日本消化器内視鏡学会雑誌
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47 巻, 4 号
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  • 河野 辰幸, 神津 照雄, 大原 秀一, 草野 元康
    2005 年 47 巻 4 号 p. 951-961
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Barrett粘膜の頻度を得る日的で,初回内視鏡検査施行例2,595例を対象に疫学調査を施行した.その結果Barrett粘膜は2,577例中536例(20.8%)に認められた.Barrett粘膜の長さは女性よりも男性で有意に長く,Barrett粘膜の頻度と年齢層との問には相関関係を認めなかった.Barrett粘膜の有無と胸やけの有無,Barrett粘膜の長さと逆流性食道炎の重症度,食道裂孔ヘルニア重症度との間に相関を認め,萎縮性胃炎がBarrett粘膜の長さに影響を及ぼしていた.逆流性食道炎がBarrett粘膜の発生に重要な役割を担っているものと推察されたが,欧米と比較して,典型的Barrett食道の頻度は著しく低かった.今後統一したBarrett粘膜の定義や診断基準によるevidenceの集積がさらに必要と思われた.
  • 草野 元康, 神津 照雄, 河野 辰幸, 大原 秀一
    2005 年 47 巻 4 号 p. 962-973
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道裂孔ヘルニアについて全国的な頻度調査が行われていないことからGERD研究会において疫学調査を実施した.初回内視鏡検査施行例2,595例を対象とし,食道裂孔ヘルニアの頻度および胃食道逆流症との相関を検討した.見下ろし分類に基づく評価の結果,食道裂孔ヘルニアは2.560例中1,263例(49.3%)に認められた.ヘルニアの頻度は女性よりも男性で有意に高かった.ヘルニアの重症度と逆流性食道炎の重症度との間に有意な正の相関が認められたが,年齢層および胸やけとの問には相関が認められなかった.またヘルニア分類において,見下ろし分類による重症度と反転像分類による重症度との間には有意な正の相関が認められたが,反転像分類の逆流性食道炎との相関は見下ろし分類よりやや弱いものであった.この本邦における大規模な疫学調査は国内外における逆流性食道炎の発生に関する地域差および民族差を明確にする基礎資料になると考える.
  • 森田 大作, 木村 幹彦, 神藤 英二, 菅沢 英一, 内田 剛史, 市倉 隆, 望月 英隆, 津田 均, 松原 修
    2005 年 47 巻 4 号 p. 974-977
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は72歳女性である.嚥下困難を主訴に来院.内視鏡検査にて,胸部下部から腹部食道に,4.2×2.5cm大の2型病変と1.6×1.3cm大の0-I型病変がみられた.2型病変の病理組織診断は,扁平上皮癌であった.胸部食道全摘術施行後,病理組織学的に,扁平上皮癌と類基底細胞癌の二重癌の診断で,深達度は各々外膜,粘膜下層に及んでいた.また,肝左葉には8mm大の類基底細胞癌の転移がみられた.
  • 塚平 俊久, 関口 恭弘, 中村 清, 津澤 豊一
    2005 年 47 巻 4 号 p. 978-985
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,41歳男性.主訴は,咽頭痛が先行し,頸部から前胸部へ,さらに心窩部へと経時的に移動した疼痛及び発熱上部消化管内視鏡検査では,頸部食道から胃・十二指腸球部に広範な粘膜の著明な浮腫と潰瘍,膿汁の分泌付着を認めた.CT検査では,同部位に壁の肥厚と,壁内に気体と液体が貯留していると思われる低吸収域を認めた.食道・胃・十二指腸球部に及ぶ気腫性蜂窩織炎と診断し,保存的治療で改善したが,食道の瘢痕狭窄をきたし,内視鏡的バルーン拡張術を施行し,良好な結果を得た.
  • 上田 哲郎, 宮城島 拓人, 高野 眞寿, 仲屋 裕樹, 小田 寿, 依田 有生, 能登 俊, 小笠原 和宏, 高橋 達郎
    2005 年 47 巻 4 号 p. 986-992
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は85歳女性.主訴は心窩部不快感と体重減少.上部消化管内視鏡検査では幽門狭窄を認めるが,潰瘍や腫瘍性病変は無く,狭窄部の生検で悪性所見を認めなかった.上部消化管造影検査にて幽門の狭小化と延長(string sign)を認め,腹部超音波検査と超音波内視鏡検査では,幽門筋が肥厚していた.上部消化管造影検査で特徴的なstring signを認め,超音波検査で幽門筋の肥厚を認めた事から,成人肥厚性幽門狭窄症と診断した.保存的治療は奏効せず,幽門側胃切除を施行した.自覚症状は改善し,体重減少も停止した.病理組織所見では,幽門筋,特に内輪筋が著明に肥厚していた.
  • 正岡 直子, 池尻 真康, 広原 鍾一
    2005 年 47 巻 4 号 p. 993-999
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は48歳,女性.腹壁瘢痕ヘルニアで当科受診.以前より胆石症を指摘されており,胆道系の精査も行った.腹部CTで胆嚢は萎縮,頸部に結石を認めた.ERCPでは,右肝管から胆嚢管に分岐したaccessorybile duct(副交通胆管枝)を認め,副交通胆管枝内に結石を認めた.胆嚢摘出術,副交通胆管枝切除を施行した. 副交通胆管枝の報告は稀で,ほとんど報告されていない.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 高木 貴久子, 西川 秀司, 永坂 敦, 樋口 晶文
    2005 年 47 巻 4 号 p. 1000-1004
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     発端者は26歳時妊娠を契機に慢性膵炎と診断された.膵炎を起こす原因が見出せず,母が慢性膵炎,祖父が慢性膵炎疑いであったことから遺伝子解析を行ったところ,第7染色体(7q 35)上のcationic trypsinogen遺伝子のexon 3における点突然変異(R 122 H)を認め,遺伝性膵炎と診断した.発端者の長女,次女にも同様の遺伝子異常(R 122 H)がみられた.長女は6歳時に膵管の拡張,蛇行を認め慢性膵炎と診断された.以上より少なくとも3世代にわたる遺伝性膵炎と考えられた.
  • 伊藤 啓, 藤田 直孝, 野田 裕, 小林 剛, 木村 克巳, 洞口 淳, 高澤 磨
    2005 年 47 巻 4 号 p. 1005-1009
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    目的:膵管ステント留置による内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(ERCP)後膵炎発症の予防の可能性を検討する.対象と方法:ERCP後膵炎の高危険群(胆管深部挿管困難,precut,内視鏡的乳頭切除術,膵管生検,膵管口切開)15例を対象に片pigtail型の5Fr膵管ステントを留置し,膵炎の発症頻度について検討した.結果:膵炎の発症は1例も認めなかった.血清アミラーゼ値の上昇は5例でみられ,4例では翌日,他の1例では2日後に低下した.73%で13日以内にステントの自然脱落が確認された.結論:ERCP後膵炎の高危険群に対する細径の膵管ステント留置は,膵炎発症を予防できる可能性が示唆された.
  • 竹下 勇太郎, 藤城 光弘, 上西 紀夫
    2005 年 47 巻 4 号 p. 1010-1011
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 永井 鑑, 河野 辰幸
    2005 年 47 巻 4 号 p. 1012-1019
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     消化管の入口である中・下咽頭の内視鏡観察と同部の表在性の癌に対する内視鏡治療について紹介する. 中咽頭から下咽頭さらに咽頭食道接合部にいたる局所解剖,特に喉頭の存在による複雑な立体構造を熟知し,高解像度の電子内視鏡を用いて系統的に観察して小さな表在性の癌を発見する.咽頭癌の高危険群を選別して観察するのが効率的である.発赤,白色調の粘膜肥厚,粘膜の微細な凹凸,白苔の付着,血管透見像の消失や異常が表在癌を疑う所見である.ヨード染色に頼れないので,充分な咽頭麻酔あるいは鎮静下に,通常観察と少数の生検で拾い上げ診断を行う.病変の広がりと多発病変の存在に注意する.拡大観察やnarrowband imagingも有用である. 中・下咽頭癌に対する標準的治療は切除手術と放射線治療である.内視鏡治療は未だ試験的治療であり,精密診断を兼ねて行われる.内視鏡治療の適応となるのは癌浸潤が筋層に及ばず最大径4cmまでの癌で,リンパ節転移のないものである. 治療は全身麻酔下に行う.ヨード染色で病変の広がりを明らかにした後,EMRC法による粘膜切除術あるいはアルゴンプラズマ凝固術を行う.EMRCでは一括切除にこだわらず,小範囲多分割切除を行うのが安全・容易である.治療中と治療後は誤嚥性肺炎と喉頭浮腫を予防するとともに,咽頭痛対策を行う. 本法は臓器が温存されるため治療後のQOLは良好に保たれる.しかし,再発・再燃に充分注意し,根治性に疑問があれば速やかに根治的手術や放射線治療などを追加することが大切である.
  • 佐藤 隆啓, 山崎 克, 豊田 成司, 狩野 吉康, 大村 卓味, 桑田 靖昭, 赤池 淳, 須賀 俊博
    2005 年 47 巻 4 号 p. 1020-1026
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    (目的)内視鏡的超音波カラードプラ法(ECDUS)は食道静脈瘤の血行動態診断に有用な検査法である.これまでのECDUSによる検討では供血路の血流方向は遠肝性の血.流方向を示した.今回の研究では供血路血流方向の経時的変化に着目し,その頻度や臨床的意義について検討した.(方法)125例の食道静脈瘤を対象とし,Red color (RC) signのgrade別ではRC(+)は79例, RC(++)は35例, RC(+++)は11例であった.左胃静脈,すだれ様血管,貫通血管の血流方向についてECDUSで検討した.(結果)食道静脈瘤,左胃静脈の血流信号は125例全例に検出された.貫通血管は90/125(72.0%)に,すだれ様血管は33/125(26.4%)に血流信号が検出された.血流方向の経時的変化が認められたのは7/125(5.6%)でその部位は左胃静脈が3例,貫通血管が3例,左胃静脈とすだれ様血管が1例であった.血流方向は一定の間隔で変化を繰り返し,これらの症例はRC signのgrade別では全例, RC(+)であった。(結論)食道静脈瘤供血路の血流方向の経時的変化はRC signのgradeが低い症例に低頻度に観察された.ECDUSは非侵襲的かつリアルタイムに血行動態が観察できる有用な方法で,RC signが認められる食道静脈瘤における血流方向の経時的変化の頻度について明らかにできた.
  • 責任者:鳥居 惠雄
    鳥居 惠雄
    2005 年 47 巻 4 号 p. 1027-1030
    発行日: 2005年
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー
  • 2005 年 47 巻 4 号 p. 1032
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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