症例は75歳,男性.腹痛,発熱,嘔気などの自覚症状を伴うことなく暗赤色の血便が出現し,3日間に渡り血便が持続したため,当院へ緊急入院した.入院時に著明な貧血を忍めたため,緊急大腸内視鏡検査を施行したが,多量の凝血塊のため出血源を同定し得なかった,入院3日目に再度大腸内視鏡検査を施行したところ,直腸に径10mm大のangiodysplasiaを認めた.同腸末端部まで観察を行ったが,他に出血源と考えられる病変を認めなかったため,直腸のamgiodysplasiaからの出血と診断した.入院6日目に施行した超音波内視鏡では,病変部の粘膜下に異常血管像を認めず,angiodysplasiaは不明瞭となっていた.入院9日目の大腸内視鏡検査では,直腸のangiodysplasiaは自然消退していた.その後4年間に渡る経過観察を行っているが,下血は一切認めず,内視鏡検査でもangiodysplasiaの再発を認めていない.大腸のangiodysplasiaは,高齢者における下部消化管出血の原因として注目されている疾患であるが,本例のように,大量出血を契機に自然消退した大腸angiodysplasiaに関する報告はなされておらず,貴重な症例と考え報告する.
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