本研究は早期胃癌に対する粘膜切除術(endoscopic mucosal resection; EMR)を中心とする内視鏡治療の現状と問題点,その適応拡大の可能性について検討することを目的として,1994年から開始され,2002年に終了した.肉眼型が0-I,IIa,IIb,IIc・UL(-),高~中分化型の粘膜内癌で長径20mm以下の病変をI群,同性状の長径21~40mm,および40mm以下の未分化型の粘膜内癌の病変をII群とした.登録例412例(1群305例,II群107例)中258例(1群199例,II群59例)が評価対象となった,I群全体の一括完全切除率は71.9%であり,10mm以下82.4%,11~15mm67.2%,16~20mm45.5%と長径の増大とともに低下した.初回EMR後の癌遺残に対する追加治療例も加えた長期成績では,199例中8例(4.0%)が再発したが,うち5例が内視鏡治療により局所治癒し,最終的には196例(98.5%)に局所治癒が得られた.II群の分化型癌に対する一括完全切除例は52例中24例(46.2%)であった.追加治療を含めて59例中57例(96.6%)が内視鏡治療で局所治癒した.残り2例(3.4%)の再発例は外科手術が実施された,I群,II群を問わず,初回EMRによる切除組織から粘膜内癌であることが組織学的に正しく診断されれば,分割切除や凝固法の併用治療例でも,規則的な経過観察のもとでは治療後の再発病巣も含めて内視鏡治療で局所治癒が得られること,併せてII群への適応拡大も十分可能であると結論された.
抄録全体を表示