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尾田 恭
1996 年 38 巻 12 号 p.
2815-2825
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
偽足様所見を側方発育型腫瘍(LST)非顆粒型の診断指標としてとらえ,本所見を有する表面型腫瘍を,臨床病理学的,遺伝子的見地から,他の表面型腫瘍あるいは顆粒型LSTと比較した.10mm以上では,非顆粒型はsm浸潤は7%で,sm浸潤例は20mm以上であった.肉眼形態は,非顆粒型は総じて平坦隆起であったが,20mmを越えると平坦隆起の一部に相対陥凹を認める割合が増加した.遺伝子的には,K-rasの点突然変異は認めず,p53は腫瘍内の異型度にかかわらずびまん性に過剰発現した.10mm未満でも,偽足様所見をもつ表面型腫瘍は,10mm以上の場合と同様の遺伝子的結果を示し,10mm未満でよくみられる形態類似のIIaとの違いを認めた.従って偽足様所見をもつ表面型腫瘍はIIa+IIc,IIcと同じ遺伝子的背景でありながら,腫瘍径が大きくなるまで浸潤しない特殊な腫瘍群として,すなわち非顆粒型LSTとして扱うことが妥当であると考えられた.
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井上 茂, 長南 明道, 結城 豊彦, 石田 一彦, 藤田 直孝, 野田 裕, 小林 剛, 木村 克巳, 松永 厚生, 安藤 正夫, 富永 ...
1996 年 38 巻 12 号 p.
2826-2832
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
当施設では早期胃癌の内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection,EMR)にEMR-2CS法(EMRusing a2channel scope)を用いているが,切除困難部位としてM・C領域小彎,後壁の病変が課題となっていた.そこで,同部位の病変に,キャップ吸引粘膜切除法であるEMRC法(EMR using a cap-fitted panendoscope)を試み,これらの治療困難部位における,2法の治療成績を比較検討した.対象はM・C領域小彎,後壁のEMR適応病変,34例35病巣(EMR-2CS法17例17病巣,EMRC法17例18病巣)で,以下の結論を得た. 1)完全切除率はEMR-2CS法で64.7%,EMRC法で77.8%とEMRC法で良好であった. 2)EMRC法は特にM領域小彎,後壁の病変に有用であったが,C領域小彎,後壁では完全切除率がやや低く課題を残した. 3)EMRC法では切片が深く切除される傾向にあり出血,穿孔に十分な注意が必要である.
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威 暁東, 藤盛 孝博, 佐野 寧, 南 利江子, 中村 哲也, 寺野 彰, 前田 盛
1996 年 38 巻 12 号 p.
2833-2839
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
粘膜内癌(以下m)30例と粘膜下層に浸潤する癌(以下sm)55例を組織学的に分化型腺癌(以下diff)と未分化型腺癌(以下undiff)に分類し,癌巣内潰瘍形成(以下UL(+))におけるHelicobacter pylori(以下Hp)の関与について臨床病理学的に検討した.85例の早期胃癌におけるHp陽性率は54.1%(46/85)で,その中でUL(+):93.4%(15/16),UL(-):48.4%(31/69)であり,mとsmにわけた結果でもUL(+)の方にHp陽性率が高い傾向がみられた.diffのHp陽性率は47.4%(18/38),undiff:54.9%(28/47)で,組織型の違いでHp陽性率に差は見られなかった.部位別で陽性率をみると,胃体部癌が69.0%(29/42)であり,前庭部:38.9%(14/36),噴門部:42.9%(3/7)よりHp陽性率は高かった.また,これらのUL(+)におけるHp陽性率は消化性潰瘍における傾向と同じであった.またHp検出部位と癌巣との相関をみた結果ではmとsmともにHpが検出できたのは癌巣よりも,その周囲の非化生粘膜であった.以上,今回の検討から,Hp感染が早期胃癌における癌巣内潰瘍形成と相関している結果は得られたが,組織型や深達度とは相関しておらず,発育進展に直接関与しているという結果は得られなかった.
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本橋 修, 大庭 堅太郎, 佐野 秀弥, 高木 精一, 幾世橋 篤, 西元寺 克禮
1996 年 38 巻 12 号 p.
2840-2847
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡的粘膜結紮術を併用した胃粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection using a Ligating device; EMRL)による分割切除の確実な手技確立と,病変粘膜完全切除の確認に必要な切除粘膜再構築のための手技開発のために,5匹の雑種成犬を用いて基礎実験を施行した.直径20mmの粘膜切除法としては,EVL(Endoscopic Variceal Ligation)の外筒辺縁を手前と左右いずれかの側方(左右いずれかの斜め前方)のマークに重なるように合わせて第1回目の吸引・結紮・切除をして,3回で切除する方法が最も効果的で確実な分割切除法であり,切除面の深度は,分割切除の境界においても粘膜下層(sm3)まで達していた.また,結紮後のクリッピングは,分割切除粘膜の再構築に非常に有効であった.内視鏡的粘膜切除術による分割切除法として,クリッピングを使用したEMRLは簡便かつ確実に施行できる手技と思われた.
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中村 慶春, 恩田 昌彦, 内田 英二, 井上 松応, 山村 進, 松谷 毅, 丸山 弘, 横山 滋彦, 石川 紀行, 田尻 孝, 山下 精 ...
1996 年 38 巻 12 号 p.
2848-2852_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
膵癌を疑われた33例に対して, 十二指腸乳頭括約筋を弛緩させるためにニトログリセリン舌下錠を投与し経口的膵管内視鏡検査を施行した. 最大2錠 (0.6mg) の投与により外径2.2mmの膵管鏡は容易に乳頭を通過しえた (29/33, 87.9%) . 通過不能の4例はすべて膵頭部癌症例で, カニュレーションを深く行えず十分にガイドワイヤーを留置できなかったことが原因であった. 乳頭通過後に膵管内を尾部あるいは病変まで観察できたものが29例中23例であった. 血圧の変動はニトログリセリン非投与群と比し有意差を認めず, 合併症は1例も経験しなかった. ニトログリセリン投与は簡便かつ安全で, 確実に乳頭を開大させることが可能で, 経口的膵管鏡検査において有効な方法と思われた.
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今枝 博之, 岩男 泰, 都築 義和, 宮口 信吾, 永田 篤文, 竹内 一郎, 亀谷 麒與隆, 野本 一夫, 西澤 護, 大倉 康男, 細 ...
1996 年 38 巻 12 号 p.
2853-2857_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は62歳,男性.1992年7月に胃幽門前庭部後壁小彎側よりのIIc+IIa型早期胃癌に対して内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行,病理組織学的に粘膜内の高分化型管状腺癌,完全切除であった.その後,潰瘍瘢痕部より径約20mmの山田III 型のポリープが出現し,組織学的に癌は認められず過形成性ポリープであった.径約25mmに増大したため,1994年6月にポリペクトミーを施行した.早期胃癌に対するEMR後に生じた山田III 型の巨大過形成性ポリープはまれであり,その発生機序として早期胃癌の周辺粘膜におけるポリープの生じやすい素因と高周波による焼灼潰瘍の形成,H2プロッカーの投与や蠕動運動による物理的刺激などが上皮の過剰再生を促したと考えられた.
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齋藤 光浩, 大山 高令, 馬場 俊之, 太田 雅弘, 寺田 光宏, 伊藤 慎芳, 桜井 幸弘, 神坂 和明, 安部 孝, 池上 文詔, 多 ...
1996 年 38 巻 12 号 p.
2858-2862_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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緊急大腸内視鏡検査で診断された大腸血管異形成から出血した4症例を経験した.いずれも,血便を来たし緊急大腸内視鏡検査を施行し血管拡張像を呈する血管異形成からの出血を確認し止血処置等により軽快した.大腸血管異形成は,稀ならず観察されるが下部消化管出血の原因としては比較的稀な疾患であり,出血直後に緊急大腸内視鏡検査を施行することが重要である.
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田邊 裕貴, 渡 二郎, 中野 靖弘, 和久 勝昭, 水上 裕輔, 田中 浩二, 有里 智志, 大田 人可, 村上 雅則, 折居 裕, 桜井 ...
1996 年 38 巻 12 号 p.
2865-2870_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は49歳,女性.1990年7月,右乳癌にて定型的乳房切除術を施行された.1995年3月に心窩部痛を主訴に来院.上部消化管内視鏡検査と胃X線検査にて,幽門狭窄を伴うBorrmann4型胃癌が疑われたが,数回にわたる生検でも腫瘍細胞は認められなかった.入院後両側胸水が明らかとなり,胸水細胞診にて乳癌細胞が得られたため乳癌の胃転移が強く疑われた.剖検の結果,乳癌細胞(小葉癌)の胃壁内でのびまん性増殖を認め,Borrmann4型胃癌の外観を示す乳癌の胃転移であることが判明した.
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石川 達, 石川 直樹, 太田 宏信, 吉田 俊明, 本間 明, 上村 朝輝, 武田 敬子, 石原 法子, 石崎 悦郎, 三浦 宏二, 相場 ...
1996 年 38 巻 12 号 p.
2871-2875_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
患者は75歳,女性,動悸を主訴に入院.上部消化管内視鏡検査にて,胃体上部から噴門部後壁にbridging foldを伴う8cmの粘膜下腫瘍を認めた.粘膜下腫瘍の頂部に広基性の白苔,びらんを伴う隆起性病変を認めた.生検では悪性所見を認めなかったが,貧血の原因であり,大きさ,形態より胃平滑筋肉腫と考え,胃全摘術を施行した.腫瘍は8.0cm×6.4cmの平滑筋腫であり,その頂部は広基性の過形成ポリープであった.特異な形態を示す過形成ポリープをともなったために術前診断において悪性腫瘍との鑑別に苦慮した胃平滑筋腫の1例を報告する.
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上田 佳秀, 福田 治彦, 那須 正道, 村山 徹, 井本 しおん, 松岡 広, 松井 利充, 千原 和夫, 千葉 勉
1996 年 38 巻 12 号 p.
2876-2880_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
上部消化管にびまん性に浸潤したL3・Burkitt typeの急性リンパ性白血病(ALL)の1例を経験した.症例は47歳の男性で上腹部痛を主訴に近医を受診,LDHの上昇と末梢血中リンパ芽球の出現を認めたため当院転院.骨髄穿刺にてL3・Burkitt typeのALLと診断された.入院後,下血を認めたため上部消化管内視鏡検査を施行.胃は全体に伸展不良でびまん性の皺壁肥厚と穹窿部を中心とする粘膜下腫瘤様隆起を多数認めた.十二指腸球部にもびらん性変化を認めた.穹窿部から十二指腸球部までのすべての生検標本にリンパ芽球様の異型細胞の浸潤が認められALLの胃浸潤と診断した.ALLに対し化学療法施行し,寛解となった.内視鏡検査でも著明な改善を認め,以後11カ月にわたって再発していない. ALL(L3)は比較敵稀な疾患であり,予後不良の白血病である.入院時著しい胃・十二指腸病変を示したが,化学療法1コースにて著明な改善を認めた1例を経験し報告した.
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原 悦雄, 赤松 泰次, 中村 直, 清水 俊樹, 武川 建二, 前島 信也, 藤森 一也, 古屋 直行, 松林 潔, 清沢 研道, 勝山 ...
1996 年 38 巻 12 号 p.
2883-2888_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
十二指腸下行部に認めた広基性隆起性病変に対し内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した3例を経験したので報告する.方法は多田らのstrip biopsyの手技を用い,使用器具は病変部位によって直視型と斜視型2チャンネルスコープを使い分けた.いずれも一括切除が可能で,病理組織学的所見はそれぞれ十二指腸腺腫,カルチノイド腫瘍,atypical hyperplasia of Brunner'sglandと診断され,断端は全例陰性であった.偶発症は2例で出血が認められたが,内視鏡的止血術にて止血しえた.十二指腸下行部においても胃や大腸と同様にEMRは可能であるが,手技の工夫と偶発症に対する十分な配慮が必要と思われた.
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伊藤 貴, 原 歩, 吉岡 政洋, 小玉 博明, 徳井 幹也, 山川 弘, 長田 浩彦, 山高 謙一, 滝沢 建, 石井 寿晴, 石川 由起 ...
1996 年 38 巻 12 号 p.
2889-2893_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
76歳女性.上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部にIIa病変と,2.5cmにおよぶ十二指腸浸潤を認め,その先端は白色絨毛様の外観を呈していた.病理組織学的所見では,幽門部にsm浸潤を認める早期胃癌(高分化型管状腺癌)であった.十二指腸浸潤部は粘膜固有層に限局した乳頭腺癌であり,幽門側から段階的に菲薄化しながら浸潤する形態をとっていたことが特異的な内視鏡像の原因であると考えられた.
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新田 康夫, 中村 常哉, 小林 世美, 越川 卓
1996 年 38 巻 12 号 p.
2894-2900_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は61歳,男性.主訴は下痢,血便大腸内視鏡,注腸X線検査,直腸Raに,病巣内に2型進行癌を併存する結節集簇様病変を認めた.また,胃体下部大彎にIIc型早期胃癌を膵体部にはエコー,CTにて腫瘤を認めた.上記診断にて手術が施行され,直腸病変は病巣内の口側に深達度ssの中分化型腺癌を伴う腺管絨毛腺腫であった.胃病変はIIc型胃癌,深達度sm,中分化型管状腺癌,膵臓の病変はsolidcystic tumor(SCT)であった.大腸結節集簇様病変では他部位の大腸癌や他臓器の癌を合併することが多いとの報告があり,他臓器の病変も念頭においた術前の検査の必要性が示唆された.
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柴山 淳, 中島 洋, 今村 真紀子, 徳植 秀樹, 横山 孝典, 高須 政夫, 尾崎 眞人, 吉田 守, 斎藤 昌三
1996 年 38 巻 12 号 p.
2903-2905_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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当科にて1984年1月から1995年5月までに1,342回の腹腔鏡検査を施行し,胆嚢を観察し得た1,278例中,胆嚢漿膜面に異所性肝組織を認めたものは11例(0.86%)であった.症例は18歳から62歳で,男性3例,女性8例であった.異所性肝組織によると考えられる症状は認められず,また超音波,腹部CT検査で存在診断可能な症例はなかった.腹腔鏡検査時,ICG大量静注法(3mg/kg負荷)を併用し,全例に主肝と同様に着色を認めた.同部の組織学的検索は成し得なかったが,肉眼所見とICG負荷により着色を認めたことから,異所性肝組織と診断した.大きさはすべて径15mm以下であり,2カ所に認めた1例を除き,10例は単発であった. われわれが調べ得た限りでは,これまで本邦における異所性肝組織の報告は1995年3月までに47例の報告があるが,腹腔鏡検査で胆嚢漿膜面に認めた報告は10例と少なく,文献的考察を加え報告する.
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印牧 直人, 中澤 三郎, 山雄 健次, 芳野 純治, 乾 和郎, 山近 仁, 杉山 和久, 中村 雄太, 寺本 佐世子, 藤 明彦, 品川 ...
1996 年 38 巻 12 号 p.
2906-2912_1
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は64歳,男性.急性膵炎の精査目的で行ったERCPにて拡張した膵体部主膵管内にやや可動性のある10mm大の陰影欠損が指摘された.POPSにて膵管内に明らかな粘液を認めず首振りする乳頭状腫瘍を,IDUSにて膵実質浸潤を伴わない有茎性のポリープを確認し,粘液産生の乏しい膵管内乳頭腫瘍で腺腫あるいは腺腫内癌と診断した.外科的切除の結果は乳頭腺腫であった.臨床的に粘液産生の乏しい膵管内乳頭腫瘍は極めて稀であり,主膵管内の透亮像や陰影欠損像の鑑別診断にPOPS,IDUSが有用であった.
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桃井 篤子, 河合 公三, 岩部 明弘, 武南 達郎, 吉田 康博, 喜田 恵治, 玉尾 博康, 木村 敏章
1996 年 38 巻 12 号 p.
2913-2919
発行日: 1996/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は64歳,女性.HCV陽性肝硬変にて近医通院中,吐下血を主訴に,当院緊急入院となる.内視鏡検査では,十二指腸下行脚,Vater乳頭対側に粘膜下腫瘤様の静脈瘤があり,表面に出血点を認めたため,同部にEVLを施行した.これにて一時止血を得,引き続きTIOを追加施行した.以後再出血はなく,静脈瘤の消失が確認された.十二指腸静脈瘤破裂に対してEVLとTIOの併用が有効であった一例を経験した.
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