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川野 克則, 太田 正之, 佐々木 淳, 北野 正剛, 有田 毅
2004 年 46 巻 5 号 p.
1025-1030
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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肝疾患に対する腹腔鏡下あるいは腹腔鏡補助下肝切除の現況について概説する. 腹腔鏡下肝切除術は良性疾患に対する1991年のReichらの報告に始まり,次第に適応が拡大され,現在では肝の良性腫瘍,転移性および原発性の悪性腫瘍に対して施行されるようになった.本邦での日本内視鏡外科学会によるアンケート調査結果では2001年末までに621例が報告されており,症例数は増加傾向にある. 主な適応疾患である肝細胞癌の治療においては,腹腔鏡下肝切除術は開腹手術と同等の根治性を維持し,かつ低侵襲な治療として重要な位置を占めている.しかしながら,出血やガス塞栓等の重篤な合併症の危険性もあり,十分な注意を要する高度な治療手技であることも認識しておく必要がある. 今後の課題として,より安全な治療手技の開発,保険医療面での解決,さらには多施設研究による治療成績と手術妥当性の比較試験が重要と考えられる.
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鈴木 敬, 結城 豊彦, 佐藤 匡, 石田 一彦, 妹尾 重晴, 菅原 俊樹, 平澤 大, 洞口 淳, 高澤 磨, 金 潤哲, 斉藤 千恵, ...
2004 年 46 巻 5 号 p.
1031-1037
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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【目的】悪性胃十二指腸狭窄に対する内視鏡下stentingの有用性と問題点を検討する.【方法】悪性胃十二指腸狭窄14例について,stentingの成功率,stenting前後での臨床像について評価した.【成績】14例全例でstentの留置が可能であった.経口摂取能は平均dysphagiascoreで3.5から2.6と変化し,50.0%(7/14)に改善がみられた.U領域では66.7%(4/6)に経口摂取能の改善がみられた.M領域より肛門側での狭窄では,stenting後狭窄が解除できても経口摂取改善度は不良であった.【結論】悪性胃十二指腸狭窄に対し,手技工夫を加えることで,全例で内視鏡下stentingが可能であった.しかしU領域以外では,物理的開存が得られても,機能的開存が得られないものが多かった.
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高木 眞人, 冨岡 英則, 葦沢 龍人, 青木 利明, 岡田 了祐, 鈴木 芳明, 寿美 哲生, 山崎 達之, 望月 眞, 青木 達哉
2004 年 46 巻 5 号 p.
1038-1045
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例は72歳,男性.胃体上部の2型胃癌に対し,開腹胃企摘を行った.U, por 2, SS, Nl, ly1, v1, PM(-)であった.その後つかえ感が出現,内視鏡で吻合部狭窄とすぐ口側に隆起を認めた.前者に対しバルーン拡張術を行い,後者に対し通常の生検を繰り返したが悪性細胞が得られず,エタノール局注後の生検にて胃癌食道壁内転移と確定診断した。結果として7カ月間の形態変化が観察できた.化学療法が替効し,CRとなり再発後26カ月経過するが再発発はない.
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松島 由美, 岡崎 和一, 小澤 睦, 立田 浩, 内田 一茂, 妹尾 浩, 八隅 秀二郎, 大花 正也, 澤田 光孝, 鍋島 紀滋, 山本 ...
2004 年 46 巻 5 号 p.
1046-1050
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例は61歳の男性.心窩部不快感を主訴に来院.胃MALTリンパ腫stageIと診断した.H.pylori陽性であったので,まず除菌療法を行った,除菌6週問後H.pyloriは陰性化しており大部分は緩解していたが,一部の病変部は腫瘤様に増大していた.組織所見では,non-Hodgkin diffuse large B cell lymphomaであった.胃MALTリンパ腫は除菌治療後に,急速に悪化する可能性もあり引き続き厳重な経過観察が必要と考えた.
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田中 久雄, 堀江 聡, 柏木 亮太, 松田 裕之, 八尾 隆史
2004 年 46 巻 5 号 p.
1051-1056
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例は69歳男性.主訴は腹部膨満感,両下肢浮腫.上部消化管内視鏡検査にて胃体上部から前庭部にかけて大小不整なポリポーシス病変を認めた.体部小彎には浅い陥凹性病変を認めた.生検組織診断にて印環細胞癌であり,胃全摘術が施行された.手術標本では病理組織診断はpor 1 > por 2で体部小彎の陥凹性病変で漿膜外への浸潤を認めたが,胃全体に散在するポリポーシス病変は粘膜内病変であった.このように胃低分化腺癌がポリポーシス病変を来した理由については,低分化腺癌成分に混在して過形成上皮が見られ,過形成性ポリープ内に癌が増殖しているような像がみられることより,もともと多発する過形成性ポリープが存在した胃に分化型癌が発生し,粘膜を置換性に広がって,最終的に隆起の形をとり,広範囲な粘膜内充実型低分化腺癌病変が形成されたのであろうと推測した.
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渡辺 卓也, 朴 載廣, 川端 英博, 渡邉 庄治, 高瀬 郁夫, 村田 陽捻, 川口 誠
2004 年 46 巻 5 号 p.
1057-1064
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例は73歳女性.6年前より毎年の検診で便潜血陽性となり,その度近医受診し大腸内視鏡検査でポリープを指摘され,ポリープは年ごとに増加したが,精査を受けるに至らなかった.平成14年9月より下血が出現し当科紹介受診.内視鏡検査で十二指腸球部と全大腸に粘膜下腫瘍様,大小不揃いの隆起性病変が多発し,生検でFollicular lymphoma(FL)の病理組織診断を得た.CT検査では全身リンパ節腫大を認め,s-IL2Rは12,900U/mlと高値で,Multiple lymphomatous polyposis(MLP)様の消化管浸潤を伴う全身性FLと診断した.CHOP療法4クール施行し,全身リンパ節の縮小とs-IL2Rの低下,直腸隆起性病変の改善を認め,下血は消失した.十二指腸,全大腸にMLP様の消化管浸潤を示した全身性FLは極めて稀であり報告した.
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田賀 理子, 奥田 博介, 米澤 和彦, 阿部 敬, 今井 浩三
2004 年 46 巻 5 号 p.
1065-1070
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
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症例は36歳,全身性エリテマトーデス(以下SLE)の男性.突然の下腹部痛を主訴に入院.下血を認め大腸内視鏡検査を施行.直腸Rs部に全周性の腸粘膜の浮腫,発赤,易出血性およびびらんを認めた.注腸X線検査にて同部位に限局する全周性の腸管狭窄を認め外科的切除を施行.切除標本では拇指大の潰瘍を認め,病理組織学的に潰瘍周囲に血管炎の存在が示唆された.本症例はSLEの血管炎に伴う腸管病変と考えられた.
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安藤 朗, 西田 淳史, 児堀 綾子, 辻川 知之, 佐々木 雅也, 小山 茂樹, 藤山 佳秀
2004 年 46 巻 5 号 p.
1071-1076
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
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症例は22歳女性.1997年発症の潰瘍性大腸炎.2003年1月発熱,粘血便を認め入院となった.プレドニゾロン内服を開始したが反応せず,シクロスポリン持続静注療法を14日間追加した.しかし,臨床症状,内視鏡所見の改善は得られなかった.そこで,白血球除去療法(LCAP)を開始した.LCAP6回終了後,内視鏡的,臨床的改善が確認された.シクロスポリンに反応せずLCAPが奏功した貴重な症例を報告する.
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岡野 直樹, 藤塚 宣功, 萩沢 良美, 日毛 和男, 佐藤 大介, 三浦 富宏, 片山 雅彦, 五十嵐 良典, 飯田 和成, 三木 一正
2004 年 46 巻 5 号 p.
1077-1081
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
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症例は36歳男性.平成10年より急性膵炎を反復.平成14年5月膵炎が再燃し当院に転院.CTで内部に高吸収域を伴う50mm大の嚢胞を膵尾部に認め,出血を伴う膵仮性嚢胞と診断した.膵管ステント(PS)を留置したが嚢胞の縮小を認めず7月11日に内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)に変更後,嚢胞はやや縮小し24日に抜去した.2日後に嚢胞内再出血を認めたが出血部位は不明であった.再びENPDを施行し嚢胞は縮小傾向となり,PS変更,その後再増大なく,11月21日にPSを抜去した.以後,膵炎の再燃は認めていない.
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内田 尚仁, 筒井 邦彦, 小原 英幹, 正木 勉, 鎌田 英紀, 有友 雄一, 江崎 徹, 福間 博基, 井上 秀幸, 杵川 文彦, 小川 ...
2004 年 46 巻 5 号 p.
1082-1087
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
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内視鏡的BH.道ドレナージ(endoscopic nasobiliary drainage; ENBD)は,有用な外瘻法であるが,1咽頭部不快感やチューブの圧迫による潰瘍などを生じさせることもあり,このような場合には早期の内瘻化が望まれる.そこで,内視鏡鉗子孔から挿人できる鋏鉗子を用い,ENBDチューブを切断し簡単に内瘻化する方法を開発した.8例においてはENBDチューブの内瘻化を目的に,1例においては膵管ステント留胃時に十二指腸管腔側に長く出過ぎたステント長の調節を目的に,鋏鉗子を用いた切断を行い,9例全例において内瘻化と切断に成功した.ステントの閉塞が2例に,迷人が1例に認められたが,穿孔などの合併症はなく,切断端の変形もみられなかった.今後多数例での検討が必要であるが,鋏鉗子を用いた内視鏡チューブ切断法は,簡便なENBDの内瘻化として,有用な方法になりえると考えられる.
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浮田 雄生, 清家 正弘, 池田 真幸, 志村 純一, 多田 知子, 井上 博和, 石黒 淳, 前谷 容, 五十嵐 良典, 酒井 義浩
2004 年 46 巻 5 号 p.
1088-1093
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
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背景,目的:慢性膵炎例に対する膵管ステント留置術の除痛効果については多数報告されているが,膵機能に対する評価は明らかにされていない.その要因のひとつとして挿入されるステントの口径やpatencyが考慮されていないことが考えられる.そこで膵管ステントを長期間留置し,主膵管が開通した状態での瘍痛の消長,膵機能の変化を検討した.方法:対象は1996年6月から2002年6月までに10Fr.の膵管ステントを留置した主膵管狭窄の24例である.平均年齢は57.0±1歳,男女比7:1,糖尿病合併は11例である.膵管ステント留置前と6カ月後でステント開存期間,柊痛,膵内外分泌能を比較検討した.膵管ステントは3カ月毎に交換しながら1年以上留置した.結果:膵管ステント閉塞が29%,逸脱が15%にみられ,50%開存期間は125日であった.膵管ステント留置により疼痛は全例消失したを主膵管径,BT-PABA試験,体重,BMI(Body Mass Index)は有意に改善した.1日尿中C-peptideは増加傾向でnInsulinは減縫され,HbA1cは低下した,結論:膵管ステントを留置することで主膵管閉塞を回避することが可能であり,除痛,残存膵機能の温存.改善が期待できた.
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有馬 美和子, 多田 正弘
2004 年 46 巻 5 号 p.
1094-1101
発行日: 2004/05/20
公開日: 2011/05/09
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背景:Endoscopic ultrasound-guided fine needle biopse (EUS-FNAB)の基本概念は,体表から行われる超音波やCTガイドの組織生検と同様の手技を,EUSイメージガイドに行うことである.食道・縦隔疾患におけるEUS-FNABの適応と成績について検討した.方法:対象は食道・縦隔腫瘍30例,縦隔リンパ.節28例の計58例である.リニア型EUS(PEF-703FA,東芝・フジノン社製)と21G内視鏡ド生検(Endosonopsy,八光商事社製)を用い,組織は濾紙に回収してホルマリン固定し,病理組織学的検討を行った.結果:穿刺した腫瘍の大きさは6~60mm,平均29mmであった.組織採取率および正診率は95%であり,悪性疾患27例中全例で組織診断可能な組織が採取された.合併症は認められなかった.結論:EUS-FNABの適応は,第1にEUSで穿刺することの安全,必然性がある病変,第2に組織診断を付けることが治療方針の決定に関与する病変であることに集約される.縦隔疾患の多くは他の方法では組織採取はおろか,病変の検出も難しい場合多く,EUS-FNABが第1選択の組織採取法となる.食道癌のリンパ節に対する穿刺は,内視鏡的粘膜切除術(EMR)などの縮小治療の選択,EMRや化学放射線療法(CRT)後のfol1ow up例,Neoadjuvant CRT後の効果判定などが適応となる.
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