表面型早期大腸癌のEMRについて,その適応・切除手技選択と治療成績について概説した.EMRのみで根治可能な早期大腸癌は粘膜内癌と以下の条件を満たすSm癌である.その条件とは,(1)浸潤先進部組織型WまたはMw,(2)sm浸潤度1,500μm未満,(3)脈管侵襲陰性,の3条件である.EMRによる完全摘除大腸sm癌でこの条件を満たすものは根治と判定してよい.従来のスネアEMRでは平均最大径20mmが一括切除の限界であるが,いわゆるLSTの粘膜内病変,特に腺腫内癌は,正確な術前精密診断のもと計画的分割スネアEMRで根治が可能であり,実際の臨床例でもその有用性が示されている.最近普及し始めた切開・剥離EMRは,高異型度癌あるいはsm癌の可能陸の高い病変の完全生検としての一括完全摘除に用いられるべきであり,大腸の解剖および大腸腫瘍の特性を考慮すると,ルーチン手技としての大腸粘膜内腫瘍への応用はまだ一般的でなく,さらなる手技の簡便化,安全性の確立と一般内視鏡医に対する標準化が必要である.
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