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謝花 典子
1989 年 31 巻 11 号 p.
2925-2941
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
消化性潰瘍長期経過観察例(胃潰瘍120例,十二指腸潰瘍61例)を対象に,その病期の推移,特に瘢痕像(S
1,S
2)と再発との関係,維持療法の効果に関して臨床的及び内視鏡的検討を行った.胃潰瘍では,初期治療によりS
1に至る例が97%,S
2には3%,十二指腸潰瘍では,それぞれ84%,16%であった.再発率は,S
1の方がS
2より高値を示した.S
1からS
2への移行率は,維持療法継続群は非継続群より高く,胃潰瘍59%,十二指腸潰瘍61%であった.従って,維持療法の継続はS
1からS
2への移行を高め,再発率を低下させることがわかった.S
2からの再発は,維持療法継続群からは1例もなかった.S
2において胃潰瘍のN型(線型)瘢痕,十二指腸潰瘍の陥凹型瘢痕では,維持療法を行わなかった群は全例再発した.十二指腸潰瘍の陥凹型のS
2は,非陥凹型に比べ有意に再発率が高かった.また,嗜好品(飲酒,喫煙,コーヒー)に関しては再発率に大きな影響を及ぼさなかった.
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五十嵐 良典
1989 年 31 巻 11 号 p.
2943-2950
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
帯状疱疹を併存する上部消化管病変を検討するために,upperpanendoscopyを122例に施行した.88.5%に何らかの異常を指摘しえた.50歳未満の群に胃に発赤が多く,50歳以上の群に潰瘍瘢痕,癌,ポリープが多く認められた.性差はなかった.発疹出現より2週未満に内視鏡を施行した群に胃の発赤が多くみられ,2週以上経た群に胃のびらんが多かった.汎発性皮疹群に食道炎が多く,胸部および上肢皮疹群に胃潰瘍を多く認めた.胃癌は3例で胸部皮疹群の2例,上肢皮疹群の1例であった.薬剤が投与される前に内視鏡を施行した群に多彩な病変を認めた.抗virus剤使用例に正常例が多かった.病変の組織学的検索や酵素抗体法を用いてもvirusは認められなかった.以上より帯状疱疹に高率に上部消化管病変が併存する原因としてvirusの影響はむしろ否定的で,発症前のストレス,神経痛様疼痛,抗生剤,消炎剤などの薬物の影響などが考えられた.胃癌の3例は全例60歳以上であり,高齢者に帯状疱疹を発症した場合には癌の合併を考慮して全身の検索を行う必要があると考えられた.
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井上 晴洋, 中村 宏, 河野 辰幸, 中嶋 昭, 五関 謹秀, 吉野 邦英, 竹下 公矢, 遠藤 光夫
1989 年 31 巻 11 号 p.
2951-2957_1
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法は透明チューブの登場により,緊急出血例に対しても良好な視野で容易に施行し得るようになった.しかし透明チューブを用いる硬化療法もF1以下の丈の低い静脈瘤に対しては穿刺がきわめて困難になる.われわれはチューブ内を陰圧にすることにより,F1静脈瘤をいわばF3の状態で穿刺する方法を考案した.この爪陰圧下穿刺法寧によりF1以下の丈の低い静脈瘤に対しても全穿刺部位(25例222穿刺部位)で容易な穿刺が可能となった.さらに陰圧の程度により目標とする静脈瘤を術者の意図する任意の部位で穿刺できるため,血管内穿刺率も向上した.また本法施行後,現在まで特記すべき合併症はなく,狭窄等をおこした症例も認めていない. 以上より略陰圧下穿刺法。は透明チューブを用いる硬化療法の適応を,丈の低い静脈瘤を含めたすべての静脈瘤に拡げたと考えている.
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―胃静脈瘤破綻例の検討を中心に―
日野 真一, 隆 元英, 五十嵐 正彦
1989 年 31 巻 11 号 p.
2958-2965
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
門脈圧亢進症195例中,上部消化管出血を合併した40例を対象として,胃静脈瘤破綻例を中心に内視鏡的検討を行った.出血例40例における出血源は,胃静脈瘤が8例20%(噴門部(Lc)静脈瘤4例,穹窿部(Lf)静脈瘤4例)で,食道静脈瘤9例,胃潰瘍9例に次いで多かった.胃静脈瘤破綻例8例において,破綻した胃静脈瘤の形態は,全例が食道静脈瘤内視鏡所見記載基準に言うF
2以上であった.胃静脈瘤破綻部の経時的観察によれば,吐下血後1週以内では出血(出血中ないし凝血塊付着),白苔,発赤が認められ,白苔,発赤は4週以上にわたって認められることが多かった.Lc静脈瘤,Lf静脈瘤いずれの破綻例にもSBtubeによる一時的止血効果が得られた.Lc静脈瘤破綻例4例に対して待期的内視鏡的食道静脈瘤硬化療法を施行し,著効を得た.胃静脈瘤内視鏡所見を食道静脈瘤内視鏡所見記載基準に準じて分類,記載することを試みた.
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―血清膵酵素上昇率を用いて―
大原 弘隆, 後藤 和夫, 野口 良樹, 白木 茂博, 松葉 周三, 神谷 泰隆, 中山 善秀, 岡山 安孝, 武内 俊彦
1989 年 31 巻 11 号 p.
2966-2976
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡的逆行性膵管造影法(以下,ERP)後膵炎の早期診断を目的に,1986年9月より1987年11月までに当院においてERPを施行した224例を対象に血清膵酵素上昇率の変動を検討した.正常群115例中7例(6.1%),慢性膵炎群32例中2例(6.3%)にERP後膵炎を発症した.正常群における検討では,造影度が強く,造影回数が多い症例ほど膵炎発症率が高かった.正常群において膵炎発症例と非発症例の膵酵素上昇率を比較すると,膵炎発症例は有意に高値を示し,ERP後の一過性の膵酵素上昇と膵炎発症にともなう膵酵素上昇には明らかな差があることが証明された.膵炎非発症例におけるERP施行5時間値の平均に標準偏差の2倍を加えた値(M+2SD)を正常上限値として,それに基づきERP後膵炎の診断能を検討すると,Accuracyはすべての膵酵素で95%以上と極めて高く,今回,われわれが設定した正常値はERP後膵炎の早期診断に有用と考えられた.また,慢性膵炎群に対しても検討を行い,特にMIP,およびMOP症例においては正常群と同様の正常上限値が適応されうる可能性があることを示した.
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小原 勝敏, 大平 弘正, 坂本 弘明, 岩崎 勝利, 三橋 彦也, 鈴木 秀, 正木 盛夫, 森藤 隆夫, 粕川 禮司
1989 年 31 巻 11 号 p.
2977-2982_1
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
硬化療法後の観察期間が長くなるにつれ,完全消失からの再発例が見られるようになった.当科で施行したEO・AS併用法による完全消失例の中で下部食道に全周性潰瘍を形成し瘢痕性狭窄をおこした3例では長期間再発がないごとを認めた.そこで,下部食道粘膜内にASを注入し,潰瘍組織の瘢痕化を目標とする地固め法を20例に行った.合併症として,胸痛と食道狭窄があった.胸痛は3~5日で自然軽快した.しかし,食道狭窄の36.4%は拡張術を必要とした.試作した6cm装着バルーンが拡張術に有用であった.拡張術を地固め法で形成された全周性潰瘍が瘢痕化する前に行っておくと,狭窄は防止できた.EO・AS併用法に地固め法を加えると,静脈瘤ないしその供血路の栓塞形成の他に下部食道の粘膜および粘膜下層の線維化によって静脈瘤新生が阻止されると考えられた.
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赤松 泰次, 津金 永二, 坂戸 政彦, 松沢 賢治, 古田 精市, 勝山 努
1989 年 31 巻 11 号 p.
2983-2987_1
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃生検標本の取り違えを未然に察知し,誤った手術を未然に防止できた2例を経験した.症例1は内視鏡検査にてverrucous gastritisと考えられた病変より生検したところGroup-Vと診断されたが,繰り返し再検しても癌組織を証明できなかった.生検標本の取り違えの可能性を疑い,そのパラフィンブロックより連続切片を作製し,抗血液型モノクローナル抗体を用いて組織中(粘膜上皮細胞,血管内皮細胞,組織内赤血球)のABH型抗原物質を同定することによって取り違えを証明し得た.症例2も同様の手段により生検標本の取り違えを証明した.内視鏡診断と生検診断が著しく異なる場合にはいろいろな間違いの可能性を考慮しなければならないが,生検標本の取り違えが疑われるような場合には免疫組織染色による血液型物質の同定が有力な手段となることを報告した.
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国田 哲子, 西田 寿郎, 山田 勝士, 藤井 澄, 中山 順子, 川上 正仁, 角田 幸信, 吉中 建, 平井 敏弘, 嶋本 文雄
1989 年 31 巻 11 号 p.
2988-2992_1
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は,68歳男性.嚥下困難にて来院.食道X線検査にて,胸部上部食道及び中部食道に各々1個の腫瘤陰影を認めた.食道内視鏡検査では,門歯より20cmの部位に色素沈着を有さない表面凹凸不正な隆起性病変と,さらに10cm肛側に表面平滑で光沢を有する黒紫色の二峰性隆起を認め,また腫瘍部以外の食道粘膜にも黒色斑を認めた.内視鏡下生検にて上皮性腫瘍との鑑別が困難であった上部食道の病変と,黒紫色を呈していた中部食道の病変のいずれからも褐色色素を有する腫瘍性細胞の増生を認め悪性黒色腫と診断された.以上より胸部食道全摘術及び頸部食道半切胃管吻合術を施行した.切除標本肉眼所見では上部食道に3.7×2.4×0.5cmの表面凹凸不正な色素沈着を有さない隆起性病変と,その肛側に3.2×2.0×0.5cmの黒色隆起性病変を認め,周辺には黒色斑が散在していた.病理組織所見では両腫瘤とも腫瘍辺縁部にjunctional activityを有する悪性黒色腫であり,周辺の黒色斑はmelanocytosisであった.また連続切片による検討では腫瘍間に連続性は認めなかった.以上より多発性食道原発悪性黒色腫と診断した.
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久村 正也, 田代 典夫, 川上 義和, 宮田 康邦
1989 年 31 巻 11 号 p.
2995-2999_1
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
気管支喘息と消化管病変を伴った不全型Behcet病(腸管Behcet病)の1例を紹介し,その食道病変を中心に報告した. 症例は55歳,女性.再発性口腔内アフタ,嚥下痛,発作性呼吸困難を主訴として受診した.既往歴に外陰部潰瘍,右膝関節炎があり,主訴出現時炎症反応陽性,針反応疑陽性などからBehcet病(不全型)と診断した.X線検査で中部食道に潰瘍性病変を認め,内視鏡検査で白苔を有する楕円形の食道潰瘍を証明した.注腸造影検査では回腸末端部に潰瘍および潰瘍瘢痕を認めた.食道病変を,その後48週に亙って内視鏡的に観察した.観察期間中,病変は中部~下部食道に多発し,大~小,びらん~浅深潰瘍,楕円~円~不整~タテ長形など病期的にも形態的にも多彩な変化を示した.本症例はBehcet病発病約4年後に非アトピー性気管支喘息を合併したが,両疾患の因果関係は現在のところ不明である.
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大原 昌樹, 洲脇 謹一郎, 森谷 広樹, 年森 司, 近藤 淳, 西原 修造, 今井 正信, 浜崎 美景
1989 年 31 巻 11 号 p.
3000-3005
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は,48歳,女性.昭和61年10月5日より上腹部不快感があり近医受診.上部消化管X線検査にて,下部食道にポリープを指摘され,当院紹介となる.上部消化管内視鏡検査にて,下部食道,食道胃接合部付近に白色調で表面平滑,一部びらんを伴った16×16mmの有茎性ポリープを認め,ポリペクトミーを施行した.組織学的には,細血管と線維芽細胞の増殖がみられ,好酸球を含む炎症細胞浸潤が著明で,Inflammatory fibroidpolypと診断した. 食道に発生したInflammatory fibroidpolypの報告は極めて少なく,われわれが検索した範囲ではわずかに11例で,本邦では未だ検索し得ず,興味ある1例と考えられたので文献的考察を加え報告した.
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合原 儀行, 福本 四郎, 平川 和也, 有馬 範行, 大津 敬一, 高鳥 佳昌, 吉田 裕, 池田 敏, 渡辺 誠, 平川 弘泰, 島田 ...
1989 年 31 巻 11 号 p.
3006-3010_1
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
緊急内視鏡検査および内視鏡的止血法の普及とともにDieulafoy潰瘍の病理組織検索例は減少してきた. われわれは,進行胃癌の存在する症例に発症した急性多発潰瘍の経過中に出血をきたし,術後の病理組織学的検索によりその1つがDieulafoy潰瘍と診断された稀な1例を経験したので,内視鏡所見を中心とする臨床経過の推移を検討するとともに,若干の文献的考察を加えて報告した.
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角谷 宏, 六川 博子, 野中 由紀子, 篠原 靖, 堀部 俊哉, 大久保 公雄, 河合 隆, 中川 雅夫, 新戸 禎哲, 斉藤 有一, 大 ...
1989 年 31 巻 11 号 p.
3011-3015_1
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
電気水圧衝撃波による経口胆道鏡下結石破砕術が有用であった巨大総胆管結石の1例を報告した.症例は47歳,男性.心窩部痛,嘔吐を主訴として来院,腹部超音波検査で総胆管結石と診断した.ERCPで総胆管内に60×26mmの巨大総胆管結石を認めたため経口胆道鏡下に電気水圧衝撃波結石破砕術を施行した.内視鏡は親子式ファイバースコープを用い(親ファイバースコープ:TJF-M20,子ファイバースコープ:CHF-B20),破砕装置はStone Disintegrator(SD-1,Northgate Research Corp.U.S.A)で3Frの同軸性双極電極を用いた.2回の破砕術で結石は25×21mmの結石と多数の小結石となった.この時点で通常の結石破砕用鉗子を用いて砕石し,バスケットカテーテルですべての排石が可能であった.結石はコレステロール84%.ビリルビンカルシウム16%であった.尚,本症例は膵管非癒合を伴っていた.
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新澤 真理, 伊藤 万寿雄, 向島 偕, 武田 正人, 水口 直樹, 熊谷 正之, 小山 研二, 上坂 佳敬, 正宗 研
1989 年 31 巻 11 号 p.
3016-3020_1
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
総胆管の管腔内にのみ癌が発育し,総胆管自体には癌の浸潤像を認めなかったStage Iの早期膵頭部癌の1例を報告した.症例:63歳,女性.主訴:心窩部痛.現病歴:肥大型心筋症として昭和62年より秋田県成人病医療センターで加療されていた.最近,心窩部痛出現したため外来で消化器系の検査を施行,肝胆道系酵素の上昇,および腹部超音波検査で総胆管の拡張を認めたため,精査加療の目的で入院した.ERCPでは総胆管,総肝管の拡張に加え,総胆管下部に可動性のある透亮像を認め,ポリープまたは結石の存在が疑われた.後日施行したパピロトームによる生検の結果,高分化型腺癌と診断され,下部総胆管癌の術前診断のもと膵頭十二指腸切除術を施行.切除標本の病理診断は総胆管の管腔内にのみ癌の発育がみられた早期膵頭部癌で,胆管壁には浸潤像は認められなかった.
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三富 弘之, 川村 誠, 大井田 正人, 松野 剛, 竹束 正二郎, 大井田 二郎, 小泉 和三郎, 五十嵐 正広, 勝又 伴栄, 岡部 治 ...
1989 年 31 巻 11 号 p.
3021-3031
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
腸管からの蛋白漏出により著明な低蛋白血症を呈した糞線虫症の1例を報告した.高知県在住の76歳の男性が総胆管結石にて本院外科に入院.総胆管空腸吻合術施行後,発熱,下痢,下腿浮腫ならびに著しい低蛋白血症が認められるようになったため,内科転科となった.検便にて糞線虫が大量にみられ,レントゲン検査で回腸から横行結腸にかけて広範な炎症性変化が認められ,糞線虫による小腸・大腸炎と診断した.また,α
1-antitrypsin蛋白漏出試験が陽性で,腸管からの蛋白漏出を証明できた.駆虫剤投与により便中の糞線虫は陰性化し,加えて高カロリー輸液,経腸栄養剤による治療にて臨床症状,血液検査所見,レントゲン所見は徐々に改善した.
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石田 伊都子, 松井 敏幸, 飯田 三雄, 連 吉時, 西山 公恵, 中尾 譲, 小林 和夫, 村上 純滋, 南部 匠, 藤島 正敏
1989 年 31 巻 11 号 p.
3032-3041
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
半消化態栄養剤が奏効し,その治療経過を内視鏡的に追跡しえた原発性腸リンパ管拡張症の1例を報告した.患者は19歳女性.発熱発作,間欠的白色脂肪便,両下腿浮腫を主訴として当科入院.検査所見では,血清総蛋白3.4g/dlと著しい低蛋白血症と末梢血リンパ球減少を認めた.乳び腹水および間欠的に顕出血を混ずる無臭の白色便を認めた.便中脂肪は31.6%,上部消化管内視鏡検査にて十二指腸および空腸にびまん性に散布性白点を認め,同部の生検にて組織学的に腸リンパ管拡張症と診断.
125I-PVPは5.2%と上昇.リンパ管造影では傍大動脈領域に著明に拡張・蛇行したリンパ管を認めた.リンパ管造影後の腹部CTでは,腸間膜に相当する部位にリピオドール®の貯留を認め,膵の著明な腫大も認められた.上記所見より原発性腸リンパ管拡張症における蛋白漏出性腸症と診断し,成分栄養(ED)に引き続き半消化態栄養剤(Besvion®)にて治療したところ,腹痛,発熱発作は消失し,約1カ月半で血清蛋白7.0g/dlと上昇した.十二指腸・空腸内視鏡所見の改善も認め,組織学的にも同部のリンパ管拡張所見の改善をみた.また,CT上,膵腫大も正常化した.
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小原 尚之, 渥美 正英, 高祖 均, 高顕 純平, 小笠原 宏行, 伊勢谷 和史, 光藤 章二, 布施 好信, 児玉 正, 西田 一弘, ...
1989 年 31 巻 11 号 p.
3042-3047_1
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
大腸平滑筋腫はまれな疾患であるが,注腸検査および大腸内視鏡検査の普及により無症状で発見される症例が増加している.われわれは最近,内視鏡的ポリペクトミーしえた有茎性大腸平滑筋腫を経験したので報告する.症例は65歳の男性,検診目的で施行した胃透視および胃内視鏡検査で胃角部に早期胃癌が発見され,手術目的で入院.手術前に施行した注腸X線検査で下行結腸に約20mmの有茎性のポリープ様病変を認めた.後日行った大腸内視鏡検査では,表面平滑,発赤調の隆起性有茎性の病変を同部位に認め,内視鏡的ポリペクトミーを施行.その組織所見から腫瘍は,粘膜筋板由来の平滑筋腫と診断した.有茎性発育を来した大腸平滑筋腫の本邦報告例はまれであり内視鏡的ポリペクトミーは,本症に対して診断および治療法とし有用であると考えた.
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水間 美宏, 平野 誠一, 村北 肇, 水野 成人, 芦原 亨, 松井 亮好, 早雲 孝信, 向井 秀一, 趙 栄済, 安田 健治朗, 中島 ...
1989 年 31 巻 11 号 p.
3048-3054_1
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
14Fr.の超大口径留置チューブを用いて,胆管癌3例,膵癌4例,腫瘤形成性慢性膵炎1例の計8例にERBDを試みた.14Fr.チューブの内径は3,3mm,外径は4.6mmで,挿入に用いた内視鏡は親子方式の処置用経口的胆管内視鏡検査の親スコープ(Olympus,TJF-M20)であり,その他にガイドワイヤー,ガイドカテーテル,プッシュカテーテルなどの挿入器具を使用した.挿入手技は従来の方法とほぼ同様であり,8例中6例でチューブの留置に成功し,有効なドレナージ効果を認めたが,2例では留置不成功に終った.1989年4月時点での減黄維持期間は9カ月が最長で,最短は2ヵ月目にチューブの洗浄を余儀なくされた症例であった.ERBDでの超大口径留置チューブ使用の目的は,減黄効果の促進と減黄維持期間の延長にある.今回の経験ではチューブ挿入の容易性に問題はあるものの,減黄効果の維持において従来より優れた成績を期待できた.
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藤田 直孝, 李 茂基, 小林 剛, 木村 克己, 渡邊 浩光, 望月 福治
1989 年 31 巻 11 号 p.
3055-3059
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
膵・胆管合流異常は,ERCPの普及により診断される症例が増加しているが,胆道癌のhigh risk groupとして注目を集めている.われわれは本異常の内視鏡的超音波検査(EUS)による診断を試み,若干の知見が得られたので報告した.EUSでも胆管拡張の有無,胆管主流型,膵管主流型の違いに関わらず,ERCP同様診断的価値の高い画像を得ることができた.胆管主流型と膵管主流型の識別も可能であった.EUSはERCPと比較し造影剤を使用せず外来で安全に施行でき,体外式USの盲点を補えるなどの利点があり,器械の改良に伴い一層ルーチン化される検査法と考えられる.近い将来EUSが契機となり本異常と診断される症例もみられるようになるものと期待される.
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1989 年 31 巻 11 号 p.
3060-3154
発行日: 1989/11/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー