日本消化器内視鏡学会雑誌
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40 巻, 7 号
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  • 山田 義也
    1998 年 40 巻 7 号 p. 991-997
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     最近は日本でもエイズに関連した消化器病変の報告が,ときどきみられるようになってきた.都立駒込病院では,1989年から1997年までに170件の上部消化管内視鏡検査を,47件の大腸内視鏡検査をHIV感染症患者に施行しており,その経験を基にエイズの内視鏡検査について概述する. エイズに関連した消化器病変は,特徴的な内視鏡所見を呈するものが多かった.食道病変としてはCandida食道炎,Cytomegalovirus(CMV)による食道潰瘍が多くみられた.Candida食道炎は厚い全周性の白苔を認めることが多かった.CMVによる食道潰瘍は,潰瘍周囲に浮腫をほとんどともなわず,潰瘍底には白苔のない打ち抜き様の潰瘍が特徴的であった.胃病変,十二指腸病変,および大腸病変としてはカポシ肉腫が多くみられ,まだらな発赤の粘膜下腫瘤様の隆起が特徴的であった.大腸病変では,CMVによる潰瘍,大腸炎も見られた. エイズ患者の内視鏡検査施行後の消毒は,基本的になB型肝炎に準じてスコープの消毒を施行すればよい.すなわち少なくとも45分以上2%グルタールアルデヒドに浸け置きし,機械洗浄すれば問題はない.
  • 鈴木 茂
    1998 年 40 巻 7 号 p. 998-1010
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     微小胃癌に対する内視鏡診断の現状と問題点を微小胃癌200病巣(診断病巣97)から,歴史的事項と共に検討した.診断病巣の内視鏡的特徴は,基本的に赤色型(分化型)と白色型(未分化型)に二大別でき,それぞれが隆起,平坦,陥凹に分類された.微小胃癌発見のためには,これら2型の内視鏡所見を豪ず見付け出すことが肝要で,その上で,拡大観察,色素法を駆使し,第1個目の生検を確実に採取することが必須である.診断の限界は2-3mmであり,未分化型癌は13.4%と少なく,sm癌は2.0%にみられた.未分化型微小胃癌の少ない理由は,40歳代後半の若年層が検査の対象にならないこと,胃上部での発見が難しく,見逃しがあること,純粋未分化型癌は本来比較的に少ないことによる.微小胃癌は大部分が発育増大するが,一部が脱落消失する可能性もある.今後の微小胃癌診断には診断技術の一層の向上と内視鏡機器の進歩改良が必要である.
  • 井上 雄志, 鈴木 茂, 鈴木 衛, 村田 洋子, 飯塚 文瑛, 中村 哲夫, 梁取 絵美子, 桜井 明, 鬼沢 俊輔, 本間 直子, 高崎 ...
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1011-1017
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去10年間に経験した大腸sm癌295例を対象に大腸sm癌の内視鏡的治療について検討した.内視鏡切除標本でsm1であった106例中12例に追加腸切除を施行したがリンパ節転移例はなかった.内視鏡切除標本でsm massiveであった症例は81例あり,断端陽性19例,断端陰性62例で,55例(断端陽性例は全例,断端陰性例は36例)に追加腸切除を施行した.断端陽性では癌遺残を5例,リンパ節転移を1例,異時性肝転移を1例に認めたが,断端陰性36例ではリンパ節転移は1例のみで,これはEMRやEUSが普及する以前の症例で固有筋層まで切除され,断端陰性を得た症例であった.初回から開腹術を選択した108例では12例にリンパ節転移を認め,うち11例がsm2以深かつ脈管侵襲陽性例があった.以上より内視鏡切除で断端陰性が得られたsm癌の追加腸切除は,現段階では切除標本上sm massiveでかつ脈管侵襲陽性例に適応すべきで,それ以外の断端陰性が得られたsm癌は内視鏡切除で根治の可能性が高く,追加腸切除は,充分なinformed consentの上,慎重に適応すべきと思われた.
  • 行木 太郎, 柿沼 臣一, 川手 進, 常沢 伸幸, 菊地 麻美, 竹吉 泉, 小川 哲史, 大和田 進, 森下 靖雄
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1018-1022
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は80歳,女性.食道癌術後の頸部食道・胃管吻合部の良性狭窄に対して内視鏡的バルーン拡張術を計12回,ブジー拡張術を計21回行った.一時的な効果しか得られなかったため,1.99年4月,Self-expandable metal stentを挿入した.狭窄は改善しファイバースコープも通過可能となり,粥食の摂取も出来るようになった.しかし同年7月よりステント内腔への肉芽増生のため再狭窄をきたした.同部に対し無水エタノール局所注入療法を計7回施行したところ,肉芽は脱落し著明な改善が得られた.しかし,再度肉芽の増生を生じたため,さらに数回のエタノール局注とバルーン拡張術を行った.最終的には1997年6月ポリウレタン膜でカバーした改良型のhovered expandable metal stmtをstent in stentの形で挿入し,経口摂取可能となった.
  • 前原 巳知夫, 山田 暢夫, 渡部 博之, 三浦 雅人, 加賀 豊章, 加藤 眞明, 八木澤 仁, 正宗 研
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1023-1027
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     80歳,女性,突然の心窩部痛,嘔吐のため入院.35年前胃ポリープにてBillroth II法再建による胃亜全摘術施行.3年前吻合部潰瘍と診断され治療された.経過観察のため施行した内視鏡検査で潰瘍の瘢痕による狭窄が観察された.入院時腹部CTで輸入脚の著明な拡張を認め,内視鏡で吻合部輸入脚側入口部に狭窄を認めたため吻合部狭窄による輸入脚症候群と診断した.内視鏡下に実施したバルーン拡張術で症状は改善し,治療10ヵ月後の現在再発を認めていない.
  • 米田 諭, 山根 佳子, 中谷 敏也, 岩澤 秀, 斉藤 守重, 西村 公男, 渡邉 巌, 吉川 正英, 小林 洋三, 福井 博
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1028-1033
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は70歳女性,ヘモグロビン値4.6g/dlと著明な低下を認め,精査目的にて入院となった.上部消化管内視鏡では,胃前庭部に限局した広範な粘膜発赤域が観察された.病理組織学的には粘膜固有層に多数の拡張した毛細血管の増生を認めGastric antral vascular ectasiaと診断した.合計6回のNd:YAGレーザーによる内視鏡的焼灼治療後には,粘膜発赤域はほぼ消失し,貧血も改善した.本症に対してNd:YAGレーザーによる焼灼は有効かつ安全と考えられた.
  • 久居 弘幸, 斎藤 忠範, 佐々木 宏嘉, 高橋 康雄, 片平 竜郎, 松山 友彦
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1034-1039
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は64歳,男性.平成2年より右膝原発の悪性線維性組織球腫(Malignant fibrous histiocytoma以下,MFH)にて治療を受けていたが,平成7年1月頃より心窩部不快感あり当科受診.胃X線検査および内視鏡検査で前庭部大彎側後壁に中心陥凹を伴う粘膜下腫瘍様病変を認めた.生検でMFHが疑われ,他に遠隔転移を認めなかったため,同年4月胃分節切除術を施行.大きさ3.3×3.0cm,深達度ssのMFHの胃転移と診断した.
  • 山本 さゆり, 金子 宏, 永井 弘文, 伊豫 隆, 山下 功一, 早川 俊彦, 宇留間 元昭, 山口 力, 森 省三郎, 満問 照典, 金 ...
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1040-1047
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は74歳,女性.主訴は発熱と圧痛を伴う右下腹部の手拳大腫瘤.画像検査では上行結腸の背部内側に同部を圧排する充実性腫瘤が存在した.抗生剤治療を施行し,一週間で腫瘤は著明に縮小した.大腸内視鏡検査にて虫垂開口部に径約1cmの粘膜下腫瘍様隆起を認めた.虫垂腫瘍を疑い右半結腸切除術を施行した.腫大した虫垂は上行結腸後面と癒着し,虫垂内には約2mlの粘液が認められた.組織学的には限局性腹膜偽粘液腫を伴う虫垂粘液嚢胞腺腫であった.
  • 刈屋 憲次, 古川 善也, 松本 能里, 山本 昌弘, 山岡 義文, 藤原 恵, 斉藤 元吉, 佐々木 幸治, 田利 晶
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1048-1053
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は61歳,女性.主訴は血便.大腸内視鏡検査にて,S状結腸に約15mm大の粘膜;下腫瘍様病変を認めた.超音波内視鏡検査(EUS)で病変が粘膜下層までにとどまっていることを確認後,内視鏡的粘膜切除術(EMR)にて切除した.術中術後を通して出血などの合併症は認めなかった.組織学的には海綿状血管腫であった.基部断端はわずかに陽性であったが,4カ月後も再発は認めていない.EUSを含む十分な準備下では,大腸血管腫に対しても内視鏡的切除術は有意義な治療法であると考えられた.
  • 萩野 晴彦, 藤澤 貴史, 友藤 喜信, 坂下 正典, 黒田 信稔, 阪本 哲一, 前田 哲男, 中原 貴子, 前田 光雄, 西上 隆之
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1054-1060
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は54歳男性で,大腸癌検診陽性のため大腸内視鏡検査を施行.直腸S状結腸曲に,陥凹内に丈の高い隆起を有するIIc+Isp型腫瘍を認めた.陥凹内隆起部で中等度のsm浸潤を疑い,高位前方直腸切除術を施行した.実体顕微鏡では陥凹部および陥凹内隆起で配列が不規則なIII、+Vpitを認めy辺縁隆起でもIIILpitを認めた.病理組織学的にはIIc+Is型,tub1,m,ly0・v0,n0,14×8mmの早期大腸癌で,IIc部分は側方発育型腫瘍に属する病変と考えられた.またIs部分は粘膜固有層の軽度の線維筋症,粘膜および粘膜下層の高度な線維化と壁肥厚を伴う血管の増生よりなり,その組織学的特徴から成因として粘膜脱の関与の可能性が示唆された.
  • 中沢 和之, 中江 遵義, 向林 知津, 生馬 和樹, 熊本 光孝, 岡 陽子, 石原 靖士, 谷口 友志, 清水 達也, 土橋 重隆, 伊 ...
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1061-1066
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     70歳,男性.平成9年5月17日心窩部痛あり.翌日から下血も出現したため,当院を受診し緊急入院した.入院時Hb 9.89/dlと貧血を認めた.上部内視鏡検査では十二指腸下行脚に傍乳頭憩室がみられ,憩室内にoozingを伴う潰瘍を認めた.エピネフリン加高張食塩水(HSE)を2ml局注し,止血した.十二指腸憩室出血は,本邦では自験例を含めて59例の報告があるが,そのうち内視鏡的に止血されたのは16例(27%)のみである.
  • 金本 孝樹, 青柳 邦彦, 平川 克哉, 中村 昌太郎, 江口 浩一, 八尾 隆史, 松尾 榮一, 藤島 正敏
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1067-1071
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は78歳男性.胃癌の術後再発に対し,末期治療として行ったステロイド投与を契機に下腹部痛・血便が出現.大腸内視鏡検査で,直腸・S状結腸に多発する地図状の下掘れ潰瘍を認めた.潰瘍部の生検で多数の巨細胞封入体と抗CMV抗体を用いた免疫染色で陽性細胞を認め, CMV腸炎と診断した.内視鏡下生検で診断された本症の報告は本邦ではいまだ少なく,自験例の内視鏡像は特にアメーバ性大腸炎との鑑別が困難であった.
  • 越知 泰英, 武川 建二, 前島 信也, 古屋 直行, 堀内 朗, 新倉 則和, 清沢 研道, 赤松 泰次
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1072-1078
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は84歳男性.1993年2月に膵頭部癌に対し膵頭十二指腸切除術を施行され経過良好であったが,同年10月より胆管空腸吻合部の狭窄と総胆管結石による急性胆管炎を繰り返した.内視鏡的に吻合部の拡張と胆道ドレナージを施行し,ウルソデオキシコール酸の投与を追加したところ結石は消失し,吻合部狭窄も改善した.両者の併用は低侵襲かつ簡便であり,結石除去治療困難例に対して試みてよい方法と考えられた.
  • 印牧 直人, 山雄 健次, 中澤 三郎, 芳野 純治, 乾 和郎, 奥嶋 一武, 中村 雄太, 高島 東伸, 渡辺 真也
    1998 年 40 巻 7 号 p. 1079-1087
    発行日: 1998/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     粘液産生膵腫瘍4例を対象として3次元膵管内超音波検査法(3D-IOUS)を試み,その有用性と問題点について従来の膵管内超音波検査法(IDUS)と比較検討した.3D-IDUSは超音波3次元画像処理システムを使用して経乳頭的に走査した.観察範囲は膵頭部3例,膵体尾部までが1例であった.全例でラジアル画像およびリニア構築像により病変部の全体像の把握や壁在結節の観察能がIDUSと比較して向上した.また,嚢胞の容積の測定が可能であった.しかし現在使用している機種では実施可能な症例が限定されることから,今後は機器面での改良が必要である.
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