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川上 和彦
1992 年 34 巻 2 号 p.
307-315
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
家族性大腸腺腫症familial adenomatous polyposis(以下FAPと略す)は放置すれば100%癌化する遺伝性疾患である.予防的手術々式は様々であるが,切除範囲ではanal transitional mucosa(以下ATMと略す)を残すか否かが問題となる.つまりATMを切除すれば発癌の危険は減るが肛門の機能は低下する.この選択は特に若年者検査発見群で難しい.われわれは切除標本で直腸粘膜の微小腺腫を実体顕微鏡を用いて観察し,さらに直腸の背景粘膜の微小腺腫を,拡大内視鏡とわれわれが開発したvideomacroscopeを用いて観察した.腺腫密度により密生型と非密生型があり,後者ではATM部での腺腫が少なく,発癌の危険因子は両者で差があると考えられる.術式は発癌の可能性の高い粘膜を可及的に切除することと術後のquality of life(以下QOLと略す)の両面から考えられるべきであり,videomacroscopeはこの選択に有用であると考える.
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張 暁鵬, 中澤 三郎, 芳野 純治, 山雄 健次, 乾 和郎, 山近 仁, 印牧 直人, 渡辺 健一
1992 年 34 巻 2 号 p.
316-322
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
陥凹型早期胃癌90例の癌巣内潰瘍と癌浸潤について検討した.Ul(+)は全例の83.3%で,うち77.3%はUl-IIであった.粘膜下層内での癌巣内の線維叢形態は,粘膜下層の一部に線維叢を認める例をF-1,粘膜下層全層の例をF-II,線維叢と癌組織が混合し塊状になった例をF-IIIと分類し,さらにF-IIを扇状で,潰瘍が瘢痕か開放性によりF-II
1とF-II
2に,び漫性の例をF-II
3と分類した.m癌はF-I,F-II
1,F-II
2が多く,sm癌はF-II
3とF-IIIが多く認められた.sm層の癌浸潤様式と線維叢形態では,び漫浸潤はF-III,辺縁浸潤はF-IIが多く認められた.sm癌における癌浸潤様式と深さでは,辺縁浸潤に粘膜下層の浅部が多く,び漫浸潤に粘膜下層の深部までの例が多く認められた.以上の成績は超音波内視鏡像を解析する上で重要と思われた.
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―腫瘍径別の検討―
平田 健一郎, 辰口 治樹, 望月 環, 三谷 正信, 矢花 剛, 福田 守道
1992 年 34 巻 2 号 p.
323-332
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃平滑筋腫19例と胃平滑筋肉腫8例について超音波内視鏡(EUS)による超音波断層像を検討し,良・悪性の鑑別診断を試みた.腫瘍の最大径で両者を比較すると平滑筋腫では3.9±1.9cm,平滑筋肉腫では9.9±5.9cmで有意差(p<0.0005)を認めた.腫瘍の最大径別に3cm未満,3~8.9cm,9cm以上の3段階に分類し超音波断層像を検討した.3cm未満では7例中6例が平滑筋腫で,その超音波断層像は辺縁整,内部エコー均一(1例のみ不均川一),径1cm以上の嚢胞(-)で特徴的であった.また,9cm以上の大きな腫瘍は4例全例が平滑筋肉腫で径1cm以上の嚢胞を有していた.しかし3~8.9cmの範囲の腫瘍16例では超音波断層像の組合せで鑑別診断を試みても正診率は60%台に留まった.以上より,最大径3cm未満および9cm以上の腫瘍はEUSでほぼ的確に良・悪性の鑑別が可能であるが,3~8.9cmの腫瘍は鑑別が困難な場合があり,生検を含む積極的なアプローチが必要と考えられた.
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―小食道上皮内癌の発見のために―
星原 芳雄, 橋本 光代, 田中 達朗, 吉田 行哉, 早川 和雄, 福地 創太郎, 山本 敬, 粒良 邦彦, 海上 雅光
1992 年 34 巻 2 号 p.
333-341_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
prospectiveに内視鏡的に観察した564例中61例(11%)に1cm以下の食道小発赤斑を認め,年齢と共に頻度が増加する傾向がみられた.ルゴール染色では濃染するものは35例(57%),正染4例(7%),淡染10例(16%),不染12例(20%)であった.生検をおこなった25例中20例(80%)に炎症細胞浸潤あるいは基底細胞層の増生や乳頭の延長などの食道炎の所見が認められ,孤立性食道炎が多数存在することが示唆された.生検組織像との対比よりルゴール染色にて濃染あるいは淡染するもの,および不染でも辺縁に全周性にケバ様濃染像を認めるものは食道炎と考えられた.ルゴール不染で辺縁にケバ様濃染像のない1例は癌であり,一部のみにケバ様濃染像を認めた1例はdysplasiaであった.小発赤斑のうちルゴール不染で辺縁にケバ様濃染像を全く認めないか,一部のみに認められものを生検することにより,内視鏡的治癒の対象となる小食道癌を効率よく発見できる可能性が示された.
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寺下 史朗, 谷村 弘, 永井 祐吾, 上畑 清文, 瀧藤 克也, 一宮 源太, 小林 康人, 児玉 悦男, 道浦 準, 白井 康嗣
1992 年 34 巻 2 号 p.
342-351
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
他の消化管検査にて粘膜下腫瘍と疑われた49例に超音波内視鏡を施行し,その診断における有用性について検討した.その結果,壁外性圧迫や粘膜下腫瘍の存在診断は全例に可能であった.筋原性腫瘍・嚢腫・異所性膵・血管腫・脂肪腫については質的診断能は非常に良好であり,嚢腫や脂肪腫は確定診断がつけば引き続いて内視鏡治療を行った.しかし神経鞘腫は筋原性腫瘍との鑑別が困難であった. 筋原性腫瘍手術18例を再検討した結果,平滑筋肉腫と平滑筋腫との鑑別は,1)最大径30mm以上,2)辺縁不整,3)内部エコー不均一,4)無エコー領域の存在のうち3項目以上を有すれば強く肉腫を疑って積極的に外科治療を行うべきであるといえる.
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関 秀一, 木村 健
1992 年 34 巻 2 号 p.
352-362_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
われわれは非開腹的胆石治療の一端を担うPTCCSLを,手技の工夫,器具の考按により,安全,確実,容易な治療法に確立した.現在まで37例の胆嚢結石例にPTCCSLを施行し,重篤な合併症もなく,全例完全に採石し得た.胆嚢穿刺より結石除去完了までの必要日数は平均11.8日であり,PTCCSL施行回数は平均2.1回であった.結石除去後の経過観察期間は1~60カ月で,平均24.7カ月である.胆嚢機能は全例治療前の状態に復し,良好に推移している.しかし,再発は7例18.9%に認められている.癌,ポリープ等の出現は認められていない.開腹下胆嚢摘出術,及び腹腔鏡的胆嚢摘出術との比較では,PTCCSLはもっとも低侵襲的治療法である.しかし,繰り返し施行可能であるとはいえ,比較的短期間に再発が認められ,確実な再発防止対策がない現状では,PTCCSLは全身麻酔が不能なhigh-risk例が極めてよい適応である.
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石井 圭太, 三橋 利温, 今泉 弘, 内藤 吉隆, 芦原 毅, 大井田 正人, 安海 義曜, 西元寺 克禮
1992 年 34 巻 2 号 p.
363-371_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
過去10年間に当科にて経験した上中部食道潰瘍31例につき検討した.平均年齢は,42.1歳と下部食道潰瘍症例(平均58.5歳)に比し,比較的若年者に多く,男15例,女16例と性差は認めなかった.原因の明らかなものは17例で,薬剤によるものが12例と多く,その他,異物,放射線治療,飲食物および扁平苔癬によるものを認めたが,原因が不明のものも14例みられた.症状は,胸骨後部痛,つかえ感,嚥下痛が多かった.潰瘍の性状は,不整形,略円形,剥離型の3つに分類できた.不整形と略円形が,大半を占め,剥離型は4例のみであった.症状消失期間および内視鏡的治癒期間を比較すると,不整形と略円形では,ほとんど差を認めないのに対し,剥離型は早期に治癒する傾向を認めた.このように剥離型は,その特徴的な形態はもちろんのこと臨床経過においても,不整形及び略円形とは明らかに異なり,これは剥離型では病変がより表層にあるためと思われた.剥離型とした症例は,いわゆる剥離性食道炎の範疇に入るもので,本邦における剥離性食道炎50例につき併せて検討した.なお,同期間に経験した下部食道潰瘍130例との比較も行った.
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赤木 博, 伊勢谷 和史, 小笠原 宏行, 高顕 純平, 辻 秀治, 古谷 慎一, 佐藤 達之, 福田 新一郎, 堀井 良侑, 児玉 正, ...
1992 年 34 巻 2 号 p.
372-379
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
近年panendoscopeの普及により積極的に内視鏡検査が行われるようになり,従来比較的稀な疾患と考えられていた薬剤性食道潰瘍の報告例が増加している.現在までに当院において食道に潰瘍を認め,原因が薬剤性と判断したのは16例であり,男性8例,女性8例で,年齢は16歳から79歳まで,平均年齢48歳であった.原因薬剤は抗生剤11例,消炎鎮痛剤3例,塩化カリウム1例,鉄剤1例であった.全例胸やけ,胸骨後部痛が存在し,吐血は2例にみられた.16例中8例は就寝前に,7例は水なしで,2例は臥位にて薬剤を服用していた.潰瘍部位は中部9例,下部7例,潰瘍数は単発11例,多発5例であった.臨床経過は良好であったが,食道裂孔ヘルニア合併例は非合併例と比べて難治傾向にあった.また,LES圧や下部食道一次蠕動波高の低下などの食道機能異常が治癒遷延の一因と考えられた症例もあった.
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五十嵐 良典, 片桐 耕吾, 岸 秀幸, 長谷川 毅, 小川 聡, 星 一, 大橋 茂樹, 吉岡 秀樹, 高田 洋孝, 福本 学, 前谷 容 ...
1992 年 34 巻 2 号 p.
380-384_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
1990年1月より1991年4月までに経十二指腸的に截石した総胆管結石18例に親子式経口胆道鏡を行った.15例に胆嚢管内に挿入しえた.そのうちの3例は胆嚢頸部まで挿入しえた.螺旋部へは13例,平滑部へは全例挿入しえた.良好な内視鏡像のえられた12例で胆嚢管粘膜像を検討したところ,粘膜血管透見像は螺旋部まで挿入しえた10例全例に,平滑部に挿入しえた12例全例に認められたが,粘膜血管拡張像の合併を螺旋部で4例に,粘膜の凹凸像を螺旋部で2例に認めた.メチレンブルーによる色素法を4例に行い,粘膜模様について観察した.通常観察で平滑とした3例のうち2例は粘膜模様は均一であったが,1例は不均一であった.凹凸を認めた1例も粘膜模様は不均一であった.不均一部からの生検組織像は軽度の慢性炎症性変化であった.
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垂石 正樹, 蘆田 知史, 綾部 時芳, 村上 雅則, 斉藤 裕輔, 小原 剛, 原田 一道, 柴田 好, 並木 正義
1992 年 34 巻 2 号 p.
387-394_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
潰瘍性大腸炎の直腸病変に対する新しい局所療法としてBjörkらが報告したlidocaine gelの直腸内投与療法の効果を検討した.活動性の直腸病変を有する潰瘍性大腸炎6例に対し,2%lidocaine gel40ml/dayの直腸内投与を2週間施行し,治療前後の臨床症状,内視鏡所見,生検による病理組織学的所見を比較した.その結果,検討を行った全症例で臨床症状,内視鏡所見の改善を認めた.組織学的にも6例中4例に明らかな治療効果を認めた.副作用はみられなかった.この結果から,lidocaine gelの直腸内投与法は,UCの直腸病変に対し有用であるといえる.
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池田 直樹, 卜部 健, 種井 政信, 西村 浩一, 下田 敦, 松下 栄紀, 稲垣 豊, 金子 周一, 米島 学, 鵜浦 雅志, 小林 健 ...
1992 年 34 巻 2 号 p.
395-401
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
EIS施行歴を有する2症例に,腸管壊死を伴う広範な門脈血栓症の出現を経験した.症例1は,62歳,女性.予防的適応にて第1回EISを施行.6カ月後に腹部CT,超音波検査にて門脈本幹に壁在血栓を認めていた.2年6カ月後,増悪した食道静脈瘤に対し,第2回EISを施行.1週間後より腹痛出現,腹部レントゲン所見などより虚血性腸炎によるイレウスとして加療するも,3週後に死亡した.剖検では,門脈本幹から上腸間膜静脈に及ぶ血栓と小腸全体の出血性梗塞を認めた.門脈内には陳旧性血栓に加え,新鮮な血栓が広範に認められた.症例2は60歳,男性.昭和62年1月,食道静脈瘤破裂の後,待期的適応にてEISを施行した.約1年半後,下痢による脱水,発熱を契機に腹痛が出現,イレウスとして加療を行ったが2週間後死亡した.剖検では門脈本幹から上腸管膜静脈末梢にいたる新鮮な血栓を認め,腸管は出血性梗塞に陥っていた.両者における広範な門脈血栓の出現にはEISによる血行動態の変化などの関与が示唆された.
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田中 彰一, 山本 俊, 妹尾 知典, 中村 正基, 平原 佐斗司, 荒木 正人, 牧野 泰裕, 雫 稔弘, 藤田 保男, 三浦 弘資
1992 年 34 巻 2 号 p.
402-407_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
食道静脈瘤硬化療法(EIS)後の定期観察中に1年6カ月の期間をおいて異時性に多発した微小食道癌の1例を経験した.症例は52歳の男性,EISの1年6カ月後に門歯列より28cm,4時方向に直径2mm程度の食道癌を認め,充分なレーザー治療を行った.その1年6カ月後に今度は前病変の3cm口側,3時方向に直径2mm程度の食道癌を認めた.同病変は生検後1度見失われたが,4カ月後には再び観察可能な大きさとなり入院の上ホットバイオプシーを行い,その組織所見は扁平上皮癌であった.EISと食道癌発生の因果関係は不明であるが,今後このような症例が増えていくものと思われ,定期観察の際の詳細な観察が必要である.
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大西 勇人, 鋤柄 宏, 磯部 智明, 福富 達也, 祖父江 吉助, 早川 富博, 星野 信, 宮治 眞, 武内 俊彦
1992 年 34 巻 2 号 p.
408-415
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は74歳,農婦.鉄欠乏性貧血による眩暈,動悸にて入院.2回目の糞便虫卵検査で鉤虫卵を多数認めた.内視鏡検査にて胃角部から十二指腸下行脚に数匹の虫体を認めた.内視鏡的に摘出した虫体の形態的特徴によりアメリカ鉤虫と診断し,pyrantel pamoate投与にて駆虫し得た.鉤虫の胃寄生の観察例は文献検索上,本邦では1例のみであり,アメリカ鉤虫での報告例は見当たらなかった主内視鏡的虫体摘出は虫体の鑑別に有用であった.
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尾関 豊, 松原 長樹, 雑賀 俊夫, 市川 智章, 小山 明宏, 本間 光雄, 杉本 綱之, 小山 登, 鈴木 雅雄
1992 年 34 巻 2 号 p.
416-423
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は65歳,男性.定期の上部消化管内視鏡検査で食道表在癌を発見された.胸部中部食道の0-IIc型mm癌の診断で手術を施行したところ,胃穹窿部に限局性壁肥厚性病変,横行結腸に隆起型粘膜下腫瘍が発見された.非開胸食道抜去術,胃部分切除術,横行結腸切除術を施行した.食道癌は術前診断どおり,壁深達度mmの中分化型扁平上皮癌であった.胃と横行結腸の病変はともに中細胞型の濾胞型リンパ腫で,深達度ss,リンパ節転移陽性であった.横行結腸にはIIa様の多発病変が認められた.胃,横行結腸ともに消化管原発悪性リンパ腫のDawsonの基準を満たし,大動脈周囲にリンパ節腫脹を認めないことから,消化管原発の重複悪性リンパ腫と考えた.
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嘉村 亜希子, 迎 慎二, 太田 弘昌, 上遠野 淳, 塩谷 敏夫, 佐久間 秀夫, 森藤 隆夫, 粕川 禮司
1992 年 34 巻 2 号 p.
425-431_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
8歳時,皮膚粘膜色素沈着によって診断され,以後8年間消化管ポリープの経過を観察しえたPeutz-Jeghers症候群の16歳女性.初診時,胃ポリープを1個認めたが,12歳時の6か月間に27個に増加した.胃ポリープは半球状から有茎性の球状または分葉状で,その後の各々の発育速度は一定でなかった.8年間の経過中に,1個のポリープの自然脱落と1個のポリープ頭部の急速かつ不均一な発育を認めた.後者のダブリング・タイムは396.2日であった.大腸には2個のポリープが観察された.内視鏡下にポリペクトミーをおこなった.胃ポリープの組織像はHamartomatous polypおよびHyperplastic polypであった.大腸ポリープの組織像はTubular adenomaおよびHyperplastic polypであった.
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帆足 俊男, 宗 裕人, 小野 広幸, 津田 純郎, 八尾 恒良, 岡崎 正敏
1992 年 34 巻 2 号 p.
432-441
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
われわれは血管造影に引き続き動脈塞栓術(TAE)にて止血に成功した大腸angiodysplasiaの2例を経験したので報告する.両症例とも繰り返す下血を主訴に来院し,症例1は右結腸動脈末梢に,症例2は上直腸動脈末梢にangiodysplasiaを認め,2.2French,150cm Tracker 18 catheterを用いて超選択的にTAEを施行した.TAE後下血は消失した.われわれが調べた限りでは,本邦では本報告以前にTAEにより治療した大腸のangiodysplasiaの症例報告はみられない.
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藤森 芳史, 赤松 泰次, 松尾 恭介, 長谷部 修, 上條 寿一, 武川 健二, 酒井 宏, 鈴木 章彦, 五十嵐 有規子, 宮林 秀晴, ...
1992 年 34 巻 2 号 p.
442-446_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は30歳,女性.妊娠16週目に粘血便を訴え当科を受診.大腸内視鏡検査にてS状結腸に亜有茎性隆起性病変を認め,生検でGroup5と診断された.内視鏡所見より早期癌と考え,安定期に入った22週目に内視鏡的切除術を施行した.病理組織学的にはわずかに粘膜下浸潤を認める高分化腺癌で,脈管侵襲はみられなかったためそのまま妊娠を継続した.38週目女児を出産後,追加手術を行ったが,リンパ節転移や局所の遺残は認めなかった.
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小村 幹夫, 田中 雅夫, 小川 芳明
1992 年 34 巻 2 号 p.
447-454_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
4年後のERCPで胆管癌が発見された膵胆管合流異常の症例を報告する.69歳,女性.4年前,無石胆嚢炎のため胆嚢摘出術を某医で受けた際,術前のERCPで合流異常が描出されていた.総胆管は全体的に拡張していたが,局在病変は認めなかった.平成元年8月より右季肋部痛,全身倦怠感が出現し,精査の結果中部胆管癌と診断され,胆管切除術が施行された.本例は,合流異常と胆管癌の関連の時間的要因を示す点で興味深く思われた.
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味村 俊樹, 小林 正則, 下山 省二, 布村 健一, 河原 正樹, 安田 秀光, 酒井 磁, 倉本 秋, 伊原 治, 大原 毅
1992 年 34 巻 2 号 p.
455-460_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は62歳,男性.集団検診で便潜血反応陽性を指摘され,二次検診の大腸内視鏡検査で下行結腸に腫瘍が認められ,当科に紹介された.当科での大腸内視鏡検査で下行結腸に表面平滑,分葉状で内腔をほぼ占拠する腫瘍を認め,生検から悪性リンパ腫と診断した.注腸造影では下行結腸に約12cmにわたる壁の不整,腫瘍像を認めた.手術は腫瘍が膵尾部近傍の脂肪織まで浸潤していたため左半結腸切除,膵尾部・脾合併切除術を施行した.摘出した腫瘍は13.5×10.5×5cm大で赤色調,表面平滑,比較的軟らかく潰瘍形成はなかった.組織学的にはnon-Hodgkin lymphoma, follicular, medium-sized cell type(LSG分類)で,免疫組織化学染色上はλ,IgMのmonoclonal B cell lymphomaであった.患者はその後35カ月間再発なく生存中である.大腸原発悪性リンパ腫の好発部位は盲腸と直腸で,下行結腸は極めて稀であり著者らが調べ得た限りでは本症例が本邦で6例目である.
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佐藤 隆啓, 信田 亜一郎, 長川 達哉, 及川 由美子, 渡辺 雅男, 夏井 清人, 栃原 正博, 宮川 宏之, 小井戸 一光, 今村 哲 ...
1992 年 34 巻 2 号 p.
461-466_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は58歳男性で,腹部膨満感を主訴に入院した.腹部CT,腹部エコーで腹水貯留を認め,腹腔鏡検査で黄白色の小腫瘤と腫瘍塊を壁側,臓側腹膜に認めた.腹腔鏡下生検により悪性腹膜中皮腫と診断した.
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佐藤 正樹, 白崎 敬二, 渋谷 明隆, 松木 茂樹, 柴田 久雄, 西元寺 克禮, 加賀田 豊, 奥平 雅彦
1992 年 34 巻 2 号 p.
469-476_1
発行日: 1992/02/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
原発性胆汁性肝硬変症(PBC)の腹腔鏡検査で,肝表面に粟粒大の白色結節をみることがある.そのような結節が存在する症例では,肝臓の他の部位からの深部針生検によって門脈域の肉芽腫や胆管破壊像を認めることが多いが,今日までのところ結節の狙撃鉗子生検所見についての報告はない.われわれは,上記の白色結節を認めた2症例につき,その狙撃鉗子生検を施行すると共に他の部位からの深部針生検を行い,両者の病理組織学的所見を比較検討した.両症例とも,結節の狙撃生検部位には明瞭な肉芽腫形成と著明な胆管の変性・破壊像が認められた.これに対し,深部針生検肝組織には,肉芽腫のみならず,胆管の変性・破壊像もなく,PBCの特徴的所見を欠いていた.病理診断は,狙撃生検肝所見よりScheuer I期とした.この肝表面の白色結節は,早期PBCの特徴的変化の一つと考えられ,これの狙撃鉗子生検の診断的重要性を強調した.
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