日本消化器内視鏡学会雑誌
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42 巻, 5 号
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  • 磨伊 正義
    2000 年 42 巻 5 号 p. 941-952
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回胃癌の自然史を知る目的で,過去10年間にprospective,一部retrospectiveな経過観察が可能であった胃癌34例を対象に癌組織型と発育様式につき検討した.分化型腺癌のなかで高分化型腺癌(tub 1, tub 2)の多くは緩徐な発育を示し,早期から進行癌に進展する期間は平均5年2カ月であった.計測可能症例でのDoubling time(DT)を計算したところ12.5カ月であったが,乳頭状腺癌(pap)でかつ髄様増殖を示したものは発育が早く,DTも3.7カ月であった.次に末分化型腺癌の発育経過をみると,(1)malignant cycleを繰り返しながら緩徐に発育するもの,(2)発育速度が速く,かつ高率に肝転移を伴う充実胞巣型の低分化型腺癌(DT 2カ月),(3)Borrmann 4型胃癌の大きく3つのタイプに大別される.これらの胃癌の中でも通常外科医が直面している胃癌は,転移能の高い悪性度の高い癌なのである.最近これら浸潤・転移に関する分予機構が急速に解明されつつあるが,我々の癌研究の最終目標は癌の転移予測とその制御である.そこで術前に胃癌生検組織を採取し,転移関連遺伝子群のmRNA発現(EGFR, bFGF, VEGF,Type IV collagenase)からみた転移の術前予測を試みた.21世紀には遺伝子診断や遺伝子治療も現実のものとなろう.内視鏡学の進歩が臨床医学と基礎研究を結ぶ接点になることは疑いの余地がない.
  • 仲 紘嗣
    2000 年 42 巻 5 号 p. 953-961
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     上部消化管内視鏡検査後の急性胃粘膜病変(以下PE-AGML)がH. pyloriによる急性感染像か否かを,PE-AGML発症前症例12例,発症後症例36例の胃生検組織にHE染色・ギムザ染色・免疫染色をおこない組織学的に検討した. H.pylori検出率は発症前症例で25%であったのに比較し発症後症例では69%と有意に高く,H.pylori密度は発症から胃生検までの日数が短いほど著しかった.好中球浸潤の陽性率も発症前症例で25%であったのに比較し発症後症例で92%と有意に高く,その程度も発症から胃生検までの口数が短いほど強かった.胃粘膜萎縮は発症前症例25%,発症後症例6%,症例全体では10%であった.腸上皮化生は各々33%,3%で,全体では10%であった. これらの所見はPE-AGMLの大半が発症前にH. pyloriに感染していなかったことを示唆しており,ほとんどのPE-AGMLは組織学的にH. pyloriによる急性感染像と考えられた.
  • 赤木 盛久, 高橋 亮吏, 藤堂 祐子, 菅野 啓司, 三浦 弘之, 三浦 敏夫, 渡邊 哲彦, 河本 邦彦, 田中 信治, 春間 賢, 嶋 ...
    2000 年 42 巻 5 号 p. 962-967
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は52歳,男性.上部消化管内視鏡検査にて,食道胃粘膜接合部に接して食道側に拡がる最大径約1cm大の発赤した陥凹を認め,生検で腺癌と診断.内視鏡的粘膜切除術を施行し,病理組織学的には中分化型管状腺癌で,深達度m3,ly1,v0であり,食道抜去術が追加施行された.切除標本においては,粘膜固有層にわずかに癌細胞の遺残が認められたが,リンパ節に転移はなかった.下部食道に存在する粘膜内腺癌はまれであり,本症例の発生母地としては食道側の噴門腺由来と考えられた.
  • 遠近 直成, 杉本 健樹, 高野 篤, 小林 道也, 松浦 喜美夫, 荒木 京二郎, 田村 俊久
    2000 年 42 巻 5 号 p. 968-973
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は72歳女性で,胃体中部の潰瘍痴歪痕による狭窄と胃体上部後壁に潰瘍を伴う隆起性病変を指摘され人院した.隆起性病.変は生検で悪性の証明はできなかったが,肉眼的に平滑筋肉腫などの悪性を否定できず,手術を施行した.病理紺織学的に粘膜下層を中心に硝子化傾向の強い膠原線維の増生がみられたが,腫瘍性変化はなかった.この病態の原因は不明であるが,胃体中部の狭窄による食物の停滞とH2プロッカーなどの抗潰瘍薬の服用が関与していると思われた
  • 鴨志田 敏郎, 堀田 総一, 平井 信二, 岡 裕爾
    2000 年 42 巻 5 号 p. 974-979
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は58歳の男性.健診の上部消化管造影検査で胃角変形を指摘され上部消化管内視鏡検査を施行.胃前庭部に小びらんと発赤,胃角部小彎に胃潰瘍瘢痕が認められた.前庭部の生検組織像は中等度の好中球浸潤を伴った慢性活動性胃炎であった.生検組織のMcMullen変法染色でHelicobacter1 heilmanniiが明瞭に認められた.除菌治療後の上部消化管内視鏡検査では,前庭部の小びらんと発赤は消失し,生検組織像でも,活動性の胃炎像は認められなかった. われわれは,稀なHelicobacter heilmannii感染を伴ったびらん性胃炎に除菌を施行し,除菌に成功した症例を経験したので報告する.
  • 鎌田 修, 吉川 正英, 城井 啓, 吉井 純一, 松本 昌美, 菊池 英亮, 栗山 茂樹, 植村 正人, 松村 雅彦, 福井 博
    2000 年 42 巻 5 号 p. 980-986
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は58歳の性.冠状動脈3枝狭窄に対し,右胃大網動脈を使川した冠状動脈バイパス術を受けたところ,術後20日目頃より心窩部痛,嘔気,食思不振が出現した上部消化管内視鏡検査にて胃体下部大彎に白苔を伴う直径約1cmの潰瘍形成を認め,著明に皺襞の集中が観察された.近年,冠状動脈バイパス術において動脈バイパスグラフトとして左右の内胸動脈に次いで右胃大網動脈が使用されてきているが,一般に上部消化管合併症の発生頻度は少ないとされている.本例のような胃潰瘍形成例はきわめて稀であるが,術後合併症の1つとして念頭に置く必要があると考える.
  • ―特にHelicobacter pyloriとの関連性について―
    木村 聖路, 鈴木 和夫, 相沢 中, 遠藤 哲, 金沢 洋, 棟方 昭博, 田中 正則
    2000 年 42 巻 5 号 p. 987-992
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は69歳女性.上腹部痛と胸やけがあり,平成7年12月の内視鏡検.査にてAGMLと診断された.H2-blockerの投与により一旦軽快したが,症状は増悪を繰り返し,平成8年10月と平成10年3月の2回にわたり,内視鏡上AGMLの再発が観察された.Helicobacter pyloriが検出されたため,平成10.年3月から合計3回除菌療法を行って平成11年5月に除菌成功と判定した.除菌療法開始後は症状も徐々に軽快,消失し,内視鏡上AGMLの再発は観察されなくなった.AGML様の内視鏡像を反復して繰り返し,H2-blockerが無効であったHelicobacter pylori陽性の慢性胃.炎症例に対し除菌療法が著効を示したので報告した.
  • 石黒 彩子, 宇野 良治, 石黒 陽, 韓 英, 棟方 昭博, 小枝 淳一, 佐藤 年信
    2000 年 42 巻 5 号 p. 993-997
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は66歳,男性.下血を主訴に大腸内視鏡検査を施行したところ,S状結腸に太い茎を有するIp型ポリープを認めた.頭部は最大径20mmで傘状で軟らかく,全体に椎茸様形態を呈していた.茎の太さは10mmであったが,長さが15mmであったためスネアポリペクトミーを行った.組織学的には粘膜下浅層に浸潤した高分化腺癌であった.この腫瘍は表面型として発生し,腸管運動によって頭部が核となり,茎部が引き延ばされて形成されたと考えられた.
  • 橋本 恵介, 林 勝吉, 福本 信介, 井口 幸三, 安本 真悟, 宮地 克彦, 栗栖 義賢, 平田 一郎, 勝 健一
    2000 年 42 巻 5 号 p. 998-1005
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸内視鏡検査,内視鏡下逆行性回腸造影検査及び組織検査にて,同腸末端部悪性リンパ腫と術前診断し得た1症例を経験した.症例は53歳男性.下腹部痛を主訴に来院し,腹部超音波検査にて回腸末端部に壁肥厚・腫瘤形成を指摘されたため精査加療目的にて入院となった.大腸内視鏡検査では回腸末端に多発性の腫瘤性病変と潰瘍性病変を認め多彩な像を呈していた.同時に行った逆行性回腸造影でも大腸内視鏡で認められた病変が描出され,さらに口側の回腸にも病変が見られた.生検の結果,悪性リンパ腫(non-Hodgkin diffuse medium sized cell type)と診断した.回盲部切除術,術後の化学療法が行われ経過良好なため退院となった.本症例により,回盲弁を超えた口側部位の観察,並びに症例に応じた検査法の工夫が必要であることが示唆された.
  • 前田 一也, 川浦 幸光, 龍沢 泰彦, 清水 淳三, 若林 時夫, 早川 康浩, 池田 直樹
    2000 年 42 巻 5 号 p. 1006-1011
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は51歳女性。右下腹部痛を主訴に当科を受診した.腹部理学的所見,血液生化学的検査,腹部超音波検査の結果,急性虫垂炎の診断で手術を施行した.切除虫垂の病理組織学的検索で,虫垂根部に内腔へ増殖する高分化型腺癌を認めた.深達度はm,脈管侵襲は認めなかったが切除断端に及んでいる可能性があるとの診断であった.虫垂切除後3カ月後に施行した大腸内視鏡検査にて虫垂基部に癌の残存を認めたため,回盲部切除術を施行した.原発性虫垂癌は比較的稀な疾患で,そのほとんどが進行癌であり,早期虫垂癌の本邦報告例は24例目である.
  • 花立 史香
    2000 年 42 巻 5 号 p. 1012-1016
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は47歳の女性で腹痛を主訴に来院.消化管造影にて空腸の虚血性変化,内視鏡的逆行性胆管造影にて胆管に圧排像を認め,さらに血管造影にて肝門部に側副血行路を伴う門脈閉塞が確認された.空腸病変は門脈塞栓によるもので,胆管の変化は,それに伴って発生したbile duct varices(以下,本疾患)と診断した.本疾患はまれな疾患とされており,病因,発生率および合併症などに関し文献的考察を加え報告する.
  • 2000 年 42 巻 5 号 p. 1041d
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 2000 年 42 巻 5 号 p. 1041c
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 2000 年 42 巻 5 号 p. 1041b
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 2000 年 42 巻 5 号 p. 1041a
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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