日本消化器内視鏡学会雑誌
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33 巻, 10 号
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  • 白井 孝之
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2177-2183
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     十二指腸潰瘍患者(DU群)36例と正常対照群16例の十二指腸球部内の胃上皮化生と同部のHelicobacter pylori(Hp)の検出率を比較し,病変との関連性を検討した.内視鏡下に球部より生検組織を採取し,胃上皮化生の同定(PAS-AB染色),Hpの検出(Giemsa染色)を行った.更に,抗菌剤投与前後のHpの消長とそれに伴う粘膜変化の観察も行った.化生上皮の検出率及び同部のHpの検出率はDU群がそれぞれ86%,90%で,対照群の50%,50%に比し有意に高率であった.菌量は化生上皮の量に比例して増加した.抗菌剤投与例では化生上皮における多核白血球浸潤が消失し,同部の粘液の増加がみられた.以上DU群の球部内には対照群に比し,胃上皮化生とHpがより高率に存在し,同部は組織学的炎症所見が強く,粘液の減少もみられることから,Hpの存在が同部の粘膜障害に関与し,潰瘍の発生,再発のきっかけになっている可能性が推測された.
  • 田中 俊郎
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2185-2193
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     クローン病患者9例の直腸粘膜の"worm-eaten appearance"(以下"WEA")部と正常外観粘膜部から区別して生検した組織を用いて,電子顕微鏡にて形質細胞の超微形態の異常を検討し,酵素抗体法にて組織内リンパ球subsetsの分布を調べた.結果は1)"WEA"部において拡張した粗面小胞体をもつ形質細胞を多くみとめ,"WEA"部の多くの形質細胞がhyperfunctionの状態にあることが示唆された.2)"WEA"部のリンパ濾胞増生部周辺の浸潤細胞は,T cellが主体でありhelper/inducer T cellが,suppressor/cytotoxic T cel1より多く認められた.その比は"WEA"部が"NOR"部より高くT cell subsetsのインバランスの状態が認められた. 以上より"WEA"部は,腸管内抗原物質に対する初期免疫反応の内視鏡的表現型であることが明らかとなった.
  • 内藤 潤美, 島田 宜浩
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2195-2203
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腹腔鏡検査による肝表面像の解読には肝被膜面に露出する終末細門脈枝に対する理解が極めて重要である.この終末細門脈枝は通常周辺の結合織と共に直径0.1~0.3mmの灰白色小斑点として観察され,これらに囲まれた多角形はいわゆる古典的肝小葉に相当する.この多角形(肝小葉紋理ともいう)は拡大腹腔鏡検査にて110例中86例(78.1%)に観察され,灰白色小斑点相互間の距離(古典的肝小葉の一辺)は0.2~2.0mm,平均0.76±0.25mmであり,やや不規則に分布する. 剖検肝および切除肝より採取した5個の肝組織塊の組織学的再構築法による検討では,肝被膜直下の終末細門脈枝相互間の距離は0.2~1.7mm,平均0.85±0.35mmであり,腹腔鏡観察における灰白色小斑点相互間の距離とほぼ一致した.以上により腹腔鏡観察における灰白色小斑点は肝被膜直下の終末細門脈枝と周辺組織に相当することを確認するとともに,その分布様式を明らかにした.
  • 大塚 弘友, 清水 誠治, 磯 彰格, 岡村 雅子, 多田 正大, 川井 啓市
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2205-2210
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     超音波内視鏡検査(EUS)を用いて,消化管カルチノイド12病変の質的診断および内視鏡的治療の可能性について検討した.内部エコーレベルは,比較的低エコーレベルが4例,低エコーレベルが8例であった.腫瘍の大きさは長径4mmから15mm,厚さ3mmから7mmであった.腫瘍像の局在部位はm-smが10例,smが2例と診断し,9例に正診がえられた.消化管カルチノイドは均一で,低エコーから比較的低エコーの内部エコーをもち,第2層に接した腫瘍として描出された.エコーレベルから脂肪腫,嚢腫との鑑別が可能であり,局在部位から筋腫との鑑別が可能であった.消化管カルチノイドのEUS診断は第2層の検討が重要であり,内視鏡的治療の適応の決定に重要であると考えられた.
  • 日野 直紀, 山本 博, 脇谷 勇夫, 千先 茂樹, 島村 淳之輔, 高三 秀成, 遠藤 浩
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2211-2219
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,肝硬変症における食道静脈瘤の進展過程を分析する目的で,未治療例(1群)78例,食道静脈瘤離断術後(2群)19例と内視鏡的硬化療法後(3群)26例の3群について,静脈瘤の内視鏡所見の経時的変化ならびにその進展と肝機能検査成績の推移との関連について検討し以下の結果を得た.1)1群においては,F1でRC sign(-)例では1年後約90%は不変であったが,F2例では1年半後約半数に増悪を認めた.F3例は全例RC sign(+)で1年以内に67%が出血した.2)2群においては,2年以内に再発した例は少なかった.3)3群においては58%が平均8カ月で再発し,27%に平均13カ月で出血を認めた.4)1,2,3群ともに食道静脈瘤が増悪した例では肝機能(Alb,ChE,Plt,PTのいずれか)が悪化する傾向が認められた.
  • 武田 功, 中野 哲, 熊田 卓, 杉山 恵一, 長田 敏正, 桐山 勢生, 山田 雅彦, 岡部 英生, 竹田 力, 加藤 聡之
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2220-2228
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的治療で止血できなかった出血性胃潰瘍12例に血管造影を行い,その造影所見および動脈塞栓療法(TAE)の効果について検討した.内視鏡所見では6例がDieulafoy潰瘍(Es)群,6例が深くて大きな潰瘍群であった.12例中7例(58.3%)に造影剤の血管外漏出がみられ,破綻動脈は胃壁枝5例,上行枝1例,胃粘膜枝1例であった.Es群の4例はいずれも胃壁枝が破綻しており特徴的であった.TAEは11例に施行し,9例(81.8%)に止血効果が得られたが,このうち5例に永久止血が得られ,1例は止血後手術とし,3例は止血したが重篤な基礎疾患のため死亡した.残りの2例は再出血のため緊急手術となった.血管外漏出がみられた例では確実にその部位を塞栓でき止血効果が高かった.TAE後に粘膜出血,びらんがみられたが,重篤な合併症はなかった.以上の結果より,内視鏡的治療で止血できない出血性胃潰瘍に対して,TAEは有効な方法であると思われた.
  • 井上 冬彦, 成宮 徳親, 常喜 真理, 杉本 泉, 岩崎 仁彦, 武内 力, 渡辺 俊明, 鎌倉 広俊, 中村 仁, 石戸 浩之, 田中 ...
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2229-2234_1
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は68歳男性.糖尿病,慢性腎不全にて経過観察中に約3cmの有茎性食道癌を認め,手術はリスクが高いと判断したため内視鏡的ポリペクトミーを施行した.切除標本は深達度mm,最大径27mmの扁平上皮癌で癌肉腫や偽肉腫を思わせる所見は認められなかった.術後より血液透析を導入しているが26カ月間再発兆候はなく,本症例におけるポリペクトミーは有効な治療手段であったと考えられた.
  • 峠 千衣, 國田 俊郎, 山本 剛荘, 瀧澤 伊津夫, 岡本 一馬, 丸橋 暉, 春問 賢, 梶山 梧朗
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2237-2240_1
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     超音波内視鏡で胃粘膜下の嚢腫を疑い,ポリペクトミーにより,胃リンパ管腫と診断した1例を経験したので報告する.症例は60歳,男性で,胃部不快感を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査にて,胃前庭部後壁大彎寄りに隆起性病変を認め,胃粘膜下腫瘍と診断した.2年間の経過観察の間に増大したため,超音波内視鏡を施行したところ粘膜下層に存在する,嚢胞性の腫瘤を認めた.ポリペクトミー後,病理組織学的検索にて胃リンパ管腫と診断した.
  • 清水 聡, 清沢 研道, 袖山 健, 古田 清, 早田 卓郎, 田中 栄司, 吉沢 要, 牛丸 博泰, 松田 至晃, 古田 精市
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2241-2245_1
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は30歳,女性.急性重症型B型肝炎の回復期に腹腔鏡下肝生検を施行したところ,4日後より右季肋部痛と黄疸が出現した.腹部超音波では穿刺部であるS5に低エコー域と胆管の拡張を,ERCPでは乳頭開口部に凝血塊の付着,胆管および胆嚢内に透亮像を認めたためhemobiliaと診断し,ENBDを施行した.肝動脈造影ではS5に仮性動脈瘤を認めた.止血後,動脈瘤に一致してUSにて観察された低エコー域は次第に縮小し消失した.
  • 太田 知明, 北川 隆, 相馬 光宏, 武藤 英二, 武田 章三, 神田 誠, 柴田 好, 岡村 毅與志, 並木 正義
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2246-2255
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     発生母地の異なる癌と悪性リンパ腫が同一胃内に共存した2例を経験した.症例1は,前庭部小彎に隆起型の乳頭状腺癌とこれに連続して前庭部前壁にdiffuse,mixed typeの悪性リンパ腫を認めた.症例2は前庭部大彎前壁にBorr3型の乳頭状腺癌と前庭部・灣後壁にBorr3型様の病変を認め,儲は組織学的にdiffuse,largecell typeの悪性リンパ腫であった.自験例を含め本邦における同様の症例58例を集計吟味し,考察を加えた.
  • 大谷 吉秀, 戸倉 康之, 三吉 博, 山藤 和夫, 平林 健, 貴志 和生, 勝俣 慶三, 藤倉 信一郎, 中村 真一, 横山 聡, 田宮 ...
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2256-2261_1
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     最近われわれは,左横隔膜弛緩症に伴う出血性胃潰瘍合併胃軸捻転症を経験し,観血的に治療する機会を得たので報告する. 症例は,75歳男性.主訴は嘔吐と腹部膨満.入院時の立位単純X線像で,左横隔膜の挙上と,鏡面像を伴う拡張した胃を認めた.緊急内視鏡検査では,胃の反時計方向への捻れ,大小の粘膜内出血と島状の浅い胃潰瘍の多発を認めた.胸部CTおよび上部消化管造影の結果,胃軸捻転症と診断した.保存的治療により食事ができるようになり一度は退院した.しかし,5カ月間に2回症状の再燃をみたため開腹術を施行,捻転を解除の後,胃を前腹壁に固定した.術後2カ月目の内視鏡所見では,胃の捻れはなく潰瘍の再発もみられなかった.胃の捻転に由来する通過障害を比較的軽度の手術侵襲で改善しえた点で,本症例は貴重と思われた.本疾患の診断における内視鏡検査の意義を中心に若干の文献的考察を加え報告する.
  • 中山 順子, 今西 幸市, 國田 哲子, 堀川 陽子, 網岡 浩, 山田 勝士, 嶋本 文雄
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2262-2266_1
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     ズビニ鉤虫およびアメリア鉤虫の混合感染による鉤虫症の1例を経験した.症例は,85歳,女性.慢性心不全の悪化にて当院入院したが,軽度の貧血,便潜血陽性があり消化管出血を疑い,上部消化管内視鏡検査を行った.十二指腸球部に多数の寄生虫を認め,数匹捕獲,形態学的特徴よりズビニ鉤虫,アメリカ鉤虫の両者と確認,両者の混合感染と診断した.治療としてPyrantel pamoateと鉄剤投与後,貧血改善し,便虫卵,潜血陰性となった.
  • 霜野 良一, 岩越 一彦, 築山 順一, 種本 基一郎, 前田 達生, 藤林 里佳子, 常岡 武史, 植松 清, 川口 勝徳, 裏川 公章
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2267-2273
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     潰瘍性大腸炎の発症原因は未だ不明であり,感染説,遺伝説,免疫異常説および環境因子説などが病因として唱えられてきた.最近はHLAとの関連より免疫遺伝的因子の重要性が報告されている. 今回,著者らは婚約を契機に潰瘍性大腸炎を同時に発症した1夫婦を経験:した.症例は30歳,男性と27歳,女性の夫婦で1989年8月に婚約し,9月頃ほぼ同時に粘血性下痢を訴え,いずれも潰瘍性大腸炎と診断された.HLA検索では夫はA24,DR2,妻はA24,BW52,DR2と本邦において潰瘍性大腸炎との相関が指摘されているhaplotypeを有していた.以上より,自験例はその発症に婚約と結婚という精神的ストレスおよび免疫遺伝的因子の関与の可能性を示した症例と推察した.
  • ―内視鏡検査の役割について―
    須川 暢一, 大森 浩明, ANTHONY. L. JOSEPH
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2275-2276
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2277-2284
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 比企 能樹
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2285-2299
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡治療の特徴である侵襲性の少ないこと,反復して行なえることなどは,患者にとって大きなメリットとなっている.胃癌ことに早期胃癌に対する外科的治療と内視鏡治療の現状を明らかにすることで,早期胃癌の治療における内視鏡治療の臨床像を浮き彫りにしたいと考えた. 第一に外科の立場から,われわれの施設で行なった,2,072例の胃癌の手術成績すなわち5年,10年遠隔成績をリンパ節転移の有無での違いなどについて検討する.高齢者早期胃癌に限っては,外科手術後の状況を,入院期間,食事摂取状況,術後のボケの問題,術前術後のperformance status,術後合併症の有無について検討した. 第二に外科病理の面から,われわれの施設で手術を行なった胃癌症例の検討を行なう.単発早期胃癌手術症例631例の切除標本の病理組織学的検討を行い,リンパ節転移の有無について病変の大きさ,深達度,病巣内の潰瘍(瘢痕を含む)の有無等について,すべて自験:例をもとに述べた. 内視鏡的治療で根治可能な病変はリンパ節転移の無い症例であるべきである.内視鏡的治療の立場から,絶対適応と考えられるものは,(1)病変の大きさ:1.0cmφ以下,(2)内視鏡分類の隆起型,陥凹型で潰瘍を伴わないものということになる.以上,内視鏡診断所見の正確さがもっとも重要と考えた. また,早期胃癌内視鏡治療の現況として全国アンケート調査から,治療を行なった動機,癌の告知,治療方法,合併症等についても報告を行なった.
  • 工藤 進英
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2300-2303
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 小林 迪夫
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2304-2306
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1991 年 33 巻 10 号 p. 2307-2352
    発行日: 1991/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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