日本消化器内視鏡学会雑誌
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41 巻, 5 号
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  • 辻 直子, 石黒 信吾, 鈴木 典子
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1059-1065
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃粘膜内癌のリンパ節転移の危険因子を検索するために,胃粘膜内癌症例740例について臨床病理学的に検討した.740例中23例(3.1%)にリンパ節転移を認めた.リンパ節転移例は60歳未満の若い症例,50mmを越える大きい症例,肉眼型では潰瘍を伴う陥凹型および主組織型が印環細胞癌が有意に多かった.さらなる危険因子を検索するためリンパ節転移例(23例)と年齢,大きさ,肉眼型,主組織型を合わせた非転移control症例(46例)を選択し,case-control studyを行った.組織型は未分化型と分化型が混在する混合型,癌最深部で粘膜筋板が消失,癌の粘膜筋板への接触長が長い,p53蛋白陽性および癌周囲の血管密度が高いことがリンパ節転移の危険因子であると考えられた.
  • 阿部 誠司, 武藤 学, 朴 成和, 宮本 心一, 馬場 哲, 松本 繁己, 陳 勁松, 加藤 茂治, 長島 文夫, 木庭 郁朗, 藤井 隆 ...
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1066-1074
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃粘液癌の内視鏡的特徴像を明らかにする目的で,胃粘液癌21例(A群)の内視鏡像について粘液癌を一部に含む胃癌(B群)16例,粘液癌を含まない胃癌(C群)295例と比較検討した.胃粘液癌において,潰瘍底を覆う厚い白苔様粘液が地図状に辺縁に迫り出している所見(地図状辺縁)が52.4%(11/21)に認められた.また,潰瘍を覆う厚い泡沫状の粘液様白苔(結節性泡沫状粘液)が57.1%(12/21)に認められた.一方,「地図状辺縁」はB群12,5%(2/16);C群0%(0/295),「結節性泡沫状粘液」はB群12.5%(2/16);C群3.6%(8/295)にのみ認められた.以上より,この2つの内視鏡所見は胃粘液癌に特徴的であると考えられた.内視鏡像と病理組織像を対比して検討すると,地図状辺縁は癌性粘液結節による既存の粘膜構造の破壊により,また結節性泡沫状粘液は癌性粘液結節が潰瘍部に露出することにより形成されると考えられた.
  • 井上 雄志, 鈴木 茂, 鈴木 衛, 飯塚 文瑛, 中村 哲夫, 本間 直子, 伊藤 裕之, 福島 正嗣, 鶴見 直子, 飯村 光年, 篠崎 ...
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1075-1082
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去10年間に当センターで経験したIIc型早期大腸癌15例を対象に臨床病理学的に検討した.全例が男性であり,発症年齢は平均66歳であった.主訴は便潜血陽性が6例と最も多く,全例大腸内視鏡によって発見された.占居部位は横行結腸が5例と最も多く,約70%が右側大腸であり,腫瘍径は平均11.1mmであった.内視鏡所見では,発赤は12例(80%),半月ひだの変形・途絶は12例(80%),皺壁集中は2例(13%)にみられた.壁深達度はm癌が6例,sm癌が9例で,リンパ節転移はsm癌1例のみで,再発は内視鏡切除例,外科切除例ともにみられなかった.大腸腺腫併存は13例(87%),大腸癌併存は6例(40%)にみられた.以上より,早期大腸癌のIIc病変の発見には,発赤および半月ひだの変形・途絶に注意した大腸内視鏡観察が重要で,とくに腺腫併存例,大腸癌術後例のsurvellance colonoscopyが重要であると思われたが,リンパ節転移例は1例のみであること,切除後の再発例もないことを考えると,まず発見することが重要であり,その遠隔成績は良好であると思われた.
  • 関亦 丈夫, 臼杵 尚志, 岡田 節雄, 石村 健, 谷内田 真一, 近藤 昭宏, 若林 宏子, 若林 久男, 前場 隆志, 内田 善仁
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1083-1089
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は66歳の男性で嚥下痛と嚥下障害を主訴とした.食道造影で胸部中部食道に有茎性隆起性病変を認め内視鏡では門歯列より30cmの部位にいわゆる山田IV型のポリープ性病変を認めた.診断と治療を兼ねて内視鏡的ポリペクトミーを施行した.摘出標本は大きさ30×20×15mmで,病理組織学的に毛細血管腫と診断された.自験例を含む本邦報告例67例について検討し内視鏡的ポリペクトミーの適応を考慮した食道血管腫の形態分類を行った.
  • 小倉 祥之, 佐藤 勝久, 斎藤 行世, 富田 裕一郎, 米地 真, 菊地 徹, 斉藤 道也, 長瀬 慶一郎, 鹿志村 純也, 池谷 伸一, ...
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1090-1094
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は59歳,男性.胃集団検診で食道胃接合部に異常陰影を指摘されて当院を紹介された.内視鏡検査で食道下部に逆流性食道炎の像が認められ,同時に施行した生検の結果高分化型腺癌が確認された.入院後,外科的に切除し,病理学的検索にて深達度mのBarrett早期食道腺癌の診断に至った.内視鏡検査で逆流性食道炎の像を認めた場合,Barrett上皮の可能性も考慮して生検を積極的に施行し,長期の経過観察が必要であると思われた.
  • 館花 明彦, 福田 直人, 山川 達郎, 鶴谷 孝, 岡野 晃, 脇坂 季繁, 雨宮 公一, 吉良 邦彦, 秋山 竹松
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1095-1100
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は89歳,女性.平成9年7月,上腹部不快感を主訴に当院受診した.内視鏡検査にて下部食道のびらん性病変を認め,生検にて食道炎と病理診断された.通院治療を開始したが症状は軽快せず,同9月には嚥下困難が出現した.食道造影では下部食道の壁不整所見,また内視鏡検査では同部位の全周性潰瘍と狭窄を認め入院加療を開始した.しかし次第に症状は憎悪し,同10月にはほぼ完全狭窄をきたしたため,内視鏡的バルーン拡張術および,メタリックステント留置を行った.同時に採取した組織所見より,Barrett食道と病理診断された. Barrett食道による食道完全狭窄に対し,バルーン拡張およびメタリックステント留置は,高齢患者への侵襲が比較的少なく経過も良好で,非常に有効な手技であった.
  • 太田 学, 今野 弘之, 馬場 恵, 田中 達郎, 中村 利夫, 西野 暢彦, 椙村 春彦, 中村 達
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1101-1106
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃重複症は,消化管重複症の中でも比較的稀な先天性疾患である.症例は39歳男性で特に自覚症状認めず,腹部超音波検査により胃嚢胞性疾患が疑われ来院した.胃嚢胞と診断するも,一部嚢胞壁肥厚像を認め,増殖性変化を考慮し,開腹手術を行った.胃漿膜を切開し,嚢胞は筋層より剥離が可能で嚢胞のみ摘出し得た.組織学的に筋層および噴門腺を有し,胃重複症と診断した.本例の術前診断は極めて困難であった。胃漿膜下の嚢胞性疾患に対しては胃重複症の可能性も考慮して加療するのが望ましい.
  • 谷 聡, 古川 健亮, 福田 昌輝, 前田 みちる, 坂井 誠, 森田 宗孝, 山下 順平, 老籾 宗忠
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1107-1110
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は74歳男性.脳梗塞により嚥下障害をきたしたため,経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)をMicrovasive One Step Button Kit(R)を用いて一期的にPull法にて施行した.術後4週間目に通過障害をきたし,瘻孔造影で胃瘻チューブ先端が腹壁内に埋没しburied bumper syndromeを認めたが,経皮的に胃瘻チューブを抜去し交換した.本症は一般に術後早期では少なく本邦での報告例もないが,今後PEGの普及に伴い増加する可能性もあり留意すべき合併症の一つと考えられた.
  • 神田 基信, 前田 和弘, 岡田 光男, 中山 吉福, 江頭 芳樹
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1111-1116
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は80歳男性.主訴は便秘,肛門痛,腹痛.元来便秘傾向にあったが,肛門痛,腹痛が出現し入院した.腹部CTでS状結腸に多量の便塊があり,摘便後症状は消失した.摘便1週間後の大腸内視鏡検査でS状結腸に縦走から地図状潰瘍と敷石像類似粘膜,管腔狭小化があり,生検では非特異的炎症の所見のみであった.病変は排便習慣の改善により速やかに改善した.本例は宿便の部位に病変がみられたことでは宿便性潰瘍と一致したが,血便を欠いたこと,肉眼形態が従来の報告例と異なることなどが宿便性潰瘍と一致しなかった.本例と類似の肉眼形態をとる虚血性大腸炎が報告されているが,本例は虚血性大腸炎の診断基準を満たしていなかった.以上より本例は宿便性潰瘍と虚血性大腸炎の中間型と考えられた.
  • 岩本 和也, 西崎 朗, 神田 一, 石井 新, 田村 孝雄, 堀田 和亜, 廣畑 成也, 中島 卓利, 安武 晃一
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1117-1122
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は72歳,男性.下血を主訴に来院した.大腸内視鏡検査にて径5mm大の粘膜下腫瘍様病変を回腸終末部に認め,生検にてGroup IIであったため経過観察となった.1年後の経過観察時の内視鏡検査では形態学的に著変を認めなかったが,生検にてカルチノイド腫瘍と診断された.細径超音波プローブ画像では粘膜下層浸潤を認め,回盲部切除術を施行した.手術病理組織では明らかな粘膜下層浸潤のある,曽我分類の混合型(A+C)カルチノイドであった.回腸終末部カルチノイド腫瘍は稀であり腫瘍径5mm大は術前診断されたものの内では最小であった.
  • 上野 由起子, 天木 秀一, 金子 弥樹, 千野 早苗, 金子 民子, 朝岡 昭, 田中 直英, 椿 浩司, 森山 光彦, 荒川 泰行
    1999 年 41 巻 5 号 p. 1123-1128
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は54歳の女性で,高血圧と糖尿病の治療をおこなっていたが,健康診断の際に心嚢液の貯留を認め,この時に肝機能障害と抗HTLV-I抗体を指摘された.入院時検査所見では白血球数は8000/μlで血液像には異常を認めなかった.GOT68IU/l,GPT66IU/lと上昇し,抗核抗体は640倍陽性であった.ウエスタンブロット法においてもHTLV-Iが陽性であった.腹腔鏡検査所見は肝表面は凹凸不整を呈し,溝状陥凹と粗大起伏および赤色紋理が認められ,自己免疫性肝炎の所見に合致した. HTLV-Iキャリアーに,自己免疫性肝炎を併発した極めて稀な症例を経験し両者の関連を考える上で示唆の富むものと思われた.
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