日本消化器内視鏡学会雑誌
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38 巻, 11 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 岡本 春彦, 酒井 靖夫, 谷 達夫, 山崎 俊幸, 岡田 貴幸, 斎藤 英俊, 島村 公年, 村上 博史, 瀧井 康公, 須田 武保, 畠 ...
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2577-2582_1
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸sm癌57病変(有茎・亜有茎性15,無茎性42)を対象とし,内視鏡的にSI71浸潤を反映する所見について検討した.sm2またはsm3癌(sm多量浸潤癌)における内視鏡所見の出現頻度は,硬さ89.7%(無茎性91.7%),形状不整64.5%(無茎性58.3%),鱗様表面模様38.7%(無茎性45.8%),血管透見像35.5%(無茎性41.7%)の順に高率であった.このうち鱗様表面模様と血管透見像は客観的な所見としてsm癌の診断に際して有用であると考えられた.Is型sm癌の70.6%がsm多量浸潤を呈し,IIa+IIc型sm癌は陥凹を認識することにより少量のsm浸潤をも診断することが可能であった.腫瘍形態からみるとIs型およびIIa+IIc型がsm癌に特徴的な形態であると考えられた.
  • 酒井 佳夫, 竹森 康弘, 野田 八嗣
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2583-2590_1
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡検査後に発生した急性胃粘膜病変(AGML)2症例におけるHelicobacter pylori (H.pylori)感染診断の問題点,および菌株の遺伝子学的な性状について検討を行った. その結果(1)内視鏡検査後に発生したAGMLにおいては,培養での菌量は少なく,免疫組織染色で陽性であったが,迅速ウレアーゼテスト,ウレアブレステスト,グラム染色では陰性であった.(2)2例の菌株はそれぞれ異なっていた.(3)いずれの菌株もcagA遺伝子,vacA遺伝子陽性であった. これらの所見より,内視鏡検査後に発生したAGMLでは,H.pylori感染の診断について,困難な場合があることが示唆された.また,AGMLを引き起こすH.pyloriの菌株は,多種類存在することが示唆され,各菌株は,cag A遺伝子,vacA遺伝子をもつことが示された.
  • 三好 広尚, 乾 和郎, 中澤 三郎, 芳野 純治, 山雄 健次, 山近 仁, 印牧 直人, 若林 貴夫, 奥嶋 一武, 岩瀬 輝彦, 滝 ...
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2593-2602
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    細径超音波プローブ(外径2.4mm,周波数20MHz)を用いた管腔内走査による十二指腹乳頭部胆管良性狭窄の超音波画像について正常十二指腸乳頭部の超音波画像と比較検討した.対象は胆道造影像にて診断した十二指腸乳頭部胆管良性狭窄9例と正常十二指腸乳頭部12例であった.超音波プローブ側から高エコー(第1a層),低エコー(第1b層),高エコー(第2層),低エコー(第3層),高エコー(第4層)の5層構造として描出された.ただし,超音波プローブと内腔が密着している場合には第1a層と第1b層は分離されず,4層構造として描出され,やや低エコーの層となり4層構造として描出された.十二指腸乳頭部胆管良性狭窄では9例中5例(55.6%)で,正常十二指腸乳頭部では12例中3例(25%)において5層構造として描出された.十二指腸乳頭部胆管良性狭窄と正常乳頭部の超音波画像を比較すると,十二指腸乳頭部胆管良性狭窄では第1層の肥厚像または第1a層単独,第1b層単独あるいは両者の肥厚像として描出された.また,胆道造影像との比較では,I,II型は主として第1a層の肥厚像として,III型では主として第1b層の肥厚像として描出された.
  • ―門脈圧と内視鏡像の比較―
    金沢 秀典, 多田 教彦, 松坂 聡, 長田 祐二, 小泉 信人, 間宮 康貴, 吉本 均, 中塚 雄久, 吉沢 雅史, 斉藤 整, 黒田 ...
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2603-2609
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)による門脈圧低下が食道静脈瘤へ及ぼす影響を明らかにするために,肝硬変30例についてTIPS後の門脈圧と内視鏡像を比較した.TIPSにより門脈圧は23±4mmHgより12±3mmHgへと平均48%低下した.食道静脈瘤は全例で改善を示し,術前のF213例,F317例,RC++7例,RC+9例,RC+++14例から,術後はF08例,F112例,F29例,F31例,RC-24例,RC+5例,RC+1例へと変化した.対象中19例が術後F0あるいはF1RC―となった.術後F0群,F1群,F2群の平均門脈圧の間にはそれぞれ有意差を認め,F因子の小さな群ほど術後門脈圧は低値を示した.また,術後RCサインが消失した群の門脈圧はRCサイン残存群の門脈圧に比べ有意に低値であった.以上より,TIPSによる食道静脈瘤の改善は術後門脈圧により左右され,術後門脈圧が低値な程その改善度は大きかった.
  • 三並 敦, 中津 敏明, 内田 尚人, 江崎 徹, 福間 博基, 平林 修子, 西岡 幹夫, 富士 匡
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2610-2614
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的乳頭拡張術は1983年のStaritの報告に始まる.しかし,本法は,急性膵炎の偶発症が危惧されたため普及していない. われわれは本法開発後9年にして内視鏡的乳頭拡張術に着手した.内視鏡的乳頭拡張術を,経口胆道鏡応用例を含め60症例に施行したが,現在までのところ重篤な偶発症は認めていない.最近行った乳頭拡張術30症例および内視鏡的乳頭括約筋切開術30症例について総胆管結石の治療成績ならびに合併症を比較検討した.対象を総胆管小結石症例に限定したため採石回数には有意差は認めなかった.さらに,両群間で明らかな血液生化学的データ,治療効果,偶発症発生に差は認めなかった.従って,内視鏡的乳頭拡張術は小結石に対しては内視鏡的乳頭切開術と同等の成績を示し,切開に伴う危険性がないことから内視鏡的乳頭切開術よりもすぐれた手技と考えられた.
  • 中野 克哉, 原田 明子, 真鍋 理絵, 谷野 眞通, 木村 次宏, 佐藤 仁美, 辰巳 嘉英, 光藤 章二, 児玉 正, 加嶋 敬, 土橋 ...
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2615-2619_1
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     61歳,男性.平成3年9月胃悪性リンパ腫にて胃全摘術を施行.術後早期より逆流性食道炎を認め,平成4年3月の内視鏡検査にて食道空腸吻合部より約2cm口側にかけて全周性に発赤調の粘膜が出現,平成5年3月には約6cmにまで拡大した.生検組織は腸型の円柱上皮で,胃全摘後のBarrett食道と診断した.発生過程を観察し得たBarrett食道の報告例は稀で,術後のBarrett食道は術後早期に発生することがあり定期的な経過観察が望まれる.
  • 辻野 一三, 関 英幸, 北浜 秀一, 浜本 浩英, 金井 哲伸, 足立 智昭, 鈴木 潤一, 伊東 健, 川上 義和
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2620-2624_1
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性.心窩部のつかえ感を主訴に当科を受診し,内視鏡検査にて食道・胃粘膜接合部直上に直径15mm程度の亜有茎性のポリープを認めた.完全生検目的にポリペクトミーを施行したところ,病変部は扁平上皮の過形成と強い炎症性細胞の浸潤を伴った肉芽組織からなり,Inflammatory esophagogastric polypと診断した.本疾患の報告は稀だが,食道隆起性病変の一鑑別疾患として重要と思われ報告した.
  • 住吉 健一, 小山 茂樹, 作本 仁志, 安藤 朗, 藤山 佳秀, 馬場 忠雄
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2627-2633_1
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例62歳女性.心窩部痛にて近医受診し,上部消化管内視鏡検査で胃噴門部の隆起性病変を指摘され,精査治療のため入院.内視鏡検査では,噴門部に一部くびれを持ち表面にびらんを伴った隆起性病変を認め,鉗子生検にて高分化型腺癌の診断を得た.超音波内視鏡検査にて,腫瘍は第1層から第3層にかけ不均一なやや高エコーに描出され,筋層の一部に,不連続な2個の,均一な低エコー像を認め,平滑筋腫上に発生した噴門部早期胃癌と診断し噴門側胃切除術を施行した.癌の深達度はsmで,腫瘤の筋層に2個の平滑筋腫を認めた.われわれの調べ得た限り本邦報告例は自験例を含め6例であり,極めて稀な合併である.
  • 福家 博史, 佐藤 兵衛, 東山 浩敬, 和気 一兆, 亀井 昭, 斎藤 今日子, 小島 裕治, 小林 由直, 財田 至啓
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2634-2639_1
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Dieulafoy様病変を呈したIIc+III 型早期胃癌の1例を経験した.症例は36歳女性.大量消化管出血にて,内視鏡を施行した.胃体中部前壁に露出血管を伴ったIIC+III 型早期胃癌を認め,クリップ・ゼルフォーム法にて止血した.術前の超音波内視鏡にて,第3層に紐状の異常血管を描出した.手術標本では,2.5cmのsmに浸潤するIIc+III 型印環細胞癌で,粘膜下層内に太い拡張した筋性血管を認めた.癌層内の潰瘍は,Dieulafoy潰瘍とほぼ同じと考えられた.
  • 白石 春子, 加藤 眞三, 芹澤 宏, 小山 茂, 金子 博, 森谷 晋, 鈴木 雅之, 田中 道雄, 三浦 総一郎, 日比 紀文, 石井 ...
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2640-2649
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は21歳女性.1993年5月,貧血・便潜血陽性のため注腸検査を施行.S状結腸にポリープを認め内視鏡下にポリペクトミーを施行,若年性ポリープと診断されたが,この際他の大腸粘膜には肉眼的に明らかな異常はなかった.約4カ月後下腹部痛および血便が出現,大腸鏡にて直腸から終末回腸まで周囲に紅暈を伴う径1~3ミリのアフタ様びらんが認められ,終末回腸では一部縦走配列を呈した.同部の生検より非乾酪性肉芽腫が確認され,多発アフタ型クローン病と診断,さらに胃・十二指腸にも肉芽腫を伴うアフタ様びらんが認められた.また,ポリープ切除時の病理組織の再検討により,肉眼的健常粘膜からも非乾酪性肉芽腫が確認された.サラゾピリン内服で経過観察中であるが,約2年間で著変は認められない.本例は,肉眼的にびらんが出現する以前の生検にて肉芽腫形成が確認され,クローン病の発症機序を解明する上で興味深い症例である.
  • 佐野 弘治, 大川 清孝, 渡辺 憲治, 浜崎 尚子, 森川 浩安, 大庭 宏子, 森吉 靖子, 木岡 清英, 根引 浩子, 宋 健二, 岡 ...
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2651-2655_1
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は37歳女性で,下痢を主訴に受診し,内視鏡検査にて直腸に微小カルチノイドを1個認めた.後日内視鏡的切除時に,その近傍に別の微小カルチノイドを1個発見し,両方とも内視鏡的に完全切除し得た.本症例を含む多発性直腸カルチノイドは,本邦では10例の報告しかみられず稀であり,内視鏡的に切除し得たのは本例を含めて2例のみであった.また,悪性腫瘍の合併も50%と高率であり,厳重な経過観察が必要と考えられた.
  • 井上 博和, 市川 一仁, 浮田 雄生, 田村 光広, 松本 宙明, 石黒 淳, 掛村 忠義, 安斎 保, 佐藤 正弘, 大橋 茂樹, 五十 ...
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2656-2661_1
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は84歳の女性.早期胆嚢癌の疑いで経皮経肝胆嚢鏡と同時に内視鏡下胆嚢内超音波断層法を行った.病変は第二層に主座をおく径15mmの低エコーの1型隆起として認められ,第三層との境界は保たれていた.組織学的に癌は隆起部を中心に水平方向に広く進展しており,1型隆起は粘膜内癌で,胆嚢内超音波断層法にて描出しえたが,平坦型領域の最深部は漿膜下層であったのに,その範囲と深達度は描出しえなかった.
  • 大島 忠之, 神谷 泰隆, 星野 信, 早川 富博, 大原 弘隆, 山田 珠樹, 山田 尚史, 稲垣 孝憲, 中沢 貴宏, 内田 淳夫, 宮 ...
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2662-2669
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    親子ファイバー下にレーザーを用いて切石したbiliobiliary fistula合併胆嚢胆管結石の1例を報告した.症例は56歳男性,主訴は黄疸.日本酒1日4~5合,25年間の飲酒歴があった.患者は腹部膨満感,尿濃染を訴えて近医を受診し,胆管結石による閉塞性黄疸と診断され,経鼻胆道ドレナージ術後結石除去の目的で当院へ転院となった.肝硬変合併のため親子ファイバー下に経乳頭的にpulsed dye laserを用いて4回の切石を施行したところ,総肝管内に嵌頓していた結石は一時的に完全除去できた.しかし,biliobiliary fistulaを通じて胆嚢内の結石が胆管内に次々と排出された.そこでレーザー切石をさらに4回施行したところ,胆嚢内に大結石が1個残存したが,胆管内結石は完全に除去できた.その後胆管内への結石の排出もなく,退院後2年2カ月の現在まで自覚症状もなく,経過良好である.
  • 石黒 淳, 井上 博和, 掛村 忠義, 安斎 保, 小川 聡, 佐藤 正弘, 大橋 茂樹, 五十嵐 良典, 前谷 容, 酒井 義浩, 吉田 ...
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2670-2676_1
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,男性.心窩部痛を主訴に他院受診し,腹部超音波で膵頭部腫瘤を指摘され当科入院した.諸検査から粘液産生膵腫瘍(MPT)と診断した.膵管内視鏡(POPS)では主乳頭から副膵管の合流部を越えた部位にまで連続する乳頭状隆起が拡がっていた.経乳頭的に細径プローブによる膵管内超音波断層法(IDUS)を施行し,透視下に膵尾部主膵管まで誘導して走査したところ,陰影欠損に一致し低エコー像を連続的に描出しえ,境界部は平滑な膵管壁の像を示した.透視下の生検組織診断では乳頭状腺腫であったが,粘液産生膵癌が否定し得ないため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が行なわれた.切除材料の水浸下超音波像では,腫瘍の乳頭状増生部に一致して術前の超音波像と同様のエコー像が認められた.組織学的には膵管内乳頭状腺癌であった.主膵管型のMPTにおいてPOPSと共にIDUSは腫瘍の連続性を明瞭に捉えることができ,手術切離線の決定に有用であった.
  • 室林 治, 里村 吉威, 米島 博嗣, 荻野 英朗, 中川 彦人, 鵜浦 雅志
    1996 年 38 巻 11 号 p. 2677-2681
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    副甲状腺機能亢進症(HPT)を合併した膵炎2例の膵管像を検討した.いずれも常習飲酒家で過去に急性膵炎の診断を受けて以来禁酒していたが,腹痛,嘔吐を繰り返し,受診時,膵酵素上昇,血清Ca値上昇,副甲状腺腫を認めた.腺腫摘出後,自覚症状,検査値の異常は認めていない.両者の膵管像は1例は正常で他の1例も軽度の主膵管の口径不同を認めるのみであった.以上より2例はHPTによる高Ca血症に伴う急性再発性膵炎と考えられた.
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