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越山 ますみ
1996 年 38 巻 4 号 p.
1001-1010
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
最近Helicobacter pylori (HP) の胃粘膜定着に関与する因子の一つとして注目されているABO血液型とHPの胃粘膜侵入様式との関連につき検討した. 対象は136名 (男69名,女67名) で, HPの胃粘膜侵入様式は組織標本を用いて0点-4点にスコア化した. 血液型別のHP検出率はA型73.8%,B型47.5%,AB型30.0%,0型72.7%であった. HP陽性者のみでHP菌数スコア及び胃粘膜侵入スコアを検討すると, 前庭部, 体部ともに0型で最も高く, 前庭部の侵入スコアのみ0型はB型に比べ有意に侵入スコアが高かった (p< 0.05) . さらに抗HPIgG抗体価とHP菌数スコア及び胃粘膜侵入スコアとの間には正の相関 (各々r=0.590, r=0.618) がみられた.以上よりABO血液型はHP感染の胃粘膜定着に関与する宿主側の一因子と考えられ, また抗HPIgG抗体価は胃粘膜におけるHPの菌数や侵入の程度を反映することが示唆された.
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武藤 学, 斎藤 行世, 小池 智幸, 飯島 克則, 神谷 尚則, 池谷 伸一, 佐々木 高志, 星野 英二, 望月 衛
1996 年 38 巻 4 号 p.
1011-1019
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除(EMR)において,内視鏡的には遺残を認めない組織学的水平断端陽性例の取り扱いを明らかにすることを目的とし,組織学的に水平断端陽性と判定された不完全切除粘膜内癌(m癌)例における追加治療とその臨床経過及び遺残,再発に関して検討を加えた.対象は根治を目的としたEMR症例91例中,経過観察及び評価可能なm癌66例である.組織学的水平断端陽性例に対する追加治療として,内視鏡的追加治療を22例(レーザー照射:9例,高周波焼灼術:13例)に施行し,2例(9.1%)に遺残を認めた.また,手術を6例に施行したが,手術標本に癌の遺残は認めなかった.一方,組織学的水平断端陰性38例(追加治療未施行33例,追加治療施行5例)では遺残,再発は認めなかった,以上より,組織学的水平断端陽性例に対する早期の積極的な内視鏡的追加治療は,遺残,再発を減少させられると考えられた.
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藤谷 幹浩, 冨松 久信, 光永 憲央, 瀬ノ口 洋史, 斉藤 彰一, 浜本 順博, 早川 尚男, 池延 東男, 市川 平三郎
1996 年 38 巻 4 号 p.
1020-1028_1
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
日常の内視鏡検査で頻繁に認める小発赤斑は,種々の良悪性病変を含んでいるが,その鑑別診断は必ずしも容易ではない.そこで過去3年間に病理組織学的に非腫瘍性と診断した小発赤病変415病変と,腫瘍性病変45病変(微小癌24病変,小胃癌19病変,異型上皮巣2病変)について内視鏡的検討を行なった.非腫瘍性病変はびらん活動期群,びらん修復期群,胃炎様群の3群に分類して,腫瘍性病変と比較した.びらん活動期群とびらん修復期群では辺縁隆起の程度についてのみ有意差を認め,びらん修復期群と胃炎様群は鑑別困難であった. 小発赤病変と比較して微小癌では,顆粒状の辺縁隆起を認め,不整な陥凹境界を呈し,棘状のはみだしを伴うことが特徴的であった. 微小癌と鑑別困難な病変はびらん復修期群,びらん活動期群,胃炎様群の順に多く,それぞれ26.1%,9.3%,6.9%であった.
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森田 敏裕, 藤井 久男, 山本 克彦, 石川 博文, 西川 徹, 畑 倫明, 吉川 周作, 稲次 直樹, 中野 博重
1996 年 38 巻 4 号 p.
1029-1037
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
近年虚血性大腸炎の一過性型についての臨床研究の報告は増加しているが,壊死型のまとまった報告は少なく,また一過性型との比較研究された論文もない.そこでわれわれは1982年から1993年までの12年間に経験した壊死型6例を報告し,一過性型71例の臨床像を比較に用いて壊死型の臨床的検討を行い,以下の結論を得た.1)壊死型は基礎疾患を持つ高齢者に多い.2)一過性型の発症が腸管側因子の関与が大きいのに対し,壊死型は血管側因子の関与が大きく,また血小板などの血液側因子の関与も示唆された.3)壊死型は左側結腸を病変部位に含むことが多く,診断にはS状結腸内視鏡検査が有効と考えられた.4)治療は壊死腸管の切除で,範囲は広範囲とすべきである.5)術後基礎疾患のコントロールに加え,凝固止血系疾患の合併に注意が必要である.
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齊藤 忠範, 池田 成之, 高沢 敏浩, 三浦 宏明, 小笠原 俊実, 久居 弘幸, 松山 友彦, 増子 詠一
1996 年 38 巻 4 号 p.
1038-1046_1
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
比較的稀な直腸疾患である粘膜下限局再発直腸癌2例,カルチノイド3例,平滑筋腫2例,平滑筋肉腫1例,隆起型粘膜脱症候群1例,異所性子宮内膜症2例,線維腫1例の7疾患12症例にEUSを施行し,その有用性を検討し以下の結果を得た.直腸癌粘膜下再発例は腫瘍は直腸壁外より粘膜下部に存在し,辺縁やや不整で内部にspotty high echo部を伴う低エコー,カルチノイドは境界明瞭,内部ほぼ均一で第4層よりやや高いエコーレベル,平滑筋腫は辺縁および内部不整は強くなく,内部に無エコー部も存在せず,平滑筋肉腫は辺縁および内部は不整で内部に高エコー部と低エコー部が混在していた.隆起型粘膜脱症候群例は粘膜下層を中心に比較的高エコー腫瘤内に散在1生低エコー部を認め,異所性子宮内膜症は漿膜と固有筋層は一塊となって肥厚し,境界不明瞭な低エコー,線維腫は内部比較的均一な低エコーとして描出された.以上よりEUSはこれらの鑑別診断や治療法の決定に有用であると考えられた.
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印牧 直人, 中澤 三郎, 山雄 健次, 芳野 純治, 乾 和郎, 山近 仁, 藤本 正夫, 若林 貴夫, 岩瀬 輝彦, 三好 広尚, 滝 ...
1996 年 38 巻 4 号 p.
1047-1056
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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結石による胆嚢管閉塞が原因で発症した胆嚢炎13例(急性胆嚢炎11例,慢性胆嚢炎2例)に対して内視鏡的経乳頭胆嚢ドレナージ(ETGBD)を試み,その有用性および適応症例について検討した.胆嚢管内へのカニューレの挿入は13例中10例76.9%に可能で,7例53.8%で結石の嵌頓を解除して胆嚢内ヘドレナージチューブを留置できETGBDに成功した.さらにETGBD成功7例中3例はドレナージチューブを利用してESWLによる胆嚢結石の治療が可能であった.結石による胆嚢管閉塞に対するETGBDの適応は,(1)急性胆嚢炎例,(2)嵌頓結石径が15mm以下,(3)US所見で胆嚢腫大と著明な胆嚢壁肥厚の両所見を同時に認めない,(4)胆嚢管の最小径が4mm以上,と考えられた.これらの症例に対しては発症早期にETGBDを試みることにより結石の嵌頓を解除でき,引き続き急性胆嚢炎の治療が可能と考えられた
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末岡 伸夫, 西垣 均, 岩切 勝彦, 竹内 司, 斎藤 整, 沢田 秀雄, 長谷川 修, 青木 正明, 小林 正文, 笹島 耕二, 山下 ...
1996 年 38 巻 4 号 p.
1057-1062_1
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例は68歳,女性.1990年から,逆流性食道炎の再燃再発を繰り返し,通院加療中であった.1995年2月,高度の貧血があり近医入院.食道潰瘍からの出血と診断され,輸血により貧血は改善したが,精査目的で同年3月当科入院となった.内視鏡検査所見,生検病理組織診断から,食道裂孔ヘルニアが存在し,Barrett潰瘍瘢痕を伴ったBarrett食道(7cm)と診断した.近医における初回内視鏡検査(1990年,11月)では,約2cmの食道内円柱上皮化生とびらん・潰瘍型の食道炎が存在した.以上から,4年5カ月間に,逆流性食道炎を繰り返し,約5cmのBarrett食道の進展が内視鏡的に認められた.国際的にも,経時的にBarrett食道の進展を観察しえた報告は少なく,非手術例としては,この症例が本邦第1例目となる.
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湯原 恭子, 海老原 次男, 高野 淑美, 佐藤 寿一, 福原 久之
1996 年 38 巻 4 号 p.
1063-1067_1
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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胃瘻より内視鏡的乳頭切開術(EST)および内視鏡的機械的結石破砕術(EML)を行い得た症例を報告する.症例は70歳男性で,進行食道癌の放射線ならびに化学療法中に,総胆管結石による胆管炎を合併した.食道狭窄のため通常の内視鏡挿入は行い得ず,胃瘻からの栄養療法の必要性もあったため,外科的胃瘻造設術を行った後,胃瘻よりESTおよびEMLを行い総胆管結石を除去し得た.
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三浦 直也, 浜本 哲郎, 岡田 克夫, 野口 直哉, 満田 朱理, 北岡 修二, 梅木 健介, 北野 雅之, 松野 充孝, 周防 武昭, ...
1996 年 38 巻 4 号 p.
1068-1072_1
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例は73歳女性.平成3年7月から胃RLHの診断で経過観察していたが平成6年3月の胃生検で悪性リンパ腫が疑われ,EMR標本を用いたSouthern blot法で免疫グロブリンH鎖の再構成を認めたため,組織所見と併せてMALTリンパ腫と診断した.患者が手術を拒否,Helicobacter pylori陽性であったため除菌を行った.治療後の内視鏡所見,組織所見は著明に改善している.本邦では詳細な報告例はなく,貴重な症例と思われ報告した.
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手塚 秀夫, 松山 秀樹, 杉山 勇治, 太田 岳洋, 井上 雄志, 丸山 千文, 増田 浩, 山口 貞祐, 平川 賢
1996 年 38 巻 4 号 p.
1075-1081_1
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
43歳女性.悪心,嘔吐,心窩部痛,体重減少にて入院.潰瘍歴や手術歴はない.胃内視鏡検査で胃角部小弯後壁のUL-IVの潰瘍底に結腸粘膜の突出が見られ,そこから液状糞便の流入を認めた.消化管造影検査で横行結腸から胃内へ造影剤の流入を認め,消化性潰瘍による胃結腸瘻と診断し広範囲胃切除術,結腸部分切除術を施行した.悪性腫瘍や胃切除後に続発する胃結腸瘻は散見されるが,消化性潰瘍による胃結腸瘻はまれである.
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遠藤 由香, 佐藤 弘房, 榛澤 清昭, 川原田 博章, 三田 正紀
1996 年 38 巻 4 号 p.
1082-1085_1
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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十二指腸乳頭部への食物侵入が原因と考えられた軽症急性膵炎の1例を経験した.症例は心窩部痛を主訴として来院,膵酵素の上昇を認め,急性膵炎を疑い治療した.ERCPを行ったところ,十二指腸乳頭部に食物線維の侵入が確認された.異物が原因となる急性膵炎は極めて稀と考え報告した.
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越知 泰英, 武川 建二, 前島 信也, 古屋 直行, 堀内 朗, 鈴木 章彦, 牛丸 博泰, 長谷部 修, 清沢 研道, 赤松 泰次
1996 年 38 巻 4 号 p.
1086-1090_1
発行日: 1996/04/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例は46歳男性.31歳時,十二指腸潰瘍のため胃幽門側切除術を受け,Billroth II法にて再建.44歳頃より時折心窩部に強い疝痛発作を訴え,当科を受診した.ERCPにて総胆管に直径約8mmの透亮像を認め,総胆管結石症と診断した.胆道拡張用バルーンを用いて乳頭拡張術を施行後,容易に結石除去ができた.本法はBillroth II法再建切除胃症例における総胆管結石除去に対し有用な手技と考えられた.
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