[目的]早期胃癌治療において内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の保険診療下での合理的な導入の根拠を明らかにすること.[方法]胃癌治療ガイドライン適応病変に対し,初回治療後3年間の効果,費用の計算が可能な判断分析モデルを作成し,従来法EMRと比較した.[結果]患者QOLに影響する再内視鏡治療,外科手術,内視鏡検査の回数,入院,通院日数で,ESDは従来法より優れていた.ESDの総費用が従来法より高額にならないESDの手技料の閾値は,209,061円となった.[結論]閾値の条件では,ESDは従来法に比べて患者アウトカム,費用対効果に優れた治療法と評価された.ESDの導入・普及により,医療効果の向上のみならず,医療費削減が可能であり,早期に,本研究の結果に基づいた適切なESDに対する手技料の設定が望まれる.手技の普及に際して,治療法のもつ効用,経済効率を損なわぬよう,適切な手技習得のためのプログラムの確立が肝要と考えられた.
抄録全体を表示