日本消化器内視鏡学会雑誌
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41 巻, 10 号
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  • 中川 昭彦, 黒川 良望, 安藤 健二郎, 阿保 昌樹, 上野 達之, 里見 進
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2201-2211
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     O-IIc型食道癌15病変について,病理学的深達度と対比させて細径超音波プローブ画像の再検討を行った.その結果から,O-IIc型食道癌の超音波画像を,その形態により次のように分類する深達度の判定基準を考案した.伸展状態において腫瘍エコーが描出されない病変をT(-)タイプ,腫瘍エコーが描出される病変をT(+)タイプ,さらにT(+)タイプのうち弱伸展状態において内腔に凸の隆起を示す病変をT(+)P,孤の直線化を示す病変をT(+)Fとした.それぞれの予想深達度はT(-):m1~m2癌,T(+):m3癌以深,T(+)P:m3~sm1癌,T(+)F:sm2~sm3癌である.この判定基準を評価するために,O-IIc型食道癌16病変に対して術前タイプ分類を行い,予想深達度の正診率は87.5%であった.細径超音波プローブ画像の特徴的形態からみたO-IIc型食道癌の深達度診断は,客観的かつ有用であると考えられた.
  • 安田 秀光, 橋本 政典, 辻 英一, 青木 文夫, 清水 伸幸, 下山 省二, 山口 浩和, 瀬戸 泰之, 河原 正樹, 上西 紀夫
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2212-2223
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     高分解能の機械式アニュラアレイを用いて,胃壁超音波断層像の第2層内の底部にみられる1条の高エコー層(2b層)から第3層の高エコー層までの距離と粘膜筋板との関連について解析した.対象は胃癌術後ホルマリン固定された標本16例である.固有胃腺の底面に,13例は通常の縦走する1層の粘膜筋板があり,3例は通常の粘膜筋板の粘膜側にさらに輪走する筋線維を認め,また3例は疎な結合組織を認めた.固有胃腺の底面から粘膜下層の表面までの厚みの平均(0.317mm)は,超音波で測定した2b層から第3層の高エコー層までの厚みの平均(0.378mm)とほぼ同等であり,Sperman順位相関で1%以下の危険率で有意な相関を認めた.以上より超音波でみた第2層内の1条の高エコー層は,粘膜固有層の固有胃腺とそれより漿膜側の粘膜筋板を含めた組織との間に生じるエコーである可能性が考えられ,胃癌の深達度診断に際し,より詳細な検討に有用な知見と思われた.
  • 森 和弘, 河原 太, 仲井 培雄, 嶋 裕一, 竹山 茂
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2224-2228
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     スキルス胃癌穿孔の1例について若干の文献的考察を加え報告した.症例は,31歳の男性.上腹部痛を主訴に来院した.胸部X線所見で,左右の横隔膜下にfree airを認め,穿孔性腹膜炎と診断され当科入院となった.保存的に治療したところ約1週間で症状は軽快した.1カ月後の消化器内視鏡検査で,胃体上部に潰瘍を認め生検の結果,Group V(低分化腺癌)と診断された.胃癌穿孔と診断し,開腹手術を施行した.肉眼所見でスキルス胃癌穿孔と診断し,胃全摘・膵脾合併切除および肝外側区域切除術を施行した.組織学的には,por 2,scirrhous,t3(se),ly1,v0,n0=stage IIであった.本症例は,術後化学療法を併用し集学的治療を施行したが,腹膜再発にて術後8カ月目に死亡した.
  • 奥村 嘉章, 坂部 秀明, 宮川 明子, 松田 博, 大石 高治, 藤山 佳秀, 馬場 忠雄, 馬場 正道, 九嶋 亮治
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2229-2236
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は42歳の男性,低蛋白血症精査のため入院となった.胃内視鏡にて巨大皺壁を認めメネトリエ病と診断した.入院時胃粘膜のHelicobacter pylori(Hp)は,検鏡及び培養で陽性であった.オメプラゾール(40mg/日)を投与したところHpは除菌されなかったが,内視鏡像ならびに低蛋白血症は改善し,腺窩上皮の過形成も消失した.HP陽性のメネトリエ病でも必ずしも除菌療法が必要ないことが示唆された.
  • 濱崎 尚子, 足立 賢治, 鈴木 典子, 斯波 将次, 原 順一, 中村 志郎, 押谷 伸英, 松本 誉之, 荒川 哲男, 黒木 哲夫
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2237-2243
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は35歳男性.感冒様症状で発症し腹痛,下痢,下血が出現した.下部消化管内視鏡検査で,回腸末端部に発赤びらんを認めその生検標本より核内封入体を,また抗サイトメガロウイルス抗体(以下抗CMV抗体)染色で,陽性を示した.また,その後便培養で赤痢菌感染も判明した.サイトメガロウイルス性腸炎(以下CMV腸炎)が健常人に発症することは稀であるが,発症すれば重症になることも多く,原因不明腸炎の鑑別のひとつに列挙する必要があると考えられた.
  • 勝部 知子, 足立 経一, 三島 郁代, 天野 和寿, 石原 俊治, 渡辺 誠, 木下 芳一
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2244-2248
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は37歳,男性.平成9年4月よりべーチェット病として他科にて通院加療中,平成9年5月初旬頃下腹部痛あり,下部消化管精査目的にて大腸内視鏡検査を施行した.回盲部を観察後,内視鏡抜去観察中に強度の腹痛が出現し,肝彎曲部から横行結腸にかけて縦走性に赤色に変化した粘膜面を認めた.翌日の内視鏡検査では横行結腸中部から肝彎曲部に全周性に,強い出血,びらん,浮腫を認めた.20日目の内視鏡では,横行結腸から肝彎曲部,上行結腸にわたり縦走潰瘍を認め,一連の変化は,内視鏡検査中に発症した虚血性変化と考えた.大腸内視鏡検査を契機に発症した虚血性大腸炎の報告は散見されるが,内視鏡検査中にその発症直後の内視鏡像を観察し得ることはきわめて稀と考え報告した.
  • 笠巻 伸二, 佐藤 輝彦, 落合 匠
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2249-2251
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は25歳,女性.交通外傷による大腿骨顆上開放性骨折と急性硬膜下血腫の診断で入院し,「寝たきり」状態であった.入院1カ月後,突然の無痛性大量新鮮下血が出現したため,大腸内視鏡検査を施行したところ,歯状線上の下部直腸に限局した,地図上,不整形,1/2周性の潰瘍を認め,急性出血性直腸潰瘍と診断した.長期臥床による下部直腸の粘膜血流減少が原因と考え,体位変換を励行することによって再下血は認められなかった.
  • 鈴木 裕, 中村 厚夫, 本間 照, 小林 正明, 林 俊壱, 成澤 林太郎, 朝倉 均, 橋立 英樹, 味岡 洋一, 原田 篤
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2252-2258
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は56歳,男性.下部直腸に境界明瞭な隆起と,その口側に星芒状陥凹が連続した病変を認めた.内視鏡的粘膜切除術を施行し,0-IIc+Is型,深達度sm1の腺腫内癌(IIc部で高・低異型度癌,Is部で腺腫)と診断された.K ras codon 12の変異は両部とも認められなかったが,Ki-67陽性細胞はIs部・IIc高異型度癌部で全層性,IIc低異型度癌部で表層性に分布し,p53染色はIIc部のみ陽性であった.隆起型腺腫と陥凹型癌が連続した稀な形態を呈する早期大腸癌の報告は少なく,その成因につき考察を加えて報告した.
  • 郡司 俊秋, 岡 輝明, 筆宝 義隆, 石川 隆, 油谷 浩幸, 大西 真, 矢崎 義雄
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2259-2264
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は24歳,女性.主訴は腹痛.20歳時より浮腫,肝脾腫,右季肋部痛を繰り返していた.当科入院後施行した腹部USでは肝両葉に低エコー性のSOLが多発し,一部の腫瘍は石灰化を伴っていた.CT上これらの腫瘍は造影効果の乏しい多発性LDAとして描出された.確定診断を下す目的で腹腔鏡,肝生検施行.肉眼的に腫瘍は黄白色調で硬く,肝表面のcontourを変えずに肝縁にそって進展し,腫瘍の辺縁に細血管の増生を認めた.シルバーマン針にて採取した組織所見より,肝原発epithelioid hemangioendothelioma(EHE)と診断した.治療としてIL-2の全身投与が行われたが明らかな効果は認めなかった.肝原発EHEの診断には組織診断が必須であるが,腹腔鏡により観察された本腫瘍の肉眼像も特徴的であり,本症の診断に腹腔鏡,肝生検が極めて有用であると思われた.
  • 蔀 寿樹, 磯崎 一太, 小穴 修平, 千田 貴之, 照井 虎彦, 折居 正之, 佐藤 邦夫, 佐藤 俊一, 高橋 司, 菊池 信太郎
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2265-2271
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は77歳女性.吐血を主訴に来院し,内視鏡検査で前庭部大彎側に凝血塊を伴う粘膜下腫瘍様隆起を認め止血処置を行った.ERCPでは胆嚢管が閉塞し胆嚢は造影されなかった.19日後の内視鏡検査で止血部位に瘻孔を認め,瘻孔造影で胆嚢胃瘻が疑われた.瘻孔内からの生検で腺癌と診断され,胃に穿破した胆嚢癌と診断し手術を行った.内胆汁瘻の中で胆嚢胃瘻は稀であり,本邦では40例が報告されているのみである.
  • 野村 勉, 荒川 哲男, 兪 秀徳, 飯室 正樹, 伊藤 裕之, 木村 修二, 谷口 道代, 川合 弘毅, 高島 隆, 黒木 哲夫
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2272-2275
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     近年,食生活の欧米化とともに,大腸ポリープや大腸癌が増加し,免疫学的便潜血反応検査の普及によってこれら病変の発見数も増加している.大腸粘膜病変は多発していることが多いが,現状では回収の問題から1回の挿入で1回の内視鏡的摘除しかできず,その度に挿入・抜去を繰り返さざるをえなかった.そこで,著者らは1回の挿入で複数個の病変の摘除を行い,摘除材料を一括して,回収できる糸付きクリップ法を考案した.本法は病変を糸付きクリップでクリッピングしてからクリップを含めた病変のポリペクトミーを行うもので,摘除後も病変が内視鏡先端に糸で繋がっているため,回収は必要無く,また鉗子チャンネルが塞がっていないため同部を通じて次々とポリペクトミーを行い,最後に内視鏡抜去時に各々の糸に繋がれた病変すべてを回収できる.本法は施行時間と患者の苦痛を最小限にできる有用な方法と思われる.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1999 年 41 巻 10 号 p. 2279-2293
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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