日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
31 巻, 12 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
  • ―とくにEthanolamine oleateの少量注入法について―
    安部 孝
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3171-3179
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     5%Ethanolamine oleate(以下EO)の比較的少量を食道静脈瘤内に注入する内視鏡下静脈瘤栓塞術(Endoscopic injection sclerotherapy―以下EIS)の効果と安全性を検討した.EOの注入量は1カ所に2ml未満,1本の静脈瘤に5ml未満,1回のEISの総量は20ml未満とした.1本の静脈瘤に5ml以上,または,1回のEISに20ml以上のEOを注入した例を多量注入群とした.対象は1980年から1988年4月までに当科でEISをおこなった120例に対する170シリーズである.170シリーズのEISで食道静脈瘤が消失,または硬く細い直線状のFlCwRC(-)までに改善した140シリーズ中EIS未完成の22シリーズを除く118シリーズについて,食道静脈瘤再発までの期間を少量注入群91シリーズと多量注入群27シリーズで比較した.食道静脈瘤再発率は,1年後では少量群は31%,多量群は38%,2年後では各々53%と58%であり再発率でも両群間に有為差はなかった.少量注入法による緊急止血効果は41シリーズに行い92.7%に有効であった.合併症は多量注入群では66%にみられたが少量群では29%と低率であり,特に重篤な合併症はみられなかった.
  • 雫 稔弘, 福本 四郎, 島田 宜浩
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3180-3193
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道内視鏡検査と予防的食道静脈瘤硬化療法によりコントロールを受けた肝硬変症259例(肝癌合併81例を含む)の予後調査を実施し,5年生存率,直接死因及び死亡時年齢を直接死因別に検討した. その結果,5年生存率は71.8%であり最近の諸家の報告とほぼ一致したが,直接死因では食道静脈瘤破綻による出血死が3.3%と著明に少なく,肝不全死も12.2%と低率であった.その反面,肝癌死は72.2%と著しく高率となり,肝疾患以外の他疾患死も20.2%に達した.また,直接死因別にみた死亡時年齢では,出血死と肝不全死の合計群は60.3歳,他疾患死は66.5歳と順次に高年齢であった. これらの成績は,出血死と肝不全死の減少に伴う肝癌死の著増と,更に,肝癌をも含める肝疾患死を免れた症例が他疾患死に至る現状を示したものと推定された.
  • 柴田 好, 岡村 毅與志, 岡野 重幸, 男澤 伸一, 黒川 洋, 北守 茂, 奥山 修兒, 蘆田 知史, 原 久人, 奥村 利勝, 小原 ...
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3194-3206_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     手術不能の食道癌患者16例にレーザー治療,拡張術,人工食道挿管術などの内視鏡的治療を行った.患者の全例が男性であり,年齢は60歳から77歳まで,その平均は67.7歳である.手術不能の主な理由は高齢のため,腫瘍の転移,心肺の機能不全,全身状態の不良などによる.食道気管支瘻を合併した例は7例あった.内視鏡的治療開始後からの平均生存期間は7.1カ月であった.4例が退院可能となり,6例が中心静脈栄養から開放された.治療後のPerformance Status,食事摂取の改善が得られ,これらの治療は患者のquality of lifeを高めるうえで有意義であった. 手術不能の食道癌に対する治療は,従来放射線療法,化学療法が主体であったが,今後積極的に内視鏡的治療も考慮すべきである.内視鏡的治療の選択は,食事摂取ができることを主眼とし,狭窄の程度,狭窄距離,気管支瘻の有無などを熟慮したうえで方針を決定すべきである.
  • 小原 勝敏, 大平 弘正, 坂本 弘明, 岩崎 勝利, 三橋 彦也, 鈴木 秀, 正木 盛夫, 森藤 隆夫, 粕川 禮司
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3209-3216_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     難治性の孤立性胃静脈瘤出血に対して,α-cyanoacrylate monomer(CA)による硬化療法(ST)を施行し,止血し得た3例を経験した.3例中1例は食道にも静脈瘤があったが胃静脈瘤(Lg)との交通はなく食道側からのEOの逆流による治療は不可能であった.3例中2例は以前にSTを施行し食道静脈瘤は完全消失していた.共にLgが残存した状態で観察されていたが,6カ月後と52カ月後にそれぞれ大量のLg出血を来した.2例とも,Lgの直接穿刺によるEO注入を何度か試みたが効果がなかった.術前のイオパミドールによる静脈瘤造影では,3例とも造影濃度が薄いことから,血管が太いだけでなく,血流が速いことが考えられた.CAによるSTで,3例とも瞬時に止血できた.CAは異物として残存するためその適応を慎重に選ぶべきである.すなわち,孤立性Lgからの急性出血で,手術不能または拒否例であり,かつEO無効例が適応と考えられる.
  • 坂上 博, 水上 祐治, 細川 鎮史, 山下 省吾, 佐々木 達郎, 太田 康幸
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3217-3222_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     手術非適応肝硬変例に対する内視鏡的硬化療法(EIS)の長期効果を自然経過観察例と対比検討した.われわれの手術適応基準である,1)腹水,脳症のcontrolが十分可能である,2)血清ビリルビン2.0mg/d1以下,KICG0.05以上,3)肝癌非合併の3項目に照合して手術非適応と判定してEISを施行した42例と,CBF2,3RCsign陽性の食道静脈瘤を有し手術非適応で内科的保存療法のみで経過観察した68例の計110例を調査対象とした.EIS群42例中8例(19.1%)が平均12.2カ月後に食道静脈瘤出血をきたし,内5例(11.9%)が出血死し,自然経過群と比べて出血,出血死の頻度が有意に低率であった(P<0.01).EIS群の1年,2年生存率は,それぞれ74.9%,47.0%であり,自然経過群の生存率と比べ有意にすぐれていた(P<0.01).死亡例の直接死因は,EIS群では肝細胞癌死が最も多く,自然経過群では食道静脈瘤出血死が最も高率であった.以上の結果より,EISは手術非適応肝硬変例の長期予後において,食道静脈瘤出血,出血死を減少させ,生存率の向上に有用な治療であると結論した.
  • 清水 誠治, 磯 彰格, 大塚 弘友, 青木 美博, 多田 正大, 川井 啓市
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3225-3232_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去3年6カ月の間に消化性潰瘍出血症例50例に対し,ヒートプローブ法による内視鏡的止血術を施行した.その結果,胃潰瘍症例31例中28例(90.3%)で永久止血,2例(6.5%)で一時止血が得られ,止血不能は1例(3.2%)のみであった.十二指腸潰瘍症例14例中13例(92.9%)で永久止血,1例(7.1%)で一時止血が得られ,止血不能例はなかった.吻合部潰瘍5例中全例で永久止血が得られた.全50症例中,永久止血は46例(92.0%),一時止血は3例(6.0%),止血不能は1例(2.0%)であった.潰瘍の発生部位や重症度別にみた止血率には有意差を認めず,また本法施行に際して偶発症は全くみられなかった. ヒートプローブ法は止血効果が優れているだけでなく,手技的にも容易であり諸々の要因を考慮しても,現在用いることのできる方法の中で最も優れた方法であると評価できる. また,本法施行後潰瘍の再発は1例も経験しておらず,ヒートプローブ法が潰瘍の自然史を変え得る可能性があり,今後の長期経過観察が必要であると考えられた.
  • 板野 晃也, 大門 佳弘, 坂本 英典, 小緑 英行, 原口 靖昭, 田仲 謙次郎, 吉田 隆亮
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3233-3237_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     全身性アミロイドーシスの剖検11例について,小腸・大腸におけるアミロイド沈着の程度を腸壁各層ごとに検索し,重篤な合併症である麻痺性イレウスと消化管出血についてアミロイド沈着との関連を検討した.原発性アミロイドーシスでは消化管合併症は認められず,続発性アミロイドーシスにおいてのみ認められた.続発性アミロイドーシスにおいて,重篤な消化管合併症を有す群は対照群と比較して小腸では粘膜固有層,固有筋層,漿膜に,大腸では粘膜下層に有意なアミロイド沈着が認められた.
  • 清原 達也, 石川 秀樹, 今西 清, 竜田 正晴, 大谷 透, 奥田 茂, 石黒 信吾
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3238-3247
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     最近当院にて経験した回盲弁lipohyperplasia3例,lipoma1例の内視鏡所見および注腸CT所見を検討した.lipohyperplasiaは内視鏡的には回盲弁の軟らかいび慢性肥大として,またlipomaは限局性の粘膜下腫瘤として観察されることが多い.特徴的な内視鏡所見に加えて生検により粘膜下に脂肪組織を証明できれば確定診断が可能であるが,生検にて粘膜下組織を採取することは困雄なことが多い.回盲弁lipohyperplasiaとlipomaの診断には,微温湯などを用いた注腸CTが有用で,fat densityを有する腫瘤または回盲弁肥大像を認めれば診断可能である.回盲弁のlipohyperplasiaとlipomaはいずれも良性疾患で,回盲部の疼痛,圧痛などの回盲弁症候群を呈さない場合には臨床的には経過観察のみでよいと考えられる.
  • 石川 秀樹, 今西 清, 竜田 正晴, 大谷 透, 奥田 茂
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3248-3252_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは従来,超音波画像を充分に得ることが困難であった直腸に対する超音波検査法として,直腸鏡を用いた大腸超音波内視鏡装置を新たに開発した.直腸鏡(ユフ精器,20mm×20cm)を用い内視鏡観察後,病巣の口側端にて直腸鏡を固定し,ピストル型体腔内用スキャナ(アロカ,7.5MHz)を直腸鏡内に挿入し,パッキングで密封する.脱気水150mlを直腸鏡送気孔より直腸内に注入し,超音波スキャナを管腔の中心に位置するように導き,直腸鏡を抜去しつつ超音波画像を観察,撮影する.本法では注入する脱気水の量を容易に短時間で調節できるため,管腔を適切に拡張させることができ,強く屈曲した腸管でも充分な観察が可能であり,患者の負担も軽微であった.通常,正常直腸壁は5層構造として観察でき,5層構造の変化より癌の深達度診断が可能で直腸癌26例に対し21例(80.8%)で正診が得られた.
  • ―神経線維腫と神経鞘腫の鑑別を中心に―
    菅井 有, 千葉 ゆかり, 高山 和夫, 狩野 敦, 向井田 英明, 中村 義明, 菅原 光宏, 折居 正之, 藤巻 英二, 佐藤 邦夫, ...
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3253-3258_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     43歳の女性で,集団検診の際に胃の異常を指摘され,また心窩部不快感もみられたため川久保病院を受診し入院となった. 上部消化管造影及び内視鏡検査で胃体下部大彎側に表面周囲粘膜と色調の差のない,立ち上がり比較的なだらかな隆起性病変を認める.潰瘍性変化は伴っていない.直視下生検では腫瘍性病変を検出されなかったためエタナール局注療法を施行したが,やはり腫瘍性病変はえられなかった.粘膜下腫瘍の診断のもとに腫瘤核出術を施行した. 腫瘤は粘膜下層及び筋層にみられ,被膜はみられないが比較的よく限局している. 組織学的には,紡錘形細胞が不規則に交錯しながら波状に増殖している.間質にはAlcian blue陽性の粘液がみられる.腫瘍の中央には外傷性神経腫に類似する肥大した神経束が認められる. 従来の報告例の中には神経鞘腫と混同されている傾向があり,神経線維腫と神経鞘腫は区別されなくてはならない.
  • 日野 直紀, 山本 博, 千先 茂樹, 脇谷 勇夫, 平田 和文, 島村 淳之輔, 土居 偉嵯雄, 矢野 慧
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3259-3263_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は82歳男性で吐血を主訴として来院.緊急内視鏡検査で,胃穹窿部に凝血塊が付着した不整形潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様病変を認めた.非上皮性悪性腫瘍を疑い潰瘍部およびエタノール局注による人工潰瘍部を頻回に生検したが,組織学的には特異な所見は得られなかった.約1カ月後の内視鏡検査で腫瘤が消失したため胃のvanishingtumorと考えた. 最近アニサキスを胃のvanishing tumorの原因とする報告が増加している.本例は免疫電気泳動でアニサキス抗体は証明されたが,組織学的にはアニサキスとの関連を明らかにすることはできなかった.
  • 白井 善太郎, 古川 浩, 小山 洋一, 徳光 秀出夫, 中岡 幸一, 坂口 正剛, 奥村 恂, 樋口 恒夫, 吉村 茂昭, 真栄城 兼清, ...
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3264-3273
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃穹窿部静脈瘤破裂症例に対して,緊急経回結腸静脈的塞栓術を施行し,止血し得た2症例を経験したので報告した. 自験2症例では,供血路となる左胃静脈あるいは短胃静脈径が太く,胃静脈瘤への血流量が多いことが予測された.従って内視鏡的硬化療法により通常使用量の硬化剤を注入しても止血に難渋すると思われた.また,何れの症例も胃―腎静脈シャントを合併しており,このシャントが胃静脈瘤の唯一のdrainageveinであった.このため胃静脈瘤への内視鏡的硬化療法による直接的硬化剤注入は,drainage veinの塞栓を引き起こし,流入路の静脈圧を亢進させる危険性があり,胃静脈瘤が内視鏡的硬化療法にては難治性である理由の一つと考えられた.以上の理由から自験2症例に対しては経回結腸静脈的塞栓術によって静脈瘤への供血路である左胃静脈および短胃静脈を塞栓し,静脈瘤の完全消失を認めた.経回結腸静脈的塞栓術は,安全かつ確実に静脈瘤への供血路の塞栓を行うことができる有用な治療方法の1つである.
  • 柴田 実, 上野 幸久, 住野 泰清, 吉田 直哉, 島田 長樹, 定本 貴明, 岡田 正, 佐藤 源一郎, 野中 博子
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3274-3279_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は55歳女性,昭和56年掻痒感を主訴に来院.生化学検査ではGOT 126KU, GPT 96KU, γ-GTP 688mu/ml, ALP 74KAU, IgM 547mg/dlと高く抗ミトコンドリア抗体(以下AMA)陰性だが原発性胆汁性肝硬変(以下PBC)を疑い同年2月腹腔鏡下肝生検を施行,組織学的にScheuerII 期のPBCと診断した.昭和59年の第2回腹腔鏡下肝生検では,ScheuerII期の所見が主体をなしていたが,線維が増生し病変は進展していた.また昭和60年より食道静脈瘤が出現し昭和62年にはRC sign陽性となった.以後硬化療法を繰り返したが食道静脈瘤は軽快せず,汎血球減少も増悪したため昭和63年3月食道静脈瘤離断術,摘脾を施行した.肝楔状生検では結節形成傾向を認め,ScheuerIII期であった. PBCは一般の肝硬変とは異なり病初期より門脈圧亢進症が現われることがあり,本例においても食道静脈瘤が出現した時期の肝の機能は比較的良く保たれ,組織学的にはScheuerII期であった.加えて本例の静脈瘤は治療抵抗性で,手術前の汎血球減少の進行がきわめて急速であった.このことを考え合わせると,PBCにおいては肝機能や肝組織の変化が軽くても,門脈圧亢進症が出現する可能性があるため,この点に留意して十分な検査と治療を行う必要がある.
  • ―本邦報告例の集計と考察を含めて―
    斉藤 浩之, 原 久人, 小原 剛, 蘆田 知史, 柴田 好, 高井 幸裕, 岡村 毅與志, 並木 正義, 山本 哲, 浅川 全一, 水戸 ...
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3280-3289_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは最近,膵管非癒合に合併した漿液性膵嚢胞腺腫の1例を経験した.症例は78歳女性,主訴は左季肋部腫瘤.腹部超音波およびCT所見で膵尾部に腫瘤像を認め,ERP所見で膵管非癒合がみられ,背側膵管は尾部で圧排と分枝の軽度拡張を示した.血管造影ではhypervascular patternであった.膵尾部腫瘍と診断し手術を施行した.腫瘤は8.0×6.5×5.0cmで灰色色が硬く,割面は漿液様物質を含んだ小嚢胞が多数存在しており,病理組織学的に漿液性膵嚢胞腺腫と診断した.本症の本邦報告例は自験例を含め60例であり,画像診断を中心に本症に特徴的な所見について文献的考察を加え報告した.
  • 鈴木 徳也, 古部 勝, 杉本 元信
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3290-3297
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は65歳女性.昭和54年頃より意識障害,高アンモニア血症にて入退院を繰り返していた.昭和62年6月精査のため入院.右上胸部に著明な毛細血管と皮下血管拡張を認め,bruitを聴取.肝脾触知せず.血液生化学検査では汎血球減少,低蛋白血症,ICG停滞あり,腹部US,CTにて軽度の肝萎縮と脾腫を認めた.腹腔動脈撮影にて肝動脈枝と肝静脈枝とのA-Vシャントおよび静脈瘤形成,上腸間膜動脈撮影にて肝外におけるA-Pシャント,門脈右枝と肝静脈枝とのP-Vシャントが示唆された.上部消化管内視鏡では食道静脈瘤はなく,胃角後壁に点状毛細血管拡張像を認めた.腹腔鏡検査では肝はやや不整で,萎縮した右葉表面に特異な血管拡張像を認めた.左葉からの生検組織像では線維化の所見はみられなかった.本例では遺伝歴は明らかにできなかったが,Rendu-Osler-Weber病の多彩な肝血管異常により脳症が発現したと思われ,きわめてまれな例と考え報告した.
  • 関 孝一, 白井 康博, 北川 康作, 泉 由紀子, 古波津 修, 山崎 英二, 伊藤 芳晴
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3298-3303_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     紫斑と肝脾腫を端緒とし,無黄疸期にPSCと診断された13歳男児例を報告した.ERC像は肝内胆管に主病変を示しLi Yengらの肝内型PSC,type IIに分類された.PSCの診断に腹腔鏡検査が有用で,左葉肝表面に肝辺縁より横隔膜面にむけてたてにはしる2条の深い溝状陥凹が観察された.肝は大結節性肝硬変の所見で,多数のリンパ小水胞が主に肝凹部に散在した.肝右葉は腫大し再生傾向が伺われた.10カ月後に第2回腹腔鏡検査が行われ,胆嚢内側の肝右葉裏面に半球状再生塊形成が観察された.これらの所見は成人PSCに特徴的と報告される肝表面像に一致する.肝は硬く,生検肝組織はperiductal fibrosisの所見を得てPSC,compatibleと診断された.13歳,無黄疸の時点で肝はすでに輪状肝硬変像を呈した. 小児PSCの肝表面像を検討し,深い溝状陥凹と再生塊形成が特徴的所見と考えられた.
  • 滝内 比呂也, 斎藤 治, 鄭 鳳鉉, 芦田 潔, 平田 一郎, 大藪 博, 陰山 克, 大柴 三郎, 岡島 邦雄
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3304-3311
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は52歳,女性で慢性リンパ性白血病でステロイド治療中の外来患者である.嘔気・嘔吐を訴え小腸X線検査にてTreitz靱帯近傍の上部空腸に近接した両側性の2カ所の狭窄部を認め,狭窄部に一致して潰瘍性病変の存在が疑われ入院した.小腸内視鏡所見では,高度(肛門側)狭窄部の口側に浅い潰瘍がみられた.同部の生検からは確診は得られなかった.約2カ月間抗結核療法,高カロリ._栄養療法を行うも小腸狭窄の改善がみられず,外科的に部分切除を行った.切除標本肉眼所見では,高度狭窄部に一致して帯状に多発の瘢痕部が認められ,狭窄部の口側及び肛門側にも潰瘍瘢痕が複数存在していた.組織学的には確診は得られず,非特異性小腸潰瘍と診断した.非特異性小腸潰瘍の病因は不明であるが幾つかの因子の関与が考えられ,本症例においても種々の病因の検討を行った.
  • 中村 真一, 屋代 庫人, 長廻 紘, 佐藤 秀一, 飯塚 文瑛, 小幡 裕, 鈴木 茂, 勝呂 衛, 勝呂 弥生
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3312-3315_1
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     生検組織の塗沫標本より結核菌を検出し腸結核と診断し得た2例を経験した.症例1は29歳,女性.難治性下痢を主訴に来院.コロノスコピーで回盲弁の腫大とその近傍に辺縁が整な潰瘍を認め,潰瘍辺縁の粘膜より生検した.症例2は54歳,男性.発熱,右下腹部痛を主訴に来院.コロノスコピーで盲腸にひび割れ状の発赤を認め,同部位より生検した.両症例とも生検塗沫標本に抗酸菌染色を施行したところ結核菌を検出し腸結核と診断した. いずれの症例も内視鏡所見は必ずしも結核に定型的なものではなく,生検塗沫標本の抗酸菌染色が診断上有用であった.
  • 佐々木 英, 豊永 純, 中島 裕, 居石 哲治, 神田 和久, 松尾 義人, 松隈 則人, 有馬 信之, 光山 慶一, 鶴田 修, 池田 ...
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3316-3323
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     虫垂原発の癌は比較的まれである.今回われわれは,虫垂切除後に虫垂根部ないし開口部近傍粘膜より発生したと思われる粘液産生性の腺癌が,上行結腸中部と回腸末端にfistulaを形成し診断困難であった症例を経験したので文献的考察も加えて報告する. 症例は53歳女性,右下腹部痛を主訴として入院.入院時右下腹部の腫瘤を認め,大腸X線検査,大腸内視鏡検査にて上行結腸の全周性狭窄,Computer Tomography像にて腸管壁肥厚を認めた.術前には腸管外の腸間膜脂肪織炎などの炎症性腫瘤を考えた.しかし手術所見では,腹腔内にムチン散布を認め,盲腸後側虫垂切除部に一致して腫瘤を認めた.組織学的には,虫垂根部ないし虫垂開口部附近粘膜より発生した粘液産生性の癌で上行結腸中部と回腸に炎症性のfistula形成を認めた.
  • 武田 功, 中野 哲, 熊田 卓, 杉山 恵一, 長田 敏正, 浦野 文博, 田中 裕之, 安藤 守秀
    1989 年 31 巻 12 号 p. 3324-3331
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的局注療法の有用性を評価するために,当院で最近の11年間に経験した630例の出血性胃潰瘍を対象に臨床的検討を行なった.患者を時期別に以下の3期に分けた.A期(1978.1~1980.10):内視鏡的局注療法を導入する以前,B期(1980.11~1983.12):一時止血の目的で高張Na-Epinephrine液(以下,HSE)を用いていた時期,C期(1984,1~1988.12):エタノールおよびHSEによる局注療法を施行し,露出血管がつぶれるまで連日追加局注を行なった時期とした. 各期の手術率をみると,A期の36.4%(48/132),B期の14.4%(20/139)に比し,C期では4.2%(15/359)と有意に減少した(いずれもP<0.01).また,局注療法を施行した例での手術率もB期の21.7%(20/92)に対し,C期では5.0%(13/262)と有意に低下した(P<0.01).C期における一時止血率は98.9%(259/262),永久止血率は94.3%(247/262)であった.C期に手術された13例を検討すると,露出血管の太いDieulafoy潰瘍(30.8%)か,3.1cm以上の大きい潰瘍(53.8%)でUlIVの深い潰瘍(30.8%)が多かった. 以上,出血性胃潰瘍の止血には露出血管が消失するまで連日追加局注する方法が有用であると思われたが,止血困難な症例もあり,常にその限界を考慮しつつ治療にあたることが必要である.
  • 1989 年 31 巻 12 号 p. 3332-3424
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 31 巻 12 号 p. 3442
    発行日: 1989年
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
feedback
Top