潰瘍性大腸炎の癌化について概説した.疫学的には,潰瘍性大腸炎の発癌率は一般人口よりも高く,全結腸炎型で長期の罹患が癌発生の危険因子であることが確認されている.加えて,硬化性胆管炎の合併や大腸癌の家族歴も危険因子とされている.潰瘍性大腸炎における癌は通常の大腸癌とは分子生物学的特徴が若干異なり,p53の変異が早期からみられ,マイクロサテライト不安定性が少ない.一方,前癌病変としてのdysplasiaを伴うので,臨床的にはdysplasiaを発見することが重要である.この際にはdysplasiaの病理診断や腺腫との鑑別が問題となる.dysplasiaは隆起性病変と平坦病変に大別されてきたが,平坦なdysplasiaの内視鏡所見も解明されつつある.近年,サーベイランス内視鏡の臨床データが集積され,多数の組織採取による管理指針の妥当性や問題点が明らかとなっている.
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