症例は74歳,女性,大陽検査を希望し当科を受診した.注腸X線検査では盲腸より上行結腸は多発する潰瘍瘢痕により変形し偽憩室を呈し,周囲の腸間膜リンパ節の石灰化を認め,虫垂は入口部よりわずかに描出されていた.1回目の大腸内視鏡検査では虫垂入口部に一致する部位に表面平滑で軽度発赤した細長いボリープ様病変を認め,完全型虫垂重積(intussusception of the vermiform appendix:IVA)と診断した.9カ月後,2回目の大腸内視鏡検査では虫垂人口部は正常であり,IVAは消退していた.原因としては過去における腸結核の修復機転や虫垂自体の解剖学的要因,さらに大腸内視鏡検査の前処置であるポリェチレングリコール液服用が誘因となった可能性かあると考えられた.本症は稀な病態であり,これ主でに内視鏡的に本症の消退を確認した報告は認められず興味深い1例と思われた.