日本消化器内視鏡学会雑誌
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30 巻, 8 号
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  • 西川 邦寿
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1725-1735
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     びらん・潰瘍型逆流性食道炎123例を男女別に39歳以下,40歳~59歳,60歳以上の6群に分類し,臨床症状,内視鏡による噴門閉鎖不全と胃十二指腸潰瘍の合併率,日常生活における食事や嗜好品についての嗜好状況を同時期に内視鏡が施行され食道に異常を認めなかった2,051例と比較した.また,経過を詳細に観察できた27例において,その消長を追及した.上部消化管以外の併存疾患を伴ったものについてはそれらの特徴について検討した.結果:1)症状は嚥下困難,胸やけ,嘔吐が特徴的であった.2)噴門閉鎖不全を合併するものが多く,特に高度な噴門閉鎖不全の合併が多かった.3)胃十二指腸潰瘍,特に活動期の潰瘍の合併が多かった.4)一定の嗜好をもち,その長期摂取により逆流性食道炎が惹起される可能性が示唆された.5)経過は短期治癒型,再発型,遷延型に分類でき,短期治癒型が多かった.6)胃十二指腸潰瘍以外の合併疾患には明らかな特徴はなかった.
  • 伊藤 忠彦
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1736-1745
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     術前に超音波内視鏡検査(EUS)を施行した食道癌症例25例について,EUS所見と手術・病理所見とを対比し,EUSの癌深達度診断およびリンパ節診断について検討した.その結果,癌深達度診断においては,腫瘍部を全長にわたって検索できた21例でみると,76.2%の正診率であった.縦隔噴門領域のリンパ節の描出率においては,長径5mm以上のものに限ってみると,通常のEUSでは48.5%であったのに対し,oil-in-water(o/w)emulsion経口投与後のEUS(enhanced EUS)では78.4%に向上した.リンパ節転移の有無の診断では,enhanced EUSで描出されたリンパ節の辺縁や内部のecho enhancementの有無に加え,描出されたリンパ節の大きさや形を考慮した判定基準を設定することにより,正診率は87.5%となった.以上の結果より,o/w emulsion経口投与法を含めたEUSは,食道癌の進展範囲の評価に有用であることを明らかにした.
  • 苅田 幹夫, 多田 正弘, 川野 博章, 柳井 秀雄, 竹本 忠良, 児玉 隆浩, 柳原 照生
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1746-1755_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     生検でgroup IIIとされた82病変およびgroup IVとされた12病変,合計94病変は,strip biopsyの結果,74個の高分化型腺癌と8個の境界病変と12個の腺腫に分類できた.さらに,各病変の隆起型について,最大径を5mm単位で分類し,その表面形態と病変の最大径の関係について検討した結果,腺腫の最大径は,せいぜい15mmであり,どの大きさでもその表面の性状は平滑であった.そして,癌の場合は,最大径が5mm以下であれば,その表面に分割も結節も形成されず,平滑である傾向がみられ,その径の増大とともに,表面に分割や結節が形成され,15mmを越えると分割や結節の数が多数みとめられてくる傾向がみられた.また,同じ平滑なもののなかでは癌は,その色調が赤色を主体とし,腺腫は,白色を主体とする傾向がみられた.
  • 安部井 誠人, 田中 直見, 松本 尚志, 松崎 靖司, 忠願寺 義通, 福富 久之, 大菅 俊明
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1756-1762_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     肝表面のICG着色に局所的な濃淡が生じる原因を明らかにする目的で,ICGの肝細胞内結合蛋白であるリガンディンについて検討した.慢性肝疾患34例を対象に,ICG大量静注下の拡大腹腔鏡観察像と直視下生検組織(一部は,狙撃生検組織)所見およびリガンディンの肝組織内分布(酵素抗体間接法)を対比した.同時に,ICGの血中停滞率およびリガンディン量を反映する肝GST活性を測定した.その結果,肝GST活性は,慢性肝疾患の組織学的進行につれ低値を示し,ICGの血中停滞率と逆相関した.局所的には,リガンディンは,壊死炎症部や線維化巣では陰性を示したが,初期再生結節内肝細胞に濃染された.拡大腹腔鏡下のICG着色像とリガンディンの分布は,全例で極めてよく相関していた.特に,斑紋の狙撃生検標本では,被膜下にリガンディンが濃染された.以上より,肝表面ICG着色像は,肝の組織学的変化に伴うリガンディン分布の変化を反映していることが示唆された.
  • 上條 登, 山口 孝太郎, 嶋倉 勝秀, 坂戸 政彦, 滋野 俊, 古田 精市, 赤松 泰次, 白井 忠
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1763-1768_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腸型べーチェット病は比較的稀な疾患であるが,その治療に関して尚問題が多い.著者らはantioxidantのdl-α-tocopherol nicotinate(Vit E)を本症の4例に単独ないしは他剤と併用投与して17~51カ月,平均34カ月にわたり良好に経過した症例を経験したので報告する.男性3例,女性1例.年齢31~40歳.主訴は腹痛3例,下血3例,発熱2例,下痢2例であった.1例にはVit E単独,2例はVit Eとsalicylazo-sulfapyridine(SASP)の併用,1例はSASPと免疫抑制剤の併用からVit E単独に切り替えた.ステロイド剤は1例も使用しなかった.潰瘍は1例が消失,他の3例も著明に縮小し,臨床症状も改善消失,Vit Eが有効と考えられた.べーチェット病の病因は完全には解明されていないが,本症患者の好中球の活性酸素産生能亢進が報告されている.本症では薬物療法が奏効する症例が存在することより,穿孔や大出血等で緊急手術を要する場合を除き,内科的治療をまず試みるのが良いと考えられる.
  • 岡野 均, 児玉 正, 辻 秀治, 光藤 章二, 古谷 慎一, 高升 正彦, 藤野 博也, 時田 和彦, 辰巳 嘉英, 川本 克久, 西田 ...
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1771-1776_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     高周波電気凝固止血装置"BICAP"を上部消化管腫瘍に対する凝固治療に応用し,臨床的検討を行った.対象は早期胃癌4例,ATP5例,過形成性ポリープ6例,食道癌狭窄1例の計16例とした.食道癌では狭窄解除を目的に特別なブジー型プローべを,早期胃癌,ATP,過形成性ポリープに対しては,すでに上部消化管止血に用いられているプローべをそのまま使用した.凝固によって組織が脱落したあとは治療過程での内視鏡観察および生検を行った.早期胃癌例のうち2例は,凝固治療後に外科的切除が施行されたが切除標本における病理組織学的検討では悪性所見は認められなかった.他の2例は,病変部完全凝固治療後最長例は18カ月を経過しているが内視鏡的にも生検にても再発を認めていない.従来のバルーンならびにブジーにて狭窄の解除が困難であった食道癌狭窄例では,特別なブジー型プローべを用いることにより一時的に狭窄の改善を得ることが出来た.本法で使用するプローべは3対の双極凝固子が等間隔に先端のみならず側面にも配置されているため,レーザーでは照射困難な接線方向の病変部への凝固治療も可能であった.またプローべ中央より適時送水可能なため,病変部の洗浄ならびに冷却が可能であり日常の上部消化管の内視鏡検査同様の簡便さで実施できること,機器の操作も容易で安価で持ち運びが可能でベッドサイドでの治療にも有効な方法と考えられた.
  • 塚田 英昭, 平松 通徳, 上田 俊二, 内野 治人, 酒井 正彦, 三宅 健夫
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1777-1784_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     電子スコープと従来のファイバースコープとの内視鏡像を比較検討する目的で,ラットに実験的胃及び大腸病変を作成し,両スコープで同一病変を観察した後,病変部を摘出し,実体観察および組織学的検討を行った.電子スコープでは非病変部胃粘膜において胃小区が観察された.病変部胃粘膜においては,ラット水浸拘束直後の中心静脈怒張は,胃小区単位の粘膜発赤として観察された.ラット酢酸潰瘍の観察では潰瘍周囲粘膜の発赤像が明瞭に認められた.一方,非病変部大腸粘膜では,微細な血管像の他,腸管壁を通して腹腔内が透見された.また,メチレンブルー染色により小区が観察された.病変部大腸粘膜では血管の途絶像,口径不同像,粘膜内微小出血像など,従来のファイバースコープでは観察できなかった微小な病変が観察可能であった.以上より,電子スコープは従来のファイバースコープに比して,消化管粘膜病変の微細な形態的変化のほか,微妙な色調の変化を観察でき,動物実験にも有用と考えられた.
  • 中塩 一昭, 渋江 正, 田中 啓三, 松元 淳, 山下 行博, 鮫島 由規則, 高崎 能久, 尾田 一郎, 陳 恵南, 松尾 真一郎, 浜 ...
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1787-1793_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     教室で昭和45年より17年間にERCPにて診断した胆石症は1,986例である.このうち20歳未満の若年者胆石症は10例(0.6%)にすぎなかった.その特徴として以下の所見がみられた.10例の男女比は1:4で女性に多く,全例が腹痛を呈していた.胆石の存在部位は胆嚢内5例(50%),胆管内2例(20%),胆嚢と胆管両者に存在するもの3例(30%)で,そのうち先天性総胆管嚢腫の合併が3例認められた. 若年者とくに小児科領域における日常診療では腹痛はしばしば遭遇する訴えでその診断に苦慮する場合も少なくない.なかでも若年者の胆石症は比較的稀な疾患とされており,稀であるがゆえに見逃される場合も多い.その臨床的特徴としては腹痛を主訴として発症することが多いが,総胆管結石や先天性総胆管嚢腫の合併が認められる場合があるので,その鑑別診断法として腹部超音波検査,ERCP(逆行性胆管膵管造影法)が不可欠であることを強調した.
  • 小林 清典, 小泉 和三郎, 三橋 利温, 勝又 伴栄, 西元寺 克禮, 岡部 治弥, 柏崎 禎夫, 大部 誠, 奥平 雅彦, 倉田 毅
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1794-1798_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     22歳男性のサイトメガロウイルス(以下CMV)食道炎の一例を経験した.症例は消化器症状により発症したSLEの患者であり,副腎皮質ステロイド投与中,嚥下時痛及び胸骨後部痛出現.上部消化管内視鏡検査にて中~下部食道に,ほぼ全周性に発赤腫脹した粘膜及び浅い不整形のびらんの多発を認め,生検標本にてびらん面の肉芽組織内血管内皮細胞を主として核内および細胞質内に多数の封入体を認めた.さらに蛍光抗体法にて封入体に一致してCMV抗原を証明し得た,また血清CMV抗体価の有意な上昇もみられ,以上よりCMV食道炎と診断した.以後SLEの病勢改善をみ,ステロイドの減量と共に自覚症状の消失,内視鏡所見の改善をみた.CMV食道炎の剖検例での報告は多いが,生前内視鏡的に診断し得たとの報告は,われわれが調べ得た限りでは欧米18例本邦2例のみと少数であり,また自然経過を観察し得た症例は極めて稀であった.
  • 米川 幸裕, 鴻江 和洋
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1799-1804_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     原因不明の貧血が胃telangiectasiaからの出血によるものであった2症例を報告する.症例1は,悪性貧血が疑われていた75歳男性で,幽門前部に点状ないし斑状の微小血管拡張が無数認められた。肝硬変を合併し,耐術能がないためエタノール局注を行い,貧血の著明な改善をみた.症例2は,鉄欠乏性貧血として治療されていた71歳女性で,幽門前庭部大彎側を中心に全周性に著明な微小血管拡張が無数認められた.幽門側胃切除施行後貧血は完全に改善した.2例とも胃以外にtelangiectasiaを認めず,家族歴もはっきりしなかった.血管造影上vascular tuftsを認めるが,feeding arteryやdraining veinは認めなかった.病理組織上微小血管の拡張で異常血管は認めなかった.胃talangiectasiaの原因疾患として,動脈硬化が関連した後天性angiodysplasiaと考えた.手術適応外の症例は,エタノール局注も有効な治療法と思われた.
  • 阿部 高明, 斎藤 行世, 佐藤 寛, 遠藤 高, 関根 仁
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1807-1812_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は60歳男性.昭和58年7月より全身倦怠,るい痩著明となり当院内科受診し胃X線検査にてBorrmann 4型胃癌疑いにて入院となった.内視鏡にて十二指腸から胃体中部まで敷石状隆起があり生検組織診ではgroup IであったがBorrmann 4型胃癌と診断してUFTM療法を行ったが効果なかった.再度施行した内視鏡では体部から幽門部にかけて全周性に巨大皺襞を認め生検で悪性リンパ腫が疑われた.腫瘍細胞はOKT3(+),OKT4(+)のTh/i細胞であり,一方ATLA抗体,provirusとも陰性であった.しかし末血像と臨床症状から,下山らの提唱するgenome negative ATL(リンパ腫型)の最終診断を得てVEPA療法を開始したが最終的には部分寛解にとどまった.治療後の内視鏡では隆起の消失が若干認められた.直腸にも病変が確認された.ATLの内視鏡報告は少ないが頻度的には潰瘍化を伴う胃病変が最も多く次いで敷石状隆起を示すものが多い.以上のようにATLの消化管病変は稀ではないことがうかがわれた.本例はprovirusが陰性であり貴重な症例と考えられた.
  • 竹村 俊樹, 吉川 敏一, 近藤 依子, 伊谷 賢次, 粉川 隆文, 杉野 成, 福本 圭志, 近藤 元治, 山岸 久一, 梶谷 幸夫
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1813-1821
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     reactive lymphoreticular hyperplasia(RLH)との鑑別が困難で3年4カ月経過観察された胃原発性表層拡大型悪性リンパ腫の1手術例を経験したので報告する.症例は55歳の女性,初回内視鏡検査で胃角部の潰瘍性病変と前庭部の多発びらんを認め,抗潰瘍剤による治療がなされたが病変は再燃,寛解を繰り返した.生検診で悪性所見は得られず単核球の浸潤が認められRLHが疑われた.保存的治療が行われたが,3年4カ月後の内視鏡検査で不規則なびらんを伴う粗大顆粒状の粘膜像が腺境界を越え胃底腺領域にまで拡大したため表層拡大型悪性リンパ腫を疑い手術を施行した.組織学的には粘膜下層までに限局した悪性リンパ腫(follicular, predominantly small cleaved cell)で,表面マーカーはB細胞型であった.胃RLHは表層拡大型悪性リンパ腫と鑑別が困難なことが多く本例はもっと早期に手術すべきであったと考えられる.
  • 長谷部 千登美, 関谷 千尋, 水野 正巳, 石川 裕司, 幸田 弘信, 小野 稔, 矢崎 康幸, 並木 正義
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1822-1827_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は59歳女性.昭和55年にPBC(ScheuerII~III期)と診断されたが,〓痒感等の自覚症状はほとんどなく,経過観察されていた.昭和61年に糖尿病のコントロールを目的として再入院した際,腹腔鏡および肝生検所見ではScheuer IV期と著明に進展しており,またERCPで膵尾部膵管の硬化・壁不整などの変化が認められた.この膵管像の異常は,初回検査時には全く認められず,PBCによる肝病変の進展に伴って出現してきたものであった.他に膵炎を起こす要因は特にないことも合わせて考えると,膵管をTargetにしたPBC類似の病巣が出現している可能性が考えられた.また本例では,当初,PBCに特徴的といわれる粗大で規則正しい区域化を呈していたが,これらの区域化をきりくずすようにさらに細かい区域化が起こり,結節形成に至っていた.この間,肝機能検査値はほぼ安定しており,黄疸は全くなく,〓痒感も初診時より軽減していたにもかかわらずこのように著明に進展していたという点で,非常に興味深い症例である.
  • 片山 隆博, 溝渕 茂樹, 山本 光昭, 佐藤 隆久, 西岡 義典, 重信 彰洋, 乾 浩三, 斉藤 勤, 伊東 進, 佐野 寿昭
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1828-1835
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     小児頭大の管外発育をした十二指腸平滑筋肉腫の一例を経験した.症例は72歳男性,右季肋部痛で発症し,腹部触診にて右季肋部に直径約10cmの腫瘤を触知した.上部消化管X線検査で十二指腸下行脚に中心部陥凹を伴う粘膜下腫瘍様陰影を認めた.内視鏡検査では中心部陥凹は瘻孔と思われ,瘻孔造影・吸引細胞診を施行し,非上皮性と思われる紡錘型の細胞を認めた.非上皮性の悪性腫瘍と診断し,膵頭十二指腸切除術を行った.組織学的には,十二指腸原発の平滑筋肉腫であった.十二指腸より発生した平滑筋肉腫で瘻孔を有する報告例は少なく,その診断に内視鏡的瘻孔造影,吸引細胞診が役立った興味ある症例であった.
  • 伊藤 万寿雄, 向島 偕, 鈴木 俊太郎, 水口 直樹, 武田 正人, 熊谷 正之, 長沼 敏雄, 正宗 研
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1836-1840
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     著者らはERCP直後に施行したCTにより輪状膵管と膵実質との関係を明らかにできた成人輪状膵の1例を報告した.症例は66歳,女性,2年前から時々心窩部の鈍痛,4か月前からは心窩部のモヤモヤ感が出現,秋田県成人病医療センターに入院した.初回のERCPで主乳頭から十二指腸下行脚を取りかこむ輪状膵管が造影され,その直後施行した膵の単純CTで,十二指腸下行脚を背側から回りこむ造影剤の入った輪状膵管と厚さ1.2cmの膵実質を同定することができた.初回ERCPから5日後に施行したERCPで,主乳頭からの輪状膵管の造影に加えて,先細りカニューレによる副乳頭からの背側膵管造影によって,両者間に交通がないことを確認した.ERCPのみで輪状膵の診断は可能であったが,膵実質に関する情報は不明であり,輪状膵管と膵実質との関係を明らかにするためにはERCP直後に施行したCTが極めて有用と思われた.
  • 大城 宏之, 横山 泰久, 横山 功, 菊池 学, 水田 正雄
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1841-1846_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     欧米ではCrohn病の家族発生率は10%前後と報告されているが,本邦では10家系の報告があるのみである.今回,われわれは食道・十二指腸にも病変を認め,家族同胞に発生した例を経験したので報告する. 弟は18歳,1983年6月頃より胃が重苦しく食欲がなくなり,8月頃より微熱があった.10月頃より食後腹痛・下痢が出現し,6カ月で体重が12kg減少した.11月当院入院し,大腸・小腸X線,大腸内視鏡検査にてcobblestone像,縦走潰瘍を認めた.さらに,内視鏡検査にて食道に小隆起および粘膜内瘻孔,十二指腸球部にcobblestone様病変を認めた.肛門管よりの生検では,粘膜および粘膜下組織に肉芽腫様炎症性細胞の浸潤を認めた. 兄は23歳,1981年3月頃より微熱・下痢傾向あり,小腸X線検査にて回腸に縦走潰瘍およびcobblestone appearanceを認めた. HLAの検索では弟にA2,A9,BW46,BW54,兄にA9,BW54,B12,C1が認められた.
  • 井上 健一郎, 伊津野 稔, 千住 雅博, 船津 史郎, 久保 啓吾, 水田 陽平, 村田 育夫, 今西 建夫, 牧山 和也, 原 耕平
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1847-1850_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     慢性期の日本住血吸虫症において,特異な大腸内視鏡像を呈した1例を報告した.症例は,69歳男性で,血尿を主訴として来院し,腹部超音波検査にて,偶々,肝に異常を認めたため,入院し精密検査を行った.腹腔鏡下肝生検により肝組織中に日本住血吸虫卵を検出した.注腸X線検査では,S状結腸の短縮とハウストラの減少を認めた.大腸内視鏡検査では,ほぼ全大腸にわたり,粘膜は萎縮性で,血管透見も不明瞭であり,不整形の小黄色斑を認めた.これらの異常は,S状結腸に顕著であった.黄色斑部から得られた生検組織中にも多数の日本住血吸虫卵を認めた.黄色斑は,慢性期の日本住血吸虫症にみられる最も特徴的な所見であるとする報告はこれまでにもみられたが,われわれは拡大観察により,この黄色斑が直径およそ50~100μmの顆粒の集合であり,その大きさから考えて,虫卵そのものを反映しているのではないかと推測した.
  • 中村 宏, 河野 辰幸, 井上 晴洋, 下重 勝雄, 五関 謹秀, 竹下 公矢, 遠藤 光夫, 中嶋 昭
    1988 年 30 巻 8 号 p. 1853-1855_1
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道静脈瘤硬化療法(以下EIS)における穿刺手技をより安全,確実にするために,最近普及してきたオーバーチューブを用い,その内腔を陰圧にして静脈瘤をスリットに固定する方法を試みた.これにより小さな丈の低い静脈瘤も固定が可能であり,極めて容易かつ確実に静脈瘤内注入を行うことができた.freehand法による硬化療法が静脈瘤完全消滅までに熟練を要するのに対し,この方法は,視野,静脈瘤固定,穿刺の安全性の点で優れており,小さな静脈瘤をも完全消滅させ得る簡便な手法であると思われる.
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