十二指腸迷入膵に対して超音波内視鏡を行い,その特徴を検討した.上部消化管X線検査および内視鏡検査では,2例は中央に陥凹を有する胃粘膜下腫瘍と診断され,1例は十二指腸ポリープが疑われた.超音波内視鏡検査では3例とも,1)壁内第3層(粘膜下膚)に存在する充実性の腫瘤像を呈し,2)腫瘤内部には導管を思わせる管状,輪状の管腔構造を認めた.さらに,胃迷入膵の1例では,3)腫瘤後面の第4層(固有筋層)の肥厚を認めた.このうち1)は迷入膵に一致する所見であり,2),3)は迷入膵の組織学的特徴をよくとらえ,迷入膵に特徴的な所見と思われた.2例は腫瘤中央の陥凹部よりの膵液採取,膵管造影が可能であり,3例全例生検組織により,迷入膵であることが確認できた.超音波内視鏡は迷入膵の組織学的特徴をよくとらえ診断に有用であり,超音波内視鏡にてこのような特徴的な所見が認められれば,生検で迷入膵組織が得られなくても迷入膵と診断してよいと考えられた.
  • 岡崎 和一, 山本 泰朗, 西森 功, 西岡 隆見, 門脇 徹, 鍵山 惣一, 坂本 芳也, 田村 智, 中田 博文, 森田 雅憲, 中澤 ...
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1228-1240
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    1)平均膵管内圧は,アルコール性慢性膵炎『ア』(56mmHg),特発性慢性膵炎『特』(45mmHg),胆石合併慢性膵炎『胆』(35mmHg)と健常群(16.2mmHg)に比し有意に高値であった.2)『特』では,乳頭部収縮期圧,弛緩期圧,運動周期のいずれも健常群と差異なく,膵管内圧との相関も認めなかった.3)『ア』では,乳頭部平均収縮期圧は健常群と差異を認めないが,弛緩期圧の上昇傾向,運動周期の明らかな増加を認め,膵管内圧は各乳頭部圧,運動周期と相関傾向を認めた.4)乳頭炎合併『胆』では乳頭部収縮期圧の低下傾向,弛緩期圧の上昇傾向,運動周期の明らかな増加を認め,膵管内圧は弛緩期圧と相関傾向を認めた.以上より,『ア』および乳頭炎合併『胆』の膵管内圧上昇の一因として乳頭開口部運動の異常の可能性が示唆されたが,『特』では乳頭部運動異常に基づくとの確証は得られなかった.
  • 吉田 司, 富田 志郎, 柿崎 善明, 加納 正史
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1241-1249
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は26歳男性.昭和60年6月,心窩部痛を主訴として当科受診.上部消化管X線,内視鏡検査でBorrmann4型胃癌が疑われ入院した.X線上胃体下部から幽門前庭部を中心に壁硬化,管腔の伸展不良,内視鏡上同部は全周性に粗大結節状,不整なびらん性病変が多発し,極めて易出血性であった.腹部CTで,幽門前庭部を中心とした胃壁の肥厚と周囲リンパ節の腫大がみられた.胃生検で悪性像なく,肉芽組織の増生が顕著で,Langhans型巨細胞を伴う肉芽腫様変化が認められた.血清梅毒反応が強陽性であるため胃梅毒を強く疑い,生検標本から鍍銀法および電顕でTreponema pallidumが証明されたことから胃梅毒と確診した.ペニシリンによる駆梅療法の結果,速やかに自覚症状は消失し,X線,内視鏡所見が著明に改善された. 胃梅毒は肉芽腫を形成しうるが,実際に胃生検標本で肉芽腫様変化,Treponema pallidumが証明され病理組織学的に裏付けられた胃梅毒の症例は極めて稀である.
  • ―本邦報告例32例の集計を含む―
    阪上 学, 野田 八嗣, 越野 慶隆, 神保 正樹, 千代 英夫, 山崎 隆吉, 岡田 保典
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1250-1254_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    今回われわれは腹痛下血をみた成人型Schonlein-Henoch紫斑病の1例において,発症早期に内視鏡的に上部下部消化管粘膜病変を観察し得たので,本症に合併した消化管病変の本邦報告例を部位別病変程度別に集計した成績と併せて報告した.症例は75歳女性.下肢の紫斑関節痛を主訴に昭和60年12月14日入院した.臨床症状,臨床検査所見,皮膚生検よりSchönlein-Henoch紫斑病と診断した.第5病日に腹痛下血をきたし,そのため施行した上部消化管内視鏡所見では紫斑様胃病変が観察され,また大腸では出血性びらん例がみられた.消化管粘膜病変を記載してある本邦報告例は自験例を含めて32例で,病変部位は胃から大腸までびまん性にみられ,その程度は紫斑様病変から潰瘍まで多彩であった.そのうち本例にもみられた紫斑様病変に関しては胃5例,十二指腸3例,大腸9例に見られた.
  • 山野 三紀, 岡村 毅与志, 並木 正義, 池 薫, 高橋 篤, 鈴木 知勝
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1255-1268_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    膵仮性嚢胞の重大な合併症として,まれながら嚢胞内出血が知られている.今回われわれはアルコール性慢性膵炎を基盤とし,脾動脈の偽性動脈瘤の穿破による膵仮性嚢胞内出血の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は40歳男性,上腹部激痛のため釧路医師会病院に緊急入院した.入院時腹部CTにて膵嚢胞内出血が疑われ,対症的に治療しながら各種の画像診断を試みた.上部消化管内視鏡検査でHemobiliaの所見と,胃穹窿部に脾静脈閉塞により生じた静脈瘤を認めた.超音波パルス・ドプラにて動脈の膵嚢胞内穿破を疑い,血管造影検査で脾動脈の偽性動脈瘤を確認した.以上より脾動脈の偽性動脈瘤を伴った膵仮性嚢胞内出血およびHemosuccus pancreaticusと診断し,外科的治療を施行し軽快した.特に急性期の特徴あるCTの経時的変化は興味深く,また診断に超音波パルス・ドプラを用いた報告は欧米で2例あるのみで本邦では初めてである.
  • ―膵管造影像の変化を中心に―
    松田 至晃, 嶋倉 勝秀, 滋野 俊, 古田 精市, 長田 敦夫, 山岸 喜代文, 飯田 太
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1271-1277_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎として約9年間経過観察中に診断された粘液産生性膵腫瘍の1例につき,その膵管像をretrospec tiveに検討しえたので報告する.症例は59歳男性.日本酒2-3合/日,23年間の飲酒歴がある.昭和48年より時々上腹部に激痛が出現することがあり昭和52年1月当科受診.ERCPにて膵体部に主膵管と交通する小嚢胞とその近傍の主膵管内に小透亮像を認めた.昭和55年6月のERCPにて初めて主膵管の拡張と透亮像を認めたが乳頭の開大所見はなく,昭和60年11月のERCPの際に主乳頭,副乳頭の開大,粘液の排出と主膵管の著明な拡張と透亮像が認められた.膵液細胞診はClassIIであった.特徴的なERCPおよび乳頭所見から粘液産生性膵腫瘍と診断し昭和61年3月膵体尾部切除術を施行.病理学的には拡張した体部主膵管内に1.5×1cmの乳頭状腺腫が認められた.初回ERCPで認められた小嚢胞は本症の初期像であった可能性があり,また本例の極めて緩徐な経過が注目される.
  • 宮本 岳, 加藤 道夫, 益沢 学, 戸川 雅樹, 鈴木 都男, 妻野 光則, 末松 俊彦
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1278-1282_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    超音波検査で肝に表在性の小腫瘤を発見し,肝癌を疑うも,他の画像診断法(CT,肝シンチ,血管造影)で指摘されず,腹腔鏡下に,新しい生検用止血剤(ゼラチンパウダーにヒトトロンビンとfactorXIIIを固定化した配合止血剤)を使用する腫瘤生検を施行した表在性細小肝癌の2例を経験した.これらはいずれも生検時出血はほとんどなく,生検により肝細胞癌の診断が得られて,外科的切除された.1例は75歳男で1.4×1.3cmの肝右葉前下区域の肝細胞癌で生検後約4年,他の1例は53歳男で1.6×1.6cmの肝左葉外側区域の肝細胞癌で生検後約10カ月,いずれも再発なく生存中であり,臨床的に転移・播種はみられず,新止血法による腹腔鏡下生検が有用と考えられた.
  • 折居 裕, 真口 宏介, 中沢 郁生, 峯本 博正, 小西 行夫, 斉藤 裕輔, 蘆田 知史, 横田 欽一, 岡村 毅与志, 並木 正義
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1285-1290_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    十二指腸に発生し,一部に高度の異型を伴う腺腫組織を認めた孤立性の若年性ポリープの1例を経験したので報告する. 症例は77歳の男性.貧血の精査のため施行した上部消化管エックス線および内視鏡検査で,十二指腸水平脚にポリープを指摘され内視鏡的ポリペクトミー(以下ポリペクトミーと略す)の目的で入院した.ポリペクトミーで摘出されたポリープは,大きさ2.5×1.0cm,表面平滑で,赤褐色調を呈していた.病理組織学的検索では,腺管の嚢胞形成ならびに分岐した平滑筋束,毛細血管に富む豊富な間質によって構成される若年性ポリープの組織であり,その一部に中等度ないしは高度の異型を伴う腺腫の組織所見を認めた.本症例は,大腸および小腸のエックス線検査でもポリープは認められないため十二指腸に発生した孤立性若年性ポリープと診断した.
  • 竹本 忠良, 針間 喬, 宮原 妙子, 安武 隆二郎, 松浦 伸二郎, 由村 俊二, 山本 一成, 沖田 極, 岡崎 幸紀, 神代 昭, 石 ...
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1291-1296_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    近年,欧米では,大腸検査の前処置法として,経口腸管洗浄剤(lavage solution)が主流となってきている. 1980年,Davisらの開発した経口腸管洗浄剤PEG-ELSは腸管からの吸収,分泌もほとんどなく,優れた洗浄効果をもち,現在,欧米で広く用いられている. しかし,この洗浄剤は,服用量が3,000cc~4,000ccと多く,患者の負担は決して少なくない. 今回,改良PEG-ELS(polyethylene glycol-electrolyte lavage solution)が新組成され,それを大腸内視鏡検査の前処置に試用することができた. 対象は,延べ60名で,平均年齢は54.1歳(24歳~77歳). 効果判定基準における「不良」例は,60例中1例もなく,大腸全域にわたり,「良好」,「ほぼ良好」例が95%以上を占めた. 平均服用量は2,782cc(1,000cc~4,000cc)であったが,服用量が2,000cc~2,500ccの群の90%以上が「良好」,「ほぼ良好」例であり,2,000cc程度の服用でも,十分な洗浄効果を持つことが期待できた. 電解質変化では,カリウムに若干の変動を認めたが,いずれも正常範囲内における変動であった.
  • 多田 正大, 尾川 美弥子, 磯 彰格, 大塚 弘友, 清水 誠治, 稲富 五十雄, 川本 一祚, 川井 啓市
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1299-1303_1
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    上部消化管出血に対する非観血的・内視鏡的治療法として開発されたヒートプローブ法を用いて,通常の内視鏡的ポリペクトミーでは切除困難と考えられる5例の扁平な大腸ポリープの焼灼を行った.その結果,210-300ジュールの熱量によって全例安全に焼灼治療することができた.焼灼潰瘍の治癒日数は3~6週間であった.本法は手技が容易であり,腸管に与える損傷も少ないことから,適応を選べば有効な大腸ポリープの治療法になるものと強調された.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1988 年 30 巻 6 号 p. 1304-1439
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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