日本消化器内視鏡学会雑誌
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32 巻, 2 号
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  • 吉田 浩之, 佐田 博, 八田 善夫
    1990 年 32 巻 2 号 p. 325-333
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     門脈圧亢進症を伴う肝硬変症における胃粘膜病変の病態を解明する目的で,内視鏡的に食道静脈瘤の程度との関係から検討し,あわせて病理組織的にも慢性肝炎を対照とし検討を加えた. また,内視鏡的栓塞療法(Endoscopic Injection Sclerotherapy以下,EIS)施行に伴う胃粘膜の変化についても検討した. その結果,肝硬変症においては慢性肝炎に比して胃粘膜病変の合併率が高かった.結論的には,食道静脈瘤を認める症例に胃粘膜病変の合併率が高かった.次に,肝硬変症においては肝機能の障害の程度と胃粘膜病変の程度には関連性があると推察された.また,肝硬変症における胃粘膜の生検病理組織では,毛細血管の拡張が特徴的な所見であった.しかし,門脈圧の亢進が存在しても必ずしも胃粘膜の変化や毛細血管の拡張を認めない症例も存在していた.EIS施行前後の胃粘膜の検討では,食道静脈瘤の変化と胃粘膜の変化は直接関連しなかった. 以上により門脈圧亢進症を伴う肝硬変症における胃粘膜病変の発生は,血流の変化が主体であると考えられたが,さらに局所的な要因も加味されているものと推察した.
  • 滋野 俊
    1990 年 32 巻 2 号 p. 334-344
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     ERBDを施行した悪性胆道狭窄症例51例のべ検査回数168回を対象として,ERBD施行症例における胆汁中細菌について検討した.ERBD施行例では全例において胆汁中より細菌を検出した.菌種別では腸内細菌科およびEnterococcusが大部分を占めており,また,嫌気性菌は全体の8.4%を占めた.胆汁中の菌種数,細菌量とチューブの留置期間との間に相関は認められなかった.ERBDチューブ留置後は,早期より胆道内に1~3種の細菌が定着し,その菌種数,細菌量は経過とともに増加するのではなく,定常状態を保つが,この状態に胆汁うっ滞をおこす要因が働くと,胆道感染が惹起されると考えられる.またERBD長期維持例では,その経過中に高率に菌交代が発生するため,後期合併症である胆管炎やチューブ閉塞の予防には,抗生物質の長期投与よりも,定期的なチューブの洗浄または交換により,チューブの閉塞要因の防止につとめることが有用と考えられる.
  • 滋野 俊
    1990 年 32 巻 2 号 p. 345-353
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     ERBDチューブの閉塞機転を光学顕微鏡的および走査電子顕微鏡的に,形態的な面から検討した.閉塞したERBDチューブ内には肉眼的に黒褐色の物質が充満していたが,これは,細菌塊よりなる層とビリルビンカルシウム等を含有する光顕では褐色顆粒状の,電顕では網目状構造物の層とが,交互に積み重なり年輪様の層構造を呈していた.胆汁中に浸漬したERBDチューブの経時的な観察より,留置されたERBDチューブ表面には,まず細菌が増殖して集落を形成し,その上にビリルビンカルシウム等を主成分とする物質が堆積し,この過程が繰り返されることで,チューブ閉塞が進むものと推察され,チューブの閉塞には,胆道内の細菌が大きく関与していると考えられた.また胆汁流量の寡多はERBDチューブ閉塞の重要な要因の1つと考えられる.したがって細菌が付着,増殖しにくいようなERBDチューブの材質の検討や胆汁流量を多く保つことが,チューブの閉塞までの期間を延長させる可能性が推察された.
  • 向井 秀一, 平野 誠一, 村北 肇, 水野 成人, 芦原 亨, 松井 亮好, 早雲 孝信, 水間 美宏, 趙 栄済, 安田 健治朗, 中島 ...
    1990 年 32 巻 2 号 p. 355-364_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     切除可能であった乳頭部癌18例(20mm以下10例)を対象に内視鏡的超音波断層法(EUS)を施行し,本法の腫瘍描出能および進展度診断能を検討した.Eusにより乳頭部(Oddi筋,十二指腸壁層構造,膵頭部)は鮮明に描出され,乳頭部癌は18例中17例において低エコー腫瘍像として観察された.乳頭部癌の存在診断においては,各種画像診断法と比較しても,EUSはERCPとともに優れた診断能を有していた.また,乳頭部癌の進展度診断(十二指腸浸潤,膵臓浸潤)や第1群所属リンパ節転移診断においてもEUSの有用性が確認された.以上より,本法は乳頭部癌の早期診断と進展度診断には必要不可欠な検査法として評価され,今後一層の発展が期待される.
  • ―背景因子と内視鏡像を中心として―
    大川 清孝, 北野 厚生, 中村 志郎, 福島 龍二, 岡部 弘, 加島 和俊, 小畠 昭重, 押谷 伸英, 橋村 秀親, 日置 正人, 松 ...
    1990 年 32 巻 2 号 p. 365-376_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     関連の第一線の病院における虚血性大腸炎(IC)24例(A群)と大学病院におけるIC17例(B群)を対象として,その比較も含めて臨床的検討を行った.症例が選択されていない第一線の病院の症例をみる限りは,従来の報告とは異なりICは20~70代の各年代にほぼ均等に分布しており,女性が男性の2倍みられた.また,動脈硬化関連疾患も13%と少なく,狭窄型の割合も8%と少なかった.以上のことより,従来言われてきたICの背景因子を見なおす必要があると考えられた.女性が男性より多いこと.誘因として一過性型,狭窄型に限らず便秘,下剤による下痢,トイレでのいきみ,浣腸などが半数以上にみられること,基礎疾患として左側結腸憩室症,下腹部手術の既往が多くみられること,発症時間は夕食後が多いことなどよりICの発症誘因として腸管側因子の関与が強く示唆された.時間経過と内視鏡像の関係を病型別に検討したが,2週間以内では内視鏡像にて狭窄型になるか否かの予測は困難と考えられた.しかし,3週目以降も全周性病変があるもの,5週口以降も縦走性病変があるものは狭窄型となる可能性が高いと考えられた.
  • 井上 晴洋, 加藤 奨一, 中村 宏, 河野 辰幸, 五関 謹秀, 竹下 公矢, 遠藤 光夫
    1990 年 32 巻 2 号 p. 379-387_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道静脈瘤硬化療法に際し,血管内注入を示す内視鏡所見を明らかにする目的で,硬化療法時の内視鏡観察所見を造影所見と対比し,26症例207穿刺部位について検討した.その結果,"真の血管内注入"であることを示す内視鏡所見として『(1)穿刺時に血液の逆流があること,さらに(2)硬化剤注入開始後も穿刺した静脈瘤の大きさが不変であること』の2条件を満たすことが必要であった.この基準によれば内視鏡観察所見のみでも厳密な血管内注入の判定が可能で,硬化剤の注入量の決定,効果の推定,および潰瘍等の合併症の予防に有用であると考えられた.さらに色素を併用すれば,内視鏡所見が強調され,硬化剤の局在がより鮮明となった.この判定基準にしたがったわれわれの"真の血管内注入率"は全体で43%であった.
  • 井上 晴洋, 中村 宏, 河野 辰幸, 村瀬 尚也, 五関 謹秀, 竹下 公矢, 遠藤 光夫
    1990 年 32 巻 2 号 p. 388-395_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道静脈瘤硬化療法において,従来から一般に不可能とされていた細い静脈瘤に対しても陰圧下穿刺法による血管内注入を施行したところ,食道の『半周~全周にわたる細かいnetwork状の静脈瘤の造影所見(fine-network pattern)』を得た.その場合,ほぼ1回の穿刺注入のみで食道全周にわたる細静脈瘤が1度に栓塞された.術後には細静脈瘤は潰瘍を形成することなく完全に消失し,胸痛の訴えもなく翌日より常食を摂取している.また狭窄例も認めていない.したがって"fine-network pattern"の描出は,食道静脈瘤硬化療法において血管内注入法による治療の過程のなかで,大きな流入路を栓塞したあとの粘膜および粘膜下層に残存する細静脈瘤の栓塞を意味し,潰瘍を形成することなく静脈瘤の完全消失を達成するための治療上の目標点になると考えている.
  • ―Glucose,ThrombinとAethoxysklerol併用法との比較検討―
    寺田 昭, 益沢 学, 三善 英知, 山本 佳司, 加藤 道夫, 篠山 喜昭, 佐藤 ゑみ, 松井 邦泰, 山本 明弘, 村井 雅巳, 奥山 ...
    1990 年 32 巻 2 号 p. 396-404_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     塞栓・硬化剤としてGT-XIIIを用いる新しい内視鏡的硬化療法を,食道静脈瘤を有する各種肝疾患81症例(施行回数168回)に施行し,その効果および合併症について検討した.対照法は本法施行まで当科で行っていたGlucose,ThrombinおよびAethoxysklerolの併用法とした.GT-XIII法では抜針後の出血はほとんどなく,バルーンなどの圧迫や大量のThrombin併用の必要はなく,1回の施行で多くの静脈瘤の治療が可能であった.その結果,緊急出血例での7日以上の止血率は17例中15例(88%)で,対照法と同等であった.緊急例も含めた全施行例のRC sign消失時点でのF因子の改善率は81例中60例(74%)で,対照法と同等であった.いっぽう,本法の主な合併症では51%に38℃以上の発熱,36%に食道付近の疼痛,12%に食道潰瘍形成および3例に脳血管障害が認められたが,Shockの発生や術後出血の症例はなかった.さらに,本法にフィンガー・ピース型ICGクリアランス・メーターを応用し,GT-XIIIが注入局所に留まることを推測し,剖検例でGT-XIII特有のParticleに血球成分を混じた塞栓と器質化しつつある血栓が組織学的に確認された.以上より本法は有効,安全かつ簡便な内視鏡的静脈瘤硬化療法と考えられた.
  • 荻原 泰, 杉本 元信
    1990 年 32 巻 2 号 p. 407-413
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腹腔鏡検査時の被検者の苦痛を最小限にとどめるため,ジアゼパムとペンタゾシンを用いるneuroleplanalgesia(NLA)変法麻酔を応用し,その有用性を笑気ガス吸入麻酔,局所麻酔と比較した.対象は肝疾患患者60例で,各群20例となるように無作為に麻酔法を選別し,検査中と24時間後の愁訴をアンケート調査した.検査中は血圧,脈拍の変動をチェックし,一部の例では血液ガス分析を行った.また,検査1週間後に肝機能検査を実施した.その結果,NLA変法麻酔は他の麻酔法に比べ検査に伴う愁訴の軽減に有効であり,特に本法による検査中の全体的苦痛,検査中,検査後の腹部膨満感の軽減作用は局所麻酔より有意に強かった.血圧の変動は局所麻酔と同様であった.薬剤性肝障害はみられなかった.
  • 関 守一, 坂口 浩樹, 川北 啓喜, 柳井 篤, 金 鎬俊, 大竹 宏治, 羽生 大記, 倉井 修, 西口 修平, 塩見 進, 溝口 靖紘 ...
    1990 年 32 巻 2 号 p. 414-421
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     新しい肝細胞再生のマーカー・DNA polymerase alphaを生検肝組織上で免疫組織化学的に染色し,肝細胞の再生・増殖能を検索した.この検索結果と腹腔鏡の肝表面像を比較・検討することにより肝表面における肝再生の旺盛な部位の究明を試みた. その結果,小陥凹を形成する型の急性肝炎では,小陥凹の辺縁周囲部において強い肝再生像が認められた.慢性活動性肝炎では赤色紋理に隣接する肝実質部において強い再生像が見られた.肝硬変症では,個々の偽小葉結節ごとにpolymerase陽性肝細胞数に差異がみられ,各々の結節により肝細胞の再生・増殖能に相違が認められた.しかしながら,陽性肝細胞数の多い結節の肉眼的特徴は,明らかにし得なかった.
  • 浜本 哲郎, 西向 栄治, 渡部 和彦, 広川 健, 細田 明秀, 吉村 禎二, 鳥羽 信行, 野坂 美仁, 門原 三志男, 河村 学, 川 ...
    1990 年 32 巻 2 号 p. 422-426_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,76歳女性.昭和55年頃,近医の内視鏡検査で逆流性食道炎と診断.以後,不定期に経過観察中,昭和63年の内視鏡検査時,逆流性食道炎像(Savary and Miller病期III)に加えて,食道下端から噴門にかけて,多発する最大径14mmの大小多数の隆起性病変の出現を認めたため,精査目的で当科入院.食道側隆起性病変の生検では,基底細胞の増生,上皮乳頭の延長に加えて,著しい炎症細胞浸潤と肉芽の増生を認めた.入院後,H2-blockerによる治療を開始した所,1カ月後の内視鏡検査時に,食道側ポリープは消失していた.胃食道粘膜接合部胃側の隆起性病変のpolypectomyでは,腺窩の拡大延長と炎症性細胞浸潤が認められた.本例は逆流性食道炎の症例に発生した,inflammatory esophagogastric polypと考えられた.ポリープ消失の機序として,H2-blockerによる炎症の消腿及び種々の挿管検査による脱落が考えられた.
  • ―本邦報告例37例の検討―
    古谷 亮, 森 一博, 井村 和博, 西野 執, 高橋 秀夫, 吉谷 和男, 坂上 隆一, 松枝 啓, 梅田 典嗣
    1990 年 32 巻 2 号 p. 427-435
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは,特異な形態を呈した食道mucosal bridge(以下食道MB)の1例を経験したので報告する.症例は,77歳男性.貧血精査のために上部消化管造影検査を施行したところMB様の病変が中部食道に認められた.それは,食道内視鏡検査によって上門歯から約25cmの中部食道に存在する食道MBと診断された.また,組織学的検索によるとそれは正常の扁平上皮に覆われていることが示唆された. その形状は,直視内視鏡では瘻孔をともなった片側性食道狭窄様を呈し,側視内視鏡では幅広い帯状(約15mm)を呈していた.そして食道X線および内視鏡検査では.MBは気管分岐部の中部食道に存在し,それ自体が収縮するが如くにその形状は変化し,さらにMBとその周辺の背景粘膜は内視鏡的には正常の食道粘膜であった.これらの所見が現在までの後天性食道MBの報告の形態的特徴とは大きく異なっていたことから本例が先天性食道MBである可能性が考えられた. 著者らが集計し得た食道MBの本邦報告例は自験例を含めわずか38例に過ぎず,これら本邦報告例を分析し,検討を加え報告する.
  • 新井 政代, 小見山 高士, 畠山 卓弥, 宮川 静一郎, 山田 義直, 小堀 鴎一郎
    1990 年 32 巻 2 号 p. 436-441_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     63歳男性に見出された食道と胃の同時性早期重複癌を経験した.食道病変は75×40mm,深達度smの表層拡大型で,胃病変は4×4mm,深達度mの微小癌であった.現在までに食道,胃同時性重複癌がいずれも早期であった症例は自験例を加えて18例のみであり,更に胃癌が微小癌で術前に診断しえた症例は本例が初めてである.
  • 遠藤 正章, 高橋 賢一, 仲地 広美智, 井上 茂章, 羽田 隆吉, 鈴木 英登士, 佐々木 睦男, 小野 慶一, 棟方 昭博, 白戸 千 ...
    1990 年 32 巻 2 号 p. 442-449_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     USならびにEUSによって尾状葉胆管枝(B1)およびB1内結石を診断できた右後区域肝内結石症の1例を経験したので報告し. 症例は上腹部痛を主訴とする44歳,男性である.電気水圧砕石装置を用いたPTCS下切石術により右後区域胆管枝内およびB1と思われる胆管枝内結石を除去後USおよびEUSを実施したところ,尾状葉内に同胆管枝が描出され,さらにほかにも結石が充満したB1が存在することが明らかとなった.この後のPTCSにより先のB1は左尾状葉胆管枝(B1l),結石充満B1は右尾状葉胆管枝(Blr)と判明した. 最近,B1内結石の診断・治療が注目されつつあるが,B1は結石充満例では十分造影されないことも多く,また造影所見のみではB1の同定は容易ではない.これに対してUS,EUSは本例の如く結石充満の影響を受けず,肝区域との関連からB1ならびにB1内結石をより直接的に診断可能であり,B1内結石の有無の新たな診断法として極めて有用と思われた.
  • 渡辺 誠, 竹下 正弘, 梅川 康弘, 小畠 敏嗣, 赤木 収二, 日高 光宣, 平川 弘泰, 福本 四郎, 島田 宜浩
    1990 年 32 巻 2 号 p. 450-454_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は食後の上腹部膨満感,腹痛および微熱を主訴とする81歳の女/生である.腹部超音波検査で胆のう壁肥厚(11mm)を伴なう胆のう結石,肝内胆管結石,軽度の肝内胆管拡張などの所見が認められ,胆のう癌が疑われたが質的診断に至らなかったため腹腔鏡検査を施行した.肝の表面は平滑で色調はまだらに緑色,さらに癌転移巣と思われる1mm以下の多数の黄色病変が観察された。胆のうは周辺組織と癒着を起こしていた.針付生検鉗子で癌侵潤が疑われた胆のう壁を直接生検,組織像は低分化型腺癌であった.肝円索にも小さな黄白色病変を認めたため,このうちの1個に鉗子生検施行,組織像は胆のう壁のものと同様であった.
  • 小畑 伸一郎, 木村 圭志, 前田 和弘, 佐藤 昌彦, 水谷 純一, 山口 哲也, 川村 亮機, 高月 清
    1990 年 32 巻 2 号 p. 457-460_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的ポリペクトミーの適応に関して,一般に血液疾患,出血素因のあるものは,禁忌とされている.今回,77歳男性,白血病症例で出血をきたした直腸ポリープに対し,術前に血小板輸血を行い出血時間を正常範囲内に改善した後にポリペクトミーを施行し止血せしめた.その後,基礎疾患増悪によってDICを生じ,全身の出血傾向著明となり脳出血にて死亡したが,剖検時,直腸にはポリペクトミーの部分からの出血は認められず,ポリペクトミーによる止血の有用性が認められた.形態学的にポリペクトミー可能で,術前に血小板輸血等の処置により,止血機能を正常化させうるならば,血液疾患,出血素因のある患者でも通常のポリペクトミーは,安全に行い得ると思われた.特に,本例のごとく出血症状があるものに対しては,積極的に試みられる価値があると思われる. 内視鏡的ポリペクトミーの適応に関して,一般に血液疾患,出血素因のあるものは,禁忌とされている.今回,77歳男性,白血病症例で出血をきたした直腸ポリープに対し,術前に血小板輸血を行い出血時間を正常範囲内に改善した後にポリペクトミーを施行し止血せしめた.その後,基礎疾患増悪によってDICを生じ,全身の出血傾向著明となり脳出血にて死亡したが,剖検時,直腸にはポリペクトミーの部分からの出血は認められず,ポリペクトミーによる止血の有用性が認められた.形態学的にポリペクトミー可能で,術前に血小板輸血等の処置により,止血機能を正常化させうるならば,血液疾患,出血素因のある患者でも通常のポリペクトミーは,安全に行い得ると思われた.特に,本例のごとく出血症状があるものに対しては,積極的に試みられる価値があると思われる.
  • 松浦 俊博, 前田 吉昭, 松永 勇人, 岩瀬 弘明, 楠神 和男, 森瀬 公友
    1990 年 32 巻 2 号 p. 461-470_1
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     診断より14年の経過の後,大腸微小早期癌および進行癌を合併した腸結核症の1例を本邦報告例64例の文献的考察を加えて報告する. 症例は79歳の女性で,1974年大腸内視鏡検査,生検により肉芽腫が証明され,生検大腸粘膜の結核菌培養も陽性であり腸結核症と診断された.14年後の1988年の大腸X線検査では,上行結腸は著明に短縮し,横行結腸と下行結腸には,瘢痕萎縮帯が散在していた.大腸内視鏡検査では,横行結腸に浅い陥凹性病変が,下行結腸に発赤を伴う不整顆粒が認められ,生検標本で両病変とも腺癌であった.切除標本の病理学的検索では,横行結腸の病変は深達度ssの進行癌であったが,下行結腸の病変は,微小早期癌と考えられた. 腸結核症と大腸癌の合併例65例の検討から,腸結核症に合併した大腸癌は,ほとんどが進行癌であり,腸結核症の長期経過例では大腸癌合併の可能性も念頭におき,内視鏡検査による注意深い観察が必要と考えられた.
  • 岡野 均, 児玉 正, 福光 真二, 寺前 直樹, 道中 智恵美, 藤野 博也, 辻 秀治, 加嶋 敬
    1990 年 32 巻 2 号 p. 471-475
    発行日: 1990/02/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは,マイクロベーシブ社と共同開発した新しい食道静脈瘤硬化療法用局注針(23G,25G)と現在本邦で入手可能なオリンパス社,アーガイル社,住友べークライト社,トップ社の各硬化療法用局注針(23G)の基礎的検討を行ない,臨床的有用性について比較を行った.基礎的検討として(1)局注針内死腔量,(2)注入抵抗,(3)吸引能力(オリンパスGIF-Q20の内視鏡の鉗子口に各局注針を挿入し,吸引力100mmHgにて100ccの水を吸引するのに要した時間)の3項目につき検討した.基礎的検討結果は,(1)死腔量の検討では各社局注針で0.47ccから1.4ccまでと大きく異なっており,硬化療法の際には,使用局注針によりその死腔量を念頭におき硬化剤注入量の正確な判断をする事が重要である.(2)注入抵抗の検討では,マイクロベーシブ社製(23G,25G),アーガイル社製の2社が他社製に比し少ない抵抗で注入可能であった.(3)吸引能力は,マイクロベーシブ社製(23G,25G)が30秒と最もすぐれていたがアーガイル社製の117秒を除き他社も30秒から42秒台までと有意差はなかった. 以上より,今回共同開発したマイクロベーシブ社製食道静脈瘤硬化療法用局注針は,他の局注針と比較して,吸引能力,注入抵抗試験においてすぐれており,総合的に判断するとマイクロベーシブ社製の硬化療法用局注針は,現在,われわれが本邦で入手できる局注針の中では,有用度の高い局注針の1つと考えられた.
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