日本消化器内視鏡学会雑誌
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34 巻, 6 号
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  • 河野 辰幸
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1237-1251
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     通常観察用内視鏡の鉗子孔から探触子を挿入して使用するSONOPROBE SYSTEMは周波数20MHzと分解能に優れ,直視下の走査により内視鏡観察部分の超音波断層像を得ることができる.しかし,食道においては対象部位との間に超音波伝達物質を介在させることが容易でなく,また,心拍動,呼吸・蠕動運動などのため,常に超音波を垂直入射させることも困難である.このため,専用の透明オーバーチューブを試作したが,食道壁は生体内においても超音波走査の75%において9ないし11層と,従来の検査法に比しより精密に,しかも組織ルーペ像に近く描出された.この超音波層構造については,正常食道部分における組織像との対比や,切除食道の粘膜下層へgelatinを注入しての検討などからみて,粘膜筋板に由来する層の描出されることが確認された.また,表在癌の検討からも,粘膜筋板への癌浸潤をはじめ粘膜表面での凹凸や癌部分の厚さの評価など,客観的で有用な情報の得られる事が示された.
  • ―内視鏡的レーザードップラー血流測定法を用いて―
    三吉 博, 四方 淳一, 戸倉 康之
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1252-1257
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道粘膜面組織血流量を細径内視鏡とレーザードップラー組織血流量計を用いて臨床的に検討した.対象は食道に疾患をもたない健常者,逆流性食道炎患者,進行胸部食道癌患者,食道手術後頸部食道良性吻合部狭窄患者とした.健常食道の粘膜面組織血流量は口側ほど低値を示したが,全体としては良好な血流の存在が確認された.逆流性食道炎のびらんないし潰瘍部の粘膜面組織血流量は健常食道と差はなかった.進行胸部食道癌の病変部と食道手術後頸部食道良性吻合部狭窄の吻合部では健常食道に比し粘膜面組織血流量は有意に低値を示し,各々の病態との関連が注目された.
  • 貝瀬 満, 小泉 博史, 橋本 国男, 田中 重之, 高橋 勇三, 小林 義隆, 西村 誠
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1258-1264
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     ヒトでは加齢に伴って胃腺境界が口側に移動し,胃底腺領域が退縮することが知られているが,疾患による胃底腺領域の広さがどの様に変化するか明らかでない.そこで,内視鏡下鉗子生検材料の組織学的所見に基づいて,胃底腺の広さを示す尺度となるIndex of Oxyntic Gland Area(IOGA)を考按し,慢性腎不全血液透析(HD)患者の胃底腺領域の広がりを検討した.HD群(39例,平均年齢53.6歳)及び健常対照群(31例,平均年齢55.2歳)の10GAは各々4.30±1.31,3.27±1.23(mean±S.D.)であり,HD群は有意(p=0.0013)に広い胃底腺領域を有していた.また,過半数のHD患者の胃底腺粘膜はいわゆる内視鏡的肥厚像を呈していた.HD患者のIOGAと各因子の相関関係を検討したところ,IOGAと血清ガストリン・年齢・人工透析導入年齢の間には有意な負の相関がみられ(P<0.001,P<0.05,P<0.01),IOGAと人工透析実施期間との間には正の相関の傾向を認めた(P<0.1).これらの結果は,1)HD患者は有意に広い胃底腺領域を有すること,すなわちその年齢に比して'若い胃'を有すること,2)HD患者にみられる高ガストリン血症は,HD患者が若い胃を有する原因とは考えにくいこと,を示すものと考えられた.EGFなど胃底腺粘膜に対してtrophic actionを有する因子やHelicobacter pyloriなど慢性胃炎の惹起因子の関与について,今後更に検討する必要があると考えられた.
  • 大川 清孝, 青木 哲哉, 池田 雄子, 森吉 靖子, 大谷 健二郎, 木岡 清英, 進藤 嘉一, 宋 健二, 山田 英明, 針原 重義, ...
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1265-1273
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     肝硬変患者を除く大腸内視鏡検査を受けた患者を対象として大腸vascular ectasia(VE)に関するprospec-tiveな検討を行い以下の結論を得た. 1.2年4カ月間にtotal colonoscopyを施行した430例中13例,3.0%にVEが存在した.2.VE症例の年齢は30~91歳,平均71歳であり,他症例の平均54歳に比べ有意に高齢者に多かった.3.存在部位は右側結腸に高率にみられ,単発例が多かった.4.性と年齢をマッチさせたコントロールを用いた基礎疾患の比較ではVE群で慢性心不全,脳梗塞が有意に多ぐみられた.5.内視鏡像は構造が不均一および辺縁が不整なものがやや多くみられ,ほとんどが平坦であった.6.出血症状は2例のみで85%が無症状であったが,従来考えられていたよりもVEが高率に存在するため,今後出血例も欧米のように増加していく可能性が示唆された.
  • 小林 研介, 上野 真弓, 水野 嘉夫, 浜田 慶城, 緒方 晴彦, 岩男 泰, 亀谷 麒与隆, 日比 紀文, 土屋 雅春
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1274-1282_1
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     十二指腸メラノーシス4例において,拡大内視鏡施行例,剖検例,若年者例を経験し,臨床像,内視鏡所見,組織化学所見,電顕所見,電子X線プローブ分析につき,過去の報告例とあわせて検討した. 3例は,高齢者で,その内2例は,慢性腎不全を伴っていた.他の1例は,23歳で生来難聴で,習慣性嘔吐があり,便秘薬を多量に服用していた.内視鏡所見は,黒色またはやや褐色調の症例があり,球部に色素沈着は濃く,下行脚の肛門側に行くに従い薄くなっていた.拡大内視鏡では,絨毛の辺縁より内部に,絨毛の基部より先端部に,強く色素沈着を認めた.色素は,粘膜固有層の主にマクロファージ内に存在し,電顕では,electrondenseな物質で,各々の症例で,大きさや形態が異なった.電子X線プローブ分析では,鉄またはイオウのみを含む症例と,両者を含む症例があり,同じ内視鏡所見を示しても沈着物の由来が,異なる事がわかった.
  • 田中 正樹, 細川 治, 山脇 優, 山道 昇, 三崎 明孝, 中川 公三, 武田 孝之, 谷川 裕, 渡辺 国重, 津田 昇志, 山崎 信
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1283-1291
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回,当院における腺腫と癌のポリペクトミー症例1,118例中,大腸ポリペクトミー後に追跡検査を行い得た376症例を対象に,大腸ポリペクトミー後の追跡検査の回数,時期,発見病変等について検討を行った. 追跡検査による新生病変発見率は39.4%(腺腫36.9%,癌2.4%)であり,新生病変は回数を重ねるにしたがって低異型度の小さな深部病変となる傾向があった.初回病変が(1)多発,(2)高異型度,(3)大きい,(4)有茎性の病変,(5)男性,(6)高齢の症例では新生病変発見率が高かった.また初回病変が(1)高度異型腺腫か癌と(2)大きさが20mm以上の病変,(3)70歳以上の症例では癌発見率が高かった. 追跡症例の予後は良好であり,追跡検査間隔は,まず見逃し病変をなくすために1年以内に行い,その後2-3年間隔と広く,しかし長期間にわたって行う必要があると考えられた.
  • 真口 宏介, 小原 剛, 小池 裕二, 斉藤 裕輔, 北守 茂, 柴田 好, 山崎 裕之, 内海 真, 佐藤 健誠, 山野 三紀, 有里 智 ...
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1292-1305
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     膵癌の早期診断を目標に膵癌に対する内視鏡的膵生検(Endoscopic Pancreatic Biopsy: EPB)の臨床成績につき検討した. 膵管癌症例のEPB癌陽性率を膵管像からtype別に分類し比較検討した結果,obstruction群で65%,stenosis群79%,全体では54例中38例71%であった.陰性例の検討からEPB鉗子の開発・改良を行った. 陽性率の向上には,詳細な膵管像の描出(選択的膵管造影)とEPB鉗子の使い分けと複数本の併用が重要であり,膵癌の早期発見・早期診断のためには,(1)スクリーニング検査としてのERPの確立(2)より詳細な膵管像の描出(3)的確な生検法の確立が必要である.
  • 吉田 直哉, 定本 貴明, 杉本 元信, 久保 修一, 羽鳥 知樹, 加藤 太, 柴田 実, 上野 幸久, 安部井 徹
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1306-1312
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     C型肝炎ウイルス(HCV)の有無によるアルコール性肝障害(ALD)の腹腔鏡肝表面像の違いを解明するために,HCV抗体陽性ALD23例と陰性ALD84例を比較検討した.その結果,HCV抗体陽性群は陰性群に比べ小陥凹の多在,点状白色紋理,赤色紋理,大小結節などウイルス性の特徴および被膜混濁が高率に認められた.これに対して,陰性群は陽性群に比べ格子状白色紋理,肝右葉下面の露出,黄褐色調が高率に認められた.以上,上記所見より両群の鑑別は可能と考えられた.しかし,陽性群で腹腔鏡像からアルコール性肝線維症(ALF)とした例に組織診断との不一致が目立った.陽性群23例中組織学的にmicronodular cirrhosisやALFなど病変の主体がアルコール性と思われる例が8例(35%)認められたことより,HCV抗体陽性ALDにおいても主たる肝病変の診断には腹腔鏡検査は重要と考えられた.
  • 水田 正雄, 横山 泰久, 横山 功, 菊池 学, 大城 宏之, 野浪 敏明
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1313-1317_1
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的大腸ポリープ切除術時の切除断端からの出血に対し,田伏らが開発した内視鏡的マイクロ波凝固止血法を用いた.ポリープ切除術直後の拍動性出血3例,滲出性出血6例およびホットバイオプシー後の7日目の滲出性出血1例の合計10例のポリープ切除断端にマイクロ波球状電極を用い,50watt×5~15秒の条件で1~5回通電して,全例止血に成功した.最近では,高周波スネア法によるポリープ切除時に通電による熱凝固が不十分と思われた症例に対して,術直後に出血が認められなくても切除断端に本法を施行して後出血を予防している.大腸ポリープ切除後の出血の場合,エタノール局注法では大腸管腔が狭く,ファイバースコープが直視型であるため切断面を正面視できず,的確な注入ができないことがある.本法では,切断面を正面視できなくても球状電極の先端を切断端に接触させることで確実な凝固止血が期待できる.本法は,内視鏡的大腸ポリープ切除術に伴った出血の治療及び後出血の予防に対してエタノール局注や他の方法よりも比較的容易かつ安全確実に行ないうる優れた止血法であると考えられた.
  • 岡田 俊英, 竹田 廉男, 増永 高晴, 大森 俊明, 善田 貴裕, 竹田 亮祐
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1318-1323
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡操作にて特異な食道病変の経過を示した劣性栄養障害型先天性表皮水疱症(以下先天性表皮水疱症)の1例を報告する.症例は41歳男性.本疾患に貧血を合併し内視鏡検査にて食道入口部にびらん,潰瘍を伴う狭窄性病変を認めた.再検査の際,生検部位に一致して血腫を生じ内視鏡擦過によるびらんを認めた.本疾患では潰瘍瘢痕からの食道狭窄,食道癌の発生が知られ,内視鏡検査にあたり慎重な対応が必要と考えられた.
  • 西尾 彰功, 上田 俊二, 大熊 稔, 酒井 正彦, 山本 富一, 梶山 徹, 高鍬 博, 洲崎 剛, 羽白 清, 兼松 雄象
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1324-1331
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     年半にわたり内視鏡的に経過観察し,経過中病変部の表面粘膜を焼灼後短期間に増大を見た胃のInflammatoryFibroid Polyp(以下IFP)の1例を報告する.症例は56歳男性.昭和56年近医の胃透視にて胃ポリープを指摘され,昭和58年5月より本院で経過観察されてきたが大きさに変化は見られなかった.昭和60年8月内視鏡的に切除を試み,表面粘膜の焼灼により3日後に腫瘤の脱落と潰瘍形成を見た.しかし同年10月には潰瘍部は山田I 型の隆起となり,昭和61年11月には2cm径の山田III 型病変に増大してきたため手術を施行,組織学的にIFPと診断された.本症例では潰瘍形成による炎症に反応して病変が増大したものと考えられた.
  • ―本邦報告例の文献的考察―
    丸岡 彰, 千々岩 芳春, 三澤 正, 名和田 新, 下川 麻理子, 田添 明彦, 高橋 光, 本松 利治, 藤村 隆
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1332-1340_1
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は58歳,女性.胃内視鏡検査で胃体上部前壁の粘膜下腫瘍が2年間で増大し,超音波内視鏡検査で固有筋層由来の腫瘍が漿膜側へ発育し肝への浸潤所見を認め,悪性腫瘍が疑われた.手術の結果,腫瘍は肝左葉へ浸潤し,腹膜への播種性転移を認め,組織学的に悪性平滑筋芽細胞腫と診断された.大きさは23×23×10mmで,中央に潰瘍を有する内外発育型であった.本症例は他臓器への浸潤・転移を認めた本邦悪性例中最小のもので,超音波内視鏡検査施行例の第1例目である.
  • 廣岡 大司, 大地 宏昭, 西原 英樹, 片岡 伸一, 圓尾 隆典, 小林 晃, 山本 博, 橘 尚吾
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1342-1348_1
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
     十二指腸の形態異常とそれに加え幽門輪直下に十二指腸乳頭が開口していた2症例を経験したので報告した. 症例1はタール便を主訴として来院し,緊急上部消化管内視鏡検査により,出血源は胃潰瘍と判明したが,幽門輪から1cm前後に楕円形の発赤を伴う小隆起を認め,ERCPで十二指腸乳頭と診断した.2回行った胃十二指腸透視において十二指腸下行脚は大きく左右に移動し,移動性十二指腸と考えられる所見であった.症例2は貧血と下肢の浮腫を主訴として来院し,緊急内視鏡により,幽門部に萎縮性過形成性胃炎と易出血性を認め,症例1同様に幽門輪近傍の乳頭をERCPで証明した.胃十二指腸透視では十二指腸は十二指腸下行脚の下部にかけて嚢状に拡張し,Megaduodenumの所見と考えられた. 出血源の検索により発見した,十二指腸乳頭位置異常に,十二指腸形態異常,走行異常を合併した症例である.十二指腸の形態異常や走行異常などの報告は比較的多いが,十二指腸乳頭位置異常を合併した症例の報告はなく,今後この様な症例に対し,乳頭の位置異常を念頭において検索を進めるべきと考えられた.
  • 廣岡 大司, 大地 宏昭, 西原 英樹, 片岡 伸一, 圓尾 隆典, 小林 晃, 山本 博, 橘 尚吾
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1343-1348_1
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/19
    ジャーナル フリー
     十二指腸の形態異常とそれに加え幽門輪直下に十二指腸乳頭が開口していた2症例を経験したので報告した. 症例1はタール便を主訴として来院し,緊急上部消化管内視鏡検査により,出血源は胃潰瘍と判明したが,幽門輪から1cm前後に楕円形の発赤を伴う小隆起を認め,ERCPで十二指腸乳頭と診断した.2回行った胃十二指腸透視において十二指腸下行脚は大きく左右に移動し,移動性十二指腸と考えられる所見であった.症例2は貧血と下肢の浮腫を主訴として来院し,緊急内視鏡により,幽門部に萎縮性過形成性胃炎と易出血性を認め,症例1同様に幽門輪近傍の乳頭をERCPで証明した.胃十二指腸透視では十二指腸は十二指腸下行脚の下部にかけて嚢状に拡張し,Megaduodenumの所見と考えられた. 出血源の検索により発見した,十二指腸乳頭位置異常に,十二指腸形態異常,走行異常を合併した症例である.十二指腸の形態異常や走行異常などの報告は比較的多いが,十二指腸乳頭位置異常を合併した症例の報告はなく,今後この様な症例に対し,乳頭の位置異常を念頭において検索を進めるべきと考えられた.
  • 加藤 智惠子, 佐藤 邦夫, 狩野 敦, 藤野 靖久, 大沢 一嘉, 菅原 光宏, 田澤 秀樹, 折居 正之, 佐藤 俊一, 高橋 真, 新 ...
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1349-1357
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     68歳男性.胃集検で異常を指摘され当科を受診した.胃内視鏡検査で胃体中部小彎後壁寄りに薄い白苔を伴なうやや不整形の潰瘍を認めた.生検ではGroupIIであった.H2-blockerと粘膜防御剤により1カ月後には同部位の潰瘍は瘢痕化した.6カ月後の内視鏡検査では同病変は表面凹凸不整で,わずかに白苔を伴なった隆起性病変となっており,生検でGroup V,tub 1であった.初診時の生検を見直したところGroupIVと訂正され,したがって当初よりIII型早期胃癌と考えられた.切除標本では山田III型の隆起(32×23mm)で,隆起基底部周辺粘膜は浅い陥凹(32×30mm)を呈し,I+IIc型が考えられた.組織学的には隆起は乳頭状腺癌からなり,深達度は茎部でsm,茎周囲の浅い陥凹面はmであった.短期間に陥凹型から隆起型へ形態の変化を来したきわめて稀な症例であるが,H2-blockerの影響を考慮するうえで,貴重な症例と考えられた.
  • 外山 久太郎, 野登 誠, 渡辺 隆司, 本間 二郎, 近藤 一英, 菊池 新, 内藤 吉隆, 佐野 仁勇
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1358-1363_1
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     57歳,男性の虫垂・S状結腸瘻について報告した.大腸鏡検査では瘻孔部にmucosal bridgeとその肛側に小憩室,直腸にリンパ瀘胞過形成が認められた.臨床症状は一過性の便通異常(便柱が細い)以外に著変なし.病理組織所見では軽度の炎症細胞浸潤と線維化が認められ慢性虫垂炎が疑われたが,確定的ではなかった.またmucosal bridgeの形成は無症候性のproctitis(colitis?)による可能性も示唆されたが,確証は得られなかった.
  • 藤井 常志, 田屋 登康, 松本 昭範, 西村 克人, 高橋 篤, 小原 剛, 並木 正義, 鈴木 知勝
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1364-1371
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     嚢胞内と腹腔内に出血をきたした膵仮性嚢胞の1例を経験した.症例は50歳の男性で1991年2月,突然の激烈な上腹部痛を主訴に来院した.腹部超音波・CT検査所見で膵体部から腹腔内に連続する内部不均一の嚢胞性腫瘤と腹水を認めた.腹腔穿刺により血性腹水を確認した.出血部位確認のため腹部血管造影検査を施行したが,明らかな出血部位は確認できなかった.ERCPで膵体部嚢胞から腹腔内嚢胞へ造影剤の漏出を認めた.以上の所見より膵仮性嚢胞の破裂と診断し,当院外科で膵体尾部脾合併切除術を施行した.開腹時,嚢胞内および腹腔内に凝血塊を認めた.術後経過は良好で術後21日で退院した.
  • ―内視鏡所見と抗赤血球抗体の消長を中心に―
    綾部 時芳, 蘆田 知史, 垂石 正樹, 斉藤 裕輔, 渡邊 真司, 高橋 邦幸, 小原 剛, 柴田 好, 並木 正義
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1372-1378_1
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は27歳の女性.10年の期間をおいて再燃した全大腸炎型の重症な潰瘍性大腸炎例である.頻回の下血が続くため1991年10月8日からTPNと1日SASP3gおよびprednisolone40mgの内服を始めた.この患者はクームス試験陽性で血中に抗赤血球自己抗体(IgG)を有していた.症状の改善が得られなかったので10月18日からステロイドパルス療法を行った.hydrocortisoneを1g/日点滴静注し,3日を1コースとして3コース施行した.パルス療法後ただちに臨床症状と大腸内視鏡所見の著明な改善をみた.また,抗赤血球抗体の減少が確認された.
  • 坂田 泰志, 木須 達郎, 赤坂 精隆, 藤崎 純士, 平野 正弘, 田中 潤一, 岩切 龍一, 小山 孝則, 坂田 祐之, 徳永 蔵, 森 ...
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1379-1385_1
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は54歳女性で,主訴は吐血・黄疸.内視鏡検査で十二指腸球部に潰瘍を有する隆起性病変を認め,生検組織よりびまん性中細胞型悪性リンパ腫と診断した.CT・PTCでは十二指腸球部を中心に膵頭部,肝門部に及ぶ腫瘤像を呈していた.化学療法(COP-BEAM)と放射線療法で完全寛解を得,22カ月後の現在再燃をみていない.十二指腸原発悪性リンパ腫の報告は本邦で28例で,このうち術前に診断できたものは本例を含め6例に過ぎない.
  • 川瀬 芳人, 竹村 俊哉, 井垣 直哉, 八十 新治, 北村 英雄, 橋本 利彦
    1992 年 34 巻 6 号 p. 1386-1395
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     切除不能の悪性胆道狭窄2例に対しGianturco型expandable metallic stent(EMS,Zstent)を経乳頭的に挿入し内瘻化を試みいずれも成功した.症例1は胆嚢を原発とし左右肝内胆管,総肝管及び総胆管まで浸潤する悪性腫瘍でありZ stentを挿入,60日後に原疾患そのものの進展により死亡するまで良好な開存性が維持できた.症例2は肝門部に位置する腫瘍で左肝内胆管が個々に断裂していたため,外側枝にダクロンファブリックで外張りしたZ stentを挿入,現在まで約90日間経過しているが,臨床経過は良好である.その間以前にはなかった右肝内胆管から総肝管までの狭窄が出現,Z stentを追加挿入したが,30日後の現在も開存性は順調である.EMSは従来のチュービング法に比し大口径によるドレナージが可能であり,特にZ stentでは多くの優れた点を有しているが経乳頭的挿入は未だ報告がなく,今回示した2例により今後は内視鏡的内瘻化法の選択がさらに拡がるものと考える.しかし,腫瘍の増殖による閉塞に関しては,症例2に使用したcovered stentを含め今後十分に検討しなければならない点が残されている.
  • 1992 年 34 巻 6 号 p. 1396-1519
    発行日: 1992/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 1992 年 34 巻 6 号 p. 1537
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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