日本消化器内視鏡学会雑誌
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45 巻, 10 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 土岐 文武
    2003 年 45 巻 10 号 p. 2071-2079
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    膵管が特異的な狭細像を示す膵炎がその成因に自己免疫的機序の関与している可能性があるとして,自己免疫性膵炎(以下,AIP)と呼称され注目されている.現在,AIPの診断は日本膵臓学会の自己免疫性膵炎診断基準に準拠して行われている.診断基準では主膵管の狭細像と膵の腫大を確認することが必須とされている,したがってAIPの診断には膵管狭細像の判定が最も重要である.膵管狭細像は通常ERCPによる膵管像で診断される.膵管狭細像とは,「主膵管径が正常域より小さく(細く),かつ壁の不整像を伴い,このような異常像が一定範囲(現行の診断基準では膵全体の1/3以上)に認められる膵管像」としてほぼ合意が得られている.膵管狭細像と膵管狭窄像とは区別して用いることが重要であり,狭細像を膵管長の1/3以上としたことで膵癌の混入を防ぐことが可能と思われた. AIPの診断に際しては,自己抗体陰性例や膵管像のみが診断基準を満たさない症例の取り扱い,腫瘤形成性膵炎との関連など,問題は残されている.現診断基準でのAIPは,広義のAIPの一部である,膵管が狭細像を示すAIP(膵管狭細型自己免疫性膵炎)を取り扱っている可能性を認識しておくべきと考える.
  • 青木 哲哉, 大川 清孝, 大平 美月, 青松 和揆, 山崎 智朗, 追矢 秀人, 加島 和俊, 根引 浩子, 佃 博, 井上 健
    2003 年 45 巻 10 号 p. 2080-2085
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    〈背景・目的〉1994年5月から2002年5月までの期間に当院で14例の平坦型直腸粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome:MPS)を経験した.〈方法〉14例の平坦型直腸MPSについて内視鏡的,臨床的,病理学的に検討した.〈結果〉内視鏡的に2つのtype(1)下部Huston弁上,前壁を中心とした輪状の病変(4例),(2)直腸下端肛門直上の発赤班(10例),に分類された.〈結論〉前者は過敏性腸炎の患者が多かった.後者は臨床症状を有さないものが多く,痔核の合併が多かった.後者の発見には直腸内反転が有用であった.
  • 籔 道弘, 桐山 和男, 谷口 雅厚, 岩尾 憲人, 姫野 誠一
    2003 年 45 巻 10 号 p. 2086-2092
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    2日前に大量の唐辛子ソースを飲用した51歳,男性.食事中に激しい口論になった夕食後,上胸部に痛みがあり嘔吐した.痛みは心窩部まで拡がり激痛となり,翌日当院に入院.内視鏡検査で上部食道に潰瘍があり,その肛側端より食道下端部まで続く巨大な粘膜下血腫を認めた.保存的治療により症状は軽快した.粘膜下血腫の破裂後,長い帯状の潰瘍が形成されたが,第21病日には治癒した,発症に香辛料の関与が推定された.
  • 志賀 典子, 落合 利彰, 富永 佐和子, 伊原 栄吉, 松本 真裕, 本田 邦臣, 谷口 恭子, 武谷 慎司, 右田 良克, 土田 治, ...
    2003 年 45 巻 10 号 p. 2093-2099
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性.頻回な鼻出血,皮膚や口腔粘膜の毛細血管拡張病変,家族歴から遺伝性出血性毛細血管拡張症(Rendu-Osler-Weber病:以下Osler病)と診断した.上部消化管内視鏡検査で胃に多発する毛細血管拡張病変を認め,貧血の原因と考えられたためアルゴンプラズマ凝固法(以下APC法)を施行,病変の消失と貧血の改善が得られた.本疾患における胃の毛細血管拡張病変の治療法としてAPC法は有効と考えられた.
  • 深澤 貴子, 中村 利夫, 木俣 博之, 丸山 敬二, 宇野 彰晋, 東 幸宏, 林 忠毅, 今野 弘之, 中村 達
    2003 年 45 巻 10 号 p. 2100-2103
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     横行結腸周囲膿瘍において大腸内視鏡下生検時に排膿を確認の後,治癒した症例を経験した.症例は59歳女性.右下腹部痛にて当院を受診し,腹部CTで肝彎曲部周囲の結腸壁の肥厚と周辺脂肪組織の濃度上昇を認め,横行結腸周囲膿瘍が疑われた.大腸内視鏡検査で同部位に発赤を伴う正常粘膜に覆われた隆起を認め,生検すると膿汁が流出した.内視鏡検査後より症状は軽快し,発症1カ月後の腹部CTでは前回指摘された炎症所見は消失していた.この後結腸周囲膿瘍の再発は認めていない.今後の治療的利用の可能性を鑑み報告する.
  • 中里 勝, 山野 泰穂, 南利 江子
    2003 年 45 巻 10 号 p. 2104-2110
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.上行結腸に面状陥凹を有するIIa+IIc部分と連続したIIa部分から成る病変を認めた,病理組織学的に衝突癌の所見は認められなかった.IIa+IIc部分の組織型は中分化型腺癌(深達度sm2),IIa部分の組織型は高分化型腺癌(深達度m)であり,IIa+Ilc部分の表面に高分化な癌腺管よりなる粘膜内病変部が残存していた.以上の所見より当病変における発育進展は,粘膜内に留まっていた高分化型腺癌が中分化型へとより悪性度を増すにつれて粘膜下層に浸潤を来たし,粘膜下層部で癌の容積を増すにつれて腫瘍周囲の正常粘膜部を持ち上げ,相対的陥凹を形成したものと示唆された.肉眼形態上,腫瘍表面に陥凹を有する陥凹型腫瘍にもかかわらず,表面隆起型由来と考えられた大腸sm癌の1例を経験した.
  • 佐川 保, 辻 靖, 高柳 典弘, 平山 泰生, 坂牧 純夫, 千葉 大樹, 黒岩 巌志, 佐藤 康史, 高橋 稔, 高山 哲治, 新津 洋 ...
    2003 年 45 巻 10 号 p. 2111-2117
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.平成13年6月及び8月前医にて盲腸及び直腸に隆起性病変を認め,EMRを施行.病理学的にmucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫と診断された.病変の深達度は何れも粘膜下層にとどまりかつ断端陰性であり,経過観察をしていたが平成14年10月直腸に新たな病変を認め,EUS上深達度は固有筋層への浸潤が疑われたため外科的手術を施行した.大腸癌取扱い規約に従うと,SM,NO1(+),M(-),stage Iであった.MALTリンパ腫はMALTを発生母地として発生するため,内視鏡治療を選択した場合には厳重な経過観察,再発が疑われた場合には適切な追加切除を行うことが極めて重要である.
  • 白川 京佐, 渡邊 文利, 丸山 保彦, 景岡 正信, 高井 哲成, 本川 哲也, 大矢 幸代, 甲田 賢司
    2003 年 45 巻 10 号 p. 2118-2123
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は88歳,男性.黄疸を主訴に受診.内視鏡的逆行性胆管造影検査でVater乳頭開口部に充満した粘液と胆管の拡張,胆管内に充満した粘液像を認めた.経皮経肝胆道鏡にて左右肝管の起始部および総胆管の上部・下部に乳頭状の発赤した粘膜を認め生検ではadenocarcinomaを疑う異型上皮を認めた.粘液産生胆管癌による閉塞性黄疸と診断し,腫瘍の粘液産生を抑制する目的で胆道鏡下にマイクロ波による腫瘍凝固を試みた.治療後,肝硬変で死亡するまでの約3カ月間胆管炎症状は来さなかった.ハイリスク患者に対して,本治療法は有用であると考えられた.
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