日本消化器内視鏡学会雑誌
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40 巻, 8 号
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  • 有馬 秀明
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1125-1137
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道粘膜を拡大観察し,病理組織所見と比較検討した.切除標本を200倍で観察して初めて認められた微細な血管は,連続切片にて検討した結果,粘膜固有層の血管網から上皮下乳頭内へ立ち上がる毛細血管であることが明らかになった.その乳頭内血管を,細いtype1,らせん状のtype2,不規則に蛇行するtype3,錯綜するtype4に分類した.type1,2は正常粘膜,type3,4は癌であることが高率であった.また,主にsm層を走る深部血管が透見される(+)群は正常もしくは1pmまでの癌であったが,(-)は正常からsm癌まで様々であった.ヨード不染帯を拡大観察により,乳頭パターンが明瞭なTypeA,癒合したTypeB,認められないTypeCに分類した.TypeAには異型がほとんどなかったが,TypeBには異型を認めるものが含まれ,TypeCは癌であることが多かった.拡大内視鏡検査では,血管パターン,ヨード不染帯パターンとも,同様の結果が得られ,臨床診断に有用であると考えられた.
  • 山口 康晴, 桜井 幸弘, 山村 冬彦, 大山 高令, 寺田 光宏, 伊藤 慎芳, 瀬在 秀一, 神坂 和明, 安部 孝, 池上 文詔, 多 ...
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1138-1144
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1986年から95年までの10年間に当院にて施行された上部消化管内視鏡にて逆流性食道炎,食道潰瘍と診断された1,661例をロサンゼルス分類に基づき分類し,各Gradeにおける疫学的検討を行った.なお,胃切後食道炎,機械的損傷食道新生物は除外した.GradeA,Bが77%を占め,頻度では男性は60歳以上にピークを認め,女性は年齢とともに増加した.年度別推移では明らかな増減傾向はなかった.各Gradeとも無症状が多く,胸焼けはGrade上昇とともに増加した.食道裂孔ヘルニア及びパレット食道に合併した食道炎はC,Dの割合が多かった.消化性潰瘍との関連ではGrade上昇とともに十二指腸open ulcerの頻度が増加した.同分類では,4.2%に分類不能例を認め,明らかなmucosal breakのない,いわゆるGrade Oの食道炎の扱いが問題であるが,簡便であり,有用な分類と思われた.
  • 市川 一仁, 小野 祐子, 平林 かおる, 酒井 義浩, 藤盛 孝博
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1145-1155
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     外科的に広範なリンパ節郭清を伴った胃切除術がなされた早期胃癌41症例に関して,深達度,脈管侵襲,リンパ節転移の有無を対比し,免疫組織学的に悪性度の再評価を試みた.E-Cadherin及びa-Cateninの発現は,Undiff型(undifferentiated type)は,ほぼ均一に減弱し,Diff型(differentiated type)は深部浸潤に伴い減弱傾向があった.c-Metは,粘膜下浸潤癌(sm癌)に過剰発現し,その傾向はDiff型で顕著であった.一方,癌病巣の表面積が広い程,sm癌,リンパ管侵襲の頻度が高かったが,粘膜内進展に比べ深部浸潤が特異的に強くみられるPEN型(penetrating type)早期胃癌も3例認められ,全例にリンパ管侵襲,2例に静脈侵襲とリンパ節転移を認め,P53とc-Metの過剰発現が特徴的であった.これらの結果は,内視鏡的治療の適応やその後の治療方針を考える上で重要と考えられた.
  • 渡邊 浩光, 樋渡 信夫, 木内 喜孝, 野口 光徳, 前川 浩樹, 桂島 良子, 豊田 隆謙
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1156-1163
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     鉗子孔挿入型細径超音波プローブを用いて,大腸クローン病における各病期および治療前後での大腸壁の層構造の変化,特にSM,MP層に注目し,正常対照群と比較検討した.敷石像で壁肥厚が最も強い部分および隆起のない壁の最も薄い部分,偽ポリポーシス像(緩解像)の壁肥厚が最も強い部分では,SMは正常対照群と比し有意に肥厚を示していた.敷石像と偽ポリポーシス像間の比較では,壁肥厚が最も強い部分,壁の最も薄い部分にかかわらず,敷石像で有意にSMの肥厚が認められた.一方,MPは敷石像,偽ポリポーシス像とも正常対照群と比較し有意に肥厚していた.両群間の比較では,MPの厚さに有意差を認めなかった.アフタや円形潰瘍においては,正常対照群と比較しSM,MPの厚さに有意差を認めなかった.狭窄例ではSMに比べMPで著しい肥厚が認められた.クローン病における本検査法は,大腸壁深部への炎症の波及をとらえることが可能であり,病態把握や治療効果判定の指標となりうると考えられた.
  • 萩原 信敏, 恩田 昌彦, 笹島 耕二, 宮下 正夫, 丸山 弘, 大川 敬一, 松谷 毅, 金子 昌裕, 土屋 喜一, 山下 精彦, 田久 ...
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1164-1171
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     稀な食道粘表皮癌の2手術例を経験した.2症例ともに内視鏡所見は,周囲粘膜とほぼ同じ色調を呈する隆起性病変を示し,病理所見は扁平上皮癌成分と腺癌様成分の混在する典型像を示した.症例1は術前化学療法を施行するも奏効度は不変,術後10カ月で脳・肺転移にて死亡した.症例2は術後1年9カ月を経過し再発を認めず通院中である.病理学的検討では,粘液染色陽性でCEA,p53,PCNAの免疫組織学的染色でも陽性像が得られた.
  • 赤座 香予子, 中村 栄男, 須知 泰山, 野村 知抄, 中野 浩, 黒田 誠, 笠原 正男
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1172-1177
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は73歳,女性.胃に多発性の粘膜下腫瘍様病変を認め,胃全摘術を施行した.これら多発性病変は病理組織学的,免疫組織化学的に胃原発ポリープ状MALT型リンパ腫と診断された.しかしながら腫瘍細胞は粘膜内よりもむしろ粘膜下層に増殖の主座を有し,リンパ上皮性病変(1ymphoepithelial lesion:LEL)もわずかであることが特異であった.また検索し得た限りではHelicobacter pylori感染およびそれに伴う胃炎の存在を示唆する所見は確認されなかった.本症例におけるこれらの肉眼的,病理組織学的特徴は最近注目されつつある腸MALT型リンパ腫のそれに類似しており,胃に発生したポリープ状MALT型リンパ腫の臨床病理学的意義を考える上で示唆に富む症例と考えられ報告する.
  • 濱畑 哲造, 三好 博文
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1178-1182
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は脳血管性痴呆の診断で入院中の76歳女性である.下血を来したため上部消化管内視鏡を施行したところ,胃体中部後壁に凝血塊を伴う円形の巨大潰瘍を認めた.H2RA投与による保存的治療を行なったが,嘔吐が続くため,1カ月後再び内視鏡検査をしたところ,前回の潰瘍底に一致した胃空腸瘻の形成を認めた.この症例に対して,瘻孔部の単純縫合閉鎖手術を行なった所,症状は改善し,以後障害を残すことなく治癒した.
  • 染川 貴子, 遠藤 高夫, 宮地 敏樹, 有村 佳昭, 山野 奏穂, 矢和田 敦, 細川 歩, 中原 生哉, 仲川 尚明, 坂本 裕史, 伊 ...
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1183-1189
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は60歳,男性.腹痛・タール便・著明な貧血で発症した.内視鏡検査にて十二指腸下行脚に全周性の狭窄・隆起性病変を認め,生検組織はびまん性大細胞型悪性リンパ腫であった.諸検査とあわせ,十二指腸原発悪性リンパ腫と診断し化学療法(CHOPE療法,6クール)を施行したところ,自覚症状・画像所見上の病変はともに消失した.本症例は比較的稀な疾患であり,化学療法で著明な寛解がえられた点で貴重な症例と考え,文献的考察を加えて報告する.
  • 杉田 博二, 高田 義雪, 中西 淳美, 菊池 博, 松下 肇
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1190-1195
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は67歳男性で主訴は嘔吐,食欲不振.平成8年5月頃より食欲不振及び10kg以上の体重減少を認め近医よりの紹介にて6月27日来院した.理学的所見では著明な低栄養状態を認め便潜血反応陽性であった.血液検査にて著明な低アルブミン血症を認めた.上部消化管内視鏡検査では幽門輪の消失,胃前庭部より十二指腸水平部にかけての粘膜の浮腫状肥厚,発赤,びらん,硬化,不整潰瘍,偽ポリープ,易出血性,大量の腸液を認めた.同部の粘膜生検で多数の寄生虫体を認め,その形態より糞線虫症と診断した.初回の内視鏡検査では十二指腸の管腔の振張を認めたが2度目の内視鏡検査では逆に管腔の狭小化を認めた.大腸内視鏡検査では下行結腸から上行結腸にかけ粘膜面は浮腫状で多数のびらんを認めた.胸部CTスキャンでは両側に多量の胸水貯留と右上・中葉に浸潤影を認めた.HTLV-1は256倍以上であった.thiabendazole1500mg/dayを3日間,3クール行うも,肺炎,呼吸不全にて死亡した.内視鏡的十二指腸粘膜生検にて診断しえた重症糞線虫症の1例を内視鏡所見を中心に報告する.
  • 吉川 一紀, 竹内 真智子, 迫本 実, 大口 創平, 佐野 敏明, 山本 剛荘
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1196-1202
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は69歳の女性,腰痛のためメフェナム酸0.5g/日を平成4年2月より服用していた.平成5年2月に下痢・下血・腹痛が出現し,大腸内視鏡検査で大腸炎を認めた.メフェナム酸中止後症状及び内視鏡所見は改善した.平成6年2月より膝痛にメフェナム酸0.25g/日を再投与したところ同年10月より再び同症状が出現し,大腸内視鏡検査で全大腸に出血性大腸炎を認めた.メフェナム酸中止後改善をみた.組織学的検査で大腸粘膜に著明な好酸球浸潤を認めたが,改善時には消失していた.末梢血液検査では好酸球増多とIgE高値を認め,便培養では病原体を認めなかった.リンパ球刺激試験は陰性であったが,著明な好酸球浸潤を特徴としたメフェナム酸による大腸炎と診断され,アレルギーの関与が考えられた.なお,患者は平成7年10月に気管支喘息を発症した.
  • 水口 泰宏, 古川 雅也, 穀野 真一郎, 溝上 俊朗, 二木 修司, 小野田 一敏, 堀部 俊哉, 新戸 禎哲, 関 知之, 斉藤 利彦
    1998 年 40 巻 8 号 p. 1203-1209
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,54歳男性.右季肋部痛を主訴に当科を受診.血清アミラーゼ値の上昇と,腹部USで膵頭部に膵石と径40mmの嚢胞および尾側膵管の拡張を認めたため入院となった.上部消化管造影検査および腹部CTで,十二指腸第2部の著明な狭窄像がみられた.炎症所見の改善を待って施行したERCPでは,主膵管に径12mmの透亮像と膵頭部に多発嚢胞を認めた.内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)を行った後,体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)を施行し,膵嚢胞の著明な縮小・十二#r,腸狭窄の改善,および自覚症状の消失を認めた.退院後11カ月間にわたり膵嚢胞の再発はなく,自覚症状も認めていない.これまで,十二指腸狭窄を伴う慢性膵炎は,手術療法が選択される場合が多かったが,本症例は手術療法に比べ侵襲の少ないENPDとESWLの保存的治療で軽快し得た.
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