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―胃酸分泌,血清ガストリン値および血清ペプシノーゲンI値からの検討―
春間 賢, 隅井 浩治, 木村 学, 吉原 正治, 森川 章彦, 豊島 仁, 梶山 梧朗, 忌部 明, 日高 徹, 末永 健二
1989 年 31 巻 8 号 p.
2051-2059
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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胃過形成性ポリープ128例について,健常者230例を対照とし,胃酸分泌,血清ガストリン値および血清ペプシノーゲンI(以下PGI)値から,背景粘膜の病態を検討した.胃過形成性ポリープでは,健常者と比較すると,胃酸分泌および血清PGIの著しい低下と血清ガストリン値の著しい上昇が認められ,その背景粘膜はStrick-landらのA型胃炎に類似していた.胃過形成性ポリープを個数別にみると,単発例に比し多発例でより胃酸分泌の低下と血清ガストリン値の上昇が著しく,また,発生部位では,幽門腺領域に発生したものに比し,胃底腺領域のものでより血清ガストリン値の上昇と血清PGI値の低下が著明であった. これらの結果から,胃過形成性ポリープでは,胃底腺粘膜を中心とした萎縮性胃炎が存在するが,その程度や進展様式はポリープの個数(単発か多発か)や発生部位により異なることが明らかとなった.
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永尾 重昭, 宮原 透, 川口 淳, 金沢 雅弘, 土居 利光, 渡辺 圭三, 小林 正彦, 足立 洋祐, 東納 重隆, 木本 賀之, 日野 ...
1989 年 31 巻 8 号 p.
2060-2071
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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赤外線を体外から照射し,腹壁を透過した赤外線で,胃内を観察する体外照射方式の赤外線電子スコープについては,既報の如く基礎的検討を終え,これにより粘膜深部の情報が得られること先に明らかにした.今回,著者らは,さらに胃内を直接赤外線照射する方式の赤外線電子スコープを開発し,臨床例に応用し,赤外線の臨床面における効果について,特に血管像を中心に検討を加えてみた.対象とした症例は,総計134例で,そのうちわけは,早期胃癌3例,進行胃癌8例,胃潰瘍46例(活動期12例,治癒期14例,瘢痕期20例),胃ポリープ11例,胃粘膜下腫瘍3例,胃炎(萎縮性,あるいはびらん性)22例,正常例29例,十二指腸潰瘍等その他12例である.赤外線胃内直接照射方式による赤外線電子スコープでは,胃内全域の観察が可能で,観察部位の盲点は,体外照射方式に比べて全くなく,かつ観察対象が,遠距離となっても光量調節により赤外観察が可能であった.この方式による赤外線観察でも,体壁,胃壁を透しての体外照射方式における赤外線像と同様に,萎縮性胃炎で見られる通常光観察での判定基準の一つとされる胃粘膜表面における微細血管像は,全く描出されなかった.しかし,深部のものと想定される血管像は,十分得られ,その走向状況,分枝状況を明らかにすることができた.この所見は,通常光観察における正常例でも同様であった.胃潰瘍活動期では,通常光で見られる白苔は淡い黒色調に表わされ,急性期潰瘍の周辺部では血管像は認められず,瘢痕では,それに向かって集中傾向を示す深部血管像は認められたものの,瘢痕中心部では血管像は全く認められず,瘢痕の深さ,ひいては再発の予測などの判定の一助となることが想定された.胃ポリープ並びに胃粘膜下腫瘍では,表面構造並びに血管像は全く得られなかった.胃癌では癌周堤外側で血管の途絶が認められ,周堤では血管像は認められなかった.また,周堤周辺で血管の拡張,さらに,IIc面でのpooling様の所見等が認められた.今後さらに症例を重ね,特に各種疾患における粘膜下血管像並びにその他の所見について,赤外線像の特長を明らかにすべく検討を加えて行きたい.
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妹尾 恭一, 長嶋 厚樹, 馬場 正道, 吉本 光宏, 藤崎 真人, 足立 明, 大久保 卓次
1989 年 31 巻 8 号 p.
2072-2077
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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消化管出血特に動脈性出血に対するEMTの効果につき報告した.対象は1983年より現在まで当科に入院した消化管出血30例(内訳:胃潰瘍17,Dieulafoy's ulcer 7,胃癌2,十二指腸潰瘍2,直腸出血2)である.吐下血にて入院した上記患者にOlympus GIF type Qを用い緊急内視鏡を行ない,出血部を確認,同部に針型ないし丸型電極にて,マイクロ波を40 watt×5~15秒通電し止血を行なった.効果判定は1週間以上止血されたものを有効とした.結果:全体の止血効果90%(26/29),胃潰瘍:87.5%,DF-Ul:100%,癌性出血や直腸出血でも有効な症例がみられた.出血型別での止血効果は動脈性出血(噴出型または拍動型)100%(10/10),漏出型出血は85%に止血効果がみられた.全体の症例の43%(13/30)に重篤な基礎疾患がみられたが,EMTはこれらの症例においても,臨床的に有用であると考えられた.
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梶山 徹, 門脇 則光, 辻 康平, 西尾 彰功, 高鍬 博, 山本 富一, 洲崎 剛, 羽白 清, 松末 智, 兼松 雄象
1989 年 31 巻 8 号 p.
2078-2088_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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いわゆる多発性胃粘膜下嚢腫は胃癌の併存病変として重要とされているが,その臨床診断は困難で誤診による手術例の報告が多い.われわれは超音波内視鏡(EUS)を用い多発性胃粘膜下嚢腫の臨床診断を試みた.EUSを施行し胃切除術により組織所見の得られた4例を検討したが,うち3例にIIc型早期癌の合併が認められた.EUS上多発性胃粘膜下嚢腫は第3層内の径2cm以下の多発性嚢胞性病変として描出され,肥厚した第3層粘膜側がやや低エコーを示したが,壁の伸展性は良好であった.組織学的には粘膜下層表層に拡張した腺腔を有する異所性腺管が認められた.凹凸不整粘膜面を呈し従来の検査法では浸潤範囲の推定困難な多発性胃粘膜下嚢腫合併胃癌の場合も,EUSにより浸潤範囲推定が可能であった. 以上,多発性胃粘膜下嚢腫は特徴的超音波断層所見を呈するため,EUSを用いることにより臨床診断が可能となると思われた.
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原 和人, 古田 和雄, 大野 健次, 宮岸 清司, 山本 和利, 清光 義則, 中崎 聡, 村山 隆司
1989 年 31 巻 8 号 p.
2089-2097_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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慢性関節リウマチ(以下RA)患者に消化性潰瘍が発生しやすいことがよく知られている.今回,RAに伴った消化性潰瘍の特徴とその成因を明らかにする目的で,RAに伴った消化性潰瘍81例(以下RA群)について,非ステロイド系消炎鎮痛剤による消化性潰瘍23例(以下NSAID群)と通常の消化性潰瘍155例(以下通常群)との比較検討をおこなった. 通常群に比して,RA群とNSAID群には,高齢者と女性が有意に多く,その潰瘍は,胃潰瘍とりわけ胃前庭部潰瘍が有意に多かった.また,RA群は通常群に比較して,多発潰瘍が有意に多かった.RA群の潰瘍は,大きい潰瘍が多く,そのために,出血を伴い易く,NSAID群は,小さい潰瘍が多く,出血性潰瘍も少ない傾向があった.RA群では,潰瘍の形態が不整型を呈するものは,すべて胃前庭部に存在した. RA群の潰瘍は,NSAID群,通常群と比較して,治癒が遷延したが,H2-受容体拮抗剤の投与により,治癒が得られた. 以上の結果より,RAに伴った消化性潰瘍の成因として,大量かつ長期に投与されているRA治療薬剤が最も影響しており,RAの潰瘍の形態的特徴と治癒の遷延は,RAの病態の関与が考えられた.
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―内視鏡診断と組織計測からみて―
河野 辰幸, 遠藤 光夫, 吉野 邦英, 竹下 公矢, 滝口 透, 山崎 繁, 下重 勝雄, 鈴木 知行, 伊藤 金一, 井上 晴洋
1989 年 31 巻 8 号 p.
2098-2105
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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食道表在癌40例の隆起陥凹因子を,内視鏡,切除肉眼,組織の各所見で比較し,20例においては組織計測も行い,以下の結果を得た.なお,隆起陥凹については,一見して明瞭な隆起陥凹病変(C)と不明瞭なものとに分け,不明瞭な病変では,詳細にみて軽度の隆起陥凹を認識できるもの(B)と出来ないもの(A)とに分けた.(1)隆起陥凹とその程度について3所見のすべてが一致したのは74%であった.(2)組織切片上の最大隆起陥凹実測値は内視鏡でのA群0.2±0.1mm,B群0.7±0.9mm,C群1.6±0.9mmであったが,健常部粘膜表面から固有筋層上縁までの厚さを100としたindexでは,A群6.0±7.2,B群27.9±38.6,C群127.5±55.1と,隆起陥凹の印象が内視鏡所見とより良く一致していた.(3)A群ではep癌が,C群ではsm癌がほとんどであったが,B群にはepからsmまでのものが含まれていた.しかし,リンパ節転移,脈管内侵襲からみてA,B両群とC群とでは明らかな差があり,隆起陥凹を基準とした分類は,よく表在癌の臨床的性格をも表していた.
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山尾 純一, 松本 昌美, 松村 吉庸, 菊池 英亮, 中山 雅樹, 西村 公男, 植村 正人, 久保 良一, 松村 雅彦, 福井 博, 森 ...
1989 年 31 巻 8 号 p.
2106-2112
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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高齢者における上部消化管出血の原因とその背景因子を検討した.上部消化管内視鏡を行った60歳以上の患者409例中,吐下血症例55例から,悪性腫瘍,食道静脈瘤が出血原因であった例を除いた43例を出血性病変群とし,上部消化管病変を有するが,吐下血を認めなかった症例から年齢,性,入院期間,基礎疾患をmatchさせた40例をコントロール群とした.高齢者における上部消化管出血の原因としては出血性胃炎がもっとも多く,胃潰瘍がこれに次いだ.両群間で背景因子を比較すると,出血群ではコントロール群に比して,「寝たきり」,DIC,抗生物質摂取の頻度が有意に高かった.また,経口摂取率,血清総蛋白,アルブミン,総コレステロールおよびコリンエステラーゼ値は出血群においてコントロール群に比し有意に低かった.以上より,低栄養および感染が高齢者における上部消化管出血のrisk factorであり,全身状態の管理が上部消化管出血の予防に重要であると考えられた.
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大川 清孝, 北野 厚生, 岡部 弘, 福島 龍二, 加島 和俊, 中村 志郎, 小畠 昭重, 押谷 伸英, 橋村 秀親, 日置 正人, 松 ...
1989 年 31 巻 8 号 p.
2113-2120
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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PEG法の利点を損なうことなく服用量を減らす目的で,PEG2,000mlとsennosideとmetoclopramideを併用する方法(PEG併用法)を考案しPEG単独での前処置(PEG単独法)との比較によりその有用性を検討した.対象はpolypectomy目的にて入院した20名であり1週間隔で両方法による前処置を行った.腸管清浄効果はPEG併用法とPEG単独法はほぼ同等であったが,Brown変法に比し著明に優れていた.腸管残存水分量はBrown変法,PEG併用法,PEG単独法の順に少なかった.総服用量はPEG単独法の2,610m1に対してPEG併用法は2,000m1と有意に少なく,服用終了までの時間もPEG単独法の167分に対してPEG併用法は120分と有意に短かった.また,PEG併用法はPEG単独法に比し初回排便までの時間は有意に短く,2時間までの排便回数は有意に多かったが,これはsennoside,metoclopramide併用の効果と考えられた.以上より,PEG併用法は清浄効果に優れ残存水分も観察や挿入をさまたげるほど多くなく,しかもPEG服用量も2,000mlという少ない一定量に定められるため,患者の受容性もよく自宅での服用も可能であり大腸内視鏡検査の前処置として十分有用であると考えられた.
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堀池 典生, 宮岡 弘明, 恩地 森一, 檀上 賢次, 太田 康幸
1989 年 31 巻 8 号 p.
2121-2125_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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肝炎の赤色紋理の発生機構を明らかにする目的で,第VIII因子関連抗原をマーカーとして,血管床を酵素抗体法で観察し,血管増生の面より検討した.赤色紋理は,B型慢性肝炎で128例中27例(21%),非A非B型慢性肝炎で120例中31例(18%),自己免疫性肝炎で12例中8例(67%)が陽性であり,自己免疫性肝炎で有意に高率であった(p<0.05).赤色紋理の狙撃生検組織では,肝細胞壊死,細胞浸潤および血管床,特に直径50μm未満の血管床の増加を認めた.ウイルス性慢性肝炎において,赤色紋理を認める症例の門脈域血管床は,認めない症例に比べ,直径50μm未満のものが有意に増加していた(p<0.05).自己免疫性肝炎3例において,ステロイド治療前後で赤色紋理を観察し,2例で改善を認めた。赤色紋理の消長と門脈域の血管床の増減は一致した.以上の成績より,赤色紋理の消長には血管床が関与していることが証明された.
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山村 卓也, 千田 俊哉, 下村 年胤, 小森山 広幸, 山中 豊太, 長嶋 隆, 大谷 吉明, 得平 卓彦, 萩原 優, 福田 護, 吉田 ...
1989 年 31 巻 8 号 p.
2126-2133
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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内視鏡的ポリペクトミーの開発により早期大腸癌の診断能は著しく向上し,それまで行われていた生検による診断の意義は極めて低くなった.しかし内視鏡的ポリペクトミーが危険なため生検により診断が下される症例も少なくない.そこで22例の早期大腸癌(m癌12例,sm癌10例)を対象とし,生検による診断能ならびに生検材料からどのような情報が得られるかを検討した. 早期癌全体に歯ける生検の診断率は68%と不良であり,特にm癌における診断率は58%と極めて不良であった.肉眼形態別では特徴的な所見は得られなかった.大きさ別では大きな病変ほど診断率は向上したが,4cm以上の病変では40%と不良であった.組織学的形態でみるとpolypoid cancerやadenoma in carcinomaにおける診断率が高かった.生検材料における腺腫成分の混在性についてみると,生検材料に腺腫成分が含まれておらず,癌組織のみで構成されている病変はm癌では12例中2例(17%)であったが,sm癌では10例中7例(70%)であった.以上より早期大腸癌,特にsm癌では生検材料の組織構成に特徴的な所見がみいだされることが明らかとなった.
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井上 晴洋, 中村 宏, 河野 辰幸, 下重 勝雄, 山崎 繁, 中嶋 昭, 五関 謹秀, 竹下 公矢, 吉野 邦英, 遠藤 光夫
1989 年 31 巻 8 号 p.
2134-2137_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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食道静脈瘤硬化療法(EIS)の治療経過中に5%Ethanolamine oleate1.5mlの血管外注入により,直後より強い疼痛と高度の嚥下困難を来した1症例を経験し,臨床経過および内視鏡などの検査所見より「EISに起因した粘膜下血腫による食道粘膜広範囲剥離」と診断した.本合併症は比較的稀ではあるが著者らの検索によればWerner(1984年)の報告以後数例の症例の報告があり,その共通点として『(1)硬化療法数回目以降に多く,(2)血管外注入に関連しておこり,(3)硬化療法直後ないしは数日後より高度の嚥下困難と強い疼痛を伴い,38℃弱の熱発を来し,(4)数日後に血腫が自然破裂し,同時に咽頭閉塞感が消失し嚥下が可能となり,(5)潰瘍が治癒した後は静脈瘤はほぼ完全に消失し狭窄等を残さない.』といった共通点を有している. EISの手技や器具の発達した現在ではこのような合併症はできる限り避けるべきであり,安全かつ侵襲の少ないEISを目指す立場より,硬化剤の注入は基本的には血管内注入を目標に行うのが望ましく,状況により血管外注入を行う場合には,特にEIS施行数回目以降の症例では注入量を1穿刺部位あたり通常0.5m1とし,最高でも1m1以下に抑えるべきであると考えている.
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小泉 雅紀, 稲垣 威彦, 松為 裕二, 岩澤 秀, 東 一夫, 熨斗 秀興, 豊川 元邦, 本田 泰啓, 山尾 純一, 植村 正人, 松村 ...
1989 年 31 巻 8 号 p.
2138-2141_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
今回われわれは,内視鏡的ポリペクトミーにて切除し得た食道のcystadenomaの1例を経験した.症例は77歳の男性.胸やけを主訴に来院.内視鏡検査にて中部食道に山田III型の隆起性病変を認めた.表面は平滑で色調に変化はなく容易にポリペクトミーを施行し得た.切除された腫瘤は,直径1.5cm大で弾性は軟,正常食道粘膜に被われ,内部は白色調で充実性腫瘍を思わせた.その組織像は,境界明瞭な小さな嚢胞が多数集族し,ごく一部に細胞異型を認めた.病理組織学的診断はcystadenomaであり,同様の報告はわれわれの検索し得た限り見当たらず,食道嚢胞で腫瘍性性格を持つものとしては最初の報告である.
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村田 育夫, 牧山 和也, 朝長 道生, 水田 陽平, 船津 史郎, 杉山 英一郎, 久保 啓吾, 今西 建夫, 原 耕平, 清水 輝久, ...
1989 年 31 巻 8 号 p.
2142-2146_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
早期胃悪性リンパ腫は稀な疾患であるが,その報告も次第に増加しつつある.最近,約3カ月の間に,病変の著明な縮小と変形を示した早期胃悪性リンパ腫の1例を経験した.症例は54歳の男性で,上腹部痛を主訴として胃X線検査や内視鏡検査を受け,胃前庭部後壁に軽度隆起した潰瘍性病変を認めた.生検にて組織学的確診が得られず,しばらく経過を観察した.病変はひだ集中を伴いながら縮小し,クローバー状潰瘍となった.その一部は良性の消化性潰瘍をおもわせた.手術標本では,同部はUlIIの瘢痕となり,その他の部位もさらに縮小し,不整形な小陥凹を残すのみとなった.その陥凹部の一部に約1cm大の悪性リンパ腫を認めた.腫瘍の縮小は,潰瘍形成による腫瘍の脱落と腫瘍自身の退縮が関与していたと考えられた.さらに,本病変が悪性サイクルを示す可能性も示唆された.
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星野 洋, 鬼塚 俊夫, 高原 理, 小原 淳, 市川 和男, 市川 正章
1989 年 31 巻 8 号 p.
2149-2153_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は26歳,女性.昭和62年7月5日頃より心窩部痛,嘔気が出現したため当科を受診した.胃X線検査,内視鏡検査を施行したところ,胃角小彎に不整型の潰瘍,胃前庭部に不整な粘膜の隆起,発赤,浮腫が認められ悪性リンパ腫等を疑った.しかし,生検では形質細胞を主体とする細胞浸潤は認めたものの悪性の所見は認められなかった.胃梅毒を疑って血清梅毒反応を行なったところ陽性であり,BAPCの内服投与を開始すると速やかに症状,胃X線,内視鏡検査所見の改善がみられた.以上のような経過,検査所見から胃梅毒と診断した.胃梅毒の早期診断には検査所見等に加えて,病歴の詳しい聴取,正確な現症の把握などが肝要であると考えられた.
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小川 滋彦, 鈴木 文子, 岡田 俊英, 森田 達志, 山田 隆千, 平井 圭彦, 竹田 康男, 上野 敏男, 竹田 亮祐, 川浦 幸光, ...
1989 年 31 巻 8 号 p.
2154-2159_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は45歳女性.1970年妊娠出産後より,中葉症候群,中耳炎,術後の縫合不全など易感染性を認め,諸検査よりcommon variable immunodeficiency(以下CVID)と診断した.1987年より上腹部痛を来し,多発性胃潰瘍として加療を受けていたが,胃角部の生検よりgroup Vを認めたため,胃亜全摘術を施行.胃角部にはIIc+IIa病変を認め,前庭部前壁には良性潰瘍に接してIIb病変を認めた.組織学的には,いずれも高分化型管状腺癌で,深達度はm,脈管侵襲およびリンパ節転移は認めなかった.術後,IgG濃度400mg/dlを維持するようにガンマグロブリン製剤の補充を行った. 原発性免疫不全症とくにCVIDにおいて悪性腫瘍の合併率が著しく高いことが知られている.なかでも胃癌については,欧米では正常者の50倍の頻度で合併すると記載されているが,本邦ではいまだ数例が報告されているのみである.さらに早期胃癌の合併は極めて稀である.
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森 正弘, 佐伯 進, 中島 卓利, 岡野 裕行, 宮本 正喜, 王 東明, 高田 彰彦, 川井 行雄, 小野山 雄作, 青山 伸郎, 安田 ...
1989 年 31 巻 8 号 p.
2160-2167
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
潰瘍型原発性十二指腸癌を経験した.症例は55歳主婦,4カ月間に2度の下血があり,乳頭下部の4×3cm大の潰瘍型腺癌と診断した.癌の浸潤は漿膜下で留まっており,所属リンパ節に転移なく,根治手術ができた症例で,このような症例は比較的稀であり,内外の文献的考察を加えて報告した.
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堀池 典生, 宮岡 弘明, 恩地 森一, 小川 泰史, 道尭 浩二郎, 山口 修司, 無漏 田俊子, 灘野 成人, 太田 康幸
1989 年 31 巻 8 号 p.
2168-2171_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は52歳,男性.主訴は肝機能検査異常.日本酒にして1日3合,35年の飲酒歴あり.心窩部の不快感で近医を受診し,肝機能検査異常を指摘された.当科入院時,右乳線上肋弓下3横指径の肝腫大を認めた.血清鉄216μg/d1,フェリチン423ng/m1.腹腔鏡検査で,肝表面には直径約1mmの区域化および肝右葉にび慢性に直径約0.2から2mmの黒紫色斑を認めた.肝生検組織像はアルコール性肝線維症で,肝細胞内に軽度のヘモジデリン沈着を認めた.黒紫色斑部の狙撃生検では,被膜下に1mm長にわたる高度のヘモジデリン沈着を,肝細胞およびクッパー細胞内に認めた.ヘモクロマトーシス以外にも,鉄沈着による呈色紋理を示す症例の存在を証明した.
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金森 俊成, 永原 鉱二, 大野 恒夫, 広瀬 昭憲, 山上 祥司, 遠藤 一夫, 宮本 忠寿, 伊藤 誠, 武内 俊彦
1989 年 31 巻 8 号 p.
2172-2176_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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回盲弁の上,下唇に発生した1ipomatosisに内視鏡的ポリベクトミーを施行した1例を経験した.症例は71歳の女性で常習性便秘の精査のために大腸内視鏡検査を施行した.回盲弁上唇に黄色調の小隆起がみられたが,1年6カ月後には回盲弁上,下唇に各1個の亜有茎性の隆起性病変に発育した.ポリペクトミーの結果,組織学的には,被膜を有しない結膜下層の脂肪組織の増生で,lipomatosisと診断された.術後1年半の現在,回盲弁に肉眼的異常は認められていない.回盲弁lipomatosisは稀な疾患のうえ本例ではごく短期間に発育しており,また,内視鏡的ポリペクトミーで再発徴候のない興味ある症例と考え報告した.
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伊藤 彰子, 小寺 徹, 橋本 晃, 松林 祐司, 森 由美子, 塚田 英昭, 上田 俊二, 酒井 正彦, 内野 治人, 松永 隆, 大垣 ...
1989 年 31 巻 8 号 p.
2177-2183
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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患者は76歳,男性,主訴はなく検診として大腸X線検査を受けたところ潰瘍性病変を指摘され精査のため当科を受診した.一般検査上便鮮血オルトトリジンにて(±)以外は特に異常なし.大腸内視鏡検査にてS状結腸に発赤を伴った小隆起様病変を認めた.この時の組織所見は, Atypical glandular hyperplasia, Group IVであった.40日後の再検査にて同部位にヒダ集中を伴う,辺縁がやや盛り上がった陥凹性病変を認めた.陥凹部に潰瘍は認められなかったが一部には出血を認め,辺縁不整にてIIcあるいはIIc+IIa型早期癌が示唆された.再検時の組織所見は, Adenocarcinoma, Group Vであった.切除標本にて病変は11×5mmで辺縁部がわずかに隆起し,ヒダの肥厚と途絶を認めた.病理学的には管腔形成性異型細胞が漿膜下まで増殖する中分化型腺癌で腺腫成分は認めずdenovo癌と考えられた.リンパ節,他臓器,腹膜に転移を認めずHoPoSlNo,StageII進行癌と判明した. 本例は大腸癌の発生と発育経過を探求する上で示唆に富む1例と考え報告した.
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鳥羽 信行, 門原 三志男, 吉村 禎二, 浜本 哲郎, 本田 きょう子, 河村 学, 渡部 和彦, 川崎 寛中, 平山 千里
1989 年 31 巻 8 号 p.
2184-2189_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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症例は27歳男性.昭和62年10月,発熱,下痢,下腹部痛のため当科入院.大腸X線検査と大腸内視鏡検査で直腸S状部は全周性の浮腫状狭窄と軽度のびらんを呈し,直腸粘膜生検のZiel-Neelsen染色で粘膜に付着した粘液中に赤色桿状の非定型抗酸菌を認めた.さらに,生検した大腸粘膜の抗酸菌培養でMycobacterium chelonae subsp. chelonaeを検出した.この間,INH,RFP,EBによる3者併用療法を約1カ月間実施したが,感受性試験で耐性であることが判明したため,以後は無治療で経過観察した.4カ月後には狭窄は消失し,ハウストラも再出現し,粘膜面も正常化した.本症例にはクローン病の特徴的な所見を認めなかった.また,内視鏡による感染を検討したが否定的であったのでM.chelonaeによる急性大腸炎と診断した.
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岡本 平次, 佐々木 哲二
1989 年 31 巻 8 号 p.
2190-2195
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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直腸の陥凹型早期癌2例を経験した.症例1は10mm大のIIc+IIa型で大部分は高分化型腺癌であったが,周囲に腺腫が認められた.症例2は6mm大のIIc型で腺腫の介在はなく,高分化型腺癌で占められ,de novo癌であろう.症例1はピースミールポリペクトミーのみで根治が得られた.症例2は経肛門的に病変が切除されたが,摘出材料に癌は認められなかった.鉗子生検で癌はすべて切除されたか,生検後潰瘍のために残りの癌部分は脱落してしまったものと考えられた.すなわち陥凹性病変といえども,内視鏡的アプローチのみで根治が得られる可能性が示唆された.
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西村 浩, 大浦 元孝, 富田 哲男
1989 年 31 巻 8 号 p.
2196-2205_1
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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好酸球性腸炎の1例を経験した.症例は63歳,女性.腹痛と水様下痢を主訴とし末梢血好酸球増多を認めた.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部~下行部にび漫性に浮腫状変化がみられ,内視鏡下生検組織像で粘膜~粘膜下層に著明な好酸球浸潤を認めた.ステロイド治療が奏効し,治療開始数日後には臨床症状・末梢血好酸球増多の改善がみられた.ステロイド治療前後の内視鏡像の比較をした報告は少ないが,自験例では治療開始後18日目の内視鏡像・内視鏡下生検組織像でも改善がみられ,病理組織学的にもステロイド治療の速やかな有効性を確認し得た.本邦での切除例の検討から,診断困難な症例におけるステロイドを用いた早期の診断的治療の意義が示唆された.また,自験例を含めた本邦報告例60例の集計・検討により,従来のKleinの分類に"Transmural disease"の項目を追加することが望ましいと考えられた.
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―本邦報告例37例の文献的考察―
安武 晃一, 大家 学, 吉村 幸男, 奥谷 俊夫, 松下 健次, 加藤 順一, 穂積 俊樹, 今村 諒道
1989 年 31 巻 8 号 p.
2206-2213
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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直腸mucosal bridgeの1例を経験したので報告する.症例は58歳の女性,主訴は上腹部痛.既往歴に子宮筋腫摘出術,十二指腸潰瘍及び胆石.現症,理学的に異常なし,臨床検査で血沈がやや亢進を認める以外特に異常所見は認めない.X線検査で直腸に多数の不整型のバリウムの溜りが約5×5cmにわたってみられた.大腸内視鏡検査では同部位に,ほぼ円形ないし楕円形の陥凹が多数みられた.また陥凹と他の陥凹の間に生検鉗子が挿入でき,いわゆるmucosal bridgeを形成していた.bridgeを形成している部位の生検ではほぼ正常の組織像であった. 本邦におけるmucosal bridgeの報告は37例みられ,明らかな原疾患としては潰瘍性大腸炎6例,腸結核5例などが挙げられるが,いわゆる原因不明例のなかに感染症の既往を有す例が12例と多くみられた.
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―1983年(昭和58年)より1987年(昭和62年)までの5年間―
春日井 達造, 並木 正義, 本田 利男, 川井 啓市, 竹本 忠良
1989 年 31 巻 8 号 p.
2214-2229
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 8 号 p.
2230-2247
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 8 号 p.
2247-2254
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 8 号 p.
2255-2262
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 8 号 p.
2263-2293
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 8 号 p.
2293-2302
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 8 号 p.
2302-2331
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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日本消化器内視鏡学会
1989 年 31 巻 8 号 p.
2332
発行日: 1989/08/20
公開日: 2011/05/09
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1989 年 31 巻 8 号 p.
2332a
発行日: 1989年
公開日: 2011/05/09
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