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前谷 容
1990 年 32 巻 6 号 p.
1321-1331
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
1983年7月より1989年9月までに教室で105例に対し計588回施行した内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(以下EISと略)の治療成績,予後,合併症について検討した.硬化剤は1%Polidocanol(Aethoxysklerol(R))を使用し,105例のうち当初の24例は血管外注入法で,最近の81例は血管内を主体とした血管内外注入法で行った. 1クール完了しえた99例中治療後に再発出血をきたしたものは8例(8%)であった.このうち血管内外併用法に代えてからの出血例は2例のみであり,その1例は胃静脈瘤出血により死亡したが,食道静脈瘤は消失していた.治療後出血率は前期の血管外注入法では26.0%,後期の血管内外注入法では2.6%であり,血管内外注入法が優れていた(p<0.01).またEIS施行数日後に2例が胃静脈瘤破裂をきたしたが,いずれも内視鏡的に止血しえた. 合併症としてmajor complicationを7例(6.7%)に,minor complicationを64例(61.0%)に認めた.major complicationをおこしたうち2例は救命しえなかった.いずれも肝癌を合併したChild分類Cの肝硬変例で,門脈腫瘍栓を伴って肝不全末期ともいうべき状態であり,このような症例に対してEISを行う場合には慎重に検討すべきものと思われた. 治療時期別に緊急治療群,待機治療群,予防治療群とに分けて予後を検討すると,予防治療群は緊急治療群と比べ有意に生存率の悪い時期があったが,その他は統計学的にも明らかな差はなかった.また肝予備能で比較してみると,child分類上A,B,C群の順で予後が良かったが(AB間p<0.01,Ac間p<0.001,Bc間2年9カ月でp<0.01それ以後有意差なし),肝癌27例(初回治療時に既に肝癌を併発していた23例,および経過観察中に発現した4例)を除いたもので検討したところ,child分類A群はB,C群に比べ予後は良好であった(AB間p<0.05,Ac間p<0.001).しかしB,C群の間では差がなく,child分類C群にも積極的にElsを施行すべきと思われた.
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田中 慎也
1990 年 32 巻 6 号 p.
1332-1340
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
非手術的胆道ドレナージ法として開発されたEBDは,成功率ではPTCDにおとった.しかし清水らの減黄率b値を用いて減黄効果を検討したところ,EBDで83%の症例に有効な減黄効果が得られた.また,根治術が不可能な胆管癌と膵癌において,Kaplan-Meier法を用いて生存期間の検討したところ,EBD単独で良好な延命効果が期待できた. 一方,EBDの長期留置例では,EBDステントの目づまりが必発であり,その防止策が急がれる.今回の検討では,ステントの内腔面をより平滑にすることが,ステントの目づまりの防止に有効な手段であると確認し,早急に上記の条件を満足するステントの開発の必要性を指摘した.
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高橋 達, 阿部 毅彦, 秋谷 正彦, 斉藤 貴史, 山田 慎二, 畑 耕治郎, 鶴谷 孝, 渡辺 俊明, 朝倉 均
1990 年 32 巻 6 号 p.
1341-1353
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
組織学的にアルコール性肝障害と診断した119例について腹腔鏡肝表面像と組織学的所見との比較検討をおこなった.肝左葉の腫大,肝右葉辺縁の丸みある鈍化,肝表面の凹凸,リンパ小水泡,表在血管の増生,側副血行路などの各所見は組織学的な線維化の程度に比例して出現し,かつ増強した.アルコール性肝硬変への前駆病変として重要であるアルコール性肝線維症の特徴的所見は白色紋理の不明瞭化であり,44%の例で認められ,組織学的なwiremesh fibrosisの存在と対応していた.肝表面の粗大な起伏や溝状陥凹はアルコール性肝炎で多くみられ,組織学的には肝実質の広範な壊死,脱落や再生の所見と対応していた.肝表面に視認し得る結節を認めないにもかかわらず,組織学的に典型的な亜小葉性肝硬変の像を呈する例を3例経験し,アルコール性肝硬変の極めて初期像である可能性を指摘した.アルコール性肝障害で斑紋や赤色紋理の出現頻度が低いことはウイルス性慢性肝炎との鑑別診断上有用であると考えられた.
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西元寺 克禮
1990 年 32 巻 6 号 p.
1354-1360_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
H
2受容体拮抗剤(以下H
2-B剤)で治療した胃潰瘍247例について,(1)4週治癒VS8週治癒,(2)8週治癒VS8週未治癒,(3)4週治癒VS12週未治癒のそれぞれにつき,難治要因を検討した.その際各種背景因子ならびに内視鏡所見など22項目を取りあげ,易治例と難治例を比較,X
2検定ならびに数量化理論1類による多変量解析を行った.各検討において易治群と難治群の間に有意差を認めたものは潰瘍の部位,形,ひだ集中,縮小過程,周辺隆起であり,年齢,性,潰瘍歴,治療環境,薬剤,喫煙などは難治要因ではなかった.難治要因として最も重要なものは潰瘍型(深掘れ型),著明な周辺隆起,強い皺襞集中であった.以上より従来の難治要因と言われたもののうちH
2-B剤治療下胃潰瘍では局所の潰瘍の性状が最も大きな要因であることが判明した.
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橋本 洋, 斉藤 恵一, 窪田 英一郎, 中尾 京子, 千葉 素子, 加藤 明, 春木 宏助, 横山 聡, 光永 篤, 鈴木 茂, 内山 明 ...
1990 年 32 巻 6 号 p.
1363-1368_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
超音波内視鏡(以下EUS)画像の定量診断を行う目的でテキスチャー解析を試みた.今回は特に胃潰瘍の線維化組織,胃癌に併存した線維化組織,線維化非併存例の胃癌組織の鑑別のために定量診断を行った.対象は手術摘出された胃潰瘍,線維化内への細胞浸潤を伴わない線維化併存IIC型早期胃癌線維化内に高度の細胞浸潤を伴ったBorrmann-2型進行胃癌,Borrmann-1型進行胃癌各1例である.EUS施行時の設定条件を一定とし,U-maticテープに録画したものをパーソナルコンピューターに入力しテクスチャー解析を行った.方法はランレングス行列から得られる,short runs emphasis (SRE), long runs emphasis (LRE), gray revel uniformity (GLU), run length uniformity (RLU)の4パラメータを計算し検討した.その結果,各パラメータの組合せにより細胞浸潤の無い胃癌に併存した線維化組織と癌細胞浸潤の多い線維化組織は統計的に差を生じ,さらに胃潰瘍組織,胃癌に併存した線維化組織とBorrmann-1型の線維化を伴わない癌組織ともそれぞれ統計的に有意差を生じ,定量的に鑑別された.一方,組織像を検討した結果これらの有意差は組織構造の違いを反映していると考えられた.このような定量診断の試みは将来のEUS像の自動診断につながるものと考えた.
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日野 直紀, 山本 博, 千先 茂樹, 脇谷 勇夫, 土居 偉嵯雄, 矢野 慧, 能登原 憲司
1990 年 32 巻 6 号 p.
1369-1376_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃腺腫83例89病巣を経験しそのうち36例38病巣を6カ月~10年経過観察し得た. 胃腺腫は高齢の男性に多くA領域に好発した.2cm以下の褪色調の扁平隆起が多かったが,2cm以上の例は約70%に同一病巣内に癌との共存を認めた.同一病巣内に癌と腺腫との共存を認めたのは6病巣でうち3病巣は腺腫内癌と思われた.経過観察中増大したのは3病巣でうち2病巣に同一病巣内に癌との共存を認めた.縮小したのは3病巣で,消失した4病巣は腸上皮化生におきかわっていた.また同一胃内の合併病変では胃癌が25.3%と最も多く,経過観察中22.2%に同一胃内に癌との併発を認めた. 以上より2cm以上また増大傾向のある胃腺腫は積極的にstrip biopsy等を施行する必要があり,2cm以下のものでも同一胃内での癌の合併を考慮して厳重な経過観察が必要であると思われた.
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―服用時間について―
大川 清孝, 北野 厚生, 岡部 弘, 福島 龍二, 加島 和俊, 中村 志郎, 小畠 昭重, 押谷 伸英, 橋村 秀親, 日置 正人, 松 ...
1990 年 32 巻 6 号 p.
1377-1385
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
われわれは既にsennosideとmetoclopramideを併用しPEG2,000mlを2時間で服用する方法(120分併用法)がPEG単独投与に比し,清浄効果,残存水分量,患者の受容性などの点で優れていることを報告してきた.しかし,2時間が本当に至適時間であるかどうかは不明である.そこで,今回至適服用時間を求めるため以下の検討を行った.対象と方法:ポリペクトミー目的にて当院あるいは関連病院へ入院した51名を対象として以下のごとく3群に分け検討した.A群(17名):1週間隔でsennosideとmetoclopramideを併用しPEG2,000m1を70分で飲む方法(70分併用法)と120分併用法による大腸内視鏡前処置を行い,腸管清浄度,腸管水分量,患者の受容性,初回排便までの時間,総排便回数,服用後2時間までの排便回数,服用後3時間までの排便回数につき比較検討した.B群(17名):1週間隔で90分併用法と120分併用法による前処置を行い同様の比較検討をした.C群(17名):1週間隔で180分併用法と120分併用法による前処置を行い同様の比較検討をした.結果:腸管清浄度については有意差は無くいずれの方法でも十分な清浄効果が得られた.腸管水分量に関しては120分併用法が最も少なく,70分併用法が最も多かった.総排便回数は服用時間が長いほど多い傾向がみられた.服用開始から検査開始可能な時間は服用時間が短かいほど短かかった.患者の受容性については180分併用法が最も優れており次いで120分併用法が優れていた.また,70分併用法では2例,90分併用法では1例の脱落者がみられた.これらの結果を総合するとPEGによる前処置を一定化するという観点にたてば120分併用法が最も適切な服用方法であると考えられた.
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西田 憲一, 岡 芳彦, 村山 寛, 八尾 恒良
1990 年 32 巻 6 号 p.
1386-1393
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は36歳の女性で上腹部痛を主訴として来院.初回胃X線・内視鏡検査でIIc型早期胃癌を疑った.しかし紅斑性皮疹を伴い血清梅毒反応は強陽性であったため,胃生検材料の鍍銀染色(岐阜大学変法)を施行し,ラセン状微細構造物を認めた.臨床所見と合わせて胃梅毒と確診し駆梅療法を開始した.その後,経時的に内視鏡観察を行い治癒を確認し得た.
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神山 敏, 永田 博司, 唐澤 達信, 森永 正二郎, 濱名 元一
1990 年 32 巻 6 号 p.
1394-1398_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は31歳,男性で,心窩部痛,嘔吐を訴えて来院.胃内視鏡検査で胃体上部小彎側から幽門前庭部にかけて,易出血性の地図状の潰瘍性病変を認めた.生検組織像では悪性所見はなく,血清梅毒反応が強陽性であり,その胃内視鏡所見が胃梅毒と合致することから,胃梅毒を疑った.酵素抗体法によりTreponema Pallidumを証明し,胃梅毒と確定診断した.駆梅療法を施行し,自覚症状,胃内視鏡所見も著明に改善し,血清梅毒反応も低下した.
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森 由美子, 奥野 資夫, 松林 祐司, 小寺 徹, 伊藤 彰子, 橋本 晃, 立田 浩, 伊藤 恭子, 塚田 英昭, 上田 俊二, 酒井 ...
1990 年 32 巻 6 号 p.
1399-1407
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
46歳男性,食欲不振,体重減少にて受診し,上部消化管内視鏡検査にて,胃前庭部に出血を伴った浅い地図状ないし網目状の不整形な多発性びらんを認め,びらん間の粘膜は浮腫状で発赤し大小不同の粗大顆粒状変化を呈していた.急性胃粘膜病変(AGML)としてH
2プロッカーを含む抗潰瘍薬の投与を行ったが,4週間の投与にもかかわらず胃病変は軽快せず.胃粘膜病変では,びらん,リンパろ胞の発達,粘膜筋板の肥厚,細胞浸潤を認めたが,形質細胞は多くはなかった.梅毒反応が陽性であったことより胃梅毒を疑い,駆梅療法を行ったところ,わずか8日後に内視鏡検査上著明な改善を認めた.治療後施行したX線検査では,前庭部の伸展不良,壁硬化と大小不同の隆起を認めた.ホルマリン固定した胃生検標本の酵素抗体法(PAP法)にて胃粘膜内に多数のTreponema pallidumを証明し胃梅毒の確診を得た.
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(その成因に関する免疫組織学的検討)
平山 大介, 藤盛 孝博, 里中 和廣, 北沢 荘平, 堀尾 光三, 前田 盛, 下村 隆之, 宮村 忍, 荒尾 素次
1990 年 32 巻 6 号 p.
1408-1414_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
われわれは強い好酸球浸潤を伴う胃の限局隆起性病変を4例経験したので報告する.病変は,いずれも胃前庭部に存在し,大きさ1cm以下,表面平滑,ほぼ正常色調を有する山田II,III,IV型の隆起性病変であった. 病理組織所見では粘膜固有層に線維細胞,毛細血管の増生,好酸球のび漫性浸潤を認め,線維細胞は毛細血管を中心にいわゆるwhorl-like pattemを呈していた. 以上の所見よりこれらの病変はInflammatory fibroid polyp(IFP)に相当すると考えられた. IFPの成因を検索するため,免疫組織学的にS-100蛋白,NSE,ミオグロビン,デスミン,第VIII因子関連抗原につき検討したが,いずれも陰性であることより神経性,筋原性および血管性腫瘍説は否定的であり,炎症による反応性病変である可能性が示唆された.しかし,myofibroblastic appearanceを呈するこれらの細胞群が他の反応性修復過程では認めないwhorl-like appearanceを呈する理由についてはさらに検討を要すると思われた.
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足立 経一, 三上 昌之, 宇野 弘二, 小林 博夫, 服部 修三, 福本 四郎, 島田 宜浩
1990 年 32 巻 6 号 p.
1415-1418_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は90歳女性.約1カ月前より37℃~38℃の発熱,食欲低下出現.近医にて鉄欠之性貧血と診断され加療中,少量の吐血あり,同院入院.同院での腹部エコーにて総胆管の拡張を認められ,精査加療目的で当科紹介入院となる.入院時に施行した上部消化管内視鏡検査にて,十二指腸内に長さ約10mmの赤色の虫体を多数認め,生検鉗子にて虫体を摘出し,その形態学的特徴により,アメリカ鉤虫と診断した.総胆管は腹部エコー上入院時16mmと拡張を認めていたが,入院後の経過にて径の縮小が認められ,入院14日目に施行したERCPでは結石,腫瘍などは認めなかった.ピランテル・パモエート500mg3回計1,500mg,鉄剤の投与にて,症状,貧血の改善を認めた.本症例のように内視鏡的に十二指腸内虫体を摘出しアメリカ鉤虫症と診断することは,きわめて稀と考えられ若干の文献的考察を加え報告した.
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坂本 清人, 桜井 俊弘, 中原 束, 黄田 国義, 田中 靖邦, 豊島 里志, 松隈 哲人
1990 年 32 巻 6 号 p.
1419-1426_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は49歳男性で,急性発症の右上腹部痛を主訴として緊急入院した.注腸における巨大ニッシェ像より上行結腸癌を疑われ第1回開腹術が行われた.開腹時,上行結腸,十二指腸球後部および胆嚢が強く癒着し,剥離困難なためIleotransversostomyが行われた.同部の組織像から悪性所見は得られなかった.術後,上行結腸の巨大ニッシェは消失した. その後行われた十二指腸ファイバースコーピーにて,球後部に潰瘍性病変が発見され,直視下生検にて高分化腺癌が検出された.その内視鏡像より他部位からの癌浸潤と考え原発巣究明のため再開腹が行われた.前回癒着した部を積極的に剥離してゆくに頭側に走行偏位した虫垂の先端に小指頭大の癌腫瘍が発見された.これが十二指腸と結腸の一部に浸潤した状態であった.当初この虫垂癌が穿孔し急性症状を発症させ,その激しい炎症により上行結腸の潰瘍形成や病変の強い癒着性変化が惹起されたものと推測された.
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加藤 直也, 横地 潔, 河野 弘, 伊藤 誠, 石川 進, 岡山 直司, 川合 孝, 松葉 周三, 岩井 彰, 岡山 安孝, 安江 直二, ...
1990 年 32 巻 6 号 p.
1429-1434_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
無黄疸で発見された下部胆管癌の1例を報告した.症例は69歳男性で発熱と嘔吐を初発症状とし,肝機能検査で胆道系酵素の上昇が認められた.US,CTにて肝内,肝外胆管の拡張と胆嚢の腫大がみられたためERCPが施行され,総胆管下部に不整な陰影欠損像が描出された.PTCS下の生検で腺癌と診断され,膵頭十二指腸切除術の結果12×10mmの乳頭型でStage Iの腫瘍であった.胆管癌の早期診断には胆道系酵素の上昇をみた場合,黄疸がみられなくとも胆道系腫瘍を念頭においた検索が重要であると考えられた.
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高橋 周史, 吉川 敏一, 石田 智子, 市川 寛, 安田 光徳, 安藤 貴志, 内藤 裕二, 杉野 成, 近藤 元治, 加藤 誠, 野口 ...
1990 年 32 巻 6 号 p.
1435-1441_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
回腸末端原発の悪性リンパ腫を先進部とする回結腸型の成人腸重積症の1例を,超音波,CT,内視鏡検査,血管造影等により術前に確診し得たので報告する.症例は,59歳女性で,約2カ月前より間欠的な下腹部痛途持続するため来院.注腸造影で回盲部に腫瘍を認め,超音波,CT検査で腫瘍を先進部とする腸重積症を疑った.経口腸管造影,血管造影にて腸重積症を確診し,また,内視鏡下の生検で悪性リンパ腫の質的診断も可能であった.成人の腸重積症は定型的な症状に乏しく慢性の経過をとり,イレウスや出血を起こし緊急手術となることが多く,一般に術前の診断は困難とされているが,超音波検査あるいはCT検査による診断は比較的容易であり,また本症例のように待機的手術が可能な場合には,内視鏡,血管造影等により確定診断も可能であり,各種検査の有用性について若干の文献的考察を加え報告した.
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原口 増穂, 坂井 裕之, 小田 英俊, 中牟田 浩治, 谷岡 一, 早田 正典, 浅井 貞治, 泉川 欣一, 村田 育夫, 牧山 和也, ...
1990 年 32 巻 6 号 p.
1442-1446_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は60歳の男性.全身倦怠感,下痢を主訴に近医を受診,注腸X線検査で異常所見を指摘され,精査治療のため当科へ紹介された.胸部X線上活動性の肺結核を認め,喀痰の塗沫検査でガフキー8号であった.注腸X線検査にて下行結腸と横行結腸の2カ所に鋸歯状の不整辺縁像を伴う輪状狭窄所見がみられ,活動性腸結核が疑われた.大腸内視鏡検査では,下行結腸に全周性の浅い,易出血性の潰瘍性病変を認め,狭窄のためファイバースコープを口側へ挿入することができなかった.同部の鉗子生検を行い,組織学的には乾酪性肉芽腫は見出せなかったが,抗酸菌染色にて多数の結核菌を検出することができ,大腸結核の確定診断をえ,早期に治療を開始することができた. 大腸結核の病変部の生検組織から抗酸菌染色によって結核菌を同定できた報告は少なく,われわれの調べえた範囲では,本邦では本例が6例目であり,貴重な症例と思われた.
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星加 和徳, 村上 三枝, 細部 雅代, 本多 啓介, 木原 彊
1990 年 32 巻 6 号 p.
1447-1452_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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内視鏡的ポリペクトミーにて摘出しえた下行結腸有茎性平滑筋腫の1例を経験した.症例は59歳男性で,狭心症の経過観察のため循環器内科に入院した際に便柱細小を訴え,その精査目的で注腸造影が施行された.注腸造影では下行結腸に有茎性隆起性病変を指摘され,ポリペクトミー目的で当科に紹介された.大腸内視鏡検査では,下行結腸に有茎性隆起性病変を認めるものの,その表面は正常粘膜で被われており粘膜下腫瘍と診断した.内視鏡的ポリペクトミーを施行し病変を摘出したが,出血等の合併症は認めなかった.摘出標本の大きさは6×4×5mm大で,病変は正常粘膜で被われ,割面では粘膜下に4mm大の白色の硬い腫瘤を認めた.組織学的所見では,腫瘤は正常粘膜で被われた平滑筋腫と診断された.
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芹澤 宏, 緒方 晴彦, 田中 伸, 渡辺 憲明, 岩男 泰, 三浦 総一郎, 日比 紀文, 竹内 勤, 深見 博也, 朝倉 均, 土屋 雅 ...
1990 年 32 巻 6 号 p.
1455-1460_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡検査にて潰瘍性大腸炎と類似の病変を呈し,血清反応陽性から確定診断できたアメーバ性大腸炎の2例を報告する.症例は,ともに下痢,血便を主訴として来院.注腸所見は,ごく軽度のバリウムの付着不良像,粘膜の毛ばだちのみであった.内視鏡的にはたこいぼ様,アフタ様の小潰瘍が散在し,潰瘍の周囲粘膜も全体に発赤,浮腫を認め,易出血性であった.初回の便培養は陰性で,組織生検にても特異的所見はなく潰瘍性大腸炎も否定できなかった.アメーバ血清反応にて陽性であったため,便および組織生検を繰り返した結果,アメーバが検出されアメーバ性大腸炎と確定診断ができ,メトロニダゾール投与により速やかに軽快した.本症は,近年,再び増加傾向を示しており,潰瘍性大腸炎を初めとした他の大腸炎と類似の病変を呈した場合,本症を念頭に置き,便,組織検査を繰り返す一方,血清反応を施行することが早期診断,治療に有用であると考えられた.
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関岡 敏夫, 小菅 貴彦, 遠藤 清, 飯塚 修, 尾松 操, 藤江 純二, 辻 雅衛, 仲井 理, 増田 道彦, 平田 邦明, 市地 春彦 ...
1990 年 32 巻 6 号 p.
1461-1468_1
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
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フリー
従来内視鏡は腸管内に空気を入れながら行われてきた.しかし大腸ファイバースコープ挿入の場合,注入された空気のため腸管が過伸展し大腸ファイバースコープの挿入が困難になったり,患者に大きな苦痛を与えることが多かった.今回筆者は大腸ファイバースコープ挿入の際は空気を注入する代わりに,水のみを注入する方法を考案した.この方法は潜水艦が水中を行くのに似ているのでサブマリン法と名付けた.サブマリン法導入後SD junction(以下SDと略す)の通過を始めとして盲腸への到達が容易となり,また患者の苦痛も大幅に軽減した.今後サブマリン法は大腸ファイバースコープの主要な挿入法の1つになりうると考えられる.
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1990 年 32 巻 6 号 p.
1469-1598
発行日: 1990/06/20
公開日: 2011/05/09
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フリー