日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
31 巻, 2 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
  • 早川 誠, 森瀬 公友, 林 伸之, 岡 勇二, 田島 強, 原 一夫, 恒川 洋, 鈴木 雅雄
    1989 年 31 巻 2 号 p. 327-333_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    切除された表層拡大型胃悪性リンパ腫14例とびまん型胃RLH12例を対象として,内視鏡所見およびX線所見の特徴像を比較検討した.内視鏡像における顆粒状所見,びらん所見,乳白色調所見は表層拡大型胃悪性リンパ腫ではそれぞれ14/14(100%),13/14(93%),11/14(79%)で,胃RLHでは12/12(100%),10/12(83%),8/12(67%)であり,両疾患の内視鏡像の頻度は類似していた.X線像における病変部の顆粒所見は,表層拡大型胃悪性リンパ腫は14例中12例(86%)が不揃いであったが,胃RLHでは12例中8例(67%)で粒が揃っていた.X線像から顆粒の最大径を比較すると,表層拡大型胃悪性リンパ腫は4mm~8mmの大きさが3/14(21%),8mm以上が11/14(79%)であったが,胃RLHでは4mm~8mmの大きさが12/12(100%)で,表層拡大型胃悪性リンパ腫病変部の顆粒所見は胃RLHに較べて粒が大きく.不揃いであった.病理組織所見では,表層拡大型胃悪性リンパ腫の病変部では14例中14例(100%)において浸潤腫瘍細胞数の程度が高度であったが,胃RLHでは12例中11例(92%)において浸潤リンパ細胞数の程度が中等度であった.表層拡大型胃悪性リンパ腫の早期診断には顆粒所見が大きく不揃いであることが重要と考えられた.
  • ― 特にメチレンブルー染色法からみた腸上皮化生の広がりについて―
    春間 賢, 隅井 浩治, 忌部 明, 木村 学, 豊島 仁, 村上 信三, 松原 秀樹, 徳毛 健治, 井上 和彦, 吉原 正治, 梶山 梧 ...
    1989 年 31 巻 2 号 p. 334-343
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胃過形成性ポリープ61例,胃腺腫9例,隆起型早期胃癌8例及び局在性病変を認めない萎縮性胃炎20例について,間接メチレンブルー染色法を用い,腸上皮化生の程度ど広がりについて比較検討した.胃腺腫,隆起型早期胃癌及び萎縮性胃炎では,前庭部から胃角部を中心として,中等度から高度の腸上皮化生を認めたのに対して,胃過形成性ポリープでは前庭部の腸上皮化生は概して軽度で,その広がりをみても非化生型や,中間帯及び胃体部を中心としたものが高率に存在した.また,いずれの疾患も胃酸分泌の著しい低下を認めたが,血清ガストリン値については胃過形成性ポリープで有意な高値を示した.これらの結果から,今回検討した疾患はいずれもその背景に萎縮性胃炎をともなうが,胃過形成性ポリープではこれまで報告されてきた,前庭部を中心とした通常の萎縮性胃炎とは異なる特異な病態のものが高率に存在することが明らかとなった.
  • 長南 明道, 望月 福治, 池田 卓, 豊原 時秋, 藤田 直孝, 李 茂基, 長野 正裕, 村上 大平, 矢野 明, 小林 剛, 安藤 正 ...
    1989 年 31 巻 2 号 p. 344-351
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    過去7年間に当センターで内視鏡的に胃ポリペクトミーを施行された413例581病巣のうち胃過形成性ポリープ(HP)は387例554病巣,95.4%であった.このうち癌化例について組織学的および内視鏡的に検討を加え,以下の結論を得た. 1)HP癌化例は12例12病巣,全HPの2.2%であった. 2)組織学的にはFoveolar typeが11病巣,Intestinal typeが1病巣であった.また,癌巣はポリープの頂上近くに存在し,周囲に腺腫を合併したものはなかった. 3)内視鏡的には表面粗大顆粒状,白色粘液付着,出血を伴うものが多かった.また,なかには発赤を伴う明らかな陥凹面を有するものもあり,内視鏡診断の一助になる可能性が示唆されたが,一般に通常内視鏡所見からHP癌化例とHPを鑑別することは困難であると考えられた.
  • 西脇 英樹, 佐竹 克介, 曽和 融生, 梅山 馨
    1989 年 31 巻 2 号 p. 353-356
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    雑種成犬10頭を用いて,trypsin加自家胆汁膵管内注入により実験的急性膵炎を作成,5時間後まで経時的に内視鏡下に電解式組織血流計を用いて胃体部粘膜血流量を測定した.なお,実験中は大腿動脈圧,心拍出量を持続的にモニターし,血中アミラーゼ,bradykinin,histamine値を測定した. 胃体部粘膜血流:量は,前値57.8±2.5ml/min/100gが5時間後では47.0±10.5ml/min/100gと低下の傾向を示した.しかし,実験中,明らかな胃粘膜ビランや胃出血は認められなかったが,粘膜色調の蒼白化が著しかった.平均大腿動脈圧は,前値113±12mmHgが5時間後の43±9mmHgまで経時的に低下し,cardiac indexでも前値4.2±1.1ml/min.m2が5時間後では2.4±1.5ml/min.m2と低下し,胃粘膜血流量低下の一因と考えられた.血清ガストリン値は実験中有意の変動は示さなかった. 門脈および末梢血bradykininおよびhistamine値は胆汁注入直後一過性に上昇を示し,その後,低下したが,門脈血histamine値は膵炎作成5時間後まで前値に比べ有意に高値を持続した. かかる血管作動性物質の胃粘膜血流量への影響は明らかでは無かった.
  • ―特に肝予備能との対比において―
    中山 雅樹, 菊地 英亮, 松村 雅彦, 久保 良一, 西村 公男, 植村 正人, 福居 健一, 山尾 純一, 塚本 昇, 松本 昌美, 松 ...
    1989 年 31 巻 2 号 p. 357-363
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    肝硬変における胃・十二指腸粘膜病変の出現と肝の病態がいかなる関係にあるかについて,特に肝予備能検査面から検討を行った. 肝硬変における胃・十二指腸病変の出現頻度は高率で,胃粘膜発赤およびびらんが46.3%,胃潰瘍が20.0%,十二指腸潰瘍が4.8%であった.病変の占拠部位については,胃粘膜発赤およびびらんは胃体部に多く,胃潰瘍は胃角部および胃体部に多く認めた.なお,160例中13例,8.1%で胃・十二指腸粘膜病変が消化管出血の出血源となった. 肝予備能面からの検討では,胃・十二指腸病変を有する有病変群は無病度群に比べてコリンエステラーゼ,血清アルブミン値,プロトロビン時間,ヘパプラスチンテスト,ICGRmax,内因性胆汁酸負荷試験2時間値において異常度が強く,両群間に有意の差を認めた.また,ICG15分停滞率およびグルカゴン負荷試験においても同様の傾向を認め,肝予備能の低下している症例では胃・十二指腸病変の出現に常に留意,対処する必要性が示唆された.
  • 大谷 雅彦, 井戸 健一, 礒田 憲夫, 人見 規文, 川本 智章, 木村 健
    1989 年 31 巻 2 号 p. 364-370
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    超音波腹腔鏡を施行した肝疾患71例中,胆嚢に何らかの異常所見を認めた23例に対して,体外走査による超音波像との比較検討を行った.胆嚢の異常所見は,壁の肥厚14例,小隆起性病変3例,胆嚢結石4例,Adenomyomatosis1例,及び進行胆嚢癌1例であった.これらのうち,小隆起性病変の1例と胆嚢結石の頸部嵌頓の1例は,超音波腹腔鏡で初めて発見された症例であった.胆嚢壁はその3層構造が明瞭に描出され,肝及び周囲組織との関係も明瞭に把握された.胆嚢小隆起性病変では,隆起部の表面の性状,及び茎や隆起の立ち上がりの状態がより明瞭となった. 超音波腹腔鏡は,体外走査による超音波画像と比較し,より解像力の高い像が得られ,胆嚢のあらゆる方向からの走査が可能であること,同時に腹腔鏡により直接胆嚢表面を観察しうるという利点がみられた.従って,超音波腹腔鏡は胆嚢病変の精査法として有用であり,診断能向上に寄与すると考えられた.
  • 塚田 英昭, 清野 裕, 上田 俊二, 内野 治人, 酒井 正彦, 三宅 健夫
    1989 年 31 巻 2 号 p. 371-378_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    ヒト炎症性腸疾患の病態を把握する目的で,これらの代表的な実験モデルとしてラットを用い低分子デキストラン硫酸による大腸炎,および酢酸による腐食性大腸炎を作成して,経時的な内視鏡像,組織像および病変部粘膜血流の比較検討を試みた.本法により詳細な大腸粘膜の経時的内視鏡観察が可能であった.病変作成直後では,粘膜浮腫による血管透見像の消失,著明な粘膜発赤,潰瘍性病変,粘膜出血が経時的に認められた.これらはヒト炎症性腸疾患に類似する所見が認められた.しかし粘膜血流は炎症の強いときに最も低値を示し,炎症の消退に伴い改善し,これはヒト炎症性腸疾患の場合と相反する結果であった.この違いについては明らかではないが,ひとつにはヒト炎症性腸疾患と実験的大腸炎の病因の違いによるものが考えられた.またこれらの実験的大腸炎の観察はヒト大腸粘膜の炎症状態を内視鏡下に,かつ的確に把握するための一助になると思われた.
  • 大城 宏之, 横山 泰久, 横山 功, 菊池 学, 水田 正雄
    1989 年 31 巻 2 号 p. 379-387
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胃悪性リンパ腫57例およびRLH27例について臨床病理学的検討を行い,以下の結論を得た. 1)MLとRLHは性比では差がなく,年齢でRLHのほうがやや若い傾向があった. 2)部位別頻度では,RLHはM領域に多く,MLはM,C領域に多い.MLは大彎側,後壁病変が多く,RLHは小彎側病変が多い. 3)肉眼型では,MLはSuperficial typeおよびUlcer typeが多く,RLHはSuperficial typeが多い. 4)初回内視鏡診断率はMLでは19.3%,RLHでは11.3%であった. 5)生検診断率は,MLでは81.3%,RLHでは38.9%であった. 6)内視鏡像は,MLでは乳白色調白苔,巾の狭い潰瘍辺縁,発赤調の潰瘍辺縁,Cobblestoneなどが多く認められ,RLHでは,褪色調の潰瘍辺縁,地図状陥凹所見,褪色域中に散在する発赤斑などが多く認められた.
  • 池田 成之, 山口 由美子, 手林 明雄, 吉田 裕司, 有末 太郎, 田村 浩一, 大塚 忍
    1989 年 31 巻 2 号 p. 388-398
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胃集検における間接X線,直接X線,内視鏡の診断能について検討し,以下の結論を得た. (1)自施設で第一次スクリーニングから精検まで行って診断した胃集検発見胃癌218例について,間接X線で病変の存在を指摘できたのは,早期胃癌で58%,進行胃癌で90%であり,指摘できなかった胃癌は全体で64例(29%),そのうち他部位チェック例は59例(27%),無示現例は55例(25%)であった. (2)胃集検発見早期胃癌132例のうち直接X線で指摘可能であった30例と内視鏡で指摘可能であった25例を比較した.直接X線で指摘可能な癌は形態は隆起型,大きさは2cm以上,部位はM領域のものが多かったのに対し,内視鏡で指摘可能な癌は陥凹型,2cm以下,A領域のものが多かった. (3)対象集団を男だけにしぼり,直接X線を先行したX線群と内視鏡を先行した内視鏡群に分け,それぞれの群から発見された内視鏡で指摘可能な癌を検討し,胃集検の第二次スクリーニングにおいては,内視鏡検査を先行する方がX線検査を先行するよりも癌発見率は10%高くなることを指摘した.
  • 渋谷 大助, 浅木 茂, 佐藤 彰, 西村 敏明, 大原  秀一, 佐藤 寛, 本島 正, 大原 正志, 田村 節, 山口 典男, 佐々木 ...
    1989 年 31 巻 2 号 p. 399-404_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    血液疾患患者の上部消化管出血に対する緊急内視鏡検査及び内視鏡的純エタノール局注止血法の有用性について考察した.対象は1979年6月から1986年12月までの7年半の間に当科で行われた血液疾患患者の緊急内視鏡例24例で,急性白血病6例,慢性骨髄性白血病(CML)9例,多発性骨髄腫3例,悪性リンパ腫2例,血友病2例,von Willbrand病1例,特発性血小板減少症1例の計24例である.男女比は3:1,平均年齢は51歳であった.緊急内視鏡検査による出血源の検索では,急性白血病は6例中5例(83.3%)が胃・十二指腸びらんからの出血であり,CMLでは9例中6例(66.7%)が消化性潰瘍からの出血であった.内視鏡的止血法の適応とした10例では,全例に一時止血が得られた.再出血は5例(50%)と一般の止血成績に比し極めて高い再出血率を示した.しかし,止血操作を繰り返すことによって全例止血できた.必要十分なエタノールを注入した後は補充療法を併用することも重要である.必要ならば血小板輸血を行ってから内視鏡検査を行っているが,出血や穿孔等の合併症は1例もなかった.以上より,出血性素因を有する血液疾患患者の上部消化管出血に対しても治療的緊急内視鏡検査及び内視鏡的純エタノール局注止血法は有用であると考えられた.
  • 冬広 雄一, 金 光司, 中河 宏治, 西口 幸雄, 李 在都, 市川 久次郎, 馬場 満
    1989 年 31 巻 2 号 p. 405-408_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    正常な消化吸収機能を有しているにもかかわらず経口摂取不可能な患者14例に対して12例に経皮内視鏡的胃瘻造設術を,胃切除後症例の2例にそれぞれ経皮内視鏡的十二指腸瘻,空腸瘻造設術を施行した結果,本法は局所麻酔下に行われる簡便かつ短時間で施行しうる栄養瘻造設術であり全身麻酔や開腹手術に耐え得ないpoor risk患者にとって有効な手段であるとともに,重篤な合併症を起こす事なく安全に施行できる手段であると考えられた.
  • 高升 正彦, 布施 好信, 川本 克久, 藤野 博也, 古谷 慎一, 辻 秀治, 堀口 雄一, 内田 秀一, 今村 政之, 森田 雅弘, 児 ...
    1989 年 31 巻 2 号 p. 409-414_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    通常内視鏡下に観察される十二指腸球部の血管透見像および"liver area"について成人300例を対象に検討した.両所見とも加齢とともに増強する傾向がみられ,また,女性でより高頻度,高度に認められた.一方,十二指腸潰瘍症例では血管透見像はほとんど認められなかった.また"liver area"を有する症例はそのほとんどが血管透見像を伴っていた. 切除標本を用いて血管透見像の有無別に十二指腸球部を組織学的に検討したところ,絨毛の高さ,密度には有意の差を認めなかったが,Brunner腺の厚みには有意の差がみられた. 以上のことより,十二指腸球部の血管透見像と"liver area"の出現要因の1つとして加齢の関与が考えられるとともに,血管透見像は絨毛形態よりもBrunner腺の厚みと密接な関連を有することが示唆された.
  • 藤田 直孝, 李 茂基, 小林 剛, 矢野 明, 佐藤 一弘, 池田 卓, 豊原 時秋, 村上 大平, 長野 正裕, 長南 明道, 木村 克 ...
    1989 年 31 巻 2 号 p. 417-421_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    膵・胆道領域の診断,治療に内視鏡的乳頭切開術(以下,EST)の重要性は高まる一方である.このESTをより安全かつ確実に行うためにわれわれはガイドワイヤー用チャンネル付きの新型パピロトミーナイフP-GC,FUJITAを開発した.P-GCは,通常のパピロトミーナイフと比較しガイドワイヤー用のチャンネルが設けてあり,内腔にガイドワイヤーを通じるだけのスペースが確保されている点が特徴である.P-GCを使用することで,一旦造影用カテーテルで選択的胆管内挿管が行えれば,安全確実にESTを実施することが可能であった.また引き続き内視鏡的胆管ドレナージ法を行う際も,P-GCを抜去することなくこの内腔を通じてガイドワイヤーを再挿入することにより連続してステントの留置を完成させることができた.このように有用性はきわめて高く,今後ESTを実施するに当たっては是非備えておくべきナイフであると考えられた.
  • 佐賀 啓良, 斎藤 雅雄, 坂本 憲正, 宮城 リカルド, 目黒 高志, 武田 宏司, 林下 尚之, 大滝 敏裕, 三谷 亮子, 吉田 純一 ...
    1989 年 31 巻 2 号 p. 422-427_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    従来の大腸ファイバーより更に細径である大腸内視鏡XCF-P(オリンパス社製)を試作し,その有用性について検討,報告した.本機種は軟性部外径9.0mmであり,最小彎曲径の測定より特にシャフト部が非常に柔らかいことが示唆された.14歳~85歳の合計113例を対象として,Sliding Tubeを用いX線透視下にTotal Colonoscopyを行ったが,盲腸までの到達率は96.5%,平均到達時間は13.8分で,われわれが以前試作したCOL-MSに比べ挿入にやや時間を要した.また,終了後の被検者のアンケート結果では,非検者の苦痛は従来の機種より軽かったが,COL-MS以上の向上は見られなかった.柔らかいために横行結腸から深部への挿入にむしろ困難を伴う場合があり,細径であってもある程度以上の硬度を保つ必要があることが示唆された.また,最小彎曲径の測定は内視鏡の硬さ,弾性の指標として有用と思われた.
  • 外園 久芳, 佐藤 薫隆, 為我井 芳郎, 池上 雅博
    1989 年 31 巻 2 号 p. 428-435
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    近年消化管診断技術の進歩により,食道と胃の重複癌は時折経験されるが,両者が早期癌で診断されることは稀である.今回,われわれは食道と胃の同時性早期重複癌で,特に食道では大きさ16×9mmの主病変と,その周辺に微小な上皮内癌の多発した症例を経験したので報告した.
  • 山下 豊, 村田 育夫, 岩永 整磨, 山崎 和文, 水田 陽平, 久保 啓吾, 伊津野 稔, 田中 俊郎, 今西 建夫, 牧山 和也, 原 ...
    1989 年 31 巻 2 号 p. 436-441_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.食欲不振と悪心を主訴として入院.胃X線検査にて幽門前庭部の平滑な隆起性病変と十二指腸の変形を認め,胃内視鏡検査では胃前庭部後壁に粘膜下腫瘤がみられた.選択的胃十二指腸動脈造影では血管増生域と腫瘍濃染像を認めた.症状が進行するため手術を施行し,胃前庭部後壁に3.0×3.0cmの粘膜下腫瘍を認めた.組織学的検索では,腫瘍は前庭部の粘膜下層と固有筋層にあり,一層の異型性のある立方上皮よりなる管腔構造の増殖がみられた.腫瘍には腺房と導管組織よりなる異所性膵組織が混在していた.被覆胃粘膜は正常であった.以上より胃の迷入膵より発生した腺癌と診断した. 胃の迷入膵より発生した腺癌はきわめて稀であり,われわれの症例も含めて15例が本邦で報告されていた.それらはほとんどの症例で,胃前庭部に存在しており,組織学的には管状腺癌が多かった.
  • ―" 胃の肝様腺癌"の1例―
    竹内 護, 山岡 伸三, 松村 恭司, 小原 朝彦, 西木 茂, 前川 真輝
    1989 年 31 巻 2 号 p. 442-448_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    近年,AFP産生胃癌の報告が増加しているが,このうち血中Alpha-fetoprotein(AFP)高度高値で組織学的に肝細胞に類似するものが散見される.われわれは肝癌類似の組織所見を呈したAFP産生胃癌の1例を経験したので報告する.症例は62歳,男性.主訴は全身倦怠感.血清AFP値は61,200ng/mlと高度高値を示し胃内視鏡検査および胃X線検査にて胃体上中部前壁にBorrmann 1型の腫瘍を認めた.肝転移はなく,肝硬変の合併はなかった.S1,N0,P0,H(-)で,胃全摘+脾合併切除術を施行した.術後血清AFP値は正常化した.病理組織学的には腫瘍表面は凝血塊と壊死組織で厚く被われ,豊かな好酸性胞体を持つ肝細胞様腫瘍細胞が充実性胞巣を形成しており,表層では腺腔形成や乳頭状増殖を示す部位もみられた.ssα,ly0,v0,n1-3(-)であった.酵素抗体法にて腫瘍細胞内にAFPおよび各種肝細胞マーカーの局在を認めた.以上より石倉らのいう"胃の肝様腺癌"の1例と考えられた.術後2年6カ月現在再発の兆候なく生存中である.
  • 平松 新, 水野 孝子, 仲野 俊成, 宮内 克二, 西中 俊弘, 中村 昌弘, 山口 貴司, 野中 恒幸, 奥平 勝, 竹村 滋, 鮫島 ...
    1989 年 31 巻 2 号 p. 449-457
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    幽門狭窄をきたした胃・十二指腸クローン病を経験し,内科的治療にて寛解したので本邦報告9例と併せて文献的考察を行った. 患者は22歳,男性.約10年前より食欲不振,不明の発熱,下痢,体重減少を認め,胃クローン病の疑いと言われたが確診されることなくsalazosulfapyridine(SASP)を投与されていたところ,昭和60年6月,上記症状が増強し入院した.胃X線検査で胃は著明に拡張し,噴門直下より体部にわたり大小不同の隆起性病変がみられ,胃角,前庭部に縦走潰瘍がみとめられた.十二指腸から空腸にかけても進展不良で,隆起と一部に偽憩室をみた.胃内視鏡検査でも胃体上部から前庭部にかけて隆起と体下部に不整潰瘍があり,幽門は隆起性病変のために狭小化していた.十二指腸球部からVater乳頭付近にかけても隆起があり,管腔の狭窄を認めた.隆起性病変の切除組織標本より肉芽腫をみとめ,胃・十二指腸,小腸クローン病と診断した.初回入院時はelemental diet (ED), SASP, predonisolone (PLS)で症状は改善し退院した.昭和61年5月に再燃したが,ED,SASPにて軽快した.昭和63年2月現在,SASPのみで外来で経過観察中であり,平常の仕事に就いている.胃・十二指腸狭窄を呈したクローン病は本邦で10例の報告があるが,内科的治療で寛解を得たのは自験例を含む3例のみである.本症例は確定診断から約2年間経過良好であり,慎重に経過観察を行えば,内科的治療も可能であると考えられた.
  • 藤田 直孝, 李 茂基, 小林 剛, 矢野 明, 佐藤 一弘, 池田 卓, 豊原 時秋, 長野 正裕, 村上 大平, 長南 明道, 安藤 正 ...
    1989 年 31 巻 2 号 p. 458-463_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胆管上皮に沿って総肝管にまでおよぶ広範な進展を示した乳頭部癌の1例を経験したので報告する. 患者は59歳の男性で,全身の掻痒感を主訴に近医を受診し,黄疸・肝機能障害を指摘され当科に紹介入院となった.入院時,眼球結膜および皮膚に黄疸を認めた.入院時臨床検査成績では総ビリルビンが9.5mg/dlで,肝機能障害,胆道系酵素の上昇,血中・尿中アミラーゼの高値を認めた.US・CTで胆管および膵管の拡張が指摘された.内視鏡的にVater氏乳頭は口側隆起が著明に腫大していたが,開口部の表面性状には異常を認めなかった.ERCPを行うと,主膵管は数珠状に拡張し,胆管は特に肝外胆管の拡張が著明であった.総胆管末端は狭窄し壁不整像を認めた.これより上流の胆管の辺縁像には異常は指摘し得なかった.ESTを施行後生検を行い,EBDにより減黄を計った.生検標本で癌と診断され,小乳頭部癌の術前診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.胆管は乳頭から約8cm肝側の総肝管のレベルで切離された.病理組織学的には乳頭管状腺癌で,主腫瘤はAcに主座を持ち,1.5×1.5×0.5cmの大きさであったが,癌は主腫瘤から胆管上流に向かい固定標本上約65mmにわたって胆管上皮を置換するような形で進展していた.
  • 藤東 寛行, 大坪 正明, 横手 敏明, 檀浦 龍二郎, 小金丸 道彦, 大竹 久, 神代 弘道
    1989 年 31 巻 2 号 p. 464-470_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Double pylorusはまれな疾患であるが,胃内視鏡および胃X線検査の進歩に伴い,近年報告例が増加している.われわれは最近,胃・十二指腸潰瘍の治癒過程で僅か50日余りで形成された後天性と考えられる1例を経験した.症例は70歳の男性で心窩部痛を主訴として来院.初回内視鏡検査では胃幽門前部と十二指腸球部に深い潰瘍を認め,6週間後の内視鏡検査ではこの潰瘍に一致する部位に副幽門の形成がみられた.本例はdouble pylorusの成因を追求するうえで貴重な症例と考えられ,文献的考察を加えて検討した.
  • 重松 忠, 前田 ひとみ, 福井 和彦, 奥村 泰明, 春日井 達造, 神谷 勲, 上原 真一, 岡田 喜克, 末永 昌宏
    1989 年 31 巻 2 号 p. 471-476_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    先天性胆嚢欠損症は比較的稀な疾患である.画像診断の発達した今日でもその術前診断は困難であり,多くは開腹後に診断されているのが現状である.今回われわれは総胆管結石,閉塞性黄疸にて発症した先天性胆嚢欠損症を経験したので報告する.症例は74歳の女性で発熱,黄疸,右季肋部痛にて来院.腹部US,CT,ERCPにて総胆管結石・右肝内結石と診断した.胆嚢が描出されないのは胆嚢結石および胆嚢萎縮による変化と考えた.開腹時,胆嚢は確認されず,術中胆道造影にても胆嚢は認めず,総胆管に嚢状の突出を認めた.同様に胆道鏡でも嚢状の突出を確認し,胆嚢,胆嚢管の遺残を認める先天性胆嚢欠損症と診断した.
  • 山村 卓也, 伊吹 重雄, 宇井 忠公, 吉本 一哉, 田淵 正文, 小山 優, 副島 和彦
    1989 年 31 巻 2 号 p. 479-482_1
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    大腸では稀とされる陥凹型早期癌を経験したので報告する.症例は64歳の男性で大腸ファイバースコープにより,S状結腸に肉眼的にはIIa+IIc型の早期癌が認められた.内視鏡的ポリペクトミーの適応ではないため,S状結腸切除を施行した.病理組織学的所見では病変全体が11×6mm,中心陥凹が8×5mmのsm癌で,癌の浸潤範囲は大部分は陥凹面にあり,一部が隆起の部分に及んでいた.隆起の大部分は粘膜下層に浸潤した癌組織により健常粘膜が押しあげられたものであった.組織学的にはIIc+IIa型早期癌である.本病変は,隣接した健常組織とは境界が明瞭で,腺腫の介在は認められず,小さなsm癌であるので,denovo cancerであると思われる.陥凹型早期大腸癌の発見頻度は低いが,発赤あるいは陥凹が陥凹型早期癌の内視鏡的特徴である点をふまえて内視鏡検査を行えば,本病変の発見頻度はもっと増加すると思われる.
  • 諏訪 敏一, 平形 征, 佐藤 忠敏, 林田 和也, 遠山 信幸, 奥井 勝二
    1989 年 31 巻 2 号 p. 483-489
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胆道ファイバースコープを改良し,先端部に結石把持用の鉗子を付けた装置を試作した.本装置は全長610mm,外径6.2mmで先端は,8.0mm×4.6mmの二葉の鉗子片から構成されており,中央部にライトガイドと観察窓,送水孔がある.鉗子操作部は接眼部近くに設置し,先端の鉗子部分に強大な力が加わるように工夫した.鉗子は90度まで開き,結石を破砕し截石を容易にしてある.1986年10月から,1988年2月までに17症例の総胆管結石に本装置を使用し,特別な合併症なく,全例,截石に成功した.使用方法は,手術時に総胆管切開をしたものが15例,経皮経肝経路からのものは2例であった.本装置は,鉗子部分を大きくし,把持力,破壊力を増強してある.使用に際しては,結石を視野の中心にとらえ,鉗子を閉じればよく,特別なコツや修練などは必要とせず,手術時間の短縮,患者負担の軽減に役立つ装置と考えられた.
  • 松本 利彦, 村瀬 登志彦, 何 国彦, 飯田 都, 松本 文子, 水野 孝子, 鮫島 美子, 光島 徹
    1989 年 31 巻 2 号 p. 490-495
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    高齢者(70歳以上)に大腸内視鏡検査前処置法として,sodium picosulfate(SP)と上野らが本邦に紹介した非吸収性・非分泌性腸管経口洗浄液(PEG液)の併用法を実施し,その有用性を簡便性・安全性・大腸洗浄効果の面から検討した.簡便性については,前処置所要時間・PEG液飲用時間・排便回数は軽減され,被検者のPEG液に対する評価も良好であった.また再検時の前処置に本併用法を望む者が圧倒的に多かった.安全性については,随伴症状を訴えた頻度は幾分高率であったがすべて軽微であり,血液検査によるHt・血漿浸透圧の変動も有意に少なく臨床的に無視し得るものであった.大腸洗浄効果はBrown変法に比べ明らかに優れ,全大腸において良好な洗浄効果が得られたことを内視鏡的に確認した.以上より,本併用法は特に高齢者において簡便性・安全性に優れ,大腸洗浄効果も良好なため,大腸内視鏡検査前処置法として,今後推奨されるべきものと考える.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1989 年 31 巻 2 号 p. 496-508
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1989 年 31 巻 2 号 p. 508-522
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
feedback
Top