いわゆる粘膜下異所性胃腺は,胃癌の併存病変として重要視されている,われわれは,粘膜固有層および粘膜下層内にびまん性に拡張した胃腺の増生と早期胃癌とが併存した3例を経験した.うち1例は,粘膜固有層にのみ拡張した胃腺を認めた。1869年にHarrisらが最初に報告したdiffuse cystic malformation(以下,DCM)の概念と最も一致すると考え,DCMを3例の総称とした,DCMと早期癌を併存した3例について,その病理学的所見と内視鏡所見とを対比した。症例1は内視鏡上,3カ所の粘膜下腫瘤様隆起として認められた.組織学的には,いずれも粘膜下層に数十個の嚢胞が多発する病変で,そのうち1カ所に高分化型腺癌を合併していた.症例2は多発するポリープ様病変としてDCMを認め,印環細胞癌を合併していた.組織学的には粘膜下層に多発した嚢胞性病変を認めた.症例3は,DCMによる皺襞腫大が認められ,高分化型腺癌を合併していた.組織学的にDCMは癌部周囲および腫大した皺襞部に一致してみられ,粘膜同有層深部に限局してびまん性に存在していた.今回の検討において,DCMはその組織構築により多様な内視鏡所見を呈することが示唆された.
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