日本消化器内視鏡学会雑誌
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32 巻, 3 号
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  • 長南 明道, 望月 福治, 池田 卓, 豊原 時秋, 藤田 直孝, 李 茂基, 長野 正裕, 矢野 明, 小林 剛, 安藤 正夫, 木村 克 ...
    1990 年 32 巻 3 号 p. 493-501
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去2年1カ月間に当センターでEUSが施行され,組織学的検索がなされた陥凹型進行胃癌37例を,EUS上,腫瘍塊を形成する腫瘤型と,第3,4層の著しい肥厚を呈するが層構造の保たれている非腫瘤型に分類し,その深達度診断能およびEUS像について検討し,以下の結論を得た. 1)EUS深達度診断能は,腫瘤型ではpm癌55 .6%,ss癌50.0%,se癌83.3%,sei癌66 .7%の正診率であった.非腫瘤型では全例深達度ss以下と診断可能であったが,ssかseかの鑑別は不可能であった.2)EUS像をみると,fusion(-),内部エコー均一,第3層の途絶形態は中断型が多かった.また,肉眼型別には,Borrmann 2型は左右対称,境界明瞭のものが,Borrmann 3型は左右非対称,境界不明瞭のものが,IIc様進行癌は左右対称,境界不明瞭のものが多かった.3)癌実質・間質結合織の量比とエコーレベルの関係をみると,髄様型ではエコーレベルの比較的高いものが,硬性型では比較的低いものが多かった.4)EUS上,深達度が深くなるほど,発育形式は胃内型から胃外型となる傾向を認めた.
  • 畑 耕治郎, 渡辺 俊明, 高橋 達, 朴 鐘千, 滝沢 英昭, 山田 慎二, 鶴谷 孝, 阿部 毅彦, 斎藤 貴史, 秋谷 正彦, 上村 ...
    1990 年 32 巻 3 号 p. 502-511
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     PBC66症例を対象に,肝表面の定型例と非定型例について,腹腔鏡所見と組織所見を対比検討した.PBCに特徴的な所見である赤色パッチあるいは起伏性変化は症例の約78%に認められ,特に起伏性変化は病期の進展に伴い顕著となり,かつ区域化傾向を示した.一方,赤色パッチや起伏性変化を示す肝表面にさらにそれ以外の所見が加味されている症例と,赤色パッチおよび起伏性変化を欠く症例とを肝表面の非定型例と規定し,その病態の検討を行った.その結果,肝表面にびまん性の赤色紋理を伴う例では,組織学的に慢性肝炎(活動性)類似のpiecemeal necrosisや実質内細胞浸潤が顕著であった.また抗ミトコンドリア抗体亜分画のanti-M4が陽性であるCAH-PBC mixed typeでは,門脈域のみならず実質の炎症壊死所見が強く,肝表面の不整な粗大凹凸と出血斑様の赤色紋理と対応するものと考えられた.一方,I 期病変例の中で,ほぼ正常肝に近い形状を呈する平滑肝例では,赤色パッチや起伏性変化を呈する例に比して組織学的にCNSDCの出現頻度は低く,これはPBCのごく初期の病変を反映しているものと考えられた.また,I 期病変例においても,肝腫大を呈し起伏性変化を伴わない平滑な肝表面に肉芽腫と考えられる白色小結節が認められた例では,組織学的にはCNSDCや明瞭な肉芽腫の出現頻度が高かった.
  • 橋本 洋, 中尾 京子, 加藤 明, 春木 宏介, 横山 聡, 光永 篤, 黒川 きみえ, 村田 洋子, 葉梨 智子, 笹川 剛, 塚原 裕 ...
    1990 年 32 巻 3 号 p. 513-519_1
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     癌深達度診断の難しい線維化を併存した陥凹型胃癌について,内視鏡による集中皺襞像とEUSにより診断した線維化像を合わせ検討し,胃癌深達度診断成績の向上を試みた.対象は86年~88年に手術にて摘出された陥凹型早期胃癌,類似進行癌例で内視鏡所見,EUS像が検討可能な60例とした.集中皺襞の形状を変形の程度により軽度の症例からA,B1,B2,C型の4群に分類し,線維化の有無別の集中皺襞の形状と癌深達度の検討,さらに線維化併存例における集中皺襞の形状別の癌深達度と線維化深達度の関係を検討した.その結果,同型の集中皺襞では線維化非併存例の方が癌深達度が深い傾向にあった.線維化併存例ではA型とB1型の間では変形高度なB1型の方が癌,線維化深達度共に深くなる傾向にあった.一方B2型では線維化の深達度が深い症例ほど癌深達度は浅い傾向を認めた.このように内視鏡像とEUS像を合わせ検討することで胃癌深達度診断の正診率はEUSのみの診断率55%から77%と改善され,胃癌深達度診断能の向上に有用であった.
  • 趙 栄済, 平野 誠一, 村北 肇, 水野 成人, 芦原 亨, 松井 亮好, 早雲 孝信, 水間 美宏, 向井 秀一, 安田 健治朗, 中島 ...
    1990 年 32 巻 3 号 p. 520-529
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    オリンパス社製ラジアル走査式超音波内視鏡を用いて,潰瘍性大腸炎13例に30回の内視鏡的超音波断層法(EUS)を施行し,炎症による大腸・直腸壁構造の変化を検討した.潰瘍性大腸炎のEUS超音波像は3型に分類でき,1型は壁肥厚なく,層構造や層境界に異常を認めないもの,2型は層境界は明瞭だが,第1層が低エコー化して第2層が肥厚するもの,3型は第1層から第3層にかけて層境界が不明瞭となり,低エコー化しているものとした.なお,1型から2型,3型へと変化するにつれて,壁が肥厚する傾向にあった.これらのEUS像をMatts分類による内視鏡的重症度およびTrueove and Wittsの基準による臨床的重症度と比較検討すると,EUSによる超音波所見は内視鏡的重症度や臨床的重症度によく相関した.特に,EUS施行時に内視鏡で活動性炎症の水平方向の拡がりを観察し,超音波像で垂直方向への拡がりを判定すれば,炎症を容積としてとらえることが可能となり,その積算値は臨床的重症度とよく相関した.なお,今回の検討例において周辺のリンパ節が13例中5例に描出されたが,経過を追えた3例では治療による改善とともに消失した.以上のごとく,EUSによって潰瘍性大腸炎の炎症の程度を3次元的に把握できることが明かになったが,このことは潰瘍性大腸炎の病態学的検討に重要な意義をもつものであり,今後の大いなる発展が期待される.
  • 島本 丈裕, 春間 賢, 徳毛 健治, 鈴木 武彦, 豊島 仁, 吉原 正治, 隅井 浩治, 梶山 梧朗, 讃岐 英子, 藤田 粛, 田原 ...
    1990 年 32 巻 3 号 p. 530-537_1
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃筋原性腫瘍25例(平滑筋腫18例,平滑筋肉腫7例)について,その臨床病理学的所見と予後とを比較検討した.平滑筋腫と平滑筋肉腫を,良悪の指標として,細胞の異型度,核分裂数,および腫瘍の大きさから総合的に判断したが,大きさは平滑筋腫では全例4cm以下,平滑筋肉腫では1例を除き5cm以上で,核分裂数は強拡大20視野で,平滑筋腫では0~3個,平滑筋肉腫では4~33個であった.予後は,平滑筋腫では全例生存しているが,平滑筋肉腫では1例を除き6例が肝転移で死亡しており,予後不良であった.予後を見た上ではこの判定法で矛盾はないものと考えられた.
  • 原 猛, 西岡 新吾, 奥 篤, 森本 善文, 横矢 行弘, 江川 正一, 中田 秀則, 坂辻 喜久一, 辻本 守幸, 中山 恒夫, 矢高 ...
    1990 年 32 巻 3 号 p. 538-544_1
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは1983年から1986年の4年間に治癒経過中潰瘍底が隆起を呈するいわゆる隆起型胃潰瘍の8例を経験した.頻度は治癒期を確認した胃潰瘍の1.8%.年齢は49歳から75歳,平均64.0歳.男女比7:1.主訴は吐血または下血が7例.部位は胃角小彎が5例と多く,潰瘍の活動期の大きさは2cm以上が5例を占めた.投与薬剤はcimetidine 7例,famotidine 1例.隆起確認時期は活動期から7週後3例,6週後2例,4週,25週各1例.隆起部分の生検組織像は肉芽組織の所見であり,隆起の形態は光沢のある白色隆起,辺縁に輪状の白苔を有する発赤した半球状隆起,頂上部に小さな白苔を伴う赤色隆起の3種類に分類された.隆起は潰瘍底の肉芽組織の過剰増生によるものと考えられ,隆起型潰瘍の活動期から瘢痕期に至る期間はコントロール群の潰瘍に比し長い事から,隆起の形成は潰瘍の治癒過程を遷延させる要因の1つと考えられた.
  • 吉原 正治, 春間 賢, 豊島 仁, 松原 秀樹, 井上 和彦, 今西 幸市, 鈴木 武彦, 森川 章彦, 小笠原 秀和, 津田 敏孝, 隅 ...
    1990 年 32 巻 3 号 p. 545-553
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃腺腫および腺腫内癌の確定診断症例55症例(69病巣)を対象として内視鏡的特徴について検討を行った.55症例中13例(23.6%)で他の部位に胃癌を併存し,55症例中9症例(69病巣中9病巣(13 .0%))で腺腫内癌を認めた.内視鏡的特徴について胃内に胃腺腫のみを認める「胃腺腫単独」群,他の部位に胃癌を併存する「胃癌併存胃腺腫」群,胃腺腫病巣の一部に癌巣を認める「腺腫内癌」群の3群に分けて比較した.発生部位,形態,色調は3群で差異を認めなかった.病巣の大きさでみると大きい病変に腺腫内癌が多い傾向を認めたが,9mm以下の胃腺腫でも1病巣に腺腫内癌を認めた.従って,腺腫そのものの内視鏡的形態からは腺腫内癌存在の予測は困難であり,しかも生検診断で腺腫内癌と診断された症例はなく,確定診断には治療もかねた腺腫病巣のポリペクトミーないしstripbiopsyによる切除が必要と考えられた.一方胃腺腫病巣の多発する症例は全部で9例であったが,そのうち4例(44.4%)では他部位に胃癌を併存し,3例(33 .3%)で腺腫内癌を認めた.胃腺腫の多発する症例は単発のものに比べ胃癌との関連がより深いことが推察され,その管理には一層注意を要すると考えられた.
  • 乾 正彦, 堀江 英陸
    1990 年 32 巻 3 号 p. 554-562_1
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡下ポリペクトミーを施行しえた食道血管腫の1例を経験した.症例は72歳男性で,嚥下障害に気付き近医の上部消化管造影と内視鏡検査により食道中部にポリープが発見され当科へ紹介された.入院時の診察,検査では皮膚および他臓器に血管腫を認めず.内視鏡検査で門歯列より33cmに黄白色の柔らかい山田III 型ポリープを認め,電気凝固を用いてポリペクトミーを施行し出血は認められなかった.摘出標本は6×5×4mm大で,組織像は毛細血管腫であった.
  • 岩瀬 弘明, 森瀬 公友, 楠神 和男, 稲垣 貴史, 前田 吉昭, 金山 和広, 河瀬 孝順, 古沢 敦, 斉藤 祐一朗, 堀内 洋, 大 ...
    1990 年 32 巻 3 号 p. 563-571
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤破裂を合併した妊婦にEndoscopic Injection Sclerotherapy(EIS)を施行し完全止血が得られ,その後無事出産した1例を経験:したので報告する.患者は37歳の高齢初産婦で,妊娠28週にて大量吐血し当院に入院した.緊急内視鏡検査により食道静脈瘤破裂(Lu ,CB,F3,RC+,Lg+)と診断し,Sengstaken Blakemoretubeにて止血を試みたが改善せず,2日後EISを施行した.1回のEISにて完全止血が得られた,患者はEIS施行後翌日より流動食を開始し全身状態が改善した.高齢初産婦であったため胎児の成熟度を確認し,妊娠34週をすぎてから帝王切開が行われ無事出産した.EISの合併症は母子共にみられず,現在健康な日常生活を過ごしている.EISは妊婦に併発した食道静脈瘤破裂に対しても安全に施行できる有用な治療法であると考えられた.
  • 浦田 譲治, 土亀 直俊, 荒川 昭彦, 上野 助義, 西東 龍一, 高橋 睦正, 樋口 重典, 池田 祥一郎
    1990 年 32 巻 3 号 p. 572-581_1
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は16歳女性.13歳の時,小人症および慢性皮膚粘膜カンジダ症と診断され,治療を受けていた.最近4カ月間,肺炎にて入退院を繰り返していたが,抗真菌剤等にて治療中,肝機能障害をきたしたため,腹部CT施行し,下部食道の壁肥厚を指摘され,当科に精査を依頼された.この間特に消化器症状は訴えてはいない.上部消化管検査にて,下部食道の前後壁にわたるmucosal bridgeの形成,およびその周囲粘膜の発赤,びらんを認めた.その肛門側では,食道裂孔ヘルニアおよび胃噴門部小彎側に円形の深掘れ潰瘍を認めた.mucosal bridge付近の食道粘膜の生検では高度の食道炎の状態であったが,生検部よりカンジダ等の原因菌は分離されなかった.以上より,自験例のmucosal bridgeの原因として逆流性食道炎が推測された. 食道のmucosal bridgeは非常に稀であり,炎症性病変ないし潰瘍性病変の修復・治癒過程に形成されると考えられた.
  • 白子 順子, 武知 桂史, 勝村 直樹, 山田 鉄也, 加藤 則広, 冨田 栄一, 武藤 泰敏, 下川 邦泰, 高井 哲
    1990 年 32 巻 3 号 p. 582-588_1
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は58歳,女性.昭和60年10月より下腿の浮腫に気付いた.翌61年7月の胃内視鏡では体部大彎の巨大皺襞と体下部から前庭部にかけての粘膜の肥厚と多発するポリープを認めた.直視下生検の組織像では腺窩上皮の過形成,間質の浮腫を認めたが電顕像には異常を認めなかった.血清学的にはT.P.4.9g/dl,Alb .2.3g/dlと低下を認めた.131I-RISA試験にて蛋白漏出を認め,胃液蛋白濃度は健常人0.26g/1に対し1.7g/1と増加していた.これらの所見から低蛋白血症を伴ったMenetrier病と診断した.シメチジン800mg/day,ピレンゼピン100mg/dayの併用療法を施行した結果,6週後にはT ,P.,Albは有意に上昇し,下腿の浮腫も消失した.経過中の内視鏡像,組織像,胃液蛋白濃度に変化は見られなかった.
  • 城下 裕, 榎本 峰生, 木平 健, 佐藤 貴一, 笠野 哲夫, 吉田 行雄, 井戸 健一, 木村 健, 吉田 充男
    1990 年 32 巻 3 号 p. 589-592
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     上部消化管内視鏡検査の稀な偶発症として一過性全健忘の1例を報告した.症例は50歳,女性.上部消化管内視鏡検査後,患者の言動に不自然さが見られたため,状況説明をしたところ,検査前処置の頃より以後の出来事についての記憶が障害されていた.この記憶障害は検査の翌日には回復していたが,発作期間中の出来事は健忘として残った.一過性全健忘は原因不明の症候群であるが,情動ストレスが誘因となり発症する事も知られている.上部消化管内視鏡検査はある患者においては精神的にも,身体的にもかなりストレスのかかる検査と考えられ,稀ではあるが本疾患が同検査に偶発しうる事を強調した.
  • 垂石 正樹, 平井 克幸, 池 薫, 高橋 篤, 上泉 清, 石橋 勝, 岡村 毅與志, 並木 正義
    1990 年 32 巻 3 号 p. 593-601_1
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     十二指腸壁内血腫の1例を経験した.症例は14歳,男.サッカーで右上腹部を地面に強打し,約5時間後に上腹部痛と嘔吐が出現した.腹部超音波検査で腹部腫瘤を認め,上部消化管造影検査で十二指腸第2部から第3部にかけての腫瘤を思わせる陰影欠損と,Coil Spring状の粘膜壁所見から十二指腸壁内血腫と診断し,中心静脈栄養法を中心とした保存的療法を開始した.入院中の内視鏡検査では,発症数日目までは,粘膜下腫瘍を思わせる隆起と粘膜面の発赤が見られたが,臨床症状の改善とともに発赤の消失,隆起の消退が観察された.保存的療法により第16病日には経口摂取可能となり,第37病日に軽快退院した.本疾患は最近は保存療法で十分に対処できる疾患であるとの報告が増えており,早期診断と適切な治療方針の決定が重要である.また内視鏡検査は,本症の診断および経過観察上有用である.
  • 山田 英明, 佐田 玲子, 永富 式子, 根引 浩子, 篠原 昭博, 中尾 昌弘, 針原 重義, 小野 時雄, 門奈 丈之, 小林 絢三
    1990 年 32 巻 3 号 p. 602-609
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,55歳,女性.慢性骨髄性白血病で通院加療中,急性転化を来したため入院した.入院後,prednisolone 60mg/day,6MP 100mg/day, vincristine 1mg/weekで治療を開始したが,治療開始直後より腹痛が出現し,第47病日より下痢を生じ,注腸X線,ならびに大腸内視鏡検査により大腸に多発性潰瘍を認めた.第62病日より,500~7,000ml/dayの下血を生じるようになり,保存的治療に反応しないため,緊急手術を施行した.その結果,小腸,大腸に多発性の潰瘍を無数に認めたため,病変の最も多発していると思われた回腸,横行結腸の部分切除を行った.術後,prednisoloneを漸減,中止したが,腹壁縫合部が次第に縫合不全状態となり,腸液,胆汁漏出に伴う化膿性腹膜炎により死亡するに至った.剖検では,小腸,大腸潰瘍は著明に改善がみられた.以上より,本症例の多発性小腸,大腸潰瘍は,組織学的所見とその臨床経過よりステロイド剤によるものと推測された.
  • 前田 和弘, 岡田 光男, 八尾 恒良, 星野 弘弼, 岩下 明徳
    1990 年 32 巻 3 号 p. 610-614_1
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は42歳,女性,腰痛のため,AB-PC2g/日を3日間投与されその後,腹痛,下痢,血便,発熱,戦慄,出現し来院.入院後施行した大腸内視鏡検査にて,S状結腸に点状出血,S状結腸と下行結腸移行部から管腔の著明な狭窄と浮腫,出血を認めた.同日の大腸X線検査では,横行結腸から下行結腸まで,Thumb-printing像を認めた.以上より当初は,抗生剤起因性大腸炎を考えていた.しかし,その後,便培養にてSalmonella typhimuriumが検出されサルモネラ腸炎と診断された. サルモネラ腸炎,抗生剤起因性腸炎共,直腸が侵されることは,稀で,粘膜の浮腫,出血などをきたし,X線,内視鏡所見からは,鑑別は必ずしも容易ではない. 抗生剤投与中に血便をみた場合,抗生剤起因性腸炎の他に,サルモネラ腸炎を考慮すべきと思われた.
  • 冨松 久信, 井手 一敏, 佐野 寛幸, 桝崎 雅博, 古賀 俊彦, 鹿毛 雅義
    1990 年 32 巻 3 号 p. 615-621_1
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は37歳女性で,18歳より慢性関節リウマチの診断下に治療を受けていた.左下腹部痛,水様血性下痢,関節痛,発熱を主訴に入院.入院時検査で赤沈1時間値139mm,RA2+,RAHA1,280倍,抗核抗体160倍,LEテスト陽性であった.注腸検査で直腸S状部に管状狭窄,内視鏡検査では同部位に全周性の狭窄,狭窄入口部に発赤,浮腫,易出血性を認めた.下腸間膜動脈造影で上直腸動脈,S状結腸動脈に狭窄,閉塞像を認め,注腸検査における直腸S状部の狭窄部に一致しており虚血による腸梗塞と推測した.また経過中に心筋炎による心不全を発症したため悪性関節リウマチと診断した.腸梗塞発症約1年後に空腸穿孔,腹膜炎で死亡.切除小腸腸間膜の小中血管に京極血管炎分類のEA型血管炎像を認めた.悪性関節リウマチに腸梗塞,小腸穿孔の合併は稀であり興味のある症例として報告した.
  • 大門 佳弘, 小緑 英行, 板野 晃也, 原口 靖昭, 田仲 謙次郎, 吉田 隆亮
    1990 年 32 巻 3 号 p. 622-627
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は35歳男性.潰瘍性大腸炎に対する内科的治療中に十二指腸潰瘍を発症.その後,抗潰瘍薬による治療も並行して行われたが1年後の内視鏡検査で胃幽門部小彎に十二指腸球部に通じる本来の幽門輪とは別の交通路を認めた.以上の所見より,十二指腸潰瘍に続発したdouble pylorus(重複幽門)と診断した.全身性エリテマトーデスや慢性関節リウマチなどの基礎疾患を有する場合に,抗炎症性鎮痛薬,副腎皮質ステロイド薬の使用で消化性潰瘍よりdouble pylorusを発症した報告がある.自験例においても基礎疾患の潰瘍性大腸炎によるストレスと薬剤(sulfasalazine)が十二指腸潰瘍の発生,悪化を来したと考えられた.消化性潰瘍は潰瘍性大腸炎の合併症の1つに数えられているが,今回の症例は治療中に上腹部愁訴を発現した場合には上部消化管の精査が必要なことを教示した1例であると考えられた.
  • 橘川 桂三, 健山 正男, 東恩納 厚, 重野 芳輝, 金城 福則, 斎藤 厚, 外間 朝哲, 戸田 隆義, 奥浜 幸博, 仲間 ベンジャミ ...
    1990 年 32 巻 3 号 p. 628-631_1
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は59歳女性.下痢を主訴として精査目的にて来院した.注腸造影検査にて回腸末端に径6mm大の隆起性病変を認め,大腸内視鏡により経肛門,経回盲弁的に挿入観察した.生検にてtubular adenomaと診断し,小腸切開術にてポリープは切除された.小腸腺腫について若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 小原 剛, 高井 幸裕, 高野 英哉, 蘆田 知史, 小野寺 隆一, 浦 等, 斉藤 裕輔, 竹村 清一, 岡野 重幸, 柴田 好, 岡村 ...
    1990 年 32 巻 3 号 p. 632-637
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     4年間の長期にわたり経過を観察した粘液産生膵腫瘍の2症例につき,主にその膵管像の変化を中心にretrospectiveに検討したので報告する.症例1は68歳の女性で,尾部主膵管の限局性拡張を呈し慢性膵炎として経過をみていたが,4年後に主膵管のびまん性拡張と特徴的な乳頭所見を認め,手術を施行した.組織学的に膵尾部の乳頭腺腫であった.症例2は87歳の女性で膵体部の嚢胞性病巣と膵管像は4年間で大きな変化をみせなかった.胆管癌にて死亡し,剖検で膵体部の膵管分枝に膵管内に限局して発育する乳頭腺癌を認めた.粘液産生膵腫瘍の乳頭所見と膵管像は主に産生される粘液の量により修飾され,組織学的悪性度とは必ずしも一致しない.また,主膵管の限局性拡張は本疾患の初期像と考えられ,本疾患の初期のものは慢性膵炎との鑑別が重要である.
  • 中尾 照男, 永井 米次郎, 関原 正, 小井土 昭二郎
    1990 年 32 巻 3 号 p. 638-641
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     83症例,107件の,ERCP,内視鏡的乳頭切開(以下EST),食道静脈瘤硬化療法(以下硬化療法),大腸鏡の患者にベンゾディアゼピン系の薬剤フルニトラゼパムを用いた鎮静法を行い,その効果を調べた.投与量は,0.025mg/kgとし,生理食塩水で10m1に希釈して使用した.100%閉眼し鎮静状態が得られた.90%(107人中96人)に呼びかけに対する反応(以下呼名反応)が認められた.93%(30人中28人)に健忘効果を認めた.覚醒に要した時間は平均186分であった.40%以上の収縮期圧の低下は5件(4 .6%)一過性の興奮や多弁は4件(3.7%).痛みの記憶だけ残っているというのが7件.血管痛は只1名のみであった.フルニトラゼパムを用いた鎮静法及びその強力な健忘効果は内視鏡検査に非常に有用であった.
  • 多田 正大, 磯 彰格, 大塚 弘友, 清水 誠治, 青木 美博, 藤本 荘太郎, 慎 〓正, 川本 一祚, 川井 啓市
    1990 年 32 巻 3 号 p. 642-649
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     化管腫瘍・ポリープに対する内視鏡的治療法にはさまざまな方法があるが,ヒートプローブ法は通常の高周波電流を用いたポリペクトミーでは治療が困難な広基性・扁平ポリープの治療に効果がある.さらにヒートプローブ装置の加熱用プローブに改良を加え,先端部を4.5mmと大型にして腫瘍の広い面積を焼灼できるように工夫した.したがって1回の通電によってより広い範囲を焼灼でき,より少ない熱量で病変部の治療ができた.改良型プローブを用いて,その安全性についての基礎的検討の後,臨床応用がなされたが,扁平な大腸ポリープ2症例に対して安全に,効率的に治療ができた.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1990 年 32 巻 3 号 p. 658-676
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1990 年 32 巻 3 号 p. 676-694
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1990 年 32 巻 3 号 p. 694-709
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1990 年 32 巻 3 号 p. 710-717
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1990 年 32 巻 3 号 p. 718-728
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
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  • 日本消化器内視鏡学会
    1990 年 32 巻 3 号 p. 729-773
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1990 年 32 巻 3 号 p. 774-783
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1990 年 32 巻 3 号 p. 784-790
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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