日本消化器内視鏡学会雑誌
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33 巻, 9 号
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  • 中山 裕一, 浅木 茂, 大原 秀一, 渋谷 大助, 金原 孝行, 加藤 勝章, 高橋 功, 豊田 隆謙
    1991 年 33 巻 9 号 p. 1999-2010
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     EUSによるSMTの良・悪性鑑別能を明らかにする目的で,上部消化管SMT症例71例のEUS所見と病理標本所見をretrospectiveに比較検討し,良・悪性鑑別指標の検討を行った.EUSにより得られた腫瘍の(1)大きさ,(2)腫瘍形,(3)発育型式および(4)内部エコーパターンの各所見と,切除標本の肉眼所見との対比では,EUSは(1)(2)(3)の各腫瘍所見について良好な診断能を有することが示された.しかし切除標本の肉眼所見と組織所見の比較検討ではこれら大きさ,腫瘍形および発育型式の各所見単独から特異的な悪性の指標は見出せず,従ってそのEUS所見単独では,良・悪性の鑑別は困難と考えられた.内部エコーパターンは高エコー型,中間型,低エコー型,無エコー型,不整混合型の5型に分類された.平滑筋肉腫では比較的高い頻度で不整混合型のエコーパターンや腫瘍内部の無エコー領域の所見を示した.しかし平滑筋腫や神経鞘腫にも同様の所見を呈する例が見られ,エコーパターンの所見も単独では特異的な悪性の指標とは判定できなかった.腫瘍の大きさと内部エコーバターンの組み合わせて良・悪性の鑑別を試み,(1)最大径20mm以上で中間型あるいは不整混合型のもの,および(2)最大径40mm以上で低エコー型のものをmalignant sign(MS)陽性,それ以外をMS陰性と条件設定したところ,感度92%,特異度84%の高い正診率が得られ,EUSによる良・悪性の鑑別に有用と考えられた.
  • ―判別分析を用いた自動診断の試み―
    橋本 洋, 斉藤 恵一, 中尾 京子, 千葉 素子, 加藤 明, 春木 宏介, 光永 篤, 村田 洋子, 鈴木 茂, 黒川 きみえ, 内山 ...
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2011-2018
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     すでに超音波内視鏡(以下EUS)像のテクスチャー解析により症例間及び疾患群間の数量的鑑別診断については報告した.今回はEUS像をテクスチャー解析した統計量の判別分析を行い各疾患の的中率を算出することでEUS像の数量的自動診断の可能性について検討した.検討したのは(1)胃粘膜下腫瘍の鑑別診断,(2)胃癌の線維化併存の診断及び間質量の診断の2点である.前者は平滑筋腫(LM)6例,迷入膵(AP)3例,胃悪性リンパ腫(ML)2例を対象とし,後者は胃癌9例で線維化併存例(fib)4例,髄様癌(med)2例,中間型(int)3例を対象とした.テクスチャー解析は濃度差統計法を行い,それらの統計量の判別分析を行った.その結果(1)粘膜下腫瘍3群間での的中率は61.5%であり,(2)胃癌組織構造の3群間の的中率は69.0%,であった.今回の検討は客観的評価の難しい腫瘍組織エコー像そのものを数量的に表すことで客観的に鑑別した.現在のところ的中率は60%~70%であるが,特殊な条件設定はせず通常の超音波内視鏡の施行法で得た結果であり,しかも腫瘍エコー像のみの解析から得た的中率であることの意義は大きいと思われた.さらに判別する統計量の選択,画像入力時の条件設定,画像処理法の改良により的中率が向上する可能性があり超音波内視鏡像による自動診断も可能と思われる.
  • 丹羽 寛文, 金沢 雅弘, 河野 俊彦, 川口 淳
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2019-2027
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     35歳以上を対象とした職域集検において,10年以上の長期に亘り経過追求された60例の十二指腸潰瘍症例を中心に,さらにこれらの症例を含む3年以上経過追求された272例について,その内視鏡所見の推移をフイルムについてレトロスペクティブに検討した. 単発,接吻潰瘍は追求期間中基本的にはそのままの形態で推移し,経過中再発再燃を繰り返し,その結果しだいに伸長して明らかな線状潰瘍に至った例は見られなかった. 線状潰瘍はこの対象群では初回観察時からすでに線状潰瘍として存在し,その多くはそのままの形態で推移したが,一部には経過と共にridgeの平坦化,あるいはridge上の瘢痕部分がわかりにくくなる例が認められた.このような症例は観察時期によっては線状潰瘍でありながら単発,接吻潰瘍と誤って判定される可能性があると考えられた.
  • 松本 利彦, 松本 文子, 橋本 稔宏, 何 国彦, 羽間 弘, 飯田 都, 水野 孝子
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2029-2037
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれが経験した薬剤性食道潰瘍を臨床的に検討し,その成因についても言及した. 70歳未満の対照群11例では,基礎疾患に感染症が多く,抗生物質をほとんど飲水なく服用し,1日以内に胸骨後部痛・嚥下時痛など疼痛を主訴として発症する症例が多かった.高齢者群(70歳以上)15例では,基礎疾患・起因薬剤が複数関与し,また,特異な発症・臨床経過を呈する症例が多かった.治療は保存的療法が有効で,予後良好な症例が多数を占めたが,高齢者群では死亡例,治癒遷延例を認めた.発症機序は個体側の要因は明らかにされつつあるが,起因薬剤の要因については,強酸性,高浸透圧・イオン濃度,溶解熱を除いて,不明な点が少なくなかった.本症の予防には,充分な飲水により確実に胃まで嚥下し,服用後すぐに臥床しないことが重要である.また,様々な薬剤により起こり得ることを常に念頭に置き,特に,高齢者では服用に対する厳重な指導・観察が必要と考える.
  • 井上 育夫, 更科 広実, 斎藤 典男, 布村 正夫, 中山 肇, 小田奈 芳紀, 白井 芳則, 大森 敏生, 滝口 伸浩, 幸田 圭史, ...
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2038-2043
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     下部進行直腸癌10例に対し42.6Gyの術前照射を施行し,照射前,10Gy,20Gy,30Gy,42.6Gy照射後および照射終了2週目の合計6回に内視鏡観察を行った.前処置はグリセリン浣腸のみを行い,内視鏡機種は電子スコープ(フジノン社製EPX-301EVC-M2)を使用した.また腫瘍の観察部位は腫瘍の大きさ,周堤の高さ,潰瘍底,易出血,管腔の大きさであった.照射20Gyより周堤の平低化,平坦化が認められ,30Gyより潰瘍底の凹凸不整が平滑な白苔に置き変わっていた.また腫瘍径も次第に小さくなり,照射終了後2週目には易出血性の軽減や管腔開大も認められた.以上の内視鏡的観察の結果術前照射療法においては30Gy以上の照射量が必要であり,照射終了後2週目に腫瘍の浮腫状変化の軽減が認められ,手術待機期間の重要性が示唆された.
  • 林 勝吉, 平田 一郎, 松本 恒司, 中川 憲, 高尾 雄二郎, 滝内 比呂也, 杉森 清孝, 安住 治彦, 有坂 好史, 高田 興, 田 ...
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2045-2051_1
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去12年間,当科で経験した腸型べーチェット病10例(不全型6例,疑い4例)の臨床像を検討し,さらに興味ある,レントゲン,内視鏡像を呈した症例を報告した.発症年齢は21歳から51歳まで平均35.8歳で,男6例女4例であった.べーチェット病の主症状は,口内アフタが10例全例,陰部潰瘍が7例,皮膚症状が6例とその出現率は高かったが,眼症状が出現した例はなかった.腹部症状は,腹痛が8例と大半を占めたが,下血が3例,下痢が2例みられ,胸痛が主体で腹部は不快感のみの症例も1例みられた.腸管の罹患部位別頻度は,小腸結腸型が6例と最も多かったが,結腸型が3例,小腸型が1例みられた.病変は,咽頭3例,食道1例,胃1例と上部消化管にも出現した.再発時,深部回腸の線状潰瘍と上行結腸のハウストラの消失傾向を認めた症例,回盲部の潰瘍以外に盲腸に輪状発赤の多発を伴った症例を興味ある所見を呈した症例として報告した.
  • 山本 博, 永山 恵子, 脇谷 勇夫, 千先 茂樹, 池田 弘, 川野 示真子, 横井 徹:, 福島 正樹, 松枝 和宏, 土居 偉瑳雄, ...
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2052-2061
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去10年間に当院で経験した17例の急性出血性直腸潰瘍について,その臨床像と内視鏡所見の特徴について述べた.急性出血性直腸潰瘍は重症基礎疾患を有する高齢者に無痛性の血便として発症する.女性14例,男性3例で平均年齢は71歳であった.基礎疾患として脳中枢神経疾患が9例と多く,そのうちわけは,脳梗塞5例,髄膜炎2例,脳出血1例,ミエロパチー1例であった.その他の基礎疾患としては大腿骨骨折2例,急性心筋梗塞1例,糖尿病性直腸膀胱障害1例,腎盂腎炎1例,慢性関節リウマチ1例があり,また悪性疾患としてAOSCを伴った胆管癌1例,大腸癌肝転移が1例であった. 直腸潰瘍は直腸下部に限局する地図状もしくは類円形の潰瘍で,多発例が多かった.潰瘍底に露出血管を認めた例が6例あったが,4例はHS-E局注により,2例は経肛門的結紮術により止血しえた.基礎疾患の軽快が得られれば直腸潰瘍は早期に治癒すると考えられた.
  • 田巻 知宏, 杉山 敏郎, 青木 繁雄, 河上 純彦, 近藤 吉宏, 星 秀樹, 矢花 剛, 谷内 昭, 奥瀬 哲, 若林 淳一
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2062-2067_1
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回,悪性リンパ腫との鑑別が困難であった食道原発と考えられる未分化癌の1例を経験した.症例は67歳,女性.嚥下時の疼痛を主訴として来院した.上部消化管バリウム検査および内視鏡検査の結果,中部食道および食道・胃接合部直下の小彎側に,周堤形成と中心潰瘍を伴う病変を認めた.生検の結果,悪性リンパ腫が強く疑われたが,リンパ球表面マーカーの検索および遺伝子解析によってもリンパ腫の確診は得られなかった.血清CEAが若干上昇していたため,CEAを免疫染色したところ,陽性所見が得られ,上皮細胞由来と考えられた.また,食道と胃の病変部の間の正常食道粘膜と思われる数カ所から生検を行ったところ,粘膜下に散在する腫瘍塊を認め,食道および胃病理組織像より食道未分化癌の胃への直接浸潤と考えられた.食道未分化癌については100例を超す報告があるが,未分化癌の発生母地などについて示唆に富む症例と思われるため,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 清崎 浩一, 根井 仁一
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2068-2071_1
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は78歳の女性で,前胸部痛のため入院.内視鏡検査で下部食道に巨大潰瘍を認めた.H2ブロッカーの投与にもかかわらず,改善が認められなかったため,proton pump inhibitorであるomeprazoleを使用した.Omeprazole使用後に行った食道内視鏡検査では,潰瘍の部位に一致して,半球状の隆起型瘢痕が認められた.胃潰瘍で隆起型瘢痕を形成することは知られているが,食道についての報告は本例が最初である.
  • 田村 瑞枝, 西澤 一晃, 横手 美智子, 花城 実, 久山 泰, 大沢 仁, 山中 正己, 横畠 徳行, 冲永 功太
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2072-2079
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     進行性全身性硬化症(PSS)患者には高率に消化管,特に食道病変を認める事が知られている.われわれは食道炎,食道潰瘍を繰り返し,食道狭窄をきたした症例の経過を約5年にわたり観察したので報告する. 症例は41歳の男性.昭和56年に皮膚生検にてPSSと診断した.昭和60年より食道炎,食道潰瘍を合併し,徐々に増悪した.平成1年12月より嚥下困難を訴え,平成2年3月にはほとんど摂食不能となり当科に入院した.患者は平成2年1月に心筋伝導障害も悪化し,心ペースメーカー植込術を施行している.心合併症も考慮し,下部食道の狭窄に対し,われわれは内視鏡的食道拡張術を施行した.術後,内視鏡的にもX線的にも現在に至るまで通過は良好である.PSSにおいて,強度の食道狭窄をきたす事は稀であるが,内視鏡的拡張術は本例のように合併症をもつ症例にも侵襲が少なく第一に選択されるべき治療法と考えられた.
  • 内田 俊之, 荒川 哲男, 河田 佳代子, 根引 浩子, 樋口 和秀, 中村 肇, 曽和 融生, 桜井 幹己, 小林 絢三
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2080-2088_1
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Strip biopsyにて内視鏡的に切除した胃カルチノイド腫瘍の2例を経験した.症例1は,胃体中部大彎に発生した16mm×18mmの山田II型を呈したいわゆる古典的カルチノイドで,生物学的悪性度は低く,また,組織学的に切除断端および脈管に腫瘍の浸潤が認められなかったことから完全切除と考えた.切除後1年3カ月を経るが,肉眼的,組織学的に同部に腫瘍の再発は認めていない.症例2は,胃体上部大彎前壁に発生した18mm×20mmの山田III型を呈したカルチノイド腫瘍で,切除断端に腫瘍細胞を認めなかったが,組織学的に内分泌細胞癌であり,生物学的悪性度の高いことから外科手術を行った.その結果,内視鏡的切除部位に腫瘍細胞の残存を認めなかったが,第1群リンパ節に転移を認めた.Strip biopsyが本症例の診断に有用であったが,症例1の古典的カルチノイドに対しては治療的にも意義があったと思われた.
  • 前田 裕伸, 渋谷 隆, 鰐渕 勉, 片柳 憲雄, 青野 高志, 佐藤 厳, 岩渕 三哉, 市田 文弘
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2089-2094_1
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は74歳の男性,嚥下困難にて初診,内視鏡検査にて,噴門部早期胃癌が疑われた.また全身に多発する青色ないし暗青色調弾性で,一部ゴム乳首様の皮膚血管腫を認め,bluerubberblebnevus症候群と診断された.単純胃全摘術が施行され,E-G接合部直下に13×12×4mmの1型,深達度sm,高分化型管状腺癌を認めた.術中,腹腔内諸臓器にも多発して海綿状血管腫を認めた.外国を含めて,胃癌を合併した最初の症例として報告した.
  • 山崎 康朗, 川船 隆史, 跡部 俊彦, 羽鳥 知樹, 住野 泰清, 杉本 元信, 安部 井徹, 佐藤 行彦, 野中 博子
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2095-2105
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は63歳男性.くり返す黒色便,貧血の原因精査目的で入院.内視鏡検査にて胃前庭部に散在する易出血性の発赤斑を認め,組織学的にdiffuse antral vascular ectasiaと診断した.エタノール局注による治療が効果ないため幽門側胃切除術を施行.切除胃の病理組織学的検索にて直径10mmと5mmのm癌を認めた.癌が術前診断できなかった理由として,粘膜不整に乏しいm癌が,色調の鮮やかな血管病変によりマスクされたことが考えられた.
  • 村北 肇, 平野 誠一, 水野 成人, 芦原 亨, 松井 亮好, 早雲 孝信, 水間 美宏, 向井 秀一, 趙 栄済, 安田 健治朗, 中島 ...
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2106-2113_1
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的超音波断層法(EUS)を応用することによって,術前の正確な診断が可能であった大腸リンパ管腫の2例を経験した.症例1は67歳の男性で,注腸X線検査および大腸内視鏡検査にて上行結腸に軟らかな粘膜下腫瘍を認めた.大腸EUSでは病変部の粘膜下層内に多数のecho free spaceを認めたが,血管造影検査にて異常を認めず,大腸リンパ管腫と診断した.内視鏡的ポリペクトミーにて切除された腫瘍は,15×14×13mmの海綿状リンパ管腫であった.症例2は45歳の女性で,腹部超音波検査および腹部CTにて左側腹部の多胞性嚢胞性病変を指摘された.注腸X線検査および大腸内視鏡検査にて嚢胞性の大腸粘膜下腫瘍も指摘され,大腸EUSおよび腹部血管造影にて下行結腸壁内外にわたるリンパ管腫と診断された.下行結腸切除術にて15×10×8cmの海綿状リンパ管腫が証明された.
  • 井上 和彦, 春間 賢, 豊島 仁, 田中 信治, 津田 敏孝, 山本 剛荘, 吉原 正治, 隅井 浩治, 梶山 梧朗, 藤田 粛
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2114-2119_1
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道表在癌1例,食道異型上皮3例に対してストリップバイオプシーを施行し,内視鏡的に切除した.食道癌の1例は治療目的で,異型上皮の3例はルゴール不染域の確診目的で行った.ストリップバイオプシーで切除した標本の最終病理診断は深達度epの中分化型扁平上皮癌1例,異型上皮3例(高度1例,中等度1例,軽度1例)であった.そのうち,食道表在癌1例と食道異型上皮1例は完全切除できた.残存のみられた食道異型上皮2例のうち1例は病理組織学的に高度異型上皮であったため,レーザー照射を追加した.ストリップバイオプシーによる最大切除片は12×9×4mmであり,その深さは粘膜下層までであった.いずれの4症例とも穿孔や出血などの合併症はみられず,安全に施行できた.ストリップバイオプシーは食道病変においてもその診断と治療上,有用な手技と考えられた.
  • 大川 清孝, 山田 英明, 進藤 嘉一, 青木 哲哉, 池田 雄子, 森吉 靖子, 大谷 健二郎, 正木 恭子, 後藤 智親, 木岡 清英, ...
    1991 年 33 巻 9 号 p. 2120-2127
    発行日: 1991/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     新しく開発されたエベレストメディカル社製バイポーラ(双極子)ポリペクトミースネアーを用いて,消化管ポリープ53個(25症例)を切除した.その使用経験をモノポーラ(単極子)との比較を中心に報告した.バイポーラでは電流は左右のワイアー間を粘膜面に沿って流れるため,熱エネルギーは表層に限局され深部への影響はモノポーラに比べはるかに少ない.バイポーラスネアーによるポリペクトミーは1)穿孔の危険が少なく大きな広基性ポリープの切除が可能である,2)ポリープ先端部が壁に接触しても安全にポリペクトミーが可能である,3)対極板がいらない,4)ペースメーカー装着者にも安全に行いうる,5)切断端の組織の挫滅が少なく組織学的検索に有利である,などの種々の長所がみられる.耐久性にやや難があるものの理想的なポリペクトミーシステムであり,今後急速に普及するものと思われる.
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