日本消化器内視鏡学会雑誌
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30 巻, 7 号
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  • 藤村 寛
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1455-1467
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    エマルジョン経口投与法を併用した超音波内視鏡による胃癌リンパ節転移(1群)の検討を行った. まず,基礎的検討として,AGML作製ラットおよび酢酸潰瘍作製雑種成犬を用いた実験により,エマルジョンの吸収経路の1つとして,びらんまたは潰瘍部より取り込まれることを明らかにした. つぎに,エマルジョンのエンハンスの強さを音響学的に検討し,従来使用していたsesameエマルジョンに比べて,著者が新たに作製したoliveエマルジョンの方がエンハンスが強いことを確認した. 次に,臨床的検討として,20% sesameエマルジョン,20%ならびに40%oliveエマルジョンを用い,リンパ節の描出率,リンパ節転移の有無の正診率について,早期胃癌症例を対象として比較検討した.リンパ節描出率の比較検討では,20% oliveエマルジョンの描出率がもっとも高かった.リンパ節転移の有無の正診率の比較検討では,3者の間で大きな差はみられなかった. この描出率,正診率の比較検討成績からみると超音波内視鏡に併用するエマルジョンとしては,20% oliveエマルジョンが最適と考えたが,本法の臨床的有用性については,今後,さらに症例数を増して再検討することが必要と考えている.
  • 中澤 三郎, 芳野 純治, 中条 千幸, 太田 博郷, 山中 敏広, 浅井 俊夫, 岡村 正造, 中村 常哉, 可知 常昭
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1468-1472_1
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    高齢,手術拒否,合併症などの理由で手術し得なかった胃癌9例に対して,溶連菌製剤OK-432を皮内投与すると同時に,内視鏡下でOK-432を頻回に腫瘍内投与した.その結果,Borrmann 1型進行癌及びIIa+IIc型早期癌の計2例において各々X線及び内視鏡所見上で腫瘍の消失がみられた.特に,後者の例では良性潰瘍瘢痕様になると同時に生検でも癌細胞が得られなくなった.また,全例で腫瘍内注入後に発熱したが,投与中止に至る例はなく,ほかに重篤な副作用もないことから本剤投与は手術不適胃癌に対する安全かつ有用な治療法と考えられた.
  • 林 〓欽, 古川 正人, 中田 俊則, 瀬戸口 正幸, 草野 敏臣, 田代 和則, 立花 一幸, 菅 和男, 宮崎 国久
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1473-1481
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胆管十二指腸側々吻合術(以下C-Dと略す)は,下部胆道の拡張を伴う胆管結石などに対する付加手術として,良好な臨床成績を示すとの報告は多数見られる.しかし術後の胆管や吻合部の状態についての知見は少ない.そこで今回,術後1カ月から12年目の胆管結石23例,肝内結石4例,慢性膵炎1例の計28例を対象にC-D術後の吻合部,肝臓側胆管,十二指腸側胆管などを内視鏡的に観察した.吻合部は全例円形に開存していた.肝臓側胆管,吻合部には,発赤や顆粒状変化など軽度の炎症所見を4例に認めるのみであった.十二指腸側胆管では食物残渣を5例に,軽度の粘膜の炎症所見を11例に,粘膜の凹凸不整など高度の炎症所見を4例に認めた.しかし臨床的に胆管炎やSump syndromeを呈した症例はなかった.以上より胆管十二指腸側々吻合は,吻合口が適正(3cm以上)であれば,安全で有用な術式であることが分かった.
  • 古賀 俊彦, 野瀬 育宏, 原野 由美子, 冨松 久信, 渡辺 建詞, 吉峯 研二
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1482-1490
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡自動洗浄行程において,1%のグルタールアルデヒドを薬液として用いた場合や,薬液として2%グルタールアルデヒドを用いたものの,その交換時期を遅らせ,薬液槽中のグルタールアルデヒド濃度の実質的低下を生じた場合に,内視鏡及び洗浄機の非定型抗酸菌による汚染を経験した. その対策として,消毒行程中のグルタールアルデヒド濃度が2%を下回らないように,20%グルタールアルデヒドを各消毒行程毎に追加する処置を採ったり,薬液として3%のグルタールアルデヒドを使用したり,薬液交換の期間を一週間に2回に早める(25回の洗浄毎に薬液を交換する計算)などの改良を加えた. M.tuberculosisによる汚染はなかったが,M.chelonae subsp.chelonae, M.chelonae subsp. abscessus, M.gordonaeによる汚染が汚浄・消毒条件の悪い時期に顕著にみられたが,洗浄消毒条件の改良でこれらの非定型抗酸菌による汚染は消失した. 内視鏡の生検鉗子孔の入念なブラシ洗浄やオーバーナイト薬液浸漬も有効な方法であった.
  • 荒川 正博, 鹿毛 政義, 井上 林太郎, 大久保 和典, 下津浦 康祐, 江口 敏, 永田 一良, 豊永 純
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1491-1497
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的硬化療法後,内視鏡的に食道静脈瘤の完全消失がみられ,1年以上生存した7剖検例について病理所見の検討を行った.剖検時3例は静脈瘤が完全消失した状態で,食道壁の4本の静脈瘤すべてに器質化血栓による(一部には再疎通がみられるが)閉塞が認められた.他の3例では粘膜下層の静脈瘤の器質化血栓内の細血管のやゝ拡張と,粘膜固有層の静脈の拡張を認め,この所見は内視鏡所見のatypical red-color signやtelan giectasiaの増強に一致するものと考えられた.残りの1例は再静脈瘤化した症例で,肉眼的に明らかな静脈瘤を形成し,その破綻により死亡した肝硬変例であった.この再静脈瘤化した静脈瘤は器質化血栓内の細血管が著明な拡張をきたし,その静脈瘤周囲の血管拡張を伴う病理所見を呈していた.この所見の記載は初めてである.また,これらの症例の観察から,アルコールの過飲及び6例に合併していた肝細胞癌の増悪は食道静脈瘤の再発を助長する重要な因子であることが示唆された.
  • 鈴木 安名, 原田 一道, 男澤 伸一, 黒川 洋, 柴田 好, 岡村 毅與志, 並木 正義
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1498-1503
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    心電同期ユニットは,電子内視鏡による写真撮影の際に,心電図に同期したフリーズを行うことにより,心拍動の影響によるボケを減少させることを目的としてつくられた装置である.本装置は同期撮影時に,モニタ画面上に心電図を表示する.われわれはこの点に着目し,心電計以外の装置により得られる信号を内視鏡画面の下端に表示することを試みた.その結果,レーザードプラー血流測定装置,pHメーター,PD測定用アンプなどからの出力波形を極めて容易に表示することができ,機能内視鏡を安定的かつ効率的に行うことが可能となった.また本装置の心電表示機能は,心血管系の合併症をもつ患者における偶発症対策という点でも有用と思われた.
  • 長南 明道, 望月 福治, 池田 卓, 豊原 時秋, 藤田 直孝, 李 茂基, 長野 正裕, 村上 大平, 矢野 明, 小林 剛
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1504-1509_1
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    1980年1月から1987年3月までの7年3カ月間に当センターで内視鏡的に胃ポリペクトミーを施行された症例は413例581病巣で,うちInflammatory FibroidPolyp(IFP)は9例10病巣(1.7%)であった.男女比は1:2と女性に多く,平均年齢は62.7歳,アレルギー歴,血中好酸球増多を認めるものはほとんどなく,単発例が8例(88.9%)であった.合併病変は過形成性ポリープを4例に,腺腫を1例に認めた.内視鏡的にはIFPは,A領域に表面平滑な,発赤,白苔,出血などを認めない山田III型の隆起性病変としてみられ,いわゆる陰茎亀頭状を呈するものは20%に過ぎなかった.また,IFPは組織学的には生検による診断は困難であり,内視鏡的切除による全生検が有用であった.回収標本の病理組織学的検討では,IFPの発生層は粘膜固有層の深層から粘膜下層表層であり,粘膜表層および粘膜下層の2つの方向に向かって進展する傾向が示唆された.
  • 川本 広夫, 清水 哲, 永井 尚生, 山野上 路夫, 土谷 太郎
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1510-1516_1
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    劇症肝炎生存例6例について,覚醒後11日から90日の間に腹腔鏡肝生検を施行し,肝表面像から二つのグループに分類した.ほぼ正常の形態を示し肝表面では小陥凹が散在するグループ(6例中3例),および,馬鈴薯肝あるいは瘢痕形成著明なグループ(6例中3例)である. 二グループ間に腹腔鏡施行までの臨床的差異は認められなかった. また後者では,腹腔鏡施行後も肝機能データは動揺し,このうちfollow up biopsyを施行し得た2例では各れ2年後にCAH IIa,1年半後にLCと組織学的進展をみとめ,進展に非A非B肝炎の関与が強く示唆された.
  • 岡本 平次, 佐々木 哲二, 坪水 義夫, 佐竹 儀治, 藤田 力也
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1517-1522
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれは最近5年6カ月間に87症例89病変のpiecemeal polypectomyを施行した.piecemealで切除され作製された標本は方向性が悪く,癌例では深達度診断が困難であるといわれている.本論文ではpiecemealで切除された標本を100個無作為に選択し,大きさによる組織学的orientationの良否について検討を加え,次の結論を得た.1)orientationが良好で粘膜下層まで採取されているのは,5mm以下では5.3%であり,6~9mmで62.2%,10~14mmで80.8%,15mm以上では100%であった.大きさだけから判断すると正確な組織学的情報を得るためには10mm以上の材料を切除する必要があった.2)6mm以上では全例粘膜筋板までは採取されており,orientationさえ良好であれば,良性病変ならびにm癌の診断は可能であった.3)「切り出し」に際してはポリープ切断部から頭部の方向に割を入れ,切除線は中心部をずらし,7:3位の割合とすることによって切除断端部や粘膜深層を含めたorientationの良好な標本が得られた. 従って内視鏡所見を加味しつつ,ある程度の大きさ(少なくとも6mm以上理想的には10mm以上)の材料を切除し,「切り出し」に若干の工夫を行えば,piecemeal材料といえども組織学的orientationの良好な標本は作製可能であり,組織学的所見の情報は充分に得られる.
  • 藤本 佳範, 大田 人可, 内海 真, 高砂子 憲嗣, 高橋 昌宏, 篠田 悠一, 矢崎 康幸, 関谷 千尋, 並木 正義
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1523-1529_1
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は73歳女性.昭和60年1月,突然の腹痛と腹部膨満をきたしたため,某病院にかかり検査を受け,本態性血小板血症と胆のうポリープと診断された.昭和61年4月,再び同様の腹痛が出現し当科を受診した.精査の結果,門脈血栓と肝門部附近に求肝性側副血行路であるcavernous trans formationが認められ,本態性血小板血症に合併した陳旧性門脈血栓症と診断した.しかし,胆のう頸部の隆起性病変を側副血行静脈と確診し得ず,昭和61年11月,試験開腹を行なったところ,胆のう頸部の隆起性病変は求肝性側副血行路としての胆のう静脈瘤であることが確認された.また,術中門脈造影でも,そのことが明らかとなった.特に処置もせず手術を終了した.その後,血小板機能抑制剤の投与により,現在も順調に経過している.
  • 前谷 容, 山瀬 博史, 光島 徹, 中元 一也, 横内 敬二, 阿部 陽介, 永谷 京平, 坂谷 新, 三品 佳也, 村上 雅彦, 田辺 ...
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1530-1537
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胆石を伴う急性胆嚢炎例に経皮経肝胆嚢造影(PTCC)およびドレナージ(PTCCD)を施行したところ,胆嚢頸部に嵌頓した結石が胆嚢十二指腸瘻を形成し,十二指腸に排泄される経過を観察したので若干の文献的考察を加え報告した.症例は82歳女性で,右季肋部痛,発熱を主訴に来院した.来院時,腫大した胆嚢を触知し,炎症反応の著明増強を認めた.腹部超音波検査にて胆嚢腫大,胆嚢壁肥厚と頸部に結石の嵌頓を認め,PTCCDを施行すると膿性胆汁が採取され,その後炎症所見,腹痛は改善をみた.この時胆嚢頸部に嵌頓した結石のため,胆嚢管,総胆管は造影されなかった.7日後に造影すると,胆嚢は萎縮し,結石陰影は消失し胆嚢十二指腸瘻の形成壷認めた. 20日後にPTCCにて瘻孔の閉鎖を確認したため,外科的手術せず,9カ月の現在症状もなく健在である.一般に瘻孔の形成は胆嚢内圧の上昇に由来すると考えられているが,本症例ではドレナージを施行して胆嚢内圧減圧後に瘻孔が形成されており,胆嚢萎縮に伴う機械的排石が誘因となったことが示唆された.
  • 勝見 康平, 伊藤 誠, 岩田 章裕, 藤岡 俊久, 丹村 敏則, 三好 義光, 岸本 明比古, 武内 俊彦
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1538-1542_1
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性で,全身倦怠感を主訴として来院した.低緊張性十二指腸造影および内視鏡検査で十二指腸下行脚外側壁に長い茎を有する腫瘤がみられ,表面は健常粘膜に覆われていたが,一部にびらん形成を認めた.有茎性粘膜下腫瘍の診断のもとに腫瘤摘出術を施行した.腫瘍の大きさは2.7×2.1×1.9cmで,病理組織学的に粘膜下層に発生した脂肪腫と診断された.本邦における十二指腸脂肪腫の報告例は現在までに56例みられ,その臨床的特徴について考察した.
  • 芦沢 信雄, 有馬 範行, 小畠 敏嗣, 横山 元裕, 渡辺 誠, 平川 弘泰, 福本 四郎, 島田 宜浩
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1543-1548_1
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    粟粒結核症に随伴した肝結核1例と腹膜結核1例の治癒経過を腹腔鏡検査にて観察し得たので報告する.症例1;68歳男性,.不明熱のため入院経過中,胸部X線検査で両肺野に粟粒陰影が出現した.腹腔鏡検査により,肝表面に無数の微小白斑の散在と,肝生検でラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫を多数認めた.抗結核剤投与1年後の腹腔鏡再検で,その微小白斑は完全に消失していた.症例2;56歳女性,腹水の原因精査の目的で腹腔鏡検査を施行.多数の白色結節を伴う腹膜の癒着および壁側腹膜の肥厚と結節形成を認めた.壁側腹膜結節部の生検でラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫を認めた.抗結核剤投与1カ月後に腹水は消失し,2.5カ月後の再検で癒着部の白色結節は減少していたが,壁側腹膜の結節は融合増大傾向をみた.6カ月後に結節は著明に減少し,11カ月後の腹腔鏡検査で完全に消失していた.症例1は喀痰および胃液より,症例2は腹水より結核菌を検出し,症例1が粟粒結核症に随伴した肝結核,症例2が腹膜結核と確定診断し得た.2症例ともそれぞれの結核症の腹腔内における典型的な治癒経過を示していると考えられる.
  • 稲本 善人, 河村 奨, 篠山 哲郎, 田辺 満彦, 有山 重美, 河野 裕, 河内山 高史, 竹本 忠良
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1549-1555
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内腔を有する著しく細長い,ヒモ状の十二指腸粘膜組織の1例を経験した.症例は60歳の女性で,昭和62年6月,当院施行の腹部超音波集検で胆石を指摘され,8月27日,入院となった.入院後内視鏡検査で,十二指腸下行脚の傍乳頭憩室辺縁より発生した著しく細長いヒモ状突起物を発見した.まれな消化管先天異常の1つであるIntraluminal duodenal diverticulum(以下IDDと略す)を疑い,胆石と共に9月30日,外科的に摘出した.上部消化管X線検査,内視鏡検査,及び外科摘出時いずれも開口部を確認できず1基部は扁平且つ捻れていた.また,外側面は正常な十二指腸粘膜で被われ,内腔面は粗な結合織で構成され,大きな血管が数本,遠位端まで走行していた.これはIDDとは全く異なるものであり,われわれの検索しえた限りでは同様の報告例はないものと思われる.Intraluminal duodenal protrusion(IDP)と命名し,IDDとの相違点と共に若干の考察を加え報告した.
  • 北川 直之, 伊東 進, 工藤 英治, 辻 泰弘, 梶本 浩子, 石原 昭彦, 春藤 譲治, 岩崎 明温, 清水 一郎, 岸 清一郎, 山川 ...
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1556-1561_1
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性で,下血を主訴として来院.上部消化管X線検査を行い,十二指腸下行脚に隆起性病変を発見した.内視鏡所見では,十二指腸下行脚外側に直径約2cmの山田III型の粘膜下腫瘍を認め,中心の陥凹部からの生検で,十二指腸平滑筋腫と診断した. 小腸X線検査・注腸X線検査・腹部CT検査・腹部血管造影検査では異常を認めなかった.開腹したところ十二指腸だけでなく,Treitz靱帯から約10cmおよび30cmの空腸にも管外発育型の3×3mmおよび10×10mmの2個の腫瘤を認め,術中迅速凍結検査法にていずれも平滑筋腫と診断されたため,腫瘤摘出術のみ施行した.多発性小腸平滑筋腫は非常に稀で,現在までに本邦で11例の報告があるが,十二指腸平滑筋腫を合併した例はなく,本邦初と思われたため,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 洲脇 謹一郎, 西原 修造, 大原 昌樹, 今滝 健介, 上坂 好一, 今井 正信
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1562-1566_1
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    上部消化管出血に対し,sucralfate-thrombin混合物のdirect-coating法とH2プロッカー投与のみで,どの程度の出血まで止血可能かについて検討した.対象は87例で,年齢は20歳から93歳であり,男性62例,女性25例で,それぞれの平均年齢は59歳,65歳であった.疾患別では胃潰瘍31例(36%),十二指腸潰瘍22例(25%),吻合部潰瘍6例(7%),急性胃病変13例(15%),胃癌8例(9%),Mallory-Weiss症候群2例(2%),粘膜下腫瘍1例(1%),および胃ポリペクトミー後の出血4例(5%)であった.基礎疾患の合併は43例(49%)であり,基礎疾患による死亡は8例(9%)であった.緊急内視鏡時の主訴は,吐・下血のほかに強い心窩部痛が24例(28%)含まれていた.潰瘍底の内視鏡所見は,凝血の付着のない例が12例(14%),新鮮凝血例40例(46%),湧出性出血17例(20%),細血管露出14例(16%),あきらかな露出血管4例(5%)であった.85例(98%)に完全止血効果が得られ,2例(2%)が一時的止血効果であった.さらに,強い心窩部痛等の症状はdirect-coating後速やかに改善した.以上のことから,薬剤direct-coating法は,上部消化管出血に対する止血法のみならず,症状改善にも有効な内視鏡的治療法であると考えた.
  • 古林 太加志, 河田 典子, 佐野 佳子, 小野 拓也, 三由 研一, 山根 行雄, 水口 美智, 大野 靖彦, 松尾 嘉禮
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1567-1573
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    体外衝撃波結石破砕治療は現在,主として泌尿器科領域において腎・尿管結石の治療に用いられている.われわれは胆嚢切除術により得られた胆石に体外衝撃波破砕治療器を用いて衝撃波をin vitroにて照射したところ,胆石は衝撃波照射750発にて全壊した.そこで2例の総胆管結石症に対して体外衝撃波結石破砕治療器を用いて結石の破砕を試みた.内視鏡的乳頭切開術を行ったのち内視鏡的経鼻胆道ドレナージを留置し,X線造影モニター下に衝撃波を2,400発照射し,破砕された結石をバスケットカテーテルにて摘出した.2例とも総胆管結石は完全に除去された.合併症は全く認められなかった.体外衝撃波破砕治療は巨大な総胆管結石症例の治療に有用であることが示唆された.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1988 年 30 巻 7 号 p. 1574-1700
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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