日本消化器内視鏡学会雑誌
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44 巻, 8 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 松本 主之, 飯田 三雄
    2002 年 44 巻 8 号 p. 1153-1161
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     潰瘍性大腸炎の癌化について概説した.疫学的には,潰瘍性大腸炎の発癌率は一般人口よりも高く,全結腸炎型で長期の罹患が癌発生の危険因子であることが確認されている.加えて,硬化性胆管炎の合併や大腸癌の家族歴も危険因子とされている.潰瘍性大腸炎における癌は通常の大腸癌とは分子生物学的特徴が若干異なり,p53の変異が早期からみられ,マイクロサテライト不安定性が少ない.一方,前癌病変としてのdysplasiaを伴うので,臨床的にはdysplasiaを発見することが重要である.この際にはdysplasiaの病理診断や腺腫との鑑別が問題となる.dysplasiaは隆起性病変と平坦病変に大別されてきたが,平坦なdysplasiaの内視鏡所見も解明されつつある.近年,サーベイランス内視鏡の臨床データが集積され,多数の組織採取による管理指針の妥当性や問題点が明らかとなっている.
  • 安田 貢, 鳥巣 隆資, 青木 利佳, 板東 玄太郎, 林 亨, 竹内 義員, 福家 浩三, 高橋 義典, 山ノ井 昭, 坂下 修, 山本 ...
    2002 年 44 巻 8 号 p. 1162-1167
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は68歳の女性.萎縮性胃炎の経過観察のため来院した.上部消化管内視鏡検査にて胃体上部前壁に頭部が白苔に覆われた約2cm大の有茎性の隆起性病変を認めた.生検で低分化型腺癌が検出され,幽門側胃切除を施行した.組織学的には,頭部の大部分がpor1であり,smに浸潤していた.茎部の粘膜内ではpor1と連続してtub1を認めた.粘液形質は腸型を示した.有茎性の胃低分化型腺癌はまれであるが,本症例はtub1から変化したpor1病変が粘膜内で急速に増殖したため隆起を形成したものと考えられた.
  • 三枝 久能, 清水 俊樹, 越知 泰英, 一條 哲也, 宮沢 幸一, 岡部 竜吾, 佐野 健司, 赤松 泰次
    2002 年 44 巻 8 号 p. 1168-1174
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は34歳女性.心窩部痛,黒色便を主訴に入院した,上部消化管造影,胃内視鏡で胃体上部小彎に長径約40mmの粘膜下腫瘍を認め,頂部に粘膜欠損がみられた.各種画像所見および生検所見より間葉系由来の悪性腫瘍と診断し,胃亜全摘術を施行した.病理学的に成熟脂肪細胞とともに脂肪芽細胞と未分化問葉系細胞を認め,分化型脂肪肉腫と診断した.術後3年間再発を認めない.原発性胃脂肪肉腫は比較的稀であり,これまでの報告23例をあわせて考察した.
  • 奥山 祐右, 岡島 達也, 鈴木 隆裕, 中田 晋, 船津 英司, 中村 英樹, 落合 淳, 名生 諭史, 木村 浩之, 八木 信明, 久津 ...
    2002 年 44 巻 8 号 p. 1175-1179
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は69歳の男性.右下腹部痛の精査目的で施行された大腸内視鏡検査にて回盲部に大きさ約20mmの表面顆粒状でやや透明感をもつ亜有茎性ポリープを認めた.超音波内視鏡にて病変は高エコーの中隔構造を有する多胞性の嚢胞性病変として描出され,リンパ管腫と診断し,内視鏡的摘除を施行した.組織学的には海綿状リンパ管腫であり,表面は絨毛に覆われた回腸由来のリンパ管腫と最終診断した.
  • 佐藤 康史, 奥田 敏徳, 高山 哲治, 瀧本 理修, 佐藤 勉, 佐川 保, 秋山 剛英, 佐藤 康裕, 萩原 誠也, 佐藤 よしみ, 大 ...
    2002 年 44 巻 8 号 p. 1180-1185
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は78歳,男性.高γ-グロブリン血症の精査目的で当科紹介入院.精査の結果Monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)の診断でアミロイドーシスの検索目的に大腸内視鏡検査を施行したところ,横行結腸に約径30mmのいわゆるcushion-sign陽性の粘膜下腫瘍(SMT)病変とその表層に重なる分葉状の隆起性病変を認めた,表層部の生検結果は腺腫であった.超音波内視鏡(EUS)でSMTの第3層内を中心に多房性の無エコー領域を認めた.以上より大腸リンパ管腫と腺腫の合併を疑い腹腔鏡下横行結腸切除術を施行した.病理組織学的に大腸リンパ管腫と腺腫の併存が確認された.近年,大腸リンパ管腫の報告は散見されるようになったものの同一部位の腺腫合併例は稀で,その診断にはEUSが有用であった.
  • 村田 洋介, 阿部 雅則, 道堯 浩二郎, 松原 寛, 舛本 俊一, 山下 善正, 堀池 典生, 恩地 森一
    2002 年 44 巻 8 号 p. 1186-1190
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は53歳,女性.初回入院時,抗ミトコンドリア抗体陰性.腹腔鏡では,溝状および広範陥凹があり,肝組織では広範壊死がみられた.自己免疫性肝炎(AIH)と診断,副腎皮質ステロイドの投与を開始.その後,胆道系酵素の上昇がみられた.第2回目の腹腔鏡では,陥凹所見は改善.肝組織では非化膿性破壊性胆管炎がみられた.AIHの経過中に原発性胆汁性肝硬変が顕在化し,その経過を腹腔鏡で観察しえたので報告する.
  • 佐藤 龍, 藤井 常志, 千葉 篤, 西川 智哉, 村松 司, 伊藤 貴博, 三好 茂樹, 智之 太田, 大田 人可, 村上 雅則, 折居 ...
    2002 年 44 巻 8 号 p. 1191-1197
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は39歳女性.右季肋部痛にて当科を受診.腹部CT検査にて胆嚢内に結石を認め,肝内胆管及び肝外胆管の拡張を認めた.ERCP検査では総胆管の拡張と中部胆管に一部憩室様に突出する部位を認めたが,膵胆管合流異常は認めなかった.胆石を伴ったAlonso-Lej ll型先天性胆管拡張症と診断した.EUS検査・IDUS検査にて憩室様構造内に異常所見はみられなかった.膵内胆管に絨毛状隆起を認めたが浸潤所見はなく,生検にても異型細胞は認めなかったため,胆嚢摘出術のみを施行した.Alonso-Lej ll型先天性胆管拡張症は稀であり,貴重な症例と考え報告した.
  • 小嶋 達也, 安達 献, 菅野 聡, 中村 陽子, 渡部 幸夫, 三富 弘之, 浅尾 武士
    2002 年 44 巻 8 号 p. 1198-1203
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸鏡で発見された腎細胞癌に続発した消化管アミロイドーシスで,治療により内視鏡所見の改善を観察し得た1例を報告した.回腸末端の地図状潰瘍,全大腸の多発性びらんや十二指腸の粗糧な粘膜が特徴的であった.腎癌は非根治的切除であったため,副腎皮質ホルモン投与を行い,全身状態や内視鏡所見の改善と,アミロイド沈着量の減少がみられ,これは副腎皮質ホルモンのアミロイド前駆物質の産生抑制によるものと考えた.
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