日本消化器内視鏡学会雑誌
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40 巻, 5 号
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  • 根本 行仁, 村田 洋子, 光永 篤, 鈴木 茂, 林 直諒
    1998 年 40 巻 5 号 p. 763-772
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれは細径プローブを用いた超音波内視鏡(EUS)と内視鏡的超音波カラードプラ法(ECDUS)を使用し,静脈瘤の形態(血管径,貫通血管,噴門部静脈瘤の有無)および血流速度について検討した.対象は未治療の食道・胃静脈瘤20症例とした.食道静脈瘤の径,血流速度,貫通血管の本数は内視鏡所見のF因子,F2群とF3群で有意差を認めた.噴門部静脈瘤(Lg-c)はF2の61.5%にF3の100%に認められ,F3はF2に比べ,Lg-cの径が太く本数が少ない傾向にあった.また,食道静脈瘤の径と血流速度,径と血流量には相関が認められ,食道静脈瘤の径を測定することで,血流速度と血流量の予測が可能と考えられた.
  • 石田 正実, 寺野 彰, 田淵 正文, 平林 かおる, 藤盛 孝博
    1998 年 40 巻 5 号 p. 773-778
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    上部消化管内視鏡検査施行351症例について,迅速ウレアーゼ試験(RUT),病理組織学的方法により, Helicobacter pylori (H.pylori)の検出効率の相関について検討した.RUT陽性率は,44.2%(155/351)であり,その陽性例で,H.E.染色,Giemsa染色におけるH.pylori検出率は,それぞれ92.3%(143/155),99.4%(154/155)であった.さらに,RUT陽性例中,中間色を呈した28例について,Warthin-Starry法,免疫染色を追加して行った.H.E.染色,Giemsa染色で,その検出率は,いずれも100%(28/28)であったのに対し,Warthin-Starry法,免疫染色ではそれぞれ47.8%(11/28),78.6%(22/28)と低かった.RUTは,迅速性,簡便性,経済性に優れ,非常に有用であるが,菌量が少ない場合や中間色の判定などに問題がある.よって,通常の生検診断において,H.E.染色,Giemsa染色を併用することにより,H.pylori同定が可能であり,除菌療法後の判定という点からも,組織学的検査は不可欠と考えられた.
  • 安藤 貴志, 上田 三穂, 本郷 仁志, 西村 俊一郎, 乾 増幸, 古木 武司, 高森 成之, 森田 豊, 吉田 憲正, 吉川 敏一, 近 ...
    1998 年 40 巻 5 号 p. 779-785
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.検診にて十二指腸球部に良性隆起性病変を認め14年間経過観察されていたが,生検でGroup Vを認めたため当科へ入院.内視鏡検査にて十二指腸球部後壁にφ20×30mmの亜有茎型早期十二指腸癌と診断した.胃体下部大彎にIIa型早期胃癌も認められた.転移はなく内視鏡下に両病変の粘膜切除を行った.組織学的に前者は高分化管状腺癌で深達度はsm1,断端陰性,後者は高分化腺癌で深達度m,断端陰性であった.
  • 田畑 寿彦, 渕上 忠彦, 小林 広幸, 堺 勇二, 飯塚 佳彦, 永江 隆, 菊池 陽介, 長村 俊志, 石川 伸久, 中島 穣, 吉永 ...
    1998 年 40 巻 5 号 p. 786-791
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性.36歳時早期胃癌で幽門側胃切除術の既往あり.食思不振を主訴に胃内視鏡検査を受けたところ,残胃前壁に表面が陥凹した隆起性病変(主病巣)と後壁に2個の微小陥凹を認めた.生検ですべて印環細胞癌と判明し,残胃全摘術を施行した.主病巣は2×1cmの深達度ssのIIa+IIc類似進行癌で,組織型は印環細胞癌を伴う低分化腺癌であった.その他に15個のIIc~IIb型小印環細胞癌を認めた.残胃の10個以上の多発癌は非常に稀であり報告した.
  • 村上 幸太郎, 石井 圭太, 三橋 利温, 安海 義曜, 勝又 伴栄, 西元寺 克禮, 三富 弘之
    1998 年 40 巻 5 号 p. 792-796
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性.子宮頸癌stage IIIbと診断され外照射tota1 50Gy,腔内照射tota 130Gyにて放射線療法施行.8カ月後,新鮮血の下血が出現したため,当科受診.大腸鏡検査にて放射線腸炎と診断.経腸栄養,低残渣食,ステロイド坐薬による保存的療法にて経過観察するも下血のコントロールは困難であり頻回の輸血を要したため,内視鏡的止血術として頻回ヒータープローブ療法を施行した.以後貧血の進行を伴う出血はみられなかった.放射線腸炎の出血に対する治療法の一つとしてヒータープローブ療法による止血法は有用と思われた.
  • 遠藤 和則, 大石 孝, 平川 隆一, 吉田 行雄, 山中 桓夫, 首藤 介仲, 吉田 剛, 山田 茂樹, 藤来 靖士
    1998 年 40 巻 5 号 p. 797-802
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は49歳男性.下痢を主訴に受診し,下部消化管検査で虫垂開口蔀に結節集簇様の病変を認めた.内視鏡的切除を試みた際に膿汁様の白色液の流出を認めた.これらの所見に超音波内視鏡及び腹部超音波検査などの所見と合わせ,虫垂炎に伴う炎症性隆起と診断し外科的切除術を施行した.隆起はリンパ濾胞過形成と粘膜下層肥厚であった.本例の様な虫垂炎は,虫垂開口部の結節集簇様病変の鑑別疾患の1つとして重要と思われた.
  • 石原 立, 奥野 優, 渡部 健二, 高瀬 靖, 稲田 正己, 石田 毅, 北田 昌之, 塚原 康生, 高見 元敝, 花田 正人
    1998 年 40 巻 5 号 p. 803-807
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は29歳男性,暗赤色の下血を主訴に入院.大腸内視鏡検査で盲腸から下行結腸上部に数mm大の斑点状発赤が散在性にみられた.動脈造影にて上行結腸及び脾彎曲部に拡張した細血管網の濃染像を認め,大腸angiodysplasiaと診断し拡大右半結腸切除術を施行した.病理組織学的には粘膜及び粘膜下層に拡張した細血管の破綻と出血を認めた.大腸angiodysplasiaは高齢者に多いとされているが,本症例のような若年者にも発症がみられることを報告した.
  • 上野 義隆, 箭頭 正徳, 竹森 政樹, 平井 栄一, 仲村 洋, 鈴木 紘一, 小野田 登, 林 篤, 大原 信, 北洞 哲治, 岩男 泰 ...
    1998 年 40 巻 5 号 p. 808-812
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性.昭和53年発症のクローン病の患者.小腸大腸型で空腸上行結腸瘻を認めているが,ED療法および7年間の6-MP30mgの少量投与を行い外来にて経過観察していた.今回6-MP中止6カ月後,37℃台の微熱および血便を認め当院へ入院となる.大腸内視鏡検査にてS状結腸に狭窄と縦走潰瘍を認め,出血源と判断し,ステロイドの内服および注腸療法を開始し,症状は軽快した.上部消化管内視鏡検査にて胃体部に皺壁に沿った念珠状の隆起を多発性に認めたが13年前に施行された上部消化管検査では明らかな病変は認められず,この間に形成され出現したものと思われた.内視鏡的粘膜切除術により採取した胃体部組織所見では類上皮細胞肉芽腫は確認しえなかったが,内視鏡的には横田らの報告したいわゆる“竹の節状びらん”に相当する所見であり,本症の胃病変を考察する上で興味ある症例と思われた.
  • 河相 恵子, 道堯 浩二郎, 瀬川 明子, 南 尚佳, 山内 雄介, 井内 英人, 舛本 俊一, 平田 真美, 堀池 典生, 恩地 森一
    1998 年 40 巻 5 号 p. 813-817
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,男性,大酒家.腹部超音波,CTにて肝S5に径5cmの腫瘤性病変を認めた.腹腔鏡下肝生検で同部は粗大結節状再生と診断され,他の部位はアルコール性肝硬変の所見であった.画像診断にて確定診断が困難な結節性病変に対しては腹腔鏡検査,生検が有用と考えられた.
  • 鎗水 隆, 平野 雅弘, 中野 文香, 友成 健一朗, 伊井 和成, 常富 亘人, 日野 成子, 安部 康二, 津田 富康
    1998 年 40 巻 5 号 p. 818-823
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は34歳男性.しめ鯖を摂食後3日目に右下腹部痛,下痢が始まり,4日間症状が持続するため来院.5日目上下部消化管内視鏡検査を施行.下部検査でバウヒン弁に浮腫状変化,その口側約10cmの回腸粘膜に発赤,びらん,粘膜に刺入したアニサキス虫体を認め,鉗子にて虫体を除去.その後症状は速やかに消失した.回腸アニサキス症は診断が困難で内視鏡的に摘出された症例は現在までに報告はなく貴重な経験と考えられた.
  • 田中 聖人, 向井 秀一, 中島 正継, 安田 健治朗, 趙 栄済, 早雲 孝信, 芦原 亨, 平野 誠一, 望月 直美, 宇野 耕治, 東 ...
    1998 年 40 巻 5 号 p. 824-832
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    オリンパス光学で試作された親子方式の電子内視鏡システムを用いて,胆道疾患18例と膵疾患4例の計22例に経口的胆膵管内視鏡法(PCPS)を施行し,その有用性について検討した.本システムは十二指腸電子内視鏡(XTJF-M 200)と胆道電子内視鏡(XCHF-B 200)で構成され,いずれも画像処理機構として面順次方式の超小型圧電素子(CCD)を採用している.さらに照射光量の増加とCCDの画像分解能の向上が計られており,明るく鮮明な胆膵管の画像が得られた.また,モニター画像の多人数の同時観察や画像の多方面での記録と再現などの電子内視鏡の長所も十分に効果を発揮した.しかし,子スコープの鉗子孔がやや狭くなったために従来機より細径の処置具を使用せざるを得ず,生検や切石などの処置能に若干の問題を認めた.本システムの開発により,胆膵領域も電子内視鏡を応用する時代に入ったと考えられ,今後の新たな発展と展開が期待される.
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