【背景】膵管内乳頭腫瘍(IPMT)は,過形成から腺癌に至る幅広い組織学的特徴を有している.従って,IPMTの治療方針を決定するためには,良悪性を鑑別することが重要である.【方法】1985年1月から2002年3月の問に外科的切除を受けたIPMT39例(男性27例,女性12例,平均年齢63.3歳)を対象とした.術前に超音波内視鏡(EUS)または管腔内超音波(IDUS)を用いて計測された嚢胞径,最大主膵管径,最長嚢胞内(膵管内)乳頭状腫瘍高を切除標本の組織学的所見と比較することで,IPMTの良悪性の鑑別が可能であるかを検討した.【結果】悪性IPMT(浸潤癌,非浸潤癌)の嚢胞径,主膵管径,乳頭状腫瘍高は,良性IPMT(腺腫,過形成)と比較して大きい傾向がみられた.検討の結果,IPMTの診断において,次の3つの因子が重要であることが示唆された:(i)嚢胞径30mm以上,(ii)主膵管径8mm以上,(iii)嚢胞内(膵管内)乳頭状腫瘍高3mm以上.良悪性の鑑別において,(i)に関しては,統計学的に有意差が認められなかったが,(ii),(iii)に関しては,統計学的に有意差(P< 0.0001)が認められた.【結論】IPMTの鑑別診断,特に良悪性の鑑別においてEUS,IDUSは有用であった.
抄録全体を表示