日本消化器内視鏡学会雑誌
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38 巻, 10 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 村島 直哉, 荒瀬 康司, 池田 健次, 茶山 一彰, 斎藤 聡, 鈴木 義之, 坪田 昭人, 鯉田 勲, 小林 正宏, 熊田 博光
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2379-2385
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     死亡まで観察できた肝細胞癌181例の,癌の門脈本幹浸潤 (Vp3) と食道静脈瘤内視鏡所見との関係を検討した.初回入院時Vp3は27例で,F1RC(+)は4例(14.8%),F2RC (+) 以上は13例 (48.1%) であった.初回Vp3 (-) では,F1RC (+) は8例 (5.2%) , F2RC (+) 以上は26例 (16.9%) であり,前者の食道静脈瘤が高度であった.初回Vp (-) ・死亡時Vp3 (+) は64例で,このうち初回F1RC (-) だった29例では,Vp3になってからRCが陽性化した例は15例 (51.7%) と多く,Vp3以前に陽性化した例は4例 (13.8%) と少なかった.初回静脈瘤のなかった16症例では,Vp3後に10例 (62.5%) に静脈瘤出現をみた.Vp3前に予防的硬化療法をおこなった13例ではVp3後の静脈瘤の破裂は3例 (23.1%) ,Vp3後に初めて予防的硬化療法を施行した7例ではその後の出血は5例 (71.4%) と高率だった.無治療例の出血率は81.3%であった.以上,肝癌における早期からの予防的治療の有用性が示唆された.
  • 佃 博, 山口 肇, 白尾 国昭, 近藤 仁, 山尾 剛一, 横山 正, 小野 裕之, 福田 治彦, 小黒 八七郎, 加藤 抱一, 渡辺 寛 ...
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2386-2390
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道表在癌自験例212例のうち表層拡大型食道癌 (superficial sprcading carcinoma of the esophagus:SSCE) の定義を満たす14症例 (6.6%) に対し臨床病理学的検討を行った.他の食道表在癌に比べて,SSCEは腫瘍径は大きいにもかかわらず,深達度・脈管侵襲率・生命予後に差はなく,リンパ節転移率は有意に低かった (p=0.03) .また多中心性に発生する傾向がみられ,多中心発生群は単中心発生群より腫瘍径が有意に大きい (p< 0.01) にもかかわらず,深達度・リンパ節転移率・脈管侵襲率に差はなかった.このような表層進展性や多中心性から,多発癌と同様,SSCEでも食道粘膜が当初より広範囲な面を持って異型性を示し,それが次第に異型性を増し,表層拡大型の上皮内癌に発展し,その中で悪性度の高い部分が独自に深部浸潤を起こしてくることものと推測された.
  • 杉山 幸一, 中山 裕一, 大原 秀一, 関根 仁, 森山 聰, 木村 義人, 浅木 茂, 豊田 隆謙
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2391-2400_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは,EUSによる食道・胃静脈瘤の検討を行い壁内外血管構築像の解析から,その血行動態をtypical,atypicalの2つにパターン分類し,それに基づく治療法の選択基準を考案し本学会誌で報告した.本報では,この基準に則り新たな症例に対してprospective studyを行い,治療法の選択におけるEUSの有用性を検討した.対象63例の治療内容はEIS単独39例,EVL,EIS併用11例,CA,EIS併用3例,B-RTO10例であった.治療成績はEIS単独群ではEVISの描出は100%と良好で,うち94%で供血路までの造影が得られた.硬化剤の血管内注入量は平均11mlと安全域であった.EVL,EIS併用群では食道壁内血管完全消失例は91%と良好であった.B-RTO群では排血路を含め100%の消失率が得られた.また高度肝予備能低下例を含め治療手技による重篤な合併症は1例も認めなかった.今回の結果からEUSにより食道・胃静脈瘤の適切な治療法の選択が可能であると考えられた.
  • 青木 哲哉, 大川 清孝, 大庭 宏子, 森吉 靖子, 木岡 清英, 根引 浩子, 宋 健二, 岡 博子, 山田 英明, 針原 重義, 平田 ...
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2401-2406_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1988年1月から1995年8月までの期間に,当院にて大腸癌治療(外科および内視鏡治療)後のサーベイランスを目的として1回以上の大腸内視鏡検査を行った124例のうち,11例に12病変の異時性癌の発生を認めた.異時性癌を認めた症例について,病変の深達度,肉眼形態,組織型を中心に検討した.異時性癌はすべて早期癌の状態で発見されており,しかも12病変中11病変はm癌であった.異時牲癌の肉眼形態は結節集簇様病変3病変,IIa3病変,IIc1病変,Ilc+IIa1病変,Is1病変,Isp2病変,Ip1病変であり,12病変中9病変(75%)は平坦な病変であった. このことより進行癌へいたる早期癌の形態はかなりの部分を表面陥凹型も含めた平坦な病変が占めると考えられた.以上より,サーベイランスはもとより,日頃の内視鏡検査においても平坦な病変を見落とさないような精度の高い検査を行うことが大腸進行癌を減らすうえで重要と考えられた.
  • 岡本 訓久, 戸田 泰信, 高原 伸明, 西野 雅之, 田中 智之
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2407-2412_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は60歳男性,全身倦怠感と意識障害を主訴に入院.低Na血症および血清Antidiuretic hormone(ADH)高値などによりSyndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone(SIADH)と診断した.上部消化管内視鏡検査では中部食道に約5cmにわたり周堤隆起を有する陥凹型病変を認めた.同部の生検にて小細胞型未分化癌もしくは低分化型扁平上皮癌が疑われた.全身化学療法を施行したところ,腫瘍は著明に縮小し,低Na血症も改善.血清AHDも低下した. 食道癌にSIADHを合併した症例は,本邦で自験例が4例目であり,きわめて稀な症例と考え報告した.
  • 渡辺 純夫, 和田 隆, 出口 隆造, 竹川 裕紀子, 飛田 潤, 原澤 茂, 三輪 剛, 町村 貴郎, 幕内 博康, 三富 利夫, 安田 ...
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2415-2419_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は70歳の女性.58歳時にアカラシアと診断され内視鏡的バルーン拡張術を施行し,経過観察されていた.定期観察の内視鏡検査にて胸部上部食道に0-IIc食道表在癌を認めた.他臓器への転移は認めずE-EMRtubeを用い内視鏡的粘膜切除術にて完全切除をしえた1例を経験した.食道アカラシアは高率に食道癌を合併することで知られているが,定期的な内視鏡観察にて早期に食道癌を発見する事が侵襲の少ない内視鏡的治療を可能にするものと考えられた.
  • 横溝 肇, 勝部 隆男, 山口 健太郎, 石川 信也, 成高 義彦, 矢川 裕一, 芳賀 駿介, 小川 健治, 梶原 哲郎, 大井 至, 相 ...
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2420-2424_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は61歳,女性.主訴は心窩部痛.軽快再燃を繰り返す前庭部の多発潰瘍のため当科紹介.生検標本では確定診断が得られなかったが,内視鏡的粘膜切除標本の免疫組織学的検索にてIgMλ型の形質細胞腫と診断.A領域中心の胃形質細胞腫の診断で,幽門側胃切除術を施行した.深達度はsmでリンパ節転移を認めなかった.
  • 時山 裕, 柳井 秀雄, 松元 裕輔, 西明 真, 原田 稔也, 沖田 極, 佐々木 敏行, 星井 嘉信, 三谷 伸之, 檜垣 真吾, 多田 ...
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2427-2435_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     56歳,男性.胃体部において特徴的な白色斑状の胃小区強調像を呈した胃形質細胞腫(IgA-κ)の1例を経験した.一般に,胃形質細胞腫の肉眼像は悪性リンパ腫の所見と鑑別困難とされるが,本例では白色斑に一致して粘膜固有層から粘膜下層にかけてRussel小体を有する腫瘍細胞の密な瀰漫性浸潤を認め,このため特徴的な肉眼像を呈したものと考えられた. 腫瘍の組織学的特徴と関連した興味深い内視鏡像と考え,報告する.
  • 岡村 誠介, 矢野 充保, 日比野 真吾, 六車 直樹, 梯 泰昌, 林 重仁, 安田 貢, 岡久 稔也, 柴田 啓志, 西條 哲也, 和田 ...
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2436-2442_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は40歳,男性.上腹部痛,嘔気を主訴に来院.小腸X線および内視鏡検査にて,Treitz靱帯より約50cmの空腸に隆起性病変を認めた.表面は微細顆粒状で,大腸におけるvillous tumorに類似していたが生検で空腸癌と診断した.腫瘤は3.0×2.1cm大で管腔の2/3周を占める深達度seの乳頭状腺癌であった.小腸癌は,肉眼的に輪状狭窄型が多く,隆起型は稀である.本症例はびらんおよび潰瘍を伴わない隆起型空腸癌で稀な症例と考えられた.
  • 成田 和美, 田中 朋史, 前田 浩子, 浅原 恵子, 小島 龍太郎, 勝屋 弘明, 竹川 博之
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2445-2449_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,61歳の男性.慢性C型肝炎として経過観察中,サバの刺身を摂取後,腹部膨満感及び腹痛が出現した.外来受診時腹部エコーにてpseudokidney signを認め,緊急下部消化管内視鏡を行ったところ,右横行結腸に,ほぼ内腔を占める腫瘤を認めた.注腸透視では,同部位に半円球状の腫瘤を認め,バリウムの通過は不可能だった.2カ月前の大腸内視鏡検査で異常所見を認めず,胃アニサキス症におけるvanishing tumorの肉眼所見に酷似しており,サバの刺身を摂取していたので大腸アニサキス症を疑った.絶飲食の上高カロリー輸液を行ったところ,2週間の経過にて腫瘤の消失を観察しえた.特異IgEアニサキス抗体は,高値を示し,大腸アニサキス症の診断を裏付けるものと思われた.
  • 濱崎 尚子, 大川 清孝, 大庭 宏子, 渡辺 憲治, 森吉 靖子, 木岡 清英, 根引 浩子, 宋 健二, 岡 博子, 山田 英明, 針原 ...
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2450-2455_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例1は52歳の男性.47歳時に小腸穿孔にて手術し,同時にクローン病と診断された.症例2は症例1の息子で,粘血下痢便と体重減少を主訴として来院し,大腸内視鏡検査にて潰瘍性大腸炎と診断した.本邦において,クローン病と潰瘍性大腸炎の組み合わせの家族内発生例は6組目であり極めて稀と考え報告した.
  • 光永 裕子, 笠貫 順二, 小山 秀彦, 金子 良一, 伊藤 文憲, 野口 武英, 飯塚 文瑛
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2456-2463
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は18歳,男性.肛門周囲膿瘍の手術後より,発熱,粘血便,関節痛が続き精査目的で入院した.全消化管にアフタ様病変を認め,食道の生検で粘膜下に非乾酪性類上皮肉芽腫を検出しクローン病(以下CD)と診断した.食道病変を伴うCDはまれであるため本邦報告例の検索を加え報告した.またCDにおけるアフタ様病変の意義について若干の考察を加えた.
  • 東條 正英, 西山 勝人, 北嶋 直人, 伊東 俊夫, 稲留 哲也, 渡邊 信, 木下 芳一, 千葉 勉
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2464-2469_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は17歳,男性.下血を主訴に入院となり,大腸内視鏡検査にて回盲部に境界明瞭な深い潰瘍を認めた.組織学的には非特異的な慢性炎症像を示し,肉芽腫や陰窩膿瘍を認めなかった.また,口腔内にアフタ性潰瘍を認めたほかには,外陰部潰瘍や,ブドウ膜炎,結節性紅斑などの皮疹の既往はなかった.以上より本症例を回盲部単純性潰瘍と診断した.中心静脈栄養とsalazosulfapyridine1日3gの内服投与を開始したが,1カ月後に行った内視鏡検査では,潰瘍は拡大傾向にあった.このため,プレドニゾロン1日40mgと塩酸アゼラスチン1日2mgの内服投与を追加した.潰瘍はその1カ月後には著明に縮小し,プレドニゾロン投与開始後3カ月でほぼ瘢痕治癒した. 回盲部単純性潰瘍は保存的治療が困難で,外科的に切除されることが多い.われわれの症例は,プレドニゾロンなどの保存的治療により著明な改善を認めた稀な1例と考えられた.
  • 北村 儀雄, 広岡 大司, 太田 善夫, 大地 宏昭, 片岡 伸一, 豊永 高史, 土細 工利夫
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2470-2475_1
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸の結節集簇様病変は比較的まれであり,発育が緩徐で悪性化は少ないとの報告が多い.症例は83歳,女性.3年前に注腸透視,大腸ファイバーにより横行結腸に結節集簇様病変を指摘されていた.当時の生検病理結果は中等度異型腺腫だった.患者は内視鏡的治療,外科治療を拒否した.3年後腹部エコーで横行結腸の腫瘤を指摘された.注腸透視にて横行結腸の全く同部位にBorrmann 2型進行癌を指摘され,3年前の結節集簇様病変から進行したものと判断した.内視鏡的にもBorrmann2型進行癌で,生検で中分化腺癌が証明された.右半結腸切除が施行された.切除標本は組織学的にも腺腫成分はなかった. この症例は,われわれがふだんみている進行癌の中に結節集簇様病変から進展したものが含まれていることを示唆している.結節集簇様病変が,このような進展を示した報告はわれわれが検索した範囲ではなく,人腸癌の発育・進展を理解する上で重要と考える.
  • 村上 雅彦, 新井 一成, 草野 満夫, 吉川 望海, 中島 由美
    1996 年 38 巻 10 号 p. 2476-2481
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     総義歯使用患者の上部消化管内視鏡検査時の歯茎への負担を軽減し,疼痛の軽減,固定性,使用感の向上を目的にシリコン製マウスピースカバーを新たに考案した. 従来の硬質プラスチック製マウスピース単独,ガーゼを巻いたもの,カバーを装着したもので比較検討を行った結果,カバー装着したもので,疼痛,固定性で優れた結果が得られた. 総義歯患者への本カバーの使用は,上部消化管内視鏡検査の質的向上に有用であると思われた.
  • 1996 年 38 巻 10 号 p. 2482-2547
    発行日: 1996/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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