日本消化器内視鏡学会雑誌
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41 巻, 3 号
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  • 梅田 典嗣, 松枝 啓, 正田 良介, 村岡 亮, 大和 滋, 松川 雅也, 三輪 純, 福島 清乃, 秋山 純一, 森 一博
    1999 年 41 巻 3 号 p. 267-277
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     著者らの30数年間にわたる胃粘膜障害の機序,ならびにその病態生理に関する研究の成果を発表した.第一に外的因子として熱性因子につき研究した.58℃の温水300m1,週3回,175~457日継続投与により,著明な偽幽門腺化生を伴う萎縮性胃炎が作成でき,熱性因子が慢性胃炎の原因の一つとなりうることを証明した.第二に,NSAIDsの一つであるCinchophen220mg/kgをferretに投与し,その胃粘膜障害が直接作用によることを示した.また,antralpouchを用いた実験で胃酸の存在しないpouchにはほとんど粘膜病変の起こらないことから,粘膜障害の発生には胃酸の存在が重要な因子であることを証明した.第三に,胃粘膜障害におけるMucus Bicarbonate Barrier(MBB)の役割を知るため,その実験装置を考案し,胃粘液不攪伴層(MGL)の厚み,胃酸の逆拡散の測定,およびpotential difference(PD)の測定系を確立し,いくつかの実験を行った.その結果,胃粘液は種々の刺激因子に対し反応性に分泌され,MBBの機能を維持すること,刺激因子が強すぎる場合には酸の逆拡散,次いで胃粘液とアルカリ分泌の低下が起こり,胃粘膜障害が発生することが証明できた.第四に,内的因子として胆汁酸の胃内逆流による胃粘膜の障害,とくに残胃癌発生およびhelicobacter pylori(HP)の役割につき臨床的検討を行った.また,残胃癌の発生母地となる粘膜の組織異型度を胆汁の残胃内への逆流の程度が異なるB-1,およびB-II吻合部粘膜を生検により検討し,10年以上経過するとGroup-IIIの出現率がB-II吻合部胃粘膜で有意(P<0.01)に高くなることを証明し,胆汁逆流が癌発生に関与する可能性があることを示した.さらに,HP陽性の残胃では,粘膜組織異型の発生する累積危険度が高い結果が得られ,HPの関与も示唆された.第五に,胃運動に関与するNitric Oxide(NO)のadaptive cytoprotectionに対する役割を検討した.NO産生,胃粘膜血流,胃筋電図を同時に測定できるchambersystemを考案し,ラットを用いて測定した.その結果,adaptive cytoprotectionの発生機序として胃酸の逆拡散により胃粘膜でのNOの産生が起こり,このNO産生が胃粘膜血流を維持させることが重要と考えられた.
  • 原田 容治, 杉浦 弘和, 小田 常人, 大和 宣介, 月岡 佳久, 鈴木 孝典, 大和 明子, 田村 俊明, ルナール 純子, 水野 文雄
    1999 年 41 巻 3 号 p. 278-283
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     強酸性水及び過酢酸水のHIVに対する不活化効果について検討した.不活化試験は被検水処理HIV液と,対照の生理食塩水処理HIV液を作製し,細胞毒性試験は被検水と生理食塩水にHIVではなく培養液を用いて細胞培養を行った.HIVの不活化試験の結果,生理食塩水処理HIVは4日目に宿主細胞の増殖を,7日目ではHIVの増殖により酵素活性の低下を認めたのに対し,強酸性水処理HIVでは4日目,7日目ともに宿主細胞の増殖を認めた.一方,過酢酸水処理HIVを接種された宿主細胞は,4日目では酵素活性が極めて低く,7日目で細胞の増殖を認めた.また,強酸性水と過酢酸水処理HIVは間接螢光抗体法でともにウイルス抗原陽性細胞の検出は認めなかった.さらに,細胞毒性試験では過酢酸水に細胞毒性を認めた.以上,強酸性水は急速にHIVを不活化する能力をもち,過酢酸水も細胞毒性は認めるものの,HIV抑制効果を示す成績であった.
  • 古川 剛, 大橋 計彦, 渡辺 吉博, 山尾 拓史, 加藤 知行, 柳沢 昭夫
    1999 年 41 巻 3 号 p. 284-295
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     術前に生検にて十二指腸乳頭部腺腫と診断した30症例に対し,内視鏡的乳頭切除術を実施し,その臨床的有用性と問題点について検討した.腫瘍の内視鏡的肉眼型はI型(腫瘤型),II型(顆粒型),III型(正常類似型)の3型に分類された.生検診断と最終病理診断は47%で異なり,全例で異型度が高くなり,最終病理診断は28例が腺腫で2例が癌であった.完全切除は30例中15例(50%)であり,不完全切除の15例は切除後の生検で10例(67%)で腫瘍陰性で,5例(33%)で腫瘍陽性であった.腫瘍遺残症例に対し内視鏡的乳頭切開術後にhotbiopsyにて処置し,全例で生検にて腫瘍の陰性化を確認した.合併症では穿孔はなく,出血は切除時に30例中1例(3%),切除後7例(23%)でHb3g/dl以上の低下を認めた.急性膵炎は1例(3%),顕性黄疸は3例(10%)にみられ,いずれも保存的治療にて軽快した.
  • ―その外科切除理由を中心に―
    井上 雄志, 鈴木 茂, 鈴木 衛, 村田 洋子, 伊藤 裕之, 福島 正嗣, 大森 亜紀子, 高崎 健
    1999 年 41 巻 3 号 p. 296-302
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去5年間に当センターで経験した大腸m癌外科切除35例の外科切除を選択した理由を内視鏡所見から検討し,内視鏡切除の限界および問題点を考察した.内視鏡切除が困難であった症例は19例あり,このうち腫瘍最大径が大きいため外科切除を選択した症例は13例で,腸管径に対する腫瘍径,すなわち"相対的大きさ"が重要であった.他の理由で内視鏡的切除困難であった6例はnon-lifting sign陽性m癌が2例,病変挙上したがsnaringに至らなかったIIc病変が2例,虫垂入口部上の病変が2例であった.直腸Rb病変の8例は断端陰性の得られやすさから局所切除を選択した.また内視鏡所見でSMmassive'以深癌と過大評価された症例が8例あった.大腸m癌は内視鏡切除を行うべき病変であるが,外科切除を選択せざるを得ない症例は存在し,また外科切除の持つ長所,利点もあり,術式選択にはこの点を充分に考慮し,治療方針を決定すべきである.
  • 鈴木 雅貴, 小野寺 博義, 高橋 功, 佐々木 明徳, 萱場 佳郎, 鵜飼 克明, 桑島 一郎, 本島 正, 大方 俊樹, 鈴木 裕, 中 ...
    1999 年 41 巻 3 号 p. 303-309
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     乳頭機能不全症の一型として胆道造影検査で胆管末端に凸状の陰影欠損を認める場合があり,Oddi括約筋の収縮にともなって胆管内腔に突出した正常あるいは増生したpapillary foldsと考えられている.特に恒常性がある場合は,胆管内の腫瘍性病変との鑑別が困難な場合が少なくなく,鑑別には経皮経肝胆道鏡(PTCS)による生検が有用とされてきた. 今回われわれは鎮痙剤を使用せずに経乳頭的管腔内超音波検査(IDUS)を施行することにより,胆管末端の隆起様形態そのものの変化を動的に捉えることでpapillary foldsと診断し,器質的な胆管内隆起性病変との鑑別に有用であったので報告する.
  • 糸井 隆夫, 篠原 靖, 武田 一弥, 武井 和夫, 中村 和人, 真田 淳, 堀部 俊哉, 斎藤 利彦
    1999 年 41 巻 3 号 p. 310-319
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     経皮経肝胆道鏡(PTCS)直視下に細径超音波プローブを用いて,胆管内隆起性小病変(小病変)の腔内超音波検査法(IDUS)による描出能の検討を行った.検討項目は病変の高さ,内部エコーおよび表面性状で,直接胆道造影による描出率についても検討した.また基礎的検討として,絹糸を用いた小病変描出能の検討も行った.IDUSで描出可能であったのは28病変中25病変で,最小の高さは0.5mmであったが,同じ丈の病変が密集する場合は壁の厚みとしてしか描出できなかった.一方,直接胆道造影により描出可能であったのは1病変のみであった.また小病変の内部エコーおよび表面性状と組織像との間には明らかな傾向は認めなかった.更に基礎的検討では,高さが0.5mm以上であれば描出可能で,2病変問の距離が0.5mm以上であれば分離して描出可能であった.以上よりIDUSは胆管内隆起性小病変の存在診断にも有用であると考えられた.
  • 村上 英広, 水上 祐治, 宇佐美 明彦, 黒瀬 清隆, 久保 義一, 大塚 廣海, 今峰 聡, 松井 秀隆, 恩地 森一
    1999 年 41 巻 3 号 p. 320-325
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は59歳,女性.主訴は嚥下障害.1980年に早期胃癌(IIc)にて近位側胃切除術を受けた.1992年より,嚥下障害が出現し次第に増悪したため入院.食道X線造影検査,上部消化管内視鏡検査にて,切歯から約25cmの部位に径5mmの全周性狭窄を認めた.24時間pHモニタリング検査,食道液生化学検査で十二指腸液逆流による食道炎が原因となった食道狭窄と診断し,バルーンによる内視鏡的食道拡張術を施行した.近位側胃切除術後に上部食道に高度の狭窄をきたした症例はきわめて稀であるので報告した.
  • 矢澤 和虎, 草間 次郎
    1999 年 41 巻 3 号 p. 326-329
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は73歳,女性.主訴は胸やけ.食道内視鏡検査にて上・中部食道に縦走するLos Angeles分類GradeCの粘膜障害を認め,中部食道に内腔を完全に2分する弓状のmucosal bridgeを認めた.逆流性食道炎に起因したmucosal bridgeと診断し,入院後プロトンポンプインヒビターを単独投与した.治療開始2週間後に再検した内視鏡検査ではmucosal bridgeは消失し,ほぼ正常粘膜像であった.
  • 鈴木 智浩, 坂 充, 関根 健司, 小島 俊彦, 吉田 直衛, 小原 勝敏, 粕川 禮司
    1999 年 41 巻 3 号 p. 330-334
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は44歳の男性.タール便と貧血を主訴に来院し,上部消化管内視鏡検査にて胃体上部後壁にDieulafoy型潰瘍が認められ,クリップにて止血した.止血約2週間後に行われた内視鏡検査では止血された血管周囲の粘膜にはヒダの細まりや中断などのIIc型早期胃癌の所見が認められ,生検にて印環細胞癌の診断が得られた.切除胃の組織像では粘膜表層に低分化型腺癌と印環細胞癌の混在が認められ,粘膜下層に印環細胞癌の浸潤がありIIc型早期胃癌と診断された.粘膜下層に拡張した動脈が認められた.組織型が低分化腺癌や印環細胞癌である胃癌の粘膜にはびらんや潰瘍が形成されやすい.また,胃体上部はDieulafoy潰瘍の好発部位である.胃体上部に発生したDieulafoy潰瘍様の形態を呈する低分化型早期癌の1例を報告し,経過観察と生検が必要であることを述べた.
  • 田中 祥介, 齋藤 幸夫, 谷 昌尚, 露久保 辰夫, 上村 志伸, 那須 道世, 小堀 鴎一郎
    1999 年 41 巻 3 号 p. 335-339
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は46歳,女性.近医の注腸造影検査にて異常を指摘され,精査目的に入院した.注腸造影検査では,右半結腸のハウストラの消失と盲腸の巨大な陰影欠損を認めた.大腸内視鏡検査にて脾彎曲部から盲腸にかけての右側結腸に粘膜のびまん性発赤が存在していたことから潰瘍性大腸炎が疑われ,病理組織学的に潰瘍性大腸炎と診断した.盲腸には4cm大の有茎性ポリープが認められ,ポリペクトミーが施行された.病理組織学的にポリープには線維芽細胞と血管の増殖,主として好酸球からなる炎症細胞浸潤がみられたことから,Inflammatory fibroid polypと診断した.大腸に発生したInflammatory fibroid polypは稀で,また潰瘍性大腸炎に併発した報告例はわれわれの検索し得た限りではなかった.
  • 谷 聡, 古川 健亮, 福田 昌輝, 西澤 昭彦, 坂井 誠, 森田 宗孝, 山下 順平, 北澤 荘平, 老籾 宗忠
    1999 年 41 巻 3 号 p. 340-344
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は50歳,女性.大腸内視鏡で横行結腸に径8mmの粘膜下腫瘍(カルチノイド)を認め,粘膜切除術(EMR)を施行し切断面をクリップにて縫縮した.術後,心窩部痛と発熱が出現,腹部CTでfree airを認め穿孔性腹膜炎と診断したが,腹膜刺激症状を欠いたため保存的に治療した.その後,炎症所見は改善し10日後に退院した.切除標本内に固有筋層上縁を含み,穿孔の原因は筋層を巻き込んだためと考えられた.本例ではクリップ縫縮処置にもかかわらず穿孔し,粘膜下腫瘍のEMRに対して注意を喚起する症例と考えられた.
  • 中園 雅彦, 近森 文夫, 林 広茂, 梶本 宜史, 里見 建裕
    1999 年 41 巻 3 号 p. 345-350
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     経頸静脈的逆行性胃静脈瘤塞栓術(transjugular retrograde obliteration for gastric varices;TJO)により,左腎摘後の孤立性胃静脈瘤に対して治療を行えたので報告する.症例は69歳女性で,昭和43年に子宮摘出術と左腎摘出術を受けている.平成9年6月7日タール便を主訴として入院した.胃内視鏡検査にて漏出性出血を有する孤立性胃静脈瘤(Lg-cf,F3,RC+)を認めた.腹部造影CTでは明らかな胃腎短絡路は認めなかったが,経脾動脈性門脈造影を行うと第2腰椎上縁付近への径の細い短絡路を認め,TJOを試みた.大循環系への合流点は左腎静脈結紮部直前にあり,左腎摘例においても胃腎短絡路は存在した.通常の胃腎短絡路に比べると径が細く,カテーテルの挿入が困難であったが,胃静脈瘤の塞栓は可能であった.
  • 板野 聡, 寺田 紀彦, 堀木 貞幸, 児玉 雅治, 後藤田 直人, 浦上 正弘
    1999 年 41 巻 3 号 p. 351-357
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     総胆管結石症に合併し2個の瘻孔を形成した総胆管十二指腸瘻の1例を経験した.症例は,55歳の男性.主訴は心窩部痛と発熱.近医で肝機能障害を指摘され,精査目的で来院した.胃内視鏡検査とCT検査から本症を疑い,ERCPで球部と総胆管の瘻孔自体が証明され,本症と確診された.以上より1997年8月5日,手術を行った.手術は,2個の瘻孔のうち口側の瘻孔を切離し,同部から総胆管内の結石(40×23×21mm)を摘出,切開部を利用してT-tubeを挿入留置し終了した.術後経過は良好であった.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1999 年 41 巻 3 号 p. 363-366
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1999 年 41 巻 3 号 p. 367-370
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1999 年 41 巻 3 号 p. 371-373
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1999 年 41 巻 3 号 p. 374-388
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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