日本消化器内視鏡学会雑誌
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32 巻, 5 号
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  • 大島 郁也
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1059-1070
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道癌,胃癌のリンパ節転移診断を行う目的で,リニア型超音波内視鏡を用いて,食道癌35例と胃癌40例を対象として検討を行った. リンパ節超音波像における5つの項目,すなわち長径(L),長径と短径の比(S/L),内部エコーヒストグラム標準偏差(SD),辺縁エコー(M),内部エコー(1)について多変量解析を行った.得られたカテゴリーウェイトにあわせて,L1(5mm以下)は0,L2(6mm以上)は1,S/L1(扁平型)は0,S/L2(類円型)は1,SD1(6.0以上)は0,SD2(6.0未満)は1,M1(不鮮明)は0,M2(鮮明)は2,I1(びまん,散在)は0,I2(粗)は2の値をF=L+S/L+SD+M+Iの式に代入し,その数値とリンパ節像の集籏性により転移診断基準を作成した. F=7,6またはF=5,4で集籏像を呈するものは転移陽性,F=5,4で集籏像を呈さないものとF=3,2,1,0は転移陰性とした. この診断基準を用いた食道癌リンパ節転移正診率は84.7%,胃癌リンパ節転移正診率は86.9%であった.
  • ―切除例における病理組織像との比較検討を含めて―
    播磨 健三
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1071-1080
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     外科手術を施行した胆管癌13症例における超音波内視鏡(EUS)の腫瘍描出能,進展度診断能について,腹部超音波検査(US),血管造影法と比較しながら検討した. EUSは胆管癌13例中11例(85%)に腫瘍描出が可能であった.一方,USでは12例中7例(58%)であった. 壁外浸潤,門脈浸潤については,EUSで腫瘍描出ができ,かつ病理組織学的検討が可能であった8例中7例(88%)で,膵浸潤については8例中6例(75%)で正診することができた.USでは,壁外浸潤,門脈浸潤,膵浸潤の有無について,腫瘍像が描出でき,病理組織学的検討が可能であった6例中4例(67%)に正診できた. 血管造影法は,腫瘍が胆管壁をこえて浸潤すれば全例で有所見を得ることができた.しかし,壁内にとどまる症例では,全例で有所見を得ることができなかった. 胆管癌の進展度診断において,非観血的検査法であるEUSは腫瘍描出能,壁外浸潤の有無の診断に優れており,今後,積極的に試みてゆくべき検査法と考えられた.
  • 長南 明道, 望月 福治, 池田 卓, 豊原 時秋, 長野 正裕, 矢野 明, 安藤 正夫, 松永 厚生, 藤田 直孝, 李 茂基, 小林 ...
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1081-1091
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     IIc型早期胃癌の超音波内視鏡(以下,EUS)診断において癌巣内潰瘍合併よる線維化の指標を得ることにより,深達度診断能の向上を目指した.対象は過去2年1カ月間に当センターでEUSが施行され,病理組織学的検索がなされた潰瘍合併IIc型早期胃癌31例である.これらにおいて,その深達度診断能およびEUS像について陥凹型進行胃癌および経過観察がなされた良性潰瘍と比較しながら検討を加え,以下の結論を得た.1)胃潰瘍および潰瘍瘢痕のEUS診断指標は(1)左右対称,境界不明瞭,内部エコー均一,下縁平滑な潰瘍エコー,(2)治癒期以降では第3層先端の中断形態は先細り型,(3)治癒期以降ではfusionまたはfusion様所見を有すること,(4)UlIVsでは第5層に切痕を認めること,と考えられた.2)上記指標にしたがって潰瘍合併IIc型早期胃癌のEUS深達度診断能をみるとm癌では18例中14例,77.8%,sm癌では10例中5例,50%の正診率となった.3)深達度診断を誤った原因は,第3層先端が中断型に途絶したものが多かった.4)UlII潰瘍合併型のIIcにおいては胃壁肥厚様式を指標に加えることで,深達度診断能が向上する可能性が示唆された.
  • 乾 由明, 河田 純男, 福田 和人, 前田 祐一, 垂井 清一郎
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1092-1096_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     98例の常習飲酒家の腹腔鏡鏡下肝表面像を検討し,アルコールに基づく所見と非アルコール性の所見とを鑑別した.常習飲酒家のうち組織学的に「アルコールと肝」研究班の診断基準をみたし,かつ臨床的には断酒により肝機能の明かな改善を認めた症例をアルコール性肝障害とした.一方肝機能の改善を示さなかった症例を非アルコール性肝障害と診断した.色調の変化では黄色紋理,胆汁うっ滞(特にgreen network)ならびに肝紫斑はアルコール性の所見であり,赤色紋理は非アルコール性の所見であった.肝表面の凹凸に関しては5~10mmの波状隆起はアルコール性,斑紋肝は非アルコール性の所見であった.肝辺縁の線維化,小陥凹および被膜の混濁はアルコール性,非アルコール性ともに認められ,両者の鑑捌には役立たなかった.
  • ―経過を中心に―
    高顕 純平, 古谷 慎一, 高升 正彦, 渥美 正英, 胡井 智, 福光 真二, 道中 智恵美, 寺前 直樹, 大石 享, 布施 好信, 児 ...
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1097-1103_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去10年間に内視鏡的に診断したびらん・潰瘍型の逆流性食道炎112例(非術後例)について検討した.症例のピークは70歳代に認められ,症状では胸やけが多かった.上部消化管合併病変では食道裂孔ヘルニアの合併が最も多く,次いでびらん性胃炎であった.初回内視鏡所見は71歳以上の高年層では70歳以下の非高年層に比しより高度な所見が多い傾向がみられ,特に食道裂孔ヘルニア合併例において顕著であった.また内視鏡所見が高度になるに従いヘルニア合併率も増加していた.初回検査後1年間の経過を59例について検討したところ3カ月後の短期経過では57.6%に,1年後の長期経過では66.1%に治癒または軽快を認めた.内視鏡所見の軽度のものは不変,悪化傾向がみられ高度のものには改善傾向が認められた.また食道裂孔ヘルニア合併例は非合併例に比し治癒率は低く,胃潰瘍および十二指腸潰瘍合併例は非合併例に比し治癒率は高かった.
  • 鈴木 悟司, 高橋 寛, 杉山 圭一, 光銭 健三, 関 盛仁, 佐竹 儀治, 藤田 力也, 菅田 文夫
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1104-1111
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     現在,食道静脈瘤硬化療法に関しては手技や硬化剤などさまざまな角度から検討が加えられている.今回われわれは,3種類の硬化剤(1)5%etanolamine oleate(以下EOと略す)(2)1.5%Aethoxysklerol(以下ASと略す)(3)Histoacryl(N-Butyl-2Cyaneacrylate,以下NCと略す)につき,家兎耳静脈を用いて組織学的検討を行った.いづれの硬化剤にても血管内の血栓形成及び,血管周囲の炎症性細胞浸潤を認め,かつASでは血栓形成が軽度であり,NCでは塞栓所見が顕著であった.一方,遠隔他臓器には血栓等の病変は認めなかった.以上の基礎的検討により安全性を確認した後,食道静脈瘤破裂症例をはじめ7症例に臨床応用を行い良好な止血効果を得た.
  • ―虚血性大腸炎との関連も含めて―
    堀江 泰夫, 千葉 満郎, 児玉 光, 正宗 研, 大窪 天三幸, 村田 雅彦
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1112-1118_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     便秘,下痢など便通異常,ストレス後に,若年者に急激に発症した血便症例5例を報告した.これらの症例では,抗生剤,経口避妊薬の服用歴はなく,糞便培養で病原菌は陰性であった.内視鏡所見として,大腸に縦走潰瘍またはびらん,粘膜の高度浮腫,出血,管腔の拡張不良,大腸X線所見として,腸管の伸展不良,thumbprinting様所見,micro-niche,小バリウム斑,haustraの偏側性変形,生検所見として,間質の浮腫と炎症性細胞浸潤など非特異的炎症所見,杯細胞の減少が認められた.これらの症例が,虚血性大腸炎の範疇に含まれる病変か否かについて,従来,基礎疾患のない,若年者に発症し,虚血性大腸炎として報告された16例も含め,考察した.
  • 田中 松平, 川浦 幸光, 大村 健二, 佐々木 正寿, 宗本 義則, 岩 喬, 松浦 弘毅, 堀田 素志, 谷口 茂樹
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1119-1132_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは電子内視鏡に特定パターンを投影する照明系を組み込み,病変の三次元形状を計測するシステムを開発中である. 三角測量の原理に基づくパターン投影法と格子投影型モアレトポグラフィーを採用した.基礎実験にていずれも10%以内の測定誤差であったが,自動計測が困難なことから後者の電子内視鏡への応用を断念した.パターン投影法にて電子内視鏡を用いた3次元形状計測の実験を行った.投影パターンを電子内視鏡の照明内部に組み込むことがわれわれには困難であったので,照明系は電子内視鏡の外部で,なるべく電子内視鏡に組み込んだ状態に近くなるように設計配置した.実験は数mm程度の凹凸の模型と胃の摘出標本を用いて形状計測を行った.本法を用いて胃壁の形状計測が可能であることを確認した.解析精度向上の方向を考察し,臨床応用に向けて歩前進したと思われた.
  • 藤堂 祐子, 春間 賢, 吉原 正治, 小笠原 秀和, 鈴木 武彦, 隅井 浩治, 梶山 梧朗, 国田 俊郎, 日高 徹, 田原 榮一
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1133-1139
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     GroupIIIと診断した104病変を臨床経過を中心に検討し,本病変に対し臨床上対処する上での問題点について考察を加えた. 対象104病変のうち,内視鏡的切除,手術,剖検で病巣の全体像を検索できた症例は53病変で,最終的に14病変(26.4%)を胃癌と診断した.大きさの変化を観察できた39病変のうち増大したものは7病変で,そのうち4病変が胃癌(腺腫内癌2病変)で,不変例の中にもStrip Biopsyの結果胃癌が3病変認められた.これらの結果から,胃生検でGroupIIIと診断される病変には腺腫内癌を含め,隆起型胃癌が含まれている可能性があり,診断と治療の目的で完全生検を試みるべきである.
  • 宮路 憲一, 渋江 正, 田中 啓三, 松元 淳, 鮫島 由規則, 有馬 暉勝
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1140-1146_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     直腸疾患の診断や局在部位の判定には,注腸X線検査や大腸内視鏡検査が行われているが,これらの検査法では腸管壁の層構造の変化や腸管周辺の病態の把握に対しては不十分であり,大腸疾患の診断に対しても超音波断層検査の必要性に対する認識が高まってきている.今回,われわれは直腸腫瘍に対して大腸内視鏡検査法と経直腸的超音波断層検査法(IUS)の併用を試み,次の結果を得た.対象は,1986年11月より1989年6月までに切除標本にて病理組織学的に検索された悪性腫瘍35例(男性19例,女性16例)である. 1.直腸癌の壁深達度診断について 壁深達度の正診率は粘膜内あるいは粘膜下層までと診断したのは9例中7例(77.8%),筋層までは8例中4例(50.0%),漿膜層に達しているが他臓器への浸潤はないと診断した例は15例中12例(80.0%)であり全体として35例中23例(65.7%)の正診率であった.正診できなかったのは12例で,過小診断5例(15.6%),過診断7例(26.9%)であった. 2.直腸周囲リンパ節腫張について 直腸周囲リンパ節腫張の有無について手術所見と対比すると,正診率は腫張ありと診断した21例中11例(52.4%),腫張なしとした14例中10例(71.4%),全体で21例(60.0%)の正診率であった.
  • 吉川 和彦, 前田 清, 寺尾 征史, 永井 裕司, 白 英三, 曽和 融生, 梅山 馨, 任 太性
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1147-1152_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     成人T細胞白血病(以下ATLと略す)にスキルス様巨大皺壁型胃病変を伴った1例を経験したので報告する.症例は52歳の男性.大阪市出身,母親は和歌山市出身で主訴は食欲不振.既往歴では19歳時虫垂炎にて手術を受けた.家族歴では特記すべきものなし.入院時現症では眼瞼結膜には軽度貧血と,球結膜に軽度黄染がみられた.臨床検査成績では赤血球数287×104/mm3,血小板数4.1×104/mm3で貧血と血小板減少がみられたほか,肝機能障害がみられた.血清電解質ではCaは11.1mg/dlと高値であった.上部消化管造影所見,および胃内視鏡所見では胃噴門部から胃体部にかけ,特に大轡側を中心に織壁の著明な肥大がみられ,BorrmannIV型の胃癌が考えられた.しかし,内視鏡施行時の胃粘膜生検病理所見では異形リンパ球の著明な粘膜下浸潤がみられ,Maligmant Lymphomaの像であった.また,Anti-human T cell leukemia virus-1(HTLV-1)抗体が陽性であった.末梢血液像では核に切れ込み,分葉傾向のあるATL特有の異常リンパ球も出現がみられた.以上より,ATLと診断したが,ATL腫瘍細胞の胃におけるスキルス様浸潤はきわめて稀であり,興味ある症例と思われた.
  • 和田 浩一, 和田 孝次, 南原 繁
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1155-1161_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃穹窿部の粘膜下腫瘍と他臓器の腫瘤による胃外性圧迫との鑑別は,極めて困難なことがある.今回私どもは,内視鏡的に胃粘膜下腫瘍の所見を呈し,造影CTが有用であった脾海綿状血管腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は72歳の女性,主訴は左季肋部鈍痛,胃X線,胃内視鏡検査にて,鳩卵大で半球状のbridging foldを伴う胃粘膜下腫瘍様の病変を認めた.超音波,ERCPでは確診が得られず.造影CT所見で,脾門部に低吸収域を示す腫瘤陰影を認めたため,脾腫瘍による胃外性圧迫と診断した.手術所見では,腫瘍は脾門部より半球状に突出して発育し,胃穹窿部後壁に巻き込まれて癒着していた.病理診断は脾海綿状血管腫であった.胃噴門部及び穹窿部で比較的小さな粘膜下腫瘍の像を呈した症例でも,脾腫瘍による胃外性圧迫も十分考慮する必要があるものと考えられた.
  • 室谷 益代, 松本 和基, 津本 清次, 白木 正裕, 鄭 鳳鉱, 杉森 清孝, 大野 良興, 磯田 幸太郎, 大柴 三郎
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1162-1165_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃前庭部に発生したInflammatory Fibroid Polyp(以下IFP)を内視鏡的ポリペクトミーにて摘出し,免疫組織学的に検討した.症例は47歳の女性.心窩部痛と嘔吐を主訴に来院した.アレルギーの既往はない.上部消化管内視鏡検査を行った結果,胃前庭部大轡に周囲粘膜と同じ色調を呈する11×11×4mm大の山田III型のポリープを認め,内視鏡的ポリペクトミーにより摘出した.ポリープは組織学的には表層はほぼ正常の腺窩上皮で覆われていたが,粘膜層深部及び粘膜下層に紡錘型細胞の増殖と著明な好酸球浸潤がみられ,また紡錘型細胞の小血管および腺管周囲での同心円状配列が認められ,その組織学的特徴からIFPと診断した.S-100蛋白,アクチン,ミオシン,リゾチームの抗体を用いてPAP法で免疫染色を施したところ,増殖した紡錘型細胞は何れにも陰性であり,筋原性,神経原性,histiocyte由来の細胞であることを示唆する所見は得られなかった.したがって,IFPにおいて増殖した紡錘型細胞は炎症などの何らかの物理的,化学的な刺激に対して過剰反応性に増殖した線維芽細胞と考えられた.
  • 林 勝吉, 山田 卓, 鄭 鳳鉱, 芦田 潔, 松本 恒司, 松本 章夫, 平田 一郎, 大柴 三郎
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1166-1170_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     比較的稀な疾患である出血を伴った胃脂肪腫を経験した.症例は42歳・男性で,下血を主訴に来院した.緊急内視鏡検査にて胃前庭部大轡前壁側に凝血の付着を伴う亜有茎性の隆起性病変を認めた.止血目的で第1病日内視鏡的ポリペクトミーを行った.腫瘤の大きさは3.0×2.5×3.0cmで,組織学的に胃脂肪腫と診断された.文献検索によれば,出血を伴う胃脂肪腫の報告は本邦で10例あり,ポリペクトミーされたのは自験例を含め2例であった.胃脂肪腫の出血例と非出血例を文献的に比較検討すると,発生部位の割合に差を認め,C領域の発生頻度が出血例で高かった.一般に,胃粘膜下腫瘍に対する内視鏡的ポリペクトミーは,その発生母地,隆起の大きさや形状を考慮して行えば,有効な診断・治療方法であると考えられる.
  • 三戸岡 英樹, 見須 英雄, 馬渕 理, 連 利博, 橋本 公夫, 友藤 喜信, 佐伯 進
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1173-1178,1171
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,5歳男児.発熱,下痢を主訴として,精査目的にて入院した.約2カ月の種々の検査,治療にもかかわらず原因不明で症状の軽快は認められなかった.粘血便が出現してきたため,大腸内視鏡検査を施行したところ全大腸に渡って浮腫とシモブリ発赤を認めた.同部からの生検では粘膜上皮細胞核内に巨細胞封入体を認め,臨床経過と併せ全身性巨細胞性封入体症と診断した.5日後,容態急変し死亡.剖検では全消化管,肺臓,肝臓,膵臓,脾臓,心臓,腎臓,副腎,胸腺に多数の封入体を認め,肺臓にはPneumocystis Cariniiも認めた.死因は肺炎と考えられた.消化管には出血とびらんを認め,サイトメガロウイルス(CMV)血管炎の所見を呈しており,内視鏡生検時,組織学的に巨細胞封入体を認め,消化管病変の成因はCMVと考えられた.全身性巨細胞封入体症の剖検例の報告は多いが,生前内視鏡的に観察し得た症例は極めて稀であり,続発性でなく原発性と考えられるCMV腸炎の報告は現在まで本邦では見当たらない.若干の文献的考察を加え報告した.
  • 久野 信義, 栗本 組子, 中村 常哉, 加納 知之, 安江 満悟, 三竹 正弘
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1179-1184_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     十二指腸乳頭部癌の組織診,細胞診などによる確定診断は,十二指腸内視鏡検査によりほとんど可能であるが,時に偽陰性例に遭遇する.本例も肉眼型が非露出腫瘤型であったため,通常の十二指腸からの生検では確診が得られず,PTCSによる生検にて乳頭部癌と診断された. また進展度,殊に癌の組織学的深達度と予後についても種々報告されているが,EUSの開発により,より客観的に知られるようになった.本例もEUSにてd0~1,panc0,n(-)と診断され,結果的に癌はOddi筋を越えない所謂早期乳頭部癌であった.
  • 重康 敏明, 横山 善文, 伊藤 誠, 武内 俊彦, 広瀬 昭憲, 山上 祥司, 金森 俊成, 大野 恒夫, 永原 鉱二
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1187-1193_1
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     下行結腸の非腫瘍性狭窄が原因で引き起こされた閉塞性大腸炎の1例を報告した.症例は80歳の男性で,約2年前に激烈な左下腹部痛をきたしてから便秘,腹部膨満感が増強し数日前から腹痛と嘔吐を伴うようになったため入院した.腹部単純写真,注腸,大腸内視鏡で中部下行結腸に全周性の狭窄がみられ,その口側腸管は著しい拡張を示した.上部下行結腸では長軸方向に約7cm,横軸方向へ腸管の約半周におよぶ粘膜面が敷石状に凹凸不整を呈し,この部の外側縁は不整で伸展不良を示した.また,腸管の後腹膜部の対側,すなわち血管入口部の対側を中心に敷石状粘膜のほぼ半分の面積を占める大きな潰瘍と,その後壁側に小さい潰瘍が認められた.保存的療法で敷石状粘膜,潰瘍の改善が認められたが症状が持続するため入院第42日目に大腸左半結腸切除術を施行した.潰瘍はUl-IIIで,潰瘍を含む病変部は閉塞性大腸炎の組織学的所見に一致した.下行結腸の狭窄の原因は明らかではないが,高齢者のうえ2年前に激烈な左下腹部痛があり,それ以来腹部症状の悪化がみられたことより虚血性腸炎が狭窄を惹起した可能性が推測された.閉塞性大腸炎の原因のほとんどが大腸癌で,本例のごとく良性狭窄が原因で発症した例は極めて稀である.
  • ―最近6年間の本邦報告55例の文献的考察―
    柏原 赴, 柴本 茂樹, 藤森 永二郎, 福田 煕, 大木 篤, 木曽 真一, 伊藤 俊雄, 西川 公子, 川上 房男, 奥野 巍一, 大西 ...
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1194-1204,1211
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     原発性硬化性胆管炎(以下PSC)の2例を報告する.症例は60歳男性と56歳女性.ERCPで共に肝内外の胆管に不整狭窄,beaded appearanceを認めた.症例1は主訴が肝機能異常,腹痛.腹腔鏡で肝左葉表面は白色調で萎縮状.裏面は塊状に腫大突出し,表面平滑,赤褐色調で白色紋理の増強を認めた.症例2は主訴が肝機能異常.腹腔鏡で肝右葉は著明萎縮,肝左葉は著明腫大.両葉とも表面平滑,赤褐色調で白色紋理の増強を認めた.最近6年間の本邦報告55例を集計した.潰瘍性大腸炎合併例は10例で,それと肝内型PSCは若年層に多く,肝外型は高齢層に多かった.また腹腔鏡所見はこれまでの集計と自験例との計23例で見ると,び漫性胆汁うっ滞が1例,白色紋理増強が9例,白色調~大白色肝が8例,溝状陥凹が3例,肝腫大が7例,肝萎縮が1例,右葉は萎縮し左葉は腫大が自験例の1例,左葉一部に萎縮や腫大・再生塊が自験例含め2例,胆嚢内側再生塊が1例,結節肝が3例であった.
  • 山川 正規, 中牟田 浩治, 谷岡 一, 原口 増穂, 浅井 貞宏, 橋本 芳徳, 木下 真悟, 村田 育夫, 今西 建夫, 牧山 和也, ...
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1205-1211
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は39歳,男性.便秘と排便後出血で来院し,直腸指診で5cm部に高度の狭窄を認めた.大腸X線検査では,肛門管から直腸の不整な狭窄と,その中に多発する小隆起を認めた.大腸内視鏡像では,同部位に立ち上がりがなだらかな隆起性病変が続いており,隆起部分は,発赤と凹凸を認め,敷石状変化も思わせる所見であった.当初,直腸癌を疑い,同部の生検を試みたが,悪性の所見は得られなかった.直腸良性狭窄を考え,直腸拡張術と再度の生検を行ったところ,非乾酪性肉芽腫を検出した.しかし,他の部位にクローン病の病変を認めなかったため,直腸クローン病と診断した.直腸クローン病は本邦では稀であり,本邦報告例を集計し,若干の考察を加えて報告した.
  • Yi-nong Li
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1214
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 竹本 忠良
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1215
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 鎌田 武信
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1216-1217
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 並木 正義
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1218-1219
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 丹羽 寛文
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1220-1221
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 有山 裏
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1222-1223
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
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    During a period of 17 years 222 proven pancreatic ductal adenocarcinomas have been studied. Male to female was 132 : 90, with an average age of 62 years. US was used as screening procedures. Should this be abnormal CT was performed. Large pancreatic car-cinomas were easily diagnosed with US and CT and preoperative staging was possible in majority of cases. However, ERCP was necessary in the diagno-sis of carcinoma smaller than 2cm. In all 21 car-cinomas smaller than 2cm ERCP showed abnormal-ity, but ductal change was relatively nonspecific. To establish the diagnosis angiography, "skinny" pan-creatoscopy and peroral ductal biopsy were rerfor-med. Cumulative life analysis of 4 patients with carcinoma smaller than 1 cm and limited to duct epithelium without parenchymal invasion revealed 100%. In those carcinomas larger than 2 cm with parenchymal invasion 5-year survival rate was less than 30%.
  • 平塚 秀雄
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1224-1225
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
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  • 福地 創太郎
    1990 年 32 巻 5 号 p. 1226-1237
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
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  • 1990 年 32 巻 5 号 p. 1238-1300
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2011/05/09
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