日本消化器内視鏡学会雑誌
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40 巻, 10 号
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  • 嘉川 潤一
    1998 年 40 巻 10 号 p. 1835-1843
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    超音波内視鏡(EUS)を用いて胃癌深達度診断を行ない,EUS診断基準の改良を試みた.病理組織診断の判明した胃癌170例の従来の診断基準での正診率は72%であった.誤診例の多くは潰瘍瘢痕を認め,そのEUS像は第3層の断絶,先細り中断が多く,潰瘍非合併正診例では不整中断を多く認めた.また第4層高度肥厚例ではss≦癌を多く認めたが,第4層軽度肥厚例では深達度の評価はできなかった.そこで第3層形態と第4層肥厚を考慮にいれた新たな診断基準を設定した.主な改良点は(1)第4層高度肥厚をss≦癌,(2)第4層が正常か軽度肥厚で第3層が先細り,断絶中断はm癌,(3)第4層軽度肥厚で第3層不整中断をmp癌,第3層肥厚をss≦癌,とした点である.新基準での正診率は81%で,特にm癌の正診率が59%から84%へ向上した.
  • 藤田 賢一, 山川 達郎, 苅部 正巳, 永井 孝三
    1998 年 40 巻 10 号 p. 1844-1850
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡直視下胃生検時に検者と介助者がどのように汚染されるかについてデンプン・ゲルとガウンを用いて調査すると共に,鉗子チャンネル内の細菌による検者や介助者の汚染様式とその程度および汚染予防対策としてのプラスチックエプロンの使用の意義について検討した.デンプン・ゲルの検者のガウンへの付着は腹部右側に8/13(61%)とやや多くみられ,左側では6/13(46%)と少なかった.しかし興味あることに介助者のデンプン・ゲル付着は検者より高度で,腹部で80%以上,胸部で60%であった.鉗子チャンネル内の細菌のガウンへの付着は,調査した5人の検者では認められなかったが,介助者では右側腹部の培養で5人中1人に数種の細菌が証明され,感染の危険が示唆された.この危険性はプラスチック・エプロンやアームカバーによって回避できると考えられた.以上,内視鏡の診断・治療中の体液の飛散により検者,介助者は少なからず汚染されることが示唆された.また得られた知見は感染防止策を立てる上で重要であると考えられた.
  • 重田 英隆, 関 誠, 太田 博俊, 上野 雅資, 田中 知行, 長尾 成敏, 高橋 孝, 佐藤 栄一, 高野 浩一, 柳澤 昭夫, 大川 ...
    1998 年 40 巻 10 号 p. 1851-1856
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の女性.近医にて上部消化管内視鏡検査中にVater乳頭部腫瘤を偶然発見された.生検でカルチノイドと診断され,当院で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)を施行した.乳頭部の粘膜下に径7mmの腫瘍が存在した.Vater乳頭部カルチノイドは稀であるが,10mm以下の微小報告例は5例とさらに少ない.微小例といえども悪性度が高く,リンパ節郭清を伴う膵頭十二指腸切除が必要である.
  • 井上 雄志, 鈴木 茂, 鈴木 衛, 村田 洋子, 飯塚 文瑛, 中村 哲夫, 本間 直子, 高崎 健
    1998 年 40 巻 10 号 p. 1857-1863
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    過去5年間に東京女子医科大学消化器病センターで経験した大腸早期癌で内視鏡的分割切除を行った42例を対象に分割切除の有用性と問題点を検討した.分割切除の切除回数は,形態では結節集簇様病変が約5回,腫瘍最大径では30mm以上の病変が約6回と多かった.切除標本が完全回収できたのは36例(86%)で,回収した標本の最大切片は平均約14mmであり,全例に壁深達度診断が可能であった.m癌は35例で再発例はなかった.sm癌は7例で,内視鏡的に完全摘除し得た4例中全回収できなかった1例に局所再発を認めた.不完全摘除は3例で,いずれもsmmassive invasionで追加腸切除を行い,2例に標本上癌遺残を認め,癌遺残を認めなかった1例には1群および2群にリンパ節転移を認めた.このことから大腸早期癌の内視鏡的分割切除はm癌に対しては有用であるが,sm癌の分割切除は慎重にすべきと思われた.
  • 小沢 俊文, 奥山 裕子, 奥村 浩二, 土屋 豊一, 丹治 伸夫, 安斎 幸夫, 柴田 昇, 海上 雅光, 荒井 清一, 坂 充
    1998 年 40 巻 10 号 p. 1864-1871
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性.人間ドック時に,胃に異常を指摘され近医にて胃内視鏡検査を実施された.体下部小轡にIII+IIc型病変を認め,1カ月後の再検査の際に実施した生検にて腺癌が得られ当院に紹介となった.近医初診より2.5カ月後に当院にて実施した胃内視鏡検査ではIIa+IIc型早期胃癌と診断し,胃全摘手術を実施した.乳頭状および髄様増殖を示す腺癌で深達度はsm,免疫染色で腫瘍細胞にAFPが陽性であった.血清AFP値はドック時には7.8(ng/ml)であり,術前には147.6と急上昇し術後に9.3と正常化した.短期間の形態変化と平行してAFPが上昇したAFP産生早期胃癌の報告例は本邦初であり,ここに報告する.
  • 荒井 正彦, 牛丸 博泰, 今井 康晴, 古田 清, 寺島 益雄, 古川 賢一, 熊澤 成幸, 石坂 克彦, 中村 学, 中藤 晴義, 勝山 ...
    1998 年 40 巻 10 号 p. 1872-1878
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性.健診の上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行部に中心陥凹を伴う粘膜下腫瘍様の病変を認め,生検結果は高分化型腺癌であった.低緊張性十二指腸造影では同部に大きさ2cmの隆起性病変を認め,腹部US,CT,ERCPでは著変を認めなかった.十二指腸部分切除術を施行しその病理学的検索でBrunner腺腫の一部に深達度smの高分化型腺癌を認め,粘液組織化学的検討によりBrunner腺由来の十二指腸癌と考えられた.
  • 青木 秀俊, 栗永 篤信, 池田 康将, 北添 健一, 加藤 みどり, 吉田 智則, 星島 康男, 川井 尚臣
    1998 年 40 巻 10 号 p. 1879-1883
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    患者は82歳の男性,大腸癌術後の大腸内視鏡検査で直腸S状結腸移行部に,直径約1cmの黄白色調で円型の扁平隆起性病変を認めた.隆起の辺縁部には無名溝が認められ,表面構造は微細で柔らかく,non lifting sign陰性のため内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した.病理組織は粘膜固有層を中心に組織球の増殖を主体とした肉芽腫性病変で,一部の組織球内にはvon Kossaと鉄染色陽性の同心円状構造を示す封入体(Michaelis-Gutmann body)を認め,大腸マラコプラキアと診断した.
  • 青木 哲哉, 大川 清孝, Takashi NAKAI, 佐野 弘治, 針原 重義, 山田 忍, 藤本 泰久, 奥野 匡宥, 佃 博, 井上 ...
    1998 年 40 巻 10 号 p. 1884-1888
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.便潜血反応陽性精査目的に当科を受診した.注腸X線検査,大腸内視鏡検査を施行した結果,虫垂開口部より突出する表面不整で分葉傾向を伴う腫瘤を認めた.虫垂癌を疑い手術が施行された.原発性早期虫垂癌(腺腫内癌)であった.原発性虫垂癌は早期の状態で発見されることの少ない疾患であり,注腸X線,大腸内視鏡検査の際は虫垂の観察を十分に行うことが必要と考えられた.
  • 岩崎 良三, 永原 章仁, 太田 一樹, 飯島 克順, 大野 康彦, 前広 康平, 大蔵 隆一, 三輪 洋人, 佐藤 信紘, 細川 義則, ...
    1998 年 40 巻 10 号 p. 1889-1896
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    多発肝転移を伴っ謂内分泌細胞癌の2例にCAP・PVP Hybrid化学療法を施行した.症例1は58歳男性.3,型胃癌で,化学療法は鰍であった.症例2は69歳男性.5'型の胃癌で,化学療法2コース施行で原発巣および肝転移巣の著明な縮小がみられたが,その後,肝転移巣の急速な増大がみられ,再治療は無効であった.胃内分泌細胞癌は早期に肝転移をきたし,予後不良な稀嫉患である.今後,症例を積み重ねて有効な治療法を確立することが必要と思われた.
  • 東田 元, 小坂 星太郎, 東 征樹, 中沼 安二, 宮森 勇
    1998 年 40 巻 10 号 p. 1897-1903
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は24歳女性.16歳時に潰瘍性大腸炎(UC)と診断され20歳で緩解に至ったが,肝胆道系酵素の上昇を認め当科受診.ERCPにて肝内外胆管の非連続性狭窄および拡張像を,肝生検にて胆管周囲の繊維化像を認め,UCに併発した原発性硬化性胆管炎(PSC)と診断した.本例ではUDCAとステロイドの併用療法が効果的であった.両疾患の合併は本邦では比較的まれで,ステロイド有効例の報告も少なく,貴重な経験と考えられた.
  • 1998 年 40 巻 10 号 p. 1904
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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