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三輪 洋人, 浜田 勉
1989 年 31 巻 4 号 p.
813-820
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
Retrospectiveにみた発育の速い癌と遅い癌の特徴を明かにするために1年以上経過を観察したスキルスを除く63例(早期癌33例,進行癌30例)について臨床病理学的に検討した.その結果:1)早期胃癌ではIIa型とIIc(ul+)は発育が遅かった.進行癌ではBorrmann1型とBorrmann2型の限局型進行癌は発育の速い癌と考えられた.2)潰瘍性変化を伴わない病変(ul(-))はそれを伴う病変(ul(+))に比較して速く進行癌に発育した.3)進行癌の手術例19例の病理学的検索で,発育の速かった癌は,ulの程度が浅く,癌周囲の線維化が少なく,癌が深層へ連続して浸潤していた.
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重枝 正樹
1989 年 31 巻 4 号 p.
821-829
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
慢性胃炎とくに萎縮性胃炎におけるCampylobacter pylori(以下C.pylori)の意義を明らかにするために,萎縮性胃炎の広がりすなわち内視鏡的萎縮パターンおよび腸上皮化生の広がりとC.pyloriの検出率を検討し,さらに,経過観察による萎縮パターンおよび腸上皮化生の広がりの推移とC.pyloriの検出率を検討した.萎縮パターンとその進展は内視鏡的Congored法を用い,腸上皮化生の広がりとその進展はメチレンブルー染色法を用いて明らかにした.その結果,C.pyloriの検出率は,萎縮パターンのC
2,C
3,O
1,O
2で高い傾向がみられ,C
1,萎縮の進行したO
3,O
4で低い傾向がみられた. また,腸上皮化生の広がりにおける検討では,腸上皮化生の拡がった症例でC.pyloriの検出率が低い傾向がみられた. 一方,内視鏡的萎縮パターンの経過観察においては,萎縮境界が口側へ移動した症例では,C.pyloriの検出率が高く,萎縮境界の変化のみられなかった症例では,C.pyloriは検出されなかった. 以上より,C.pyloriの存在は,背景胃粘膜の萎縮性変化,とくに腸上皮化生の程度に影響され,一方で,萎縮パターンの進行に,C.pyloriが関与している可能性があることが考えられた.
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松本 章夫, 三好 博文, 大坂 直文, 林 勝吉, 鄭 鳳鉉, 浅田 修二, 平田 一郎, 大柴 三郎
1989 年 31 巻 4 号 p.
831-836
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
1983年11月より1987年12月までに184例の食道静脈瘤患者に対し,554回の内視鏡的硬化療法を施行した.これらの症例のうちEIS後の食道狭窄は7例,3.8%に経験された.著者らはこれらの症例につきEOとAS注入量,及びEIS経過中に発生する食道潰瘍の形態から検討を加えた.その結果,ASについてはEIS各回の注入量及び総注入量において非狭窄群,狭窄群に有意差は認めなかったが,EIS2回目以降のEO注入量及び総注入量に有意差を認めた.またEIS後発生する潰瘍の形態は狭窄群においてEO注入部に一致する不整形の広汎なものを形成した症例が多く,EIS後の食道狭窄発生予防のために,EIS2回目以降のEO注入量に注意する必要があると考えられた.
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播磨 健三, 相部 剛, 野口 隆義, 中田 和孝, 林 延彦, 足立 佳世子, 近藤 哲, 田中 慎也, 佐々木 敏行, 大村 良介, 秋 ...
1989 年 31 巻 4 号 p.
837-847
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胆管癌6例を含む総胆管病変20症例に超音波内視鏡検査(EUS)を施行し,総胆管病変に対するEUSの診断能を検討した. 胆管癌6症例において,外科的切除が可能であった4例中3例に腫瘍像が明瞭に描出された.しかし,scirrhous typeに壁内浸潤した1例においては,癌の術前診断そのものが困難であった.癌の壁外浸潤の有無の診断においては,腫瘍像が描出された3例中2例に正診を得た. 総胆管結石症では,全例(6例)において,音響陰影を伴った結石像が描出された.胆管炎や胆管狭窄例においても,胆管壁内および壁外の病態が明瞭に描出され,胆管癌との鑑別診断における本法の有用性が期待される.
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白崎 信二, 細川 治, 渡辺 国重, 津田 昇志, 山崎 信, 山道 昇, 小西 二三男
1989 年 31 巻 4 号 p.
848-855_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
当科における1963年から1985年までの早期胃癌切除例は1,038例であり,このうちI型早期癌は68例76病巣である.このI型早期癌の病理組織学的検討により,24例25病巣は胃過形成性ポリープ(以下H.P.と略記)の癌共存病変であり,I型早期癌の33%を占め,早期癌全症例の2.3%を占めていた.24例中16例17病巣は胃切除例であり,8例8病巣は内視鏡的ポリペクトミー症例であった.病変の最大径は0.7cm~5.5cmで平均2.6cmであった.最大径2cm未満の症例が8例存在し,このうち2例は1cm未満であった.また,病変に占める癌組織の割合の小さいものは,病変も小さく,病変に占める癌組織の割合が大きくなるに従い,病変も大きくなる傾向がみられた.これらより,かなり小さなH.P.にも癌が発生(H.P.の癌化)し,良性組織の増加を幾分伴いながら癌組織が増殖し病変が増大していく事が示唆された.内視鏡所見では,症例によりかなりの差異が認められ,全般的には表面の凹凸不整,白苔,びらん,出血等が観察された.また,経過観察が可能であった症例の内視鏡所見の検討より,大きさの増大,表面凹凸不整の増強が,癌発生(癌化)の可能性を示唆しうる所見と考えられた.当施設における内視鏡的ポリペクトミー開始以来10年間の生検あるいはポリペクトミーにより,H.P.と診断されたものは1,508例であり,同期間中のH.P.の癌共存例数は16例(1.0%)であった.
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永谷 京平, 光島 徹, 横内 敬二, 中元 和也, 阿部 陽介, 有馬 信之, 横田 敏弘, 南原 好和, 井熊 仁, 津田 純郎, 大橋 ...
1989 年 31 巻 4 号 p.
856-865
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
検診目的の全大腸内視鏡(screening total colonoscopy)の前処置法としての特殊組成電解質液経口洗腸法について,飲用量と洗浄効果及び被検者の受容性の関係を人間ドック大腸内視鏡検診受診者266名を飲用量1を,2l,3lの各群に分けて検討した.結果は,飲用量2l以上で,従来法(Brown変法+浣腸)よりも優れた洗浄効果を示した.従来法では前処置不良のことが多かった便秘例についても,便秘のない群と比較すれば若干効果が劣ったが,それでも飲用量22で十分観察可能であった.受診者の受容性を調べる目的で行ったアンケート調査では,大多数が従来法より経口法を好んだが3を飲用群では全量摂取不能例が8%存在し,より少ない飲用量が適当と考えられた.以上より,screening total colonoscopyの前処置法としては,特殊組成電解質液2lによる経口洗腸法が現時点では最も妥当と考えられた.
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岡本 平次, 佐々木 哲二, 佐竹 儀治, 坪水 義夫, 藤田 力也
1989 年 31 巻 4 号 p.
866-871_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
最近6年間で内視鏡的に切除された4,211個の大腸ポリープの中で非上皮性腫瘍は120個で2.8%を占めた.その内訳はlymphoid nodule35個,カルチノイド腫瘍25個,リンパ管腫20個,平滑筋腫19個,脂肪腫18個,血管腫2個,リンパ腫1個であった.大きさ別にみると,5mm以下にlymphoid noduleが,6mm以上にリンパ管腫,脂肪腫が数多く認められ,平滑筋腫はほぼ半数であった.カルチノイド腫瘍は全例直腸にみられ,血管腫の2個も直腸であった.lymphoid nodule35個も多くは直腸に存在したが(26個,74.3%),右側結腸にも6個存在した.平滑筋腫,脂肪腫やリンパ管腫は大腸各部位に認められた.120個中95個,79.2%と大部分が無茎性であり,次いで亜有茎性の21個,17.5%であった.有茎性を呈したのはわずか3個,2.5%で,扁平隆起は1個,0.8%にすぎなかった.内視鏡的切除に関しては,広く深い焼灼後潰瘍を来しやすい.そのためburnning effectを最大限に利用した「80%切除法」を紹介した.非上皮性腫瘍といえども通常の大腸ポリープと同様に内視鏡的切除は可能であり,確定診断と治療を同時に解決してしまう非開腹的手術手技である.従って非上皮性腫瘍に対しても積極的に内視鏡的切除が試みられるべきであろう.
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―特にacridine orange染色の有用性について―
吉田 正樹, 井本 一郎, 志田 幸久, 矢野 裕, 長谷川 浩司, 岡田 明子, 村田 誠, 鈴木 司郎
1989 年 31 巻 4 号 p.
872-878_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
Campylobacter pyloriの検出法について方法別に検討した.培地としては,5%羊血液加TSA培地がChocolate培地よりも明らかに優れていた(P<0.001).市販のChristensenの尿素培地を用いたウレアーゼテストはTSA培地と同等の検出率を示した.AO染色によるCPの検出は容易で,かつTSA培地に比べて有意に高い検出率を示した(P<0.001).CPの検出率の差異はCPの偽陰性例の多さ,即ち培養の困難さに起因していた.現時点では,CPの検出には分離培養,ウレアーゼテストの他にAO染色等による組織標本の検鏡が必須であると考えられる.
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山田 英夫, 神津 照雄, 荻野 幸伸, 今野 秀次, 大島 郁也, 古市 庄二郎, 坂口 文秋, 有馬 美和子, 佐久間 洋一, 菱川 悦 ...
1989 年 31 巻 4 号 p.
881-886_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/20
ジャーナル
フリー
レーザー光励起による癌固有蛍光の観察およびスペクトル分析を目的として,電子スコープ,組織蛍光スペクトル分析装置TS200改良型を使用し,食道癌,胃癌の新鮮摘出標本の観察を行った.レーザー光(波長514.5nm)で励起された癌蛍光を電子スコープにて観察し,TS200改良型により同一部位で630nm,690nmにスペクトルのピークを認めたものを癌蛍光陽性として検討した.食道癌では,14例中8例,胃癌では,7例中6例に癌蛍光を認めた.胃癌に比べ食道癌における癌蛍光は全例微弱であり,胃癌とは異なる蛍光像であった,また,微細な蛍光像を認識し易くするためにコンピューターによる画像処理を行い検討した.
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幕内 幹男, 生田目 公夫, 池田 忠明, 中野 浩, 高 用茂, 広瀬 忠次, 浜井 直人, 小野村 義文, 佐々木 栄一, 大久保 雅彦 ...
1989 年 31 巻 4 号 p.
887-895_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
最近11年間に,当院内視鏡室において,15歳以下の小児193例に対して233回の上部内視鏡検査(ERCPを含む)を施行した.1歳未満4例,1~3歳の幼児前期9例,4~6歳の幼児後期12例,7~11歳の学童前期44例,12~15歳の学童後期124例だった.使用機種は,最近では,すべての年齢層に対して成人用細径ファイバースコープ(GIF-P3,P10等)で充分目的を達することができた.しかし,新生児や低体重乳児に対しては極細径スコープ(5.3mm)XGIF-BFが有効だった.麻酔は,3歳以下では15例中11例(73%)は全身麻酔下で施行されたが,7歳以上の学童になるとERCPの1例以外はすべて成人同様の鎮静剤(ジアゼパム)と局所麻酔剤の投与のみで行うことができた.193例中146例(75.6%)に,内視鏡的に所見が得られ,疾患としては,7歳以上の学童では胃炎68例,十二指腸潰瘍30例,胃潰瘍3例,AGML8例であり粘膜病変が大半を占めていた.また,学童前期でも,潰瘍性病変の発見率が32%と高率だった.一方,幼児期では異物摘出が多く,乳児以下では先天性肥厚性幽門狭窄症や総胆管拡張症,CBAと新生児肝炎のERCPにおける鑑別などが良い適応だった.
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鈴木 邦夫, 郡 大裕, 加藤 卓次, 多田 利男, 伊藤 重二
1989 年 31 巻 4 号 p.
896-904_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
電子内視鏡の持つ特性を探るため,胃ポリープを主な対象として,粘膜表面構造のパターン抽出,抽出されたパターンの定量化の2点について電子内視鏡像の画像処理に関する検討を行った.使用した電子内視鏡はOlympus社製videoimage endoscope GIF Type V10Zである. 粘膜表面構造パターンの抽出には,Green成分画像を対象としたマトリックスサイズ21×21の2次微分処理法が最も有効であった.抽出したパターンの定量化には,各パターンの面積算出と分岐点算出を行いヒストグラムと疑似カラー画像として表現したが,理解しやすい結果は得られずさらに検討を重ねる必要がある. 電子スコープはルーチン操作で容易に粘膜微細模様像の観察が可能であり,画像処理法を組み合わせることにより,従来の拡大内視鏡検査法に変わりうるより客観的な微細診断法となるものと思われた.今後さらに,微細病変抽出のための画像処理アルゴリズムの開発や抽出した粘膜像異常バターンによる病変診断などを可能にしたいと考えている.
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小林 剛, 藤田 直孝, 李 茂基, 佐藤 一弘, 矢野 明, 池田 卓, 豊原 時秋, 長野 正裕, 村上 大平, 長南 明道, 木村 克 ...
1989 年 31 巻 4 号 p.
907-910
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
今回われわれは最近7カ月間に電子スコープ(JF-V10)を使用し実施したERCP,延べ327例と同期間に通常ファイバースコープ(JF-1T10)によってERCPを実施した延べ142例について,胆管,膵管各々の選択的造影率,ERCPの施行時間などについて比較検討を行った.電子スコープによるERCPおよび各種内視鏡的処置については,従来型のファイバースコープによるものと有意差はみられなかった.電子スコープの利点として,モニターテレビを多人数で観察可能なことが挙げられ,これはERCPの教育や,内視鏡的乳頭切開術,胆管結石の截石術,胆管狭窄に対するドレナージ術などの術者と介助者の協調作業を必要とする内視鏡的処置に際して有用であった.
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―未治療での3年間の経過観察―
金子 栄蔵, 大井 成子, 伊藤 剛, 熊谷 純一, 本田 西男, 清水 明浩, 三木 一正, 丹羽 寛文
1989 年 31 巻 4 号 p.
911-917
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃集検で発見された十二指腸潰瘍(40歳以上の男性)を病期の如何を問わず未治療のまま6カ月ごとの内視鏡検査で経過を追跡した.1年間追跡例は593例,3年間追跡例は234例で,それぞれ追跡予定者の66%,58%であった.1年目の検査では初回オープン潰瘍の18.3%が瘢痕化し,初回瘢痕の30.8%が再発していた. 潰瘍の形態別では,単発潰瘍に比し多発,線状潰瘍で有意に治癒率が低く,かつ再発率が高かった.3年間の経過では,3年間オープン潰瘍が持続したものは単発潰瘍にはなく,多発,線状潰瘍では32.5%あった.とくにH2期で発見された多発,線状潰瘍ではその70%がオープンで持続した.初回S1期とS2期の経過では前者で53%が再発したのに対し,後者の再発率は10%にすぎなかった. 以上の点から,40歳以上の十二指腸潰瘍の自然史は発見時の潰瘍の形状,病期などで予測可能なものが多く,また潰瘍の治癒はS2期で完成されるとする従来の報告が裏付けられた.
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多田 正大, 磯 彰格, 大塚 弘友, 尾川 美弥子, 清水 誠治, 青木 美博, 青池 晟, 川井 啓市
1989 年 31 巻 4 号 p.
918-924
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
小児の大腸内視鏡検査にはいくつかの特殊性と問題点があるが,その普及を妨げてきた隘路の一つは,小児にふさわしい大腸ファイバースコープがなかった点であろう.そこで新たに極細径大腸ファイバースコープ・CF-XPが開発されたが,本器種の軟性部外径はわずか7.9mmであり,小児の脆弱な腸管にも安全であるように,軟性部が極めて柔らかい点が特徴である. 最近2年間に腹痛,便通異常,血便などの諸症状を訴えた生後1カ月から10歳までの小児21例に対して,のべ29回にわたって本器種を用いて大腸内視鏡検査を行った.29回の検査において,すべて目的部位までの挿入が可能であり,安全にしかも確実に検査を行うことができた.回盲部までの平均到達時間は7.5分間であり,スコープの操作性も極めて優れていた.特に検査中の小児の苦痛が極端に少ないため,7歳以上の小児では深部挿入にあたっても麻酔を必要としなかった.したがって本器種の開発によって小児に対する大腸内視鏡検査がより取り組みやすくなったことが評価された.
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北田 恵一, 荒川 哲男, 大杉 治司, 溝口 靖紘, 鎌田 悌輔, 小野 時雄, 小林 絢三
1989 年 31 巻 4 号 p.
925-930_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
患者は48歳の女性で,15年来,不眠,動悸の訴えがあり神経症との診断のもとに精神科にて通院加療を受けていたが,最近になって症状が増悪したため,自殺目的で苛性ソーダを服用した.上部消化管造影,内視鏡にて胃角部大彎前壁側に4×10cmの巨大潰瘍を認め,プロスタグランディンE
1誘導体(ミソプロストール)にて4カ月で治癒せしめた.また,食道狭窄も出現したため食道ブジーによる拡張術を施行し,症状の改善をみた.アルカリ性腐蝕剤服用による腐蝕性胃潰瘍の発症率は低く,また,保存的療法で経過観察しえた症例はきわめて少ないため報告した.
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堀田 総一, 島倉 秀也, 平沼 孝之, 対馬 健祐, 松本 好正, 菅野 千秋, 平井 信二, 山口 高史, 樫村 博正, 中原 朗, 山 ...
1989 年 31 巻 4 号 p.
933-938_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/20
ジャーナル
フリー
内視鏡的に治療し得た限局性胃毛細血管拡張症の2例を経験したので報告する.症例1:66歳男性,吐下血を主訴として当院入院.入院後の胃内視鏡検査にて,胃体上部小彎および体中部後壁に各々約8mmのCherry red spotを2個認めた.拡大観察では拡張した毛細血管の集合を認め,左胃動脈造影により同部位に濃染像が認められた.再出血を予防するため,エタノール局注による治療を行い,以後出血もなく良好な経過をたどった.症例2:70歳女性.主訴はタール便と狭心痛.当院入院後の胃内視鏡にて,胃体上部後壁に約5mmの易出血性のCherry red spotを認めた.本症例は,大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis:以下AS)を合併しており,狭心痛は出血を原因とする貧血の結果,生じたものと考えられた.再出血予防のためエタノール局注による治療を行い,以後経過は良好で狭心痛発作も全く認められなくなった.
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宮沢 正行, 武藤 信美, 鳴海 裕之, 近藤 伸宏, 中川 望, 原 雅文, 原澤 茂, 三輪 剛, 杉原 隆, 幕内 博康, 三富 利夫 ...
1989 年 31 巻 4 号 p.
939-947
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は67歳,男性.主訴は上腹部痛.昭和59年7月より上腹部痛出現し上部消化管造影および内視鏡検査にて特に異常を認めなかった.昭和62年2月健診にて胃に隆起性病変を指摘され生検の結果group IIIの異型上皮を認め洞年7月の上部消化管造影にて中音険道の隆起性病変も指摘されたため9月に当科入院となった.食道2病変,胃3病変の同時性多発重複癌の術前診断を行い手術を施行した.病理組織学的検索では食道に15×6mm深達度smと55×36mm深達度epの2病変を認めた.転移は98個のリンパ節切除中1個の胸部中部傍食道リンパ節(108番)にあった.切除胃の全割による検索で深達度mの早期癌を5カ所に認めた.以上より本症例は食道2病変,胃5病変の同時性多発重複癌と最終診断した.本邦の重複癌の報告では胃癌と食道癌の組み合わせは,胃癌と肺癌の組み合わせに次いで頻度が高いが,両者がそれぞれ多発の症例は極めて稀と思われ報告した.
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中村 厚, 森口 喜生, 清水 泰夫, 河田 佳代子, 根引 浩子, 中村 肇, 荒川 哲男, 小林 絢三
1989 年 31 巻 4 号 p.
948-952_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
ヘアピンにより胃穿通をきたしたが,汎発性腹炎を併発せずに,内視鏡的に除去し保存的療法により治癒に至った症例を経験した.症例は,73歳女性で,慢性気管支炎,虚血性心疾患,および高血圧にて外来通院中の患者であったがある日,胸痛を訴えて来院した.心電図上は異常なく経過観察していたところ,定期検査の胸部X線撮影にて上腹部にヘアピン陰影が指摘された.内視鏡検査にて前庭部小彎に深く刺入したヘアピンを確認し,把持鉗子を用いて内視鏡的に除去しえた.全身状態良好で,腹膜刺激症状ないため,輸液,抗生剤などの保存的療法にて治癒せしめた.異物誤嚥の記憶が全くなく,かつ粘膜下深くヘアピンが刺入し胃壁を穿通していたにもかかわらず,胸痛を主訴として腹部症状を欠いていたため,発症時には消化管の精査がなされなかった.異物がヘアピンという比較的細い物質で,胃壁の著明な浮腫のため,ヘアピンの直接的な刺激および,胃内容物の腹腔への漏出がなかったためと思われた.
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山瀬 博史, 三品 佳也, 村上 雅彦, 田辺 大明, 菅野 壮太郎, 飯島 恒司, 亀田 俊忠, 鶴田 修, 光島 徹
1989 年 31 巻 4 号 p.
953-960_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
黄色肉芽腫性胆嚢炎(XGCと略)は胆嚢癌との鑑別診断に難渋するが,経皮経肝胆嚢鏡検査(PTCCS)で鑑別し,併存した十二指腸乳頭部癌を切除した症例を経験した.症例は50歳,男性.主訴は上腹部痛.USで胆嚢内に結石陰影と,胆嚢壁内に結節状のhyper echoicな病変を認め,同部はCTで結節状のlow density area(LDA)であった.経皮経肝胆嚢造影では胆嚢壁は不整硬化像を示し,胆嚢床に造影剤のもれを認めた.PTCCSでは胆嚢粘膜に悪性像を認めず胆嚢癌を否定しえた.ERCPで乳頭部は腫大し,開口部の顆粒状粘膜よりの生検で分化型腺癌を認め,XGCを伴う乳頭部癌と診断し,胆嚢摘出,膵頭十二指腸切除を施行した.切除標本の胆嚢壁内に黄色の結節を認め,組織像で同部にformy cellの集ぞく,異物巨細胞を認めXGCと診断した.コ系混合石を1コ認めた.乳頭部癌は非露出腫瘤型の粘膜内癌でn(-).患者は1年10カ月健在である.胆嚢壁にUSでhyper echoic,CTでLDAの結節状陰影が切除標本の黄色肉芽腫の分布と一致しXGCの画像上の特徴と考えられた.PTCCSが胆嚢癌とXGCの鑑別診断に有用であった.
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遠藤 正章, 仲地 広美智, 高橋 賢一, 佐々木 睦男, 井上 茂章, 羽田 隆吉, 鈴木 英登士, 杉山 譲, 小野 慶一, 棟方 昭博 ...
1989 年 31 巻 4 号 p.
961-965
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
膵管胆道合流異常は,通常ERCP,PTC,術中胆道造影などのX線学的診断あるいはシネ胆道造影,胆道鏡胆道内圧検査などの機能的観察法によって診断される.今回,著者らはこれまで報告のなかったEUSによる本症の下部胆道・膵管の描出を試みた結果,両者の十二指腸壁外合流を診断し得た1例を経験したので報告する.症例は34歳,男性例で,超音波検査にて総胆管拡張を指摘され,ERCPにより胆管合流型の膵管胆道合流異常と診断された.EUSでは,膵内で狭小化した胆管と膵管,共通管を同一断層面上に描出でき,さらに膵管と胆管の膵実質内合流すなわち十二指腸壁外合流を証明することができた.通常の超音波検査法でも合流部を描出することが可能であるが,EUSは本例のように膵胆管系と膵,十二指腸,乳頭部の解剖学的位関係をより鮮明に把握でき,本症の診断に有用である.膵・胆管造影法とEUSを総合すればより的確な本症の診断が可能になるものと思われる.
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―ICG大量静注後の腹腔鏡像の検討―
佐伯 日出貴, 岡田 功, 秋田 博彰, 朝倉 一郎, 荻原 泰, 水吉 秀男, 羽鳥 知樹, 佐川 寛, 遠山 正博, 杉本 元信, 保坂 ...
1989 年 31 巻 4 号 p.
966-970_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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症例は32歳男性,HBウイルスキャリア(e抗体陽性).全身倦怠感を主訴に入院.生化学的検査ではGPTの軽度上昇と膠質反応の上昇を認め,ICG排泄試験では15分値が初回86%,2回目90%,3回目73%と異常停滞,血漿消失率,血漿一肝移行率の著明な低下を認め,一方,BSP試験では軽度停滞を認めるのみであった.腹腔鏡検査では,肉眼的に斑紋結節肝を呈し,ICG3mg/kg静注後の肝表面は着色が悪く,静注前とほとんど変化がなかった.生検肝組織の光顕像では慢性非活動性肝炎で,電顕像ではDisse腔内のcollagen fiberの増加,肝細胞膜のfuzzy liningの平坦化,Disse腔の基底膜化が確認された.ICG排泄異常症の肝表面像についての報告は少なく,本例のICG静注後の肝表面着色状態とその生検肝組織電顕像は,本症の病態を考慮する上に重要な所見と考えられたので報告した.
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伊藤 重範, 尾関 規重, 田中 明隆, 高田 善介, 矢崎 裕, 宮治 眞, 武内 俊彦
1989 年 31 巻 4 号 p.
973-978_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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便秘とストレスが発症に関与したと考えられ,若年成人男性の虚血性大腸炎2例について報告した.症例1は33歳,男性で従来からの便秘に加えて,自宅に籠もりきりでの期限付きの機械設計の仕事が重なった時,発症した.下血直後の内視鏡検査で下行結腸から脾彎曲部にかけ約30cmの範囲に著明な粘膜浮腫とびまん性出血を,注腸造影検査では同部に腸管の伸展不良,壁不整,thumb-printing像を認めた.症例2は23歳の習慣性便秘の男性で,車のセールスで売上げ件数が伸びないというストレスが加わった時,血便と下腹部痛が出現した.内視鏡検査でS状結腸に約5cmにわたる全周性の発赤とびらんを認め,注腸造影で同部の伸展不良が明瞭であった.2例とも対処療法のみで数日後に狭窄を残さずに治癒した.基礎疾患を持たない若年成人男性例は,本邦で自験例を含め5例と稀である.本例は詳細な問診により,便秘とストレスが発症に関与したと推察し得た.
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三富 弘之, 川村 誠, 大井田 正人, 松野 剛, 竹束 正二郎, 大井田 二郎, 山田 至人
1989 年 31 巻 4 号 p.
979-983_1
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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53歳の女性で,2年間に2度の一過性虚血性大腸炎をおこした1例を経験した.初回発作時の病変部位は脾彎曲部寄りの横行結腸であり,第2回目の発作時には初発病変部を含めた横行結腸から下行結腸にかけて虚血性変化がみられた.2回とも約1週間で自他覚症状は改善し,血液検査所見も正常化した.レントゲン,内視鏡にて経過を観察したが,2回とも狭窄を残さず治癒し一過性型であった.動脈硬化に基づく基礎疾患はなく,腹部血管造影上異常は認められなかった.また臨床的に膠原病を疑わせる症状はなく,血液検査でも抗核抗体は陰性で膠原病の合併は否定的であり,さらに血液凝固機能も正常で誘因は明らかにし得なかった.本邦における再発性虚血性大腸炎の報告は自験例を含め4例のみで,極めて稀な症例と思われる.本症は一過性であっても稀に再発するため,注意深く経過を観察すべきであり,さらに再発予防のための薬物療法についても検討が必要である.
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西脇 英樹, 浅井 毅, 曽和 融生, 梅山 馨
1989 年 31 巻 4 号 p.
984-989
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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レーザー組織血流計を用いた胃粘膜血流量測定について検討した.肝硬変症例13例を対照として,レーザー組織血流計ALF2100(Advance社,東京)を用いて内視鏡下に胃体部,前庭部粘膜血流量,血液量を測定する一方,同症例に水素ガスクリアランス法電解式で測定し両者の比較を行った.胃前庭部,体部各7カ所で測定した血流量では変動係数CV0.03±0.01,0.16±0.04を示し,ほぼ再現性のある測定値が得られた.また,平均血流量は前庭部18±6ml/min/100g,胃体部23±8ml/min/100gと前庭部に比し体部で高値の傾向が認められた.一方,血液量の攀動係数では前庭部0.09±0.05,胃体部0.08±0.05とともに再現性のある値が示された.レーザー組織血流計と電解式組織血流計の測定値の検討では,電解式に比ベレーザー組織血流計では明らかに低値を示したが,両者に有意の相関は認められず,共にml/min/100g単位の測定値であるが測定原理の違いや穿刺法と接触法による差も考えられた. 以上,レーザー組織血流計は瞬時に連続測定が可能であり,胃粘膜血流量測定に有用な点も認められるが,他の方法で得られた粘膜血流量との比較検討など今後さらに,検討すべき点も考慮された.
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 4 号 p.
990-1016
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 4 号 p.
1016-1027
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 4 号 p.
1027-1035
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 4 号 p.
1035-1051
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 4 号 p.
1052-1063
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 4 号 p.
1064-1073
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 4 号 p.
1074-1108
発行日: 1989/04/20
公開日: 2011/05/09
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