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中村 真一, 光永 篤, 鈴木 茂, 林 直諒
1996 年 38 巻 3 号 p.
813-827
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
著者らは,食道静脈瘤の改善効果および再発防止効果の向上を目的として,食道静脈瘤結紮術(EVL)と1%Aethoxysklerol(1%AS)による静脈瘤外注入併用療法(EVL-1%AS療法)を予防的治療例35例に施行し,その有用性を論じた.結紮数7.1±1.9個,1%AS注入量20.0±0.0mlによる初期治療で35例中31例(89.5%)に改善効果を認め,EvL単独治療例の20例中15例(75.0%)に比し向上した.12カ月後,結紮数7.4±2.5個,1%AS注入量38.4±21.2m1による治療で31例中23例(74.2%)を寛解に維持でき,EVL単独治療例の19例中9例(47.4%)に比し,再発防止効果も著明に向上した.治療後12カ月以内の再出血率は35例中3例(8.6%)であった.EVL-1%AS療法は,容易に大きな静脈瘤を治療できるEVLと1%ASによる地固め療法の特徴を併用した治療法である.手技的に簡単で安全であり,重篤な合併症は認めず,患者への侵襲も少ない有用な食道静脈瘤治療法であると考える.
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工藤 峰生
1996 年 38 巻 3 号 p.
828-837
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
自覚症状の有無により有症状群55例と無症候群145例の合計200症例を対象としてH.pylori万と内視鏡的胃炎,病理組織学的胃炎との関連について検討を行った.またH.pylori感染と血清ペプシノーゲン,血清ガストリンとの関連についての検討も行った.H.pylori感染の有無と上腹部症状には関連性が認められなかった.胃粘膜における炎症細胞浸潤は単核球浸潤,好中球浸潤ともH.pylori陽性例で明らかに頻度が高く,程度も強かった.胃炎の進展により胃粘膜の萎縮や腸上皮化生を伴ってくるが,その原因の多くはH.pylori感染であると考えられた.血清ペプシノーゲンは胃粘膜の萎縮を示す他にH.pylori感染の有無を判定するマーカーとしての意義もあるものと考えられた.血清ガストリン値はH.pylori万感染例で高い傾向を示した.これらの結果よりH.pylori感染は胃炎の発生および進展に密接な関係を持つものと考えられた.
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田中 三千雄, 寺崎 禎一
1996 年 38 巻 3 号 p.
838-845_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
通常の内視鏡検査における十二指腸潰瘍の赤色瘢痕と白色瘢痕の診断の実態を明らかにする目的で,臨牀例を対象として,これらの瘢痕部と周辺正常部の色を内視鏡的に測定した.対象は十二指腸潰瘍瘢痕を有する患者29例(赤色瘢痕12例,白色瘢痕17例)とした.十二指腸潰瘍瘢痕にたいする通常の内視鏡診断ならびに粘膜面の色の測定には,上部消化管用ファイバースコープ:MT-III・町田製作所とそれに接続可能な分光光度計:CMZ-1200・村上色彩研究所を使用した.色の表示方法はマンセル表色系(色相,明度,彩度)によった.その結果,通常の内視鏡検査における十二指腸潰瘍の赤色瘢痕と白色瘢痕の鑑別の実態は以下のようにまとめることができた.1.赤色瘢痕と白色瘢痕の鑑別は,瘢痕部のみの色の判定に拠っているのではない.2.赤色瘢痕の内視鏡診断は「瘢痕部の色が周辺部の色より赤い」と判定することに拠っており,この判定は色彩工学的にみても極めて正確な判定である.3.白色瘢痕の内視鏡診断は,「瘢痕部の色が周辺部の色と同じである」と判定することに拠っている.しかしながら,色彩工学的に分析すると,赤色瘢痕であると診断したグループとは異なり,瘢痕部と周辺正常部の色の関係にはかなりのバリエーションがある.即ち,白色瘢痕のグループには,瘢痕部が周辺正常部よりもまだ赤い症例,瘢痕部と周辺正常部がほとんど同じ色の症例,瘢痕部が周辺正常部より白い症例が混在しているものと考えられる.以上の結果より,通常の内視鏡検査においては,白色瘢痕部と周辺正常部の色の相違の有無を,さらに詳細に観察していく価値があると考えられた.
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広瀬 昭一郎, 太田 肇, 早川 康浩, 里村 吉威, 中川 彦人, 鵜浦 雅志
1996 年 38 巻 3 号 p.
846-850_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡的胃粘膜切除(EMR)後の瘢痕部に生ずる原疾患とは異る組織型の良性の隆起性病変(EMR後の良性隆起)の実態を検討した.EMR後1年以上再発・遺残を認めなかった早期胃癌23病変中7病変(30%),胃腺腫27病変中4病変(15%)にEMR後の良性隆起が生じた.両者を併せた計11病変の内視鏡形態は山田I~II型が6,平坦隆起が4,山田IV型ポリープが1,各病変であった.存在部位から見ると前庭部では16病変中7病変44%,体部では34病変中4病変12%と前者で生成しやすかった.組織学的には腺窩上皮の過形成が6,腸上皮化生3,幽門腺1,表層上皮と肉芽1,各病変であった.EMR後の良性隆起が生ずる機序として,EMRの潰瘍が治癒していく過程に早期胃癌や胃腺腫の病巣の周辺粘膜が潜在的に保有する過形成ρ能力が発現してくる可能性が考えられた.
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中山 裕一, 浅木 茂, 大原 秀一, 森山 聡, 杉山 幸一, 野口 哲也, 鹿島 哲, 木村 義人, 豊田 隆謙
1996 年 38 巻 3 号 p.
851-857_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
新鮮胃切除標本の粘膜筋板直下の粘膜下層にenhancerを注入し,高周波数の超音波プローブにより筋板を描出する基礎検討を行った.20MHzの高周波数の超音波プローブに粘膜下注入法を用いることで,第2層とenhancerに挟まれた薄い低エコー層が断続的に観察され,その位置と厚さから粘膜筋板に相当すると考えられた.また超音波顕微鏡所見から,"粘膜層と筋板間には筋板と粘膜下層問と同等以上の境界エコーが生じるための音速の違いが存在する"ことが明かとなった.この方法により超音波プローブで描出された筋板の画像は,音響特性上胃壁5層構造の第3層に帰属することが判明した.高周波数の超音波プローブに粘膜下注入法を併用した新たな手法は,粘膜および筋板の情報を明瞭に捉えることができる有用な方法であり,第3層内の表層に示された筋板の存在部位に留意することで早期胃癌深達度断診への臨床応用が可能と考えられた.
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武藤 学, 斎藤 行世, 小池 智幸, 池谷 伸一, 佐々木 高志, 星野 英二
1996 年 38 巻 3 号 p.
858-865
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
1984年1月から1994年4月までに当科で施行した胃病変に対する内視鏡的ポリペクトミー(Endoscopic Polypectomy; EP)及び内視鏡的粘脚除術(Endoscopic mucosal resection; EMR)に伴う偶発症(出血,穿孔)について検討した.対象は569症例650病変,その内訳は過形成性ポリープ329病変,腺腫155病変,早期癌136病変,その他30病変であった.手技別に,EP施行が346症例411病変,EMR施行が223症例239病変で,内視鏡的止血術を必要とした出血例はEP;45例(13.0%),EMR;32例(14.3%),穿孔を来した症例は各々1例(EP;0.28%,EMR:0.45%)であった.出血はEPではC領域及び20mm以上の病変に多く,EMRではC領域に多く,臨床的に問題となる拍動性出血や輸血を必要とする大量出血はEP;1.2%, EMR;4.0%とEMRで多い傾向を認めた.出血に対しては全例でエタノール局注にて止血を得られ,再出血例や手術を必要とした症例はなかった.穿孔の原因はいずれも筋層の巻き込みであった.
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田中 三千雄, 安藤 隆夫, 伊部 直之, 卜部 健, 荻野 正樹, 竹越 國夫, 堤 幹宏, 中川 彦人, 七澤 洋, 米島 學, 根井 ...
1996 年 38 巻 3 号 p.
866-875
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
1990年~1994年の5カ年の間に, 消化性潰瘍の薬物療法を開始した症例2,612例を対象として, その診療記録を基に維持療法の運用状況を調査し, 以下の事が明らかになった. 1.全体の9/10の症例に維持療法が施行されていた. 2.維持療法の薬剤としては多剤併用(攻撃因子抑制薬と防御因子増強薬の併用)の症例が多かった. 3.若い年齢階層ほど維持療法期間が短く, 服薬コンプライアンスも低下する傾向を認めた. 4.初期治療・維持療法が不成功 (増悪または再発) に終わった事実が内視鏡検査によって確認された症例は, 全体のほぼ1/4を占めていた. 5.維持療法の中止・脱落例は全体のほぼ3/5を占めていた. 脱落の大きな原因は患者の自己判断による治療の中止と医師の維持療法管理の不完全性にあった. 以上より消化性潰瘍の維持療法はその運用面において, 大きな問題をはらんだ療法であると考えられた.
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竹内 雅春, 中井 謙之, 中村 清昭, 黒田 暢一, 桑原 幹雄, 植木 孝浩, 岡本 英三, 朱 明義, 植田 基生
1996 年 38 巻 3 号 p.
876-878_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は50歳,男性.CbLsF2RC(++),Lgcf,RC(+)食道胃静脈瘤に対しendoscopic variceal ligation (EVL)を施行した.3日後腹痛とfree airを認め,胃穹窿部EVL施行部の穿孔と診断,緊急手術となった.EVLは食道静脈瘤に対しては偶発症もなく安全な治療法である.しかし,胃静脈瘤特に胃穹窿部静脈瘤に対しては,解剖学的要因として固定されていない遊離部であるため,吸引する上で,静脈瘤にデバイスを密着させなければ,胃壁全層が吸引されることになり,穿孔という合併症が引き起こされる結果となる.したがって静脈瘤のサイズ,形態など慎重に適応をきめ,無理のない吸引操作で結紮することで食道静脈瘤同様に安全性の高い治療法となると考える.
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ト部 利真, 宮本 真樹, 山本 尚子, 服部 信昭, 日野 文明, 米原 修治
1996 年 38 巻 3 号 p.
879-884_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は81歳,女性.1991年後半より貧血を認め,1993年より貧血が進行し,同年6月,内視鏡検査で胃前庭部にびまん性,点状から斑状の易出血性の血管拡張を認めた.生検で粘膜固有層の微小血管の拡張を認め,DAVEと診断した.保存的に輸血を行なっていたが,頻回の輸血を必要とするようになり,1994年9月末から,プレドニゾロン30mg,経口投与を開始した.以後,貧血は改善し,1カ月後の内視鏡検査では胃前庭部の毛細血管拡張は消失し,発赤も著明に改善していた.プレドニゾロンは漸減し,6カ月後中止した.この間,輸血を必要としなかった.しかし,中止直前より貧血が進行し,輸血を必要とするようになり,中止4カ月目に多臓器不全にて死亡した.
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河上 純彦, 伊藤 和江, 足立 靖, 杉山 敏郎, 柴田 香織, 矢花 剛, 奥瀬 哲, 今井 浩三
1996 年 38 巻 3 号 p.
887-891_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は68歳男性.右下腹部痛,便通異常を主訴に入院し,大腸内視鏡検査で横行結腸および脾弯曲部に中心性潰瘍を有する粘膜下腫瘍様の隆起性病変,いわゆるbull's eye signを2個認めた.病理組織所見およびその後の諸検査により,肺大細胞癌が原発巣と診断された.肺癌の大腸転移は2.3~3,0%とされるが,生前に大腸転移が確認された症例の報告は極めて少なく,本例のように内視鏡像と生検診断で確認された報告は稀である.bull's eye signを呈する転移性消化管病変の原発巣のひとつに肺大細胞癌も含まれる可能性もあり,示唆に富んだ症例と考えられたので報告する.
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久居 弘幸, 斎藤 忠範, 松山 友彦, 小笠原 俊実, 女澤 慎一, 池田 成之, 藤田 昌宏, 山中 剛之
1996 年 38 巻 3 号 p.
892-897_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は64歳女性. 検診の上部消化管内視鏡検査で十二指腸に異常を指摘され, 当科受診. 内視鏡検査で下行脚のVater乳頭対側に軽度の隆起を伴う浅い陥凹性病変を認め, 生検で腺腫と診断され経過観察としたが, 再検査で腺癌の疑いと診断され, 十二指腸部分切除術を施行. 7×3mmのIIcで, 深達度mの高分化型管状腺癌であった. 陥凹型早期十二指腸癌は極めてまれであり, 診断および治療の選択に関する問題点を含め報告する.
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宿輪 三郎, 千住 雅博, 伊津野 稔, 原口 増穂, 水田 陽平, 村瀬 邦彦, 牧山 和也, 伊東 正博, 関根 一郎
1996 年 38 巻 3 号 p.
898-905_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
患者は35歳,男性で,右下腹部痛を訴え当科を受診.注腸X線検査で回盲弁の腫大と回腸末端の多発性隆起を認めた.大腸内視鏡検査で盲腸のアフタ様病変,回盲弁の発赤と腫脹ならびに回腸末端の中心陥凹を有する多発性隆起と単発性の表面が粗造な卵円形の扁平隆起を認めた.便の細菌学的検索で病原性細菌は陰性であったが,Yersinia enterocolitica(以下,Y.enterocolitica)の抗体価が上昇しており(0-3抗原40倍,0-5b抗原80倍,0-9抗原160倍),Y.enterocnlitica腸炎と診断した.臨床症状と検査所見が軽微であったため,乳酸菌製剤のみで経過を観察した.以後,回腸末端と回盲弁の病変は徐々に減少,消失し,血清抗体価の正常化と臨床症状の消失を認めた.
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国崎 主税, 小林 俊介, 今井 信介, 原田 博文, 森脇 義弘, 笠岡 千孝
1996 年 38 巻 3 号 p.
906-911_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は61歳の男性で腹部膨満感,便秘,体重減少を主訴に来院した.白血球数64300/μl, CRP11.0rng/dl, G-CSF152pg/mlと上昇していた.下部消化管造影検査で直腸から横行結腸中間まで全周性連続性にcobblestone appearanceを認めた.内視鏡検査で数珠状連続性にcobblestone appearanceを認めたが,明らかな発赤,潰瘍はなかった.病理組織学的に萎縮性肉芽腫を認めたためCrohn病を疑い,プレドニン30mg注腸サラゾピリン3.0g内服,経腸栄養を開始した.6カ月後には白血球数GRP,G-CSFは正常化し臨床症状も消失した.下部消化管造影検査では腸管は短縮し,haustraとcobblestoneは消失した.内視鏡検査では血管像が消失し,浮腫状粘膜を認めた.病理組織学的には好酸球を交えた軽度の炎症細胞浸潤のみであった.以上から潰瘍性大腸炎も考慮しなければならないと考えた.しかし,臨床症状,画像診断,病理組織像のいずれをとってもdiscrepancyがあり,特徴的な一つの既知疾患として捕え難く,分類不能型大腸炎と診断し,経過観察中である.
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答島 章公, 片岡 孝一, 大倉 敏裕, 堀江 貴浩, 高野 直之, 高麗 文晶
1996 年 38 巻 3 号 p.
912-916_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
空腸angiodysplasiaからの大量出血が認められた若年の1症例を経験し,術中小腸内視鏡が診断を確定するのに有効であったので報告した.症例は16歳男性.下腹部痛および大量の下血が続き,上部消化管内視鏡検査,大腸内視鏡検査および腹部血流シンチグラフィーにて出血部位を同定できず,開腹術を行った.空腸および虫垂の漿膜:面に,拡張し増生した血管を認め,術中内視鏡にてTreitz靭帯から50cmの空腸粘膜に,軽度盛り上がった発赤が見られ,近接にて拡張した血管が網目状に見られた.虫垂および,空腸病変部を15cmにわたり切除し,病理組織学的にangiodysplasiaと診断された.術後経過は良好で貧血も改善し,退院後は外来で定期的に経過観察されているが,30ヵ月経過した現在も再発出血は認められていない.
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石村 健, 近藤 昭宏, 谷内田 真一, 米本 治弘, 岡野 圭一, 國土 泰孝, 若林 久男, 前場 隆志
1996 年 38 巻 3 号 p.
917-923_1
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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80歳男性に対し総胆管切石術後に,長期間にわたりT-tubeによる胆道ドレーンを挿入していた結果,T-tube挿入孔の対側総胆管にポリープ性病変が発生した1症例を経験した.同症例は外胆汁瘻からの経皮的内視鏡下切除術により炎症性ポリープと診断された.成因としては,長期間にわたるT-tube留置による機械的刺激と慢性炎症の関与が考えられた.
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1996 年 38 巻 3 号 p.
924-964
発行日: 1996/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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